2016(03)
■飛ばせ飛ばせぶっ放せ
++++
「それはコスト的にどうなんだっていう」
「味は確かだったじゃん!」
「そうは言っても高崎先輩を納得させないことにはこの手法は取れないっていう」
「それでなくても学祭での酒類の販売は禁止されてるしね」
「飲むワケじゃないよ、調理に使うしアルコールは飛ぶからしょぼんじゃないよ!」
焼きそばの盛られた皿が並ぶ中、高木、エージ、ハナの3人がわあわあと論戦を繰り広げている。MBCCは例年DJブースと食品ブースの2ブースを出店する。そして、食品ブースは例年1年が責任者となるというのがMBCCの伝統。
今年も例に漏れず焼きそばはエージを責任者に、高木とハナも一緒になってレシピを開発しつつ、試食を繰り返している。毎年同じ焼きそばなんだからレシピもクソも、というワケにもいかない。高崎先輩が学祭に懸ける思いの強さだ。厳密には、商魂。
「L先輩はどう思いますか! ハナの焼きそば美味しいですよね!」
「うん、まあ。味は美味い。麺も水っぽくなかったし。肉も臭みがなかった」
「ほらー! お酒最強なんですよ! 豆もタカティもわかってないなあ」
「いや、俺らは別に不味いとは言ってねーべ。むしろ美味い」
「うん。ハナちゃんの焼きそばは美味しいよ。野菜の量が多い気がするけど」
「いや、それはお前基準だっていう。俺らにはこれくらいが普通だべ」
「ハナの作り方を基準に豆の火力とタカティのソースでやったらいい感じにならないの?」
「だからって酒はなあ」
ハナの焼きそばの何が物議を醸しているのかと言えば、肉の下拵えや、麺をほぐす際に使っている酒の扱いについてだった。ハナ曰く本来は料理用の無塩日本酒というのを使えばいいんだろうけど、なかったのでビールで代用したと。
肉の下拵えに料理酒を使うとかいうのがまず女子力か何か知らないけど、普段から料理をするっぽい雰囲気バリバリで驚くしかないんだけども(俺は餃子くらいしか作れないし)。
「料理酒は飲むお酒じゃないの! ほら、今値段ググるよ! 1リットルで500円くらい! 高崎先輩御用達の業務用スーパーならもっと安くて多いのがあるかもね! ちなみに使うのは焼きそば1玉につき大さじ1杯弱! 大さじ一杯ってどれくらいか知ってる? 15ミリリットル! 1人前辺りのコスト計算しようか? あと料理酒を使うメリットをうまみ成分などの観点からプレゼンしましょうか? ほらちゃんと聞いてエージ!」
「あー、いい。頭が痛くなるっていう。これだから理系は」
「別に理系だからじゃないですからー! しょぼーん!」
「でも、ハナちゃんがちゃんとプレゼン出来るなら高崎先輩も説得できるだろうし、いいんじゃない? レシピにお酒が入ってても」
誰が何と言おうとこの中で最もレシピを誰にでもわかるように書く能力があるのはハナであって、料理心のほとんどない野郎たちはハナに従うしかないのだ。
あと、高崎先輩に関しては成分表示や言葉で論破してもいいけど実際に美味い物を食わすのが一番早いと思う。何だかんだ言ってあの人も食への欲求には忠実なのだ。切るところは切るけれど、盛るところは盛れる人だ。
「となると、やっぱり今年は台風もあったしタマネギをエイジの親戚の人が分けてくれるっていうのは大きいね」
「だべな」
「今年は野菜高いもんねー、しょぼーん」
「俺は最近ジャガイモで暮らしてるよ」
「えっ、ジャガイモなんて高いじゃん! タカティそれは贅沢だよ!」
「違うよ、ミドリがくれたんだよ。たくさんあって困ってるからって」
「えー、なにそれいいなー! ハナも欲しい!」
「つってもコイツジャガイモがあるからってジャガイモしか食わないっていう」
「おーい、お前ら本題は焼きそばなー」
はーいと返事は飛ぶけれど、やっぱりそうすぐに本題には戻って来ないのだ。って言うかここは俺の部屋だぞ。わかってんのかな。まあ、今日はバイトもないから別にいいけど。
食品ブースで儲けたら儲けた分だけ学祭の打ち上げが豪勢になる。高崎先輩が学祭に懸けてるのはほぼほぼ“それ”なんだけど、ただ毎年同じことをやってたって意味はねえっていうスタンスの人なのも事実。どうせやるなら歴代MBCCで、そして今年の学祭全体で最も美味いもんを作れ、と。
「L先輩L先輩、コスト計算とかレシピ書くのにやっぱり日本酒買いに行って、これからもう1回調理していいですか!」
「ああ、もう好きにしてくれ~……」
end.
