2018(02)

■インクレディブルデラックス!

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「こんにちはー、コンです」
「チータでーす」

 インターホンを押してしばし。上がってと扉が開けば、お邪魔しますとしっかりと挨拶をして部屋へ上がらせてもらう。お世辞にも広いとは言えないアパートだ。向島大学に程近い、6畳ひと間の安いアパート、レモンハウス。
 星ヶ丘の放送部は丸の池ステージが近付いていてひーこら言ってるワケだけど、それ以外のこともやりつつだ。俺とカンのスケジュールは本当に分刻み。部活、バンド、ゲーム、サッカー、あとテスト。いろいろ忙しい。

「ソルももう来てるよ」
「本当ですか。ソルさんこんにちは」
「こんちはっす!」
「よう」
「すみませんお待たせして」
「いや、コイツに比べたらお前らは可愛い」

 整った顔に、シルバーアッシュのアップバングスタイルが男前臭しかしないこの人がソルさん。俺とカンにアイスティーを出してくれているのが、ここの家主で優男風の雰囲気イケメン、教授ことプロさん。
 俺とカンは多趣味な学生だし、ソルさんは26歳の社会人。プロさんは25歳の大学院生。一見接点のなさそうなこの集まりは、SDXというゲーム実況グループだ。たまたまネットで出会って、そのまま意気投合して現在に至ってる感じ。
 ゲーム実況って言っても(俺とカンは)特別魅せるプレイが出来るでもなく、ぎゃあぎゃあ言いながら楽しく遊んでるのが少しウケているというような感じ。それと、独自のルールを設けて遊ぶ企画が受け入れられてるのかな。

「今日はマリカーやるんすよね」
「バトルゲームな」

 やるゲームは本当にその時の気分で決まるような感じ。オンラインゲームとかPCゲームが多いかな。たまに収録関係なく遊ぶこともあって、今日はそういう回だったりする。何に使えるかわからないし、一応収録はするけど。

「あ、そうそうコンちゃんチータ、今日のソルすっごい機嫌悪いから」
「やだー! 絶対俺無慈悲に殺されるヤツじゃんかー!」
「ええと……参考までに聞きますけどソルさん、それはプロさんの関係でもなくオフでの出来事が原因ですか?」
「まあ、会社でな。いろいろあンだ。昨日、人材のクソ野郎がバイトの学生に手ェ出しやがってよ。奴はシメたしクビだけど朝の挨拶もしやがらねえわ勤務態度もわりィわマジで害悪でしかねえクズだったなープロみたいだなーと思って腹立ってんだよ」
「と言うか、ソルが普通に会社員やってるとか信じられないよね。どう見てもその筋の構成員なのに」
「あァ!? てめェからぶっ潰してやろうか!」

 プロさん曰く、ソルさんは星港の街では一目置かれたヤンキーだったそうだ。今もたまに昔の血が沸々と蘇ることがあるそうだよ、とは聞いている。現実世界で人を殴ったり殺したりしない分、殺し合いの出来るゲームではイキイキすると。
 根っからのインドア派で引き籠もりにも近いプロさんと元ヤンのソルさんがどうやって知り合ったのかも謎だけど、とにかくこの2人は少し古い間柄らしい。ちなみにプロさんはサードパーソン・シューティングゲームが得意だ。

「とりあえず、電源入れますか?」
「だな」
「あ、つーかプロお前、サーバーメンテちゃんと終わってんだろうな」
「もちろん」

 SDXのゲーム用サーバーはプロさんがこの部屋で管理してくれている。さすが情報系の院生だ。いや、俺も情報系の学生ではあるけど、さすがに自宅にサーバーを置くことはまだやってないし。

「ゼミと部活の後輩クンがね、しーっかりやってくれたよ」
「プロさん安定にクズいっすね」
「ノンノンチータ、クズは褒め言葉だよ。だけど、クズ人間収集機みたいな人って本当にいてね。後輩の彼は僕以外のクズからも利用されていてね、ああ、善人ってかわいそうだなって」
「うわー……」
「ちょっとコンちゃんドン引きしないで! 僕はちゃんとSDXの動画収入の中から彼にもささやかながらに謝礼を支払ってるんだよ!」
「あ、そうだったんですか」

 あ、ちなみにSDXはささやかながらに動画で収入も得られる程度には見てもらっているそうだし、ネットをちょっと漁ればファンアート的な物も出て来るそうだ。俺は怖くて見れてないけど、ソルさんがすげえ殺意の塊みたいに描かれているとはプロさん談。まあ間違ってないな。

「じゃ、改めて電源入れるか」
「そうですね、やりましょう」
「そんじゃ、録音開始すっし、3分後にスタートで」
「はい」
「あ、プロさんアイスティーおかわりください」
「はいはい、仕方ないね」

 今はまだ年長組に対しては丁寧語で喋っているけど、収録が始まればそんなことは関係ない。俺は比較的冷静なキャラクターとして演出されているけどガンガンタメ語が出て来るし、煽りなんかも茶飯事だ。

「さあ、始まりましたSDXレース大会ー! 司会進行は教授でお送りします、イエーイ」
「オラプロてめェ俺にも紅茶入れて来いよ、ガムシロもな」
「えっ、ソルそのナリでガムシロって」
「チータくぅん、お前から血祭りに上げるかー?」
「ぎゃー!」


end.


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去年USDXとしてチラッと出て来たゲーム実況グループ、バネ・レイ加入前はSDXという名前で活動をしているようです。
と言うか確かにスガPとカンDって多趣味だし今すっごい忙しいんだろうなあ……部活サッカーバンドゲームって。ところでスガカンっていつからの付き合いなんだろう
プロ氏の世を欺く仮の姿の話なんかもやりたいですね。どんなクズなんだろうか

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