2018(02)

■UNG Remind

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「ところで圭斗」
「ん、どうしたんだい?」
「お前、夏になるとウナギウナギうるさいけど、今年の丑の日っていつなんだ?」

 そう訊ねた瞬間、圭斗の動きが固まった。
 圭斗はウナギに対するこだわりがとても強い。と言うか何に対しても割と形から入りたがる方だ。圭斗はウナギの名産地である山羽エリア湖西市の出身で、去年もその前も土用の丑の日には地元に帰って天然もののウナギを食べに帰っていたらしい。
 うちにはとても理解が出来ないんだけど、圭斗にとっては土用の丑の日に鰻を食べに帰るというイベントは大事なことなんだろう。って言うか絶滅危惧種なのにめっちゃ廃棄されてるみたいな話も聞くし、いっそたれごはんで十分なんだけど。

「何ということだ! 僕としたことがこんなにも重大な日を忘れるだなんて…!」
「えっ、忘れてたのか!?」
「今年の丑の日がいつかって? 先週の金曜日だよ…! 何故僕は! そんな日に鰻ではなくよりにもよってうまい棒を53本も食べて苦しんでいたんだ!」
「ああー……」

 ちなみに、村井おじちゃんが持って来た案件、うまい棒レースは圭斗が53本を食べて優勝した。うちは51本まで食べたんだけど、イチかバチか食べた納豆味が実質カラシ味でツンと来たのに耐えきれず無意識にお茶を飲んで終戦した。
 その日の圭斗は、レース後に行ったステーキハウスでもサラダバーのサラダだけを食べていたように思う。何と言うか、得た物はしょうもない称号と賞金2000円だけど、その代わりに失った物が大きすぎたという感じだ。

「何と言うか残念としか言いようがないな」
「ま、まあ、別に丑の日じゃなくても鰻はあるから……」
「お前がそこまで強がりを隠さないのも珍しいな」
「素で忘れてたのが本当にショックなんだよ」
「あっ、もしかしたら丑の日が2回あるパターンもないか? たまにそんな年があるだろ」
「残念ながら、今年はこの1回きりなんだよ」
「残念」

 柄にもなく圭斗がしょぼくれている。まあ、圭斗は常に自信過剰でドヤ感が凄まじいからちょっと大人しいくらいでちょうどいい。そこまで丑の日に鰻を食べたかったのか。まあ、店側も気合が入るだろうしなあ。よくわかんないけど。

「おはようございます」
「あ、おはようノサカ」
「やあ」
「あれ。圭斗先輩の帝王オーラと言うか覇気のような物がいつもよりも薄い気が。もしかして低気圧でも近付いていますか?」
「いや、コイツはアレだ。毎年土用の丑の日に地元に帰ってウナギを食べてるだろ」
「そうですね。極上のものをいただかれるんですよね」
「今年はうまい棒レースでそれが潰れたどころか丑の日のことをすっかり忘れてたとか言ってしょぼくれてるだけだから気にするな」
「食べるタイミングを逸した時のお気持ちはお察しします…!」

 ただ、ノサカは海産物とか水産物に苦手な物が多くてウナギも食べられないから圭斗の苦しみとこだわりに対する理解は薄い。ただ、うちのよく言う「たれごはんが食べたい」に関しては最上級の理解者だ。と言うかノサカがたれごはんを本気で食べたら炊飯器ごとやられそうだ。

「あれ? ですが丑の日はこれからでは?」
「野坂、お前今何て言った」
「丑の日は確かこれからだったと思いますよ」
「ナ、ナンダッテー!?」
「圭斗、それノサカのヤツな」
「いえ、圭斗先輩に使っていただけるならむしろ本望ですが、とにかくこーたがバイトでひーこら言ってるのを聞かされました。鰻は今週で終わるけどお中元包むのに忙しいし夏なんか無くなれ的なことを叫んでいましたが」

 スーパーでバイトをしているカンザキがそう言っているのなら信憑性が割と高い。スーパーは暦の行事を全て舐めるように売り場が展開する。丑の日も例に漏れずだ。そんな現場にいるカンザキが「鰻は今週末」と言っているということは。

「圭斗、もう1回ちゃんとカレンダーを見た方がいいんじゃないか?」
「ん、そうしようか?」
「圭斗先輩、いかがでしょう」

 カレンダーを見れば、今年の土用の丑の日は「7/20」とある。

「……今週末だ! よっし! これで勝てる!」
「圭斗先輩が復活された!」
「ありがとう野坂、お前のおかげで僕は救われたよ」
「いえ、お役に立ててとても嬉しく思います」
「何よりうまい棒レースなんかですっぽかしたという事実が消えて嬉しい」

 これで本当に先週の金曜日だったら圭斗の村井サンへの恨み節が延々と聞かれたんだろうな。下手すれば1年経っても言ってたぞこの調子なら。何にせよ、自信過剰でドヤ感の凄まじい圭斗が帰って来た。ノサカも帝王の帰還だとか何とかってウルサイし、もうちょっと静かでもよかったな。

「え。つまり金曜日はウナギ休みみたいなことか?」
「さすがにサークルには間に合うように帰って来るよ」
「そこまでするかー…?」
「するよ。当然だね」


end.


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書きながら素で丑の日を間違えていたことに気付き、急遽勘違いルートに修正したヤツ。
ここ最近は丑の日が2回ある年がちょこちょこあったような気がしましたが、今年は1回だけのようですね。
確かにそんだけ気合入れる行事がうまい棒レースで潰れたとわかったらショックやわな

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