2016(03)
■齟齬と語弊
++++
一触即発というのはこういうことだと改めて思う。犬猿の仲の高ピーと育ちゃんの言い合いなんかは実は仲良しさんの挨拶なんじゃないかと思えるくらいに張り詰めた空気。1・2年生は完全に気圧されていた。
「ヨシ、落ち着いて」
「俺は至って冷静」
「も~、ヒドいなよしのん。何も悪気があるワケじゃないのに~」
「は? 鳴海黙れ」
「ちょっ、ナルミー火に油注がないで!」
MBCCの幽霊部員と化して2年になるナルミーが、何を思ったかサークル室を覗きに来た。ナルミーがきゃいきゃいと様子を見て回っていたら、それにヨシがキレたのだ。今更何様のつもりだと。
ナルミーはキャラだとか態度が軽くてちょっとウザい雰囲気を醸している。あくまで、そういうキャラクターとして。だから3年はナルミーが何か言うと「黙れ2Pカラー」とネタのように返していた。だけど、ヨシだけはネタじゃなくてガチ。
高ピーと育ちゃんの犬猿なんか比べものにならないほど、ヨシのナルミーに対する嫌悪とか憎悪とか、そういった感情がガチなんだ。それは、ナルミーが幽霊部員化してネットの生放送を主に活動し始めてから。
「うーす。……あれっ、どうした」
何も知らずにやってきた高ピーが、サークル室の空気が止まっているのに不思議そうな顔をしている。当然だろう。どこの部屋も大学祭に向けて慌ただしく動いているし、本来ならウチもそうあるはずなんだから。
「あっちょっと高ピー! 大変なんだよヨシとナルミーが」
「あ? 鳴海?」
「察してくれるよね、高ピーなら」
「……ったく、しょうがねえな。伊東、お前は下がってろ。ほら、1・2年はミーティングルームでやることやってろ」
高ピーはパンパンと両手を叩いてサークル室に3年生だけを残す。正直、ここをどうにか出来るのはサークルの事実上のトップで、ヨシとナルミーと同じ3年アナの同期である高ピーだけなのだ。
サークル室は静まりかえっている。高ピーは強い目つきでヨシとナルミーを交互に見る。実は、ヨシとナルミーがこうやって衝突するのは初めてじゃない。これまでに何回もこんなようなことがあって、その都度誰かが収めてきたのだ。
「状況は聞かねえぞ。お前ら顔合わせる度に同じこと繰り返しやがって。まず岡崎。鳴海がサークル、っつーかラジオを踏み台にしたって解釈するのは自由だが、誰がどういう道を選んでも、それをどうこう言う資格は誰にもねえ」
「……わかってる」
「で、鳴海。お前も、岡崎が聴覚を主とするメディアっつー意味でこの活動に対する想いが強いのは知ってんだろ。ネットの生放送が面白いのはわかるが、ここはあくまでラジオ主体の場だ。気紛れで見に来るのを悪いとは言わねえが、俺たちはずっとここにいた分これに対する思い入れもある。その辺もうちょっと考えろ」
「うん、ゴメン」
「どっちが悪いとかじゃねえ。どっちも悪い。お前らを見て見ぬ振りしてた俺と伊東もだ。学祭前でまとまるべき時に俺らがそんなことやっててどうする。今更仲良くしろとは言わねえが、水は差すな。以上」
高ピーはどっちに肩入れするでもなく仲裁する立場として言うべきことを言って、ヨシとナルミーを睨む一歩手前の強い目で見ている。仲直りしろと言っているワケじゃない。ただ、少しだけ考えろと。
「俺はお前らがどういう思想を持ってるとか、どういう活動をしてるとかに口出しはしねえ。だけど、俺がトップやってる以上、どんな理由であろうとここでの無益な争いは断じて許さねえからな」
「うん、わかったよ高崎。鳴海、お前のことを許す気はないけど、今回の件に関しては俺が悪かった」
「うん、今更許されるとも思ってないけど、よしのんゴメンね?」
これですべてが丸く収まったワケじゃない。だけど、ヨシとナルミーを動かしたのはきっと高ピーの想いだ。MBCCとこの活動、そしてここにいるメンバーに対する高ピーの強い想い。これまでここを引っ張って、支えてきたからこその。
「よし、学祭番組の打ち合わせすっぞ。岡崎、お前リク番詰めとけよ」
「うん」
「あと、武藤に来るのか来ないのか改めて聞いといてくれ」
「イクの枠、空けてあるの?」
「えっ、いくみぃも学祭出るの!? 聞きに来なきゃ! カッコイーんだよねいくみぃの番組! 選曲とか音の波とかさー」
そして重なる3人分の、
「黙れ2Pカラー」
end.
