2016(03)
■興味本位と実地学習
++++
さて、やってきましたのは会員制倉庫型量販店。つか広い。デカい。これがアメリカンなのか。やってくるや否や会員カードの提示を求められる。俺と慧梨夏は彼女の後ろでお連れ様として歩く。アヤさんすげえ。さすがだ!
「ありがとーたまちゃん車出してくれて!」
「ううん、こっちこそカズまで連れてきてゴメンね!」
「そんな水臭いこと言わないで! たまちゃんカップル目の保養だから~! 私のことは空気だと思って! いちゃいちゃして!」
「いちゃいちゃしろって言われて出来るほど図太くないよ!」
今日はアヤさんの買い物に慧梨夏が付き合っているという構図だ。俺は興味本位でついてきた。慧梨夏曰く、アヤさんはまとめ買いのプロらしい。倹約術の鬼だっけ。夢が崩れるけど、勉強になると言われればついてくるしかなかった。
デカイ紙コップに何十円のジュースを入れて、それを飲みながら店内を回れるらしい。アメリカンだぜ! 俺と慧梨夏が普通のジュースの中、アヤさんはウーロン茶な辺りが意識を感じさせるぜ!
「まずはナッツでしょ」
「買うねー」
アヤさんはさっそく何キロもあるナッツをカートに乗せた。毎日食べるものだし乾き物だからたくさんあっても大丈夫とのこと。それから、シャンプーや石鹸といった日用品。普通のスーパーやドラッグストアの物より容器自体がデカイのに安い。
よくよく見てみれば、すれ違う人たちがカートに乗せている物もいちいち量が多いし、デカイのだ。大量に仕入れたり、プライベートブランドで安くしてるっていうのは理解できるけど、量が理解できない。
「アヤちゃん水回りのコーナー見る?」
「んー、私はいいや」
「慧梨夏ストップ! キッチンハイターが安い! デカイ! おー、わっ、柔軟剤も! あー、でも柔軟剤はデカくてもなー、いろいろ使いたいしなー。柔軟剤は保留だな。でもキッチンハイターと食器用洗剤は買ってかなきゃ」
「たまちゃん、彼氏さんかわいい」
「でしょ」
「本当にいつでもお嫁さんに行けるね」
「旦那候補がもらってくれないのよなかなかー」
俺が台所用洗剤や洗濯用洗剤たちに興奮している間、女子が怖い話をしていたのは聞こえなかったことにしよう。実際、スポンジやハンディモップだって欲しいと思ってたのが安くって感動してたし。
アヤさんは他にギリシャヨーグルトやフルーツグラノーラ、それに業務用の粉末スープなんかをぽいぽいとカートに入れていった。選ぶ物がいちいちおしゃれすぎる。さすがだぜ! ちなみに、粉末スープにもおからパウダーを入れているらしい。
「あ、ピザだ。おっきいね。ピザデリーのLサイズより大きいよ」
「でもピザはわざわざここで買わなくたってピザデリーに電話でいいわけだし」
「私買います!」
「えっ、アヤさんこれ一人で食べるの?」
「これをスティック状に切り分けて、冷凍保存しとくんですよ。食べたいときにチンして食べるんです。あっ、たまちゃんラップ! ラップ買うの忘れてた!」
「じゃあさっきのトコに戻らなきゃね」
「ううん、私行ってくる! ちょっと待ってて!」
パタパタと駆けていったアヤさんの背中を見送りつつ、慧梨夏がぽつりとつぶやく。アヤさんはデカイ物を買って小分けに保存するのが上手いのだと。冷蔵庫の中がいい意味で大変なことになっているそうだ。
こういう店でデカイ塊肉などを買って冷凍。そうやって普段の買い物で使うお金を極力減らす。節約で生まれたお金は先輩を探すための旅費や趣味のコスプレにガンガン投入するんだとか。よーく考えよう、お金は大事だよ。
「はー、お待たせ。続き回ろっ」
店をぐるぐる回っていると、サンタクロースが担いでそうな大きさの袋いっぱいに詰められたテーブルロールやマフィンなんかが並んでいた。テーブルロールはともかくマフィンは自分で作れるから、と小麦粉などの材料を買うことで解決。
もう少し歩くと酒が所狭しと置かれたコーナー。うん、ここは需要のある人を何人も知ってる。無制限飲みの前なんかにゴティかハナちゃんに頼んで連れてきてもらうのがいいかもしれない。そもそも、俺はまだこの店の会員じゃなかった。
「たまちゃんありがとー、こんだけ買い物するにはやっぱ車ないとさー」
「ううん、うちらも楽しかったし買い物できたから。入れてくれてありがとー」
「うん、ホントに。アヤさんありがとうございました」
「私これから買い物したものを保存しないと」
「ぶっちゃけ保存するところを見てたいよね。勉強したい」
「あっ、それならどっちみちたまちゃんにうちまで寄ってもらいますし、カズさんも手伝ってもらえますか?」
「よろこんで!」
そう、買い物はゴールじゃなくて、買い物してからが本番。なるべく鮮度を落とさないとか、次に使いやすい保存の仕方を学んで帰らなくては。うーん、俺もこの店の会員になっとくべきか?
end.
++++
いち氏と慧梨夏がすんでいるところからこのお店までは結構な距離があると思われるので、結構な遠出、遠征ですな。カナコとのお買い物である。
いち氏はカナコに結構な夢を見ているようだけど、情報センターでの姿を見たら……いや、慧梨夏の彼氏だし何を見ても今更平気だな、うん、平気だ。
で、小分けとか冷凍保存の仕方が上手になったいち氏には死角がまた小さくなったワケだけど、それを自分の部屋でいつ生かすのかっていう
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さて、やってきましたのは会員制倉庫型量販店。つか広い。デカい。これがアメリカンなのか。やってくるや否や会員カードの提示を求められる。俺と慧梨夏は彼女の後ろでお連れ様として歩く。アヤさんすげえ。さすがだ!