++++
1年生がわちゃわちゃと焼きそば作ってるのと、その会場提供で保護者になってるLがちゃんと先輩しててかわいいヤツ。
野郎3人とハナちゃんならハナちゃんが1番料理をしていると思われるのだけど、焼きそばくらいならTKGでも作れてしまうから戦争になるのである
何気に今期ここまでハナちゃんがどーんと前面に出てきたのは初めてかもしれない……しょぼーん
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「それはコスト的にどうなんだっていう」
「味は確かだったじゃん!」
「そうは言っても高崎先輩を納得させないことにはこの手法は取れないっていう」
「それでなくても学祭での酒類の販売は禁止されてるしね」
「飲むワケじゃないよ、調理に使うしアルコールは飛ぶからしょぼんじゃないよ!」
焼きそばの盛られた皿が並ぶ中、高木、エージ、ハナの3人がわあわあと論戦を繰り広げている。MBCCは例年DJブースと食品ブースの2ブースを出店する。そして、食品ブースは例年1年が責任者となるというのがMBCCの伝統。
今年も例に漏れず焼きそばはエージを責任者に、高木とハナも一緒になってレシピを開発しつつ、試食を繰り返している。毎年同じ焼きそばなんだからレシピもクソも、というワケにもいかない。高崎先輩が学祭に懸ける思いの強さだ。厳密には、商魂。
「L先輩はどう思いますか! ハナの焼きそば美味しいですよね!」
「うん、まあ。味は美味い。麺も水っぽくなかったし。肉も臭みがなかった」
「ほらー! お酒最強なんですよ! 豆もタカティもわかってないなあ」
「いや、俺らは別に不味いとは言ってねーべ。むしろ美味い」
「うん。ハナちゃんの焼きそばは美味しいよ。野菜の量が多い気がするけど」
「いや、それはお前基準だっていう。俺らにはこれくらいが普通だべ」
「ハナの作り方を基準に豆の火力とタカティのソースでやったらいい感じにならないの?」
「だからって酒はなあ」
ハナの焼きそばの何が物議を醸しているのかと言えば、肉の下拵えや、麺をほぐす際に使っている酒の扱いについてだった。ハナ曰く本来は料理用の無塩日本酒というのを使えばいいんだろうけど、なかったのでビールで代用したと。
肉の下拵えに料理酒を使うとかいうのがまず女子力か何か知らないけど、普段から料理をするっぽい雰囲気バリバリで驚くしかないんだけども(俺は餃子くらいしか作れないし)。
「料理酒は飲むお酒じゃないの! ほら、今値段ググるよ! 1リットルで500円くらい! 高崎先輩御用達の業務用スーパーならもっと安くて多いのがあるかもね! ちなみに使うのは焼きそば1玉につき大さじ1杯弱! 大さじ一杯ってどれくらいか知ってる? 15ミリリットル! 1人前辺りのコスト計算しようか? あと料理酒を使うメリットをうまみ成分などの観点からプレゼンしましょうか? ほらちゃんと聞いてエージ!」
「あー、いい。頭が痛くなるっていう。これだから理系は」
「別に理系だからじゃないですからー! しょぼーん!」
「でも、ハナちゃんがちゃんとプレゼン出来るなら高崎先輩も説得できるだろうし、いいんじゃない? レシピにお酒が入ってても」
誰が何と言おうとこの中で最もレシピを誰にでもわかるように書く能力があるのはハナであって、料理心のほとんどない野郎たちはハナに従うしかないのだ。
あと、高崎先輩に関しては成分表示や言葉で論破してもいいけど実際に美味い物を食わすのが一番早いと思う。何だかんだ言ってあの人も食への欲求には忠実なのだ。切るところは切るけれど、盛るところは盛れる人だ。
「となると、やっぱり今年は台風もあったしタマネギをエイジの親戚の人が分けてくれるっていうのは大きいね」
「だべな」
「今年は野菜高いもんねー、しょぼーん」
「俺は最近ジャガイモで暮らしてるよ」
「えっ、ジャガイモなんて高いじゃん! タカティそれは贅沢だよ!」
「違うよ、ミドリがくれたんだよ。たくさんあって困ってるからって」
「えー、なにそれいいなー! ハナも欲しい!」
「つってもコイツジャガイモがあるからってジャガイモしか食わないっていう」
「おーい、お前ら本題は焼きそばなー」
はーいと返事は飛ぶけれど、やっぱりそうすぐに本題には戻って来ないのだ。って言うかここは俺の部屋だぞ。わかってんのかな。まあ、今日はバイトもないから別にいいけど。
食品ブースで儲けたら儲けた分だけ学祭の打ち上げが豪勢になる。高崎先輩が学祭に懸けてるのはほぼほぼ“それ”なんだけど、ただ毎年同じことをやってたって意味はねえっていうスタンスの人なのも事実。どうせやるなら歴代MBCCで、そして今年の学祭全体で最も美味いもんを作れ、と。
「L先輩L先輩、コスト計算とかレシピ書くのにやっぱり日本酒買いに行って、これからもう1回調理していいですか!」
「ああ、もう好きにしてくれ~……」
end.
++++
1年生がわちゃわちゃと焼きそば作ってるのと、その会場提供で保護者になってるLがちゃんと先輩しててかわいいヤツ。
野郎3人とハナちゃんならハナちゃんが1番料理をしていると思われるのだけど、焼きそばくらいならTKGでも作れてしまうから戦争になるのである
何気に今期ここまでハナちゃんがどーんと前面に出てきたのは初めてかもしれない……しょぼーん
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