2018(02)

■闇夜の救世主

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「定例会でーす」

 星港市内某所ビル6階中会議室、今日も今日とて定例会だ。ただ、こう、あれだよ。

「圭斗、ちょっとやる気なさすぎないか」
「わかるだろ、「さーてと、地球救っちゃいますか」的な」
「朝霞、わかる?」
「いや、全然。カズ、要約してくれ」
「多分、「皆はいいよなー夏合宿楽しみーとか言っていつも通りのIFで過ごすんだから。まったく、滅亡を阻止する僕の身にもなれっつーの。ま、スポンサーの機嫌損ねるワケにもいかねーし仕方ねーか……さーてと、IF、保っちゃいますか」――的なことだと思う」
「いや、全然意味わかんね」
「ん、僕直々に要約すると、何で向舞祭のスタッフが――」
「わー! 圭斗それお前少なくともこの建物内で言ったら消されるヤツー!」

 ここにミキサーがあれば間違いなく放送禁止用語とかの上に被せるSE流してましたよね! 「パキューン!」とか「ピー」って入れてた。まあ、圭斗のやる気のなさに大人の事情が関わっていることだけはみんな理解してくれたみたいでよかった!
 ところで、向島インターフェイス放送委員会という団体にはスポンサーと言うか身元保証人と言うか、そんなような企業サマがバックにいるんだ。主にスキー場DJをやってた頃にお世話になってて、最近はそこまでガッツリ絡んでないけど。
 この会議室もその企業サマが入ってるフロアの部屋で、始める前と終わった後には圭斗が企業サマに挨拶をしてる。ちなみにインターフェイスの機材もこのビルで保管してもらっているし、何かと世話になってるんだね。
 で、8月の盆時に向島エリア一帯で行われるのが向舞祭という祭りだ。エリア内に数か所設けられたステージで踊る競技会みたいな感じ。いわゆるヨサコイ系だね。この企業サマはその向舞祭のスポンサーでもある。

「――というワケで、僕たちは半強制的に向舞祭の学生スタッフとしてMC(司会)とPA(音響)に参加することになったワケだけれども。ここまで何かある人」
「はい」
「ん、珍しいね大石君。何かな」
「この向舞祭のスタッフ参加って、報酬は出ますか」
「またちーちゃん直球! 俺さっき必死扱いて圭斗止めた意味が無くなった!」
「でもさ、死活問題なんだもん。向舞祭関係でバイトに入れなくなったら学費が払えなくなっちゃうもん」
「あー……まあちーちゃんはガチで死活問題だからな~……」

 ちーちゃんは兄一人弟一人の生活だから、生活を圧迫しないように学費は自分でも結構出してるそうだ。で、バイト先の繁忙期と大学の長期休暇が重なるからそこで主に稼いでるそうなんだけど、それが潰れれば確かにヤバい。少しでも稼ぎたいと思うのは当然だ。

「圭斗、そこんとこどう?」
「今のところ完全ボランティア、つまり無賃労働だという風に聞いてます。だからインターフェイスの誰に言っても出て来ないだろうし定例会でやる、と」
「ですよねー」
「ただ、僕もそれに関してはふざけんなという気持ちでね。誰がやりがいだけでこのクソ暑い中動く? プロやその職の人に金は出せて学生に報酬はなしとはあまりに非情過ぎないかと。その件に関しては短期バイト扱いにしてくれと交渉するので経過を待ってください」
「圭斗、ありがとう! 頑張って!」
「それなら俺も応援するぞ。頑張れ圭斗、あわよくばレッドブル代に」
「世の中お金だしね! 圭斗ファイト!」

 ……って言うかみんなの圭斗を応援する熱と言うか圧がガチすぎる。みんな思うことは思ってたんだな……いや、俺も思ってたけどさ。大人の事情だからって諦めるしかないのかなーって思ってたけど、交渉するとかさすが議長だぜ!
 何かもうこういうときの議長と言うか、企業サマだとかエライ人と話すときには我らが圭斗なんだよなあ。仮に放送の技術が自由過ぎても、圧倒的な政治力とかリーダーシップでここまでのし上がって来たっていうのは頷ける。

「ちなみに向島エリアの最低賃金は871円だからね。最低でもそのラインは勝ち取るよ」
「おー!」
「……メーデーかな?」
「でも伊東、考えてみろ。ボランティアの意味を履き違えてもらっちゃ困るんだよ。まるでボランティアというのは無賃でいいように働く道具だとでも言いたげな」
「わー! 圭斗お前それこれ以上ここで言うな? インターフェイスが消されるぞ」
「ん、僕が議長をやっている以上、そう簡単には消させないよ。僕を誰だと思ってるんだい?」
「インターフェイスを統べる帝王・松岡圭斗様ですー……」

 圭斗の中には何かあるんだろう、そこまで言い切れる自信に繋がる根拠みたいな物が。そこまで言われたら俺も圭斗に乗っかるしかないし、これ以上は止めない。委員長として、腹を括らないと。

「――というワケだから、交渉期日を決めるための交渉をしてくるよ。僕がいない間の議事進行は伊東、頼んだ」
「ええー……急ー……」
「ん、僕の中では急じゃないんだよ。大石君から言われる前から考えて、決めていたことだからね」

 そしてみんなの声援を背に圭斗はファイルを月夜に煌めかせ企業サマの部屋へと消えて行った。


end.


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圭斗さんが圭斗さんしているザ・松岡圭斗回。そしてちーちゃんが珍しく直球発言です。
今回の定例会3年生は全員ブレがないような気がする。お賃金をいただけたらレッドブル代にしたい人やら、世の中お金!と言い切る子やら。
いち氏は委員長としてその辺の責任問題もあるのでなかなかわーっと乗っていくだけではない立場なんだけども、うん、がんばれ

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