2016(04)
■モノカキの神様
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テスト期間が目の前に迫っている。ゼミでも当然のようにレポート課題があって、今からそれをちびちび書いていかないと絶対に間に合わない。参考文献のあるゼミ室で作業をするけど、思うようにはなかなか進まない。
ノートパソコンを前に頭を掻いてみたり、のびをしてみたり。これは、明らかにスランプ! ちょっと前まで映画の脚本がーってスランプだったのにレポートも書けないなんてあーもーやだー!
「うー……やーっ!」
「伏見、静かにしろ。気が散る」
「すみません」
あたしの隣で作業をしていた朝霞クンからチクリとお小言をいただく。あたしがわるーござーした。朝霞クンの手元を見ていると、踊るように手がバチバチ動いていて、あーもー羨ましい!
文字がびっしり埋められたノートや本の上をシャーペンが辿り、思いついたことをさらさらりと紙の上に落とし込んでいく。それをさらにこねくり回してパソコンに打ち込んでいるように見える。
朝霞クンにはきっとそういう神様か何かがついているのかもしれない。スランプとは無縁そうと言うか。放送部で現役だった時も、常に何かしら手が動いていたし、書けるように出来てるんだなあって。
「あの、朝霞クン」
「何だ」
「スランプになったときって、どうしたらいいのかなあ」
「どうもしない。ひたすら書くだけだ」
「そうだよね~……」
ほーら。朝霞クンってそういう人なんですよ! わかっちゃいたけど解決にはならなかったなあ。すると朝霞クンは手を止めて、真っ白いあたしのワード画面をのぞき込む。
「伏見、スランプなのか?」
「うん。なかなかねー、上手い具合にまとまんなくて」
「なるほどな」
「なるほどって言うけど、朝霞クンスランプにならないんでしょ?」
「いや、俺もスランプにはなる」
「でも、ひたすら書くって」
「書くことがスランプ脱却法だからな」
「なにそれ~!」
あたしの中では、スランプになったら書くこととは別のことをしてリフレッシュするー、みたいなイメージがある。だけど、ひたすら書いてスランプから抜け出そうとするっていうのはアスリートかって言いたくなる。
「いや、息抜きに書くのは全く別の物なんだ。レポートが書けない時は小説を書いたりしてる」
「えっ、なにそれ」
「実は今もレポートの裏で息抜きファイルは開いてる。まあ、レポートが書けてるからそっちは動いてないけど」
つまり、スランプ脱却とか息抜きに同じジャンルの別のことをやるということだったらしい。だけど、あたしには多分向かないやり方だと思う。レポートが書けないからって映画の台本を書こうとは思えないし。
「そう言えばちーも言ってたなあ。自由形で上手く行かなくなったら背泳ぎとか別の泳ぎするって」
「へー、やっぱスポーツでもあるんだなそういうのって」
「むしろスランプとかってスポーツの方が悩みそうじゃない?」
「確かに」
「でもやっぱりあたしは別のことをして息抜きしたいなー」
「今俺と喋ってんだから十分息抜きになってんだろ」
「確かに」
改めて白いワード画面を見てみると、やっぱり真っ白い。だめか。勝手にレポートになってくれないか。そして脇の本に目を落とす。うん、だめ。何も降ってこない。だけど今までより閉塞感がないって言うか、確かに気は晴れてるんだ。
だけど、隣からの音が止まっている。朝霞クンの手が、止まっている。珍しい物を見た気がする。もしかして、あたしと喋ったから? そして朝霞クンは言う。俺もまだまだだな、と。
「今こそ裏ファイルの出番だよ!」
「いや、そういう気分でもないんだ。しょうがない、落書きでもするか」
シャーペンを手に取り、朝霞クンはその席から見える風景をルーズリーフに描き始めた。って言うか絵も上手いとか何それ。そういう神様がついてるんじゃないの本当に。
「朝霞クン、しゃっかしゃっかうるさい! 陰影は後で付けて! 八つ当たりしますよ!」
「あ、悪い。つか八つ当たりはすんな」
end.