「ありがとーたまちゃん車出してくれて!」
「ううん、こっちこそカズまで連れてきてゴメンね!」
「そんな水臭いこと言わないで! たまちゃんカップル目の保養だから~! 私のことは空気だと思って! いちゃいちゃして!」
「いちゃいちゃしろって言われて出来るほど図太くないよ!」
今日はアヤさんの買い物に慧梨夏が付き合っているという構図だ。俺は興味本位でついてきた。慧梨夏曰く、アヤさんはまとめ買いのプロらしい。倹約術の鬼だっけ。夢が崩れるけど、勉強になると言われればついてくるしかなかった。
デカイ紙コップに何十円のジュースを入れて、それを飲みながら店内を回れるらしい。アメリカンだぜ! 俺と慧梨夏が普通のジュースの中、アヤさんはウーロン茶な辺りが意識を感じさせるぜ!
「まずはナッツでしょ」
「買うねー」
アヤさんはさっそく何キロもあるナッツをカートに乗せた。毎日食べるものだし乾き物だからたくさんあっても大丈夫とのこと。それから、シャンプーや石鹸といった日用品。普通のスーパーやドラッグストアの物より容器自体がデカイのに安い。
よくよく見てみれば、すれ違う人たちがカートに乗せている物もいちいち量が多いし、デカイのだ。大量に仕入れたり、プライベートブランドで安くしてるっていうのは理解できるけど、量が理解できない。
「アヤちゃん水回りのコーナー見る?」
「んー、私はいいや」
「慧梨夏ストップ! キッチンハイターが安い! デカイ! おー、わっ、柔軟剤も! あー、でも柔軟剤はデカくてもなー、いろいろ使いたいしなー。柔軟剤は保留だな。でもキッチンハイターと食器用洗剤は買ってかなきゃ」
「たまちゃん、彼氏さんかわいい」
「でしょ」
「本当にいつでもお嫁さんに行けるね」
「旦那候補がもらってくれないのよなかなかー」
俺が台所用洗剤や洗濯用洗剤たちに興奮している間、女子が怖い話をしていたのは聞こえなかったことにしよう。実際、スポンジやハンディモップだって欲しいと思ってたのが安くって感動してたし。
アヤさんは他にギリシャヨーグルトやフルーツグラノーラ、それに業務用の粉末スープなんかをぽいぽいとカートに入れていった。選ぶ物がいちいちおしゃれすぎる。さすがだぜ! ちなみに、粉末スープにもおからパウダーを入れているらしい。
「あ、ピザだ。おっきいね。ピザデリーのLサイズより大きいよ」
「でもピザはわざわざここで買わなくたってピザデリーに電話でいいわけだし」
「私買います!」
「えっ、アヤさんこれ一人で食べるの?」
「これをスティック状に切り分けて、冷凍保存しとくんですよ。食べたいときにチンして食べるんです。あっ、たまちゃんラップ! ラップ買うの忘れてた!」
「じゃあさっきのトコに戻らなきゃね」
「ううん、私行ってくる! ちょっと待ってて!」
パタパタと駆けていったアヤさんの背中を見送りつつ、慧梨夏がぽつりとつぶやく。アヤさんはデカイ物を買って小分けに保存するのが上手いのだと。冷蔵庫の中がいい意味で大変なことになっているそうだ。
こういう店でデカイ塊肉などを買って冷凍。そうやって普段の買い物で使うお金を極力減らす。節約で生まれたお金は先輩を探すための旅費や趣味のコスプレにガンガン投入するんだとか。よーく考えよう、お金は大事だよ。
「はー、お待たせ。続き回ろっ」
店をぐるぐる回っていると、サンタクロースが担いでそうな大きさの袋いっぱいに詰められたテーブルロールやマフィンなんかが並んでいた。テーブルロールはともかくマフィンは自分で作れるから、と小麦粉などの材料を買うことで解決。
もう少し歩くと酒が所狭しと置かれたコーナー。うん、ここは需要のある人を何人も知ってる。無制限飲みの前なんかにゴティかハナちゃんに頼んで連れてきてもらうのがいいかもしれない。そもそも、俺はまだこの店の会員じゃなかった。
「たまちゃんありがとー、こんだけ買い物するにはやっぱ車ないとさー」
「ううん、うちらも楽しかったし買い物できたから。入れてくれてありがとー」
「うん、ホントに。アヤさんありがとうございました」
「私これから買い物したものを保存しないと」
「ぶっちゃけ保存するところを見てたいよね。勉強したい」
「あっ、それならどっちみちたまちゃんにうちまで寄ってもらいますし、カズさんも手伝ってもらえますか?」
「よろこんで!」
そう、買い物はゴールじゃなくて、買い物してからが本番。なるべく鮮度を落とさないとか、次に使いやすい保存の仕方を学んで帰らなくては。うーん、俺もこの店の会員になっとくべきか?
end.
++++
いち氏と慧梨夏がすんでいるところからこのお店までは結構な距離があると思われるので、結構な遠出、遠征ですな。カナコとのお買い物である。
いち氏はカナコに結構な夢を見ているようだけど、情報センターでの姿を見たら……いや、慧梨夏の彼氏だし何を見ても今更平気だな、うん、平気だ。
で、小分けとか冷凍保存の仕方が上手になったいち氏には死角がまた小さくなったワケだけど、それを自分の部屋でいつ生かすのかっていう
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