2018(02)
■食事はそれぞれお好みで
++++
「たまにはお好み焼きが食いてえな」
「いいっすね!」
真上の部屋に上がりこんで、この後の飯をどうしようか考えていた時のことだ。自分でもどうしてそう思ったのかはわからねえが、唐突にお好み焼きが食いたいと思った。お好み焼きにビール。最高じゃねえか。まあ、最悪ビールはなくてもいいが、ある方がいいだろう。
さすがに店で食うような鉄板や火力をこのアパートに期待するのは酷だが、しょぼいコンロにフライパンでも最低限のモノにはなるだろう。Lもこの案には賛成のようだから、夕飯はお好み焼きに決定だ。
ただ、少しの違和感があった。俺がLの部屋に上がりこんで居座るとか半ば強制的に拉致って飯に行くとか、そういうときの「飯食うぞ」に対する第一声は大体「マジすか」みたいなあまりいい反応ではない。それがどうした。
お好み焼きに対しては「いいっすね!」と、飯の話に対して見せるげんなりとした様子はどこへやら。コイツがそこまでお好み焼きが好きだという話も聞かねえし、もしかするとコイツも唐突にそういう気分だったのか。まあ、コイツの気分に関係なく俺が食いたいと思えば食うし食わせるんだけども。
「どうした、お前がそんな食うことに食いついて来るとか」
「確認ですけど、ここで食うんすよね」
「だな。ここで焼いてここで食う」
「ならオッケーっす」
「なんだ、お前そんなにお好み焼きが好きだったのか」
「好きって言うか、お好み焼きって、自分で焼くなら大きさは自由に出来るじゃないすか。食える分だけ焼けばいいんでありがたいと言うか画期的と言うか」
俺から見れば、Lは本当に食いやがらねえ。たまにバイト上がりにSサイズのピザを差し入れに焼いて帰ることもあるが、それすら3分の2くらいしか食わずに「あと先輩どうぞ」っつって人に投げやがる。
胃の容量もそこまでないんだろうが、食うことに特段執着しねえのだ。果林みたいな食うことに対する執着が異次元の奴がいるから余計にコイツの食に対する関心の薄さには引いてしまう。お前それでよく生きてるなと。
「店のお好み焼きは量が多いっすからね。家でやるのが好きなだけ出来て気が楽っす」
「つってもお前の量で一人分やる方がめんどくせえだろ」
「だから餃子やるときも高崎先輩に声を掛けるんじゃないすか」
「人をいいように利用しやがって」
「先輩も俺をいいように飯食うのに付き合わすんだからおあいこじゃないすか」
俺とLは何だかんだで持ちつ持たれつなのだろう。俺は1人よりも誰かと飯を食いたい方だし、酒を片手にふらりと上に乗り込む。コイツは自分一人で食うには多すぎる物を俺に食わせてバランスを取ろうとする。つか餃子なら作り過ぎても冷凍保存出来るじゃねえかと今思った。
「まあ、何だ。お好み焼きの材料だな。買い出しに行かなきゃねえんだ」
「あー、買い物からすね。何が要りますっけ。粉に、キャベツに、具はどうします? 肉とかシーフードとか」
「ベタに肉じゃねえか? 豚バラとか」
「そっすね。あと卵すか」
「卵はうちにある。ついでにベーコンも焼くか」
「いいっすね。薬味とトッピングどうします?」
「ネギがありゃいいだろ。それにかつお節と青のりは用意しておきたい。あと天かすに……」
「でも1回のお好み焼きのためにトッピング買って、その後使います?」
「ンなモン適当にぶちまけりゃいいんだよ。もやしにかつお節、焼きそばに青のり、天かすはうどんにぶちこめば問題ねえ」
「さすがっす」
調味料はそれぞれの家にあるし、山芋を擦って入れるみたいな凝ったことはわざわざしねえ。そういう高度なことは伊東クラスの奴がやる物であって、俺やLみたいな奴はそれだけでふっくら焼けるようなお好み焼きの粉を使っていればいい。
買い物のリストは何となく形になった。あとはそれに「ビール」を書き足してエコバッグ等々の持ち物を確認、出掛ける準備をするのだ。ソース系の粉もんとビールとか、最高の組み合わせじゃねえか。今から楽しみでたまらない。
「そしたら行きますか」
「あ、ところでL、お前出掛ける前に炊飯器ちゃんとセットしとけよ」
「えっ、飯食うんすか!?」
「当たり前だろ」
「ええー……お好み焼きって主食じゃないんすか」
「おかずだろ」
「まあいいんすけど」
そう言ってLは炊飯器から釜を取り出し、米の用意を始めた。2合くらいでいいっすよねと。
「お好み焼きと言や、今度高木に作らせてみてもいいかもしれないな」
「準備出来たっす。あとさり気に恐ろしいこと考えてません?」
「気の所為だろ」
end.