++++
がんばれふしみん。あと、やっぱり書くことのことに関しては聞く人選を間違えている気がする
そして物を書く裏で別の物を書いて息抜きする朝霞Pである。それでもだめなら絵を描くよ! これが家だったら映画を見始めてたかもしれない。
ふしみんはなかなかするすると筆が動くってことがなさそうな印象。苦しみながらもなんとか生み出してるっていう雰囲気がある
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テスト期間が目の前に迫っている。ゼミでも当然のようにレポート課題があって、今からそれをちびちび書いていかないと絶対に間に合わない。参考文献のあるゼミ室で作業をするけど、思うようにはなかなか進まない。
ノートパソコンを前に頭を掻いてみたり、のびをしてみたり。これは、明らかにスランプ! ちょっと前まで映画の脚本がーってスランプだったのにレポートも書けないなんてあーもーやだー!
「うー……やーっ!」
「伏見、静かにしろ。気が散る」
「すみません」
あたしの隣で作業をしていた朝霞クンからチクリとお小言をいただく。あたしがわるーござーした。朝霞クンの手元を見ていると、踊るように手がバチバチ動いていて、あーもー羨ましい!
文字がびっしり埋められたノートや本の上をシャーペンが辿り、思いついたことをさらさらりと紙の上に落とし込んでいく。それをさらにこねくり回してパソコンに打ち込んでいるように見える。
朝霞クンにはきっとそういう神様か何かがついているのかもしれない。スランプとは無縁そうと言うか。放送部で現役だった時も、常に何かしら手が動いていたし、書けるように出来てるんだなあって。
「あの、朝霞クン」
「何だ」
「スランプになったときって、どうしたらいいのかなあ」
「どうもしない。ひたすら書くだけだ」
「そうだよね~……」
ほーら。朝霞クンってそういう人なんですよ! わかっちゃいたけど解決にはならなかったなあ。すると朝霞クンは手を止めて、真っ白いあたしのワード画面をのぞき込む。
「伏見、スランプなのか?」
「うん。なかなかねー、上手い具合にまとまんなくて」
「なるほどな」
「なるほどって言うけど、朝霞クンスランプにならないんでしょ?」
「いや、俺もスランプにはなる」
「でも、ひたすら書くって」
「書くことがスランプ脱却法だからな」
「なにそれ~!」
あたしの中では、スランプになったら書くこととは別のことをしてリフレッシュするー、みたいなイメージがある。だけど、ひたすら書いてスランプから抜け出そうとするっていうのはアスリートかって言いたくなる。
「いや、息抜きに書くのは全く別の物なんだ。レポートが書けない時は小説を書いたりしてる」
「えっ、なにそれ」
「実は今もレポートの裏で息抜きファイルは開いてる。まあ、レポートが書けてるからそっちは動いてないけど」
つまり、スランプ脱却とか息抜きに同じジャンルの別のことをやるということだったらしい。だけど、あたしには多分向かないやり方だと思う。レポートが書けないからって映画の台本を書こうとは思えないし。
「そう言えばちーも言ってたなあ。自由形で上手く行かなくなったら背泳ぎとか別の泳ぎするって」
「へー、やっぱスポーツでもあるんだなそういうのって」
「むしろスランプとかってスポーツの方が悩みそうじゃない?」
「確かに」
「でもやっぱりあたしは別のことをして息抜きしたいなー」
「今俺と喋ってんだから十分息抜きになってんだろ」
「確かに」
改めて白いワード画面を見てみると、やっぱり真っ白い。だめか。勝手にレポートになってくれないか。そして脇の本に目を落とす。うん、だめ。何も降ってこない。だけど今までより閉塞感がないって言うか、確かに気は晴れてるんだ。
だけど、隣からの音が止まっている。朝霞クンの手が、止まっている。珍しい物を見た気がする。もしかして、あたしと喋ったから? そして朝霞クンは言う。俺もまだまだだな、と。
「今こそ裏ファイルの出番だよ!」
「いや、そういう気分でもないんだ。しょうがない、落書きでもするか」
シャーペンを手に取り、朝霞クンはその席から見える風景をルーズリーフに描き始めた。って言うか絵も上手いとか何それ。そういう神様がついてるんじゃないの本当に。
「朝霞クン、しゃっかしゃっかうるさい! 陰影は後で付けて! 八つ当たりしますよ!」
「あ、悪い。つか八つ当たりはすんな」
end.
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がんばれふしみん。あと、やっぱり書くことのことに関しては聞く人選を間違えている気がする
そして物を書く裏で別の物を書いて息抜きする朝霞Pである。それでもだめなら絵を描くよ! これが家だったら映画を見始めてたかもしれない。
ふしみんはなかなかするすると筆が動くってことがなさそうな印象。苦しみながらもなんとか生み出してるっていう雰囲気がある
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