2017
■楽園と化す地上では
++++
「人も大分落ち着いてきましたねー」
「今日は元々祝日というのもあるが、これからもっと暇になるぞ。大学に来る人数が減るからな」
情報センターのバイトにも大分慣れてきた。最近では最初の頃に比べてセンターの利用者も減って、落ち着いて仕事が出来るようになってきた。ゴールデンウィークを過ぎればもっと落ち着いてくるとは林原さん。
「そう言えば、春山さんは実家に帰っているが、お前は戻らんのか」
「帰らないですねー、出てきたばっかりなので」
「それもそうか」
春山さんはこの国の最北端、北辰エリアの出身。北の大地は帰るにも大変なんだぞー、と飛行機を早い段階で予約していたそうだ。時期を選ばないと帰るにもかかるお金が段違いなんだとか。空の便って怖い。
春山さんが帰省すると、センターは林原さんがリーダー代行になる。自宅生で安定してセンターにいられるのが林原さんしかいなくなるし、能力的にも妥当。そして、春山さんのいないセンターでは林原さんが羽を伸ばしているように見える。
「て言うか林原さん、すごくリラックスしてますね」
「あの人がいないからな」
「春山さんって結構謎ですよね」
「まあ、変人ではあるな」
俺の中で春山さんのイメージと言えば、目つきが怖いとか、癒しを求めてるとか、鉛筆をかじってるっていう感じ。コーヒーの濃さも胃に悪そう。あ、それと豪快っていう雰囲気もあるかな。
冴さんのおっぱいを揉んでる時は幸せそうな顔をしてるし、林原さんのお尻を鷲掴んでいる時は悪代官みたいな顔をしているから、多分それを思いっきり楽しんでいるし、趣味なんだと思う。つくづく俺は髪をわしゃわしゃされるだけでよかった。
「結局、林原さんと春山さんって仲がいいんですか? 悪いんですか?」
「頼まれたところで仲良くなりたくはない。実際には良くもないし悪くもないが、極力関わりたくないことも多々あるとだけ言っておこう」
「なるほど」
「宇宙開発や音楽の話がなければオレはあの人と今のように会話を交わすこともなかった。逆に言えばそれがなければあの人は単なる変態だ。何をされるかわかったモンではないのに近付きたくはなかろう」
「真理ですねー……」
悪い人ではないんだろうけど、それは俺に求められている癒しが髪をわしゃわしゃするという程度で済んでいるからこそ思えることなんだろうし、俺が入学する前に何があったかは知らないから何とも言えない。知らない方が幸せなのかもしれない。
「性欲が溜まれば都合のいい棒があるとは言っていたが、その棒に飽きて矛先がセンター内に向かんとも限らんしな」
「え、えーと?」
「モノを使わないなら私によこせと言って手を伸ばしてくることも多々ある。気をつけろ」
「え、えーと?」
「事あるごとに犯すぞと言われてみろ。いい加減張り倒してやらねばならんと思っている」
「ちょ、ちょっと、次元が違いすぎます~」
「こんな話ばかりでスマン。話題を変えよう。お前はこっちでどこか好きな店などは見つかったのか」
「話の転換が急ですねー」
えーと、好きなお店