++++
毎度お馴染みムギツーの夕餉です。だけど高崎とLのご飯が餃子じゃないとはまた珍しいね
Lはご飯を食べる量が少なめです。高崎はいっぱい食べるので量を食べないというのはあまり理解が出来ないようです。
お好み焼きだと量が調整出来て好きなように食べられるのがいいようですね。
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「たまにはお好み焼きが食いてえな」
「いいっすね!」
真上の部屋に上がりこんで、この後の飯をどうしようか考えていた時のことだ。自分でもどうしてそう思ったのかはわからねえが、唐突にお好み焼きが食いたいと思った。お好み焼きにビール。最高じゃねえか。まあ、最悪ビールはなくてもいいが、ある方がいいだろう。
さすがに店で食うような鉄板や火力をこのアパートに期待するのは酷だが、しょぼいコンロにフライパンでも最低限のモノにはなるだろう。Lもこの案には賛成のようだから、夕飯はお好み焼きに決定だ。
ただ、少しの違和感があった。俺がLの部屋に上がりこんで居座るとか半ば強制的に拉致って飯に行くとか、そういうときの「飯食うぞ」に対する第一声は大体「マジすか」みたいなあまりいい反応ではない。それがどうした。
お好み焼きに対しては「いいっすね!」と、飯の話に対して見せるげんなりとした様子はどこへやら。コイツがそこまでお好み焼きが好きだという話も聞かねえし、もしかするとコイツも唐突にそういう気分だったのか。まあ、コイツの気分に関係なく俺が食いたいと思えば食うし食わせるんだけども。
「どうした、お前がそんな食うことに食いついて来るとか」
「確認ですけど、ここで食うんすよね」
「だな。ここで焼いてここで食う」
「ならオッケーっす」
「なんだ、お前そんなにお好み焼きが好きだったのか」
「好きって言うか、お好み焼きって、自分で焼くなら大きさは自由に出来るじゃないすか。食える分だけ焼けばいいんでありがたいと言うか画期的と言うか」
俺から見れば、Lは本当に食いやがらねえ。たまにバイト上がりにSサイズのピザを差し入れに焼いて帰ることもあるが、それすら3分の2くらいしか食わずに「あと先輩どうぞ」っつって人に投げやがる。
胃の容量もそこまでないんだろうが、食うことに特段執着しねえのだ。果林みたいな食うことに対する執着が異次元の奴がいるから余計にコイツの食に対する関心の薄さには引いてしまう。お前それでよく生きてるなと。
「店のお好み焼きは量が多いっすからね。家でやるのが好きなだけ出来て気が楽っす」
「つってもお前の量で一人分やる方がめんどくせえだろ」
「だから餃子やるときも高崎先輩に声を掛けるんじゃないすか」
「人をいいように利用しやがって」
「先輩も俺をいいように飯食うのに付き合わすんだからおあいこじゃないすか」
俺とLは何だかんだで持ちつ持たれつなのだろう。俺は1人よりも誰かと飯を食いたい方だし、酒を片手にふらりと上に乗り込む。コイツは自分一人で食うには多すぎる物を俺に食わせてバランスを取ろうとする。つか餃子なら作り過ぎても冷凍保存出来るじゃねえかと今思った。
「まあ、何だ。お好み焼きの材料だな。買い出しに行かなきゃねえんだ」
「あー、買い物からすね。何が要りますっけ。粉に、キャベツに、具はどうします? 肉とかシーフードとか」
「ベタに肉じゃねえか? 豚バラとか」
「そっすね。あと卵すか」
「卵はうちにある。ついでにベーコンも焼くか」
「いいっすね。薬味とトッピングどうします?」
「ネギがありゃいいだろ。それにかつお節と青のりは用意しておきたい。あと天かすに……」
「でも1回のお好み焼きのためにトッピング買って、その後使います?」
「ンなモン適当にぶちまけりゃいいんだよ。もやしにかつお節、焼きそばに青のり、天かすはうどんにぶちこめば問題ねえ」
「さすがっす」
調味料はそれぞれの家にあるし、山芋を擦って入れるみたいな凝ったことはわざわざしねえ。そういう高度なことは伊東クラスの奴がやる物であって、俺やLみたいな奴はそれだけでふっくら焼けるようなお好み焼きの粉を使っていればいい。
買い物のリストは何となく形になった。あとはそれに「ビール」を書き足してエコバッグ等々の持ち物を確認、出掛ける準備をするのだ。ソース系の粉もんとビールとか、最高の組み合わせじゃねえか。今から楽しみでたまらない。
「そしたら行きますか」
「あ、ところでL、お前出掛ける前に炊飯器ちゃんとセットしとけよ」
「えっ、飯食うんすか!?」
「当たり前だろ」
「ええー……お好み焼きって主食じゃないんすか」
「おかずだろ」
「まあいいんすけど」
そう言ってLは炊飯器から釜を取り出し、米の用意を始めた。2合くらいでいいっすよねと。
「お好み焼きと言や、今度高木に作らせてみてもいいかもしれないな」
「準備出来たっす。あとさり気に恐ろしいこと考えてません?」
「気の所為だろ」
end.
++++
毎度お馴染みムギツーの夕餉です。だけど高崎とLのご飯が餃子じゃないとはまた珍しいね
Lはご飯を食べる量が少なめです。高崎はいっぱい食べるので量を食べないというのはあまり理解が出来ないようです。
お好み焼きだと量が調整出来て好きなように食べられるのがいいようですね。
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