++++
ユノ先輩とナルミーの相性がすっごい悪い件について。仲裁の高崎である。MBCCの3年アナという共通項。
そして、高崎が聞かずとも状況をわかってしまうほどに同じことを繰り返しているユノ先輩とナルミーである。MMPで言うところのあの頃からちょっと過ぎた頃の話。
この光景を見ていたいち氏は、高崎の姿にきっと思うところがあったんだと思われる。
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一触即発というのはこういうことだと改めて思う。犬猿の仲の高ピーと育ちゃんの言い合いなんかは実は仲良しさんの挨拶なんじゃないかと思えるくらいに張り詰めた空気。1・2年生は完全に気圧されていた。
「ヨシ、落ち着いて」
「俺は至って冷静」
「も~、ヒドいなよしのん。何も悪気があるワケじゃないのに~」
「は? 鳴海黙れ」
「ちょっ、ナルミー火に油注がないで!」
MBCCの幽霊部員と化して2年になるナルミーが、何を思ったかサークル室を覗きに来た。ナルミーがきゃいきゃいと様子を見て回っていたら、それにヨシがキレたのだ。今更何様のつもりだと。
ナルミーはキャラだとか態度が軽くてちょっとウザい雰囲気を醸している。あくまで、そういうキャラクターとして。だから3年はナルミーが何か言うと「黙れ2Pカラー」とネタのように返していた。だけど、ヨシだけはネタじゃなくてガチ。
高ピーと育ちゃんの犬猿なんか比べものにならないほど、ヨシのナルミーに対する嫌悪とか憎悪とか、そういった感情がガチなんだ。それは、ナルミーが幽霊部員化してネットの生放送を主に活動し始めてから。
「うーす。……あれっ、どうした」
何も知らずにやってきた高ピーが、サークル室の空気が止まっているのに不思議そうな顔をしている。当然だろう。どこの部屋も大学祭に向けて慌ただしく動いているし、本来ならウチもそうあるはずなんだから。
「あっちょっと高ピー! 大変なんだよヨシとナルミーが」
「あ? 鳴海?」
「察してくれるよね、高ピーなら」
「……ったく、しょうがねえな。伊東、お前は下がってろ。ほら、1・2年はミーティングルームでやることやってろ」
高ピーはパンパンと両手を叩いてサークル室に3年生だけを残す。正直、ここをどうにか出来るのはサークルの事実上のトップで、ヨシとナルミーと同じ3年アナの同期である高ピーだけなのだ。
サークル室は静まりかえっている。高ピーは強い目つきでヨシとナルミーを交互に見る。実は、ヨシとナルミーがこうやって衝突するのは初めてじゃない。これまでに何回もこんなようなことがあって、その都度誰かが収めてきたのだ。
「状況は聞かねえぞ。お前ら顔合わせる度に同じこと繰り返しやがって。まず岡崎。鳴海がサークル、っつーかラジオを踏み台にしたって解釈するのは自由だが、誰がどういう道を選んでも、それをどうこう言う資格は誰にもねえ」
「……わかってる」
「で、鳴海。お前も、岡崎が聴覚を主とするメディアっつー意味でこの活動に対する想いが強いのは知ってんだろ。ネットの生放送が面白いのはわかるが、ここはあくまでラジオ主体の場だ。気紛れで見に来るのを悪いとは言わねえが、俺たちはずっとここにいた分これに対する思い入れもある。その辺もうちょっと考えろ」
「うん、ゴメン」
「どっちが悪いとかじゃねえ。どっちも悪い。お前らを見て見ぬ振りしてた俺と伊東もだ。学祭前でまとまるべき時に俺らがそんなことやっててどうする。今更仲良くしろとは言わねえが、水は差すな。以上」
高ピーはどっちに肩入れするでもなく仲裁する立場として言うべきことを言って、ヨシとナルミーを睨む一歩手前の強い目で見ている。仲直りしろと言っているワケじゃない。ただ、少しだけ考えろと。
「俺はお前らがどういう思想を持ってるとか、どういう活動をしてるとかに口出しはしねえ。だけど、俺がトップやってる以上、どんな理由であろうとここでの無益な争いは断じて許さねえからな」
「うん、わかったよ高崎。鳴海、お前のことを許す気はないけど、今回の件に関しては俺が悪かった」
「うん、今更許されるとも思ってないけど、よしのんゴメンね?」
これですべてが丸く収まったワケじゃない。だけど、ヨシとナルミーを動かしたのはきっと高ピーの想いだ。MBCCとこの活動、そしてここにいるメンバーに対する高ピーの強い想い。これまでここを引っ張って、支えてきたからこその。
「よし、学祭番組の打ち合わせすっぞ。岡崎、お前リク番詰めとけよ」
「うん」
「あと、武藤に来るのか来ないのか改めて聞いといてくれ」
「イクの枠、空けてあるの?」
「えっ、いくみぃも学祭出るの!? 聞きに来なきゃ! カッコイーんだよねいくみぃの番組! 選曲とか音の波とかさー」
そして重なる3人分の、
「黙れ2Pカラー」
end.
++++
ユノ先輩とナルミーの相性がすっごい悪い件について。仲裁の高崎である。MBCCの3年アナという共通項。
そして、高崎が聞かずとも状況をわかってしまうほどに同じことを繰り返しているユノ先輩とナルミーである。MMPで言うところのあの頃からちょっと過ぎた頃の話。
この光景を見ていたいち氏は、高崎の姿にきっと思うところがあったんだと思われる。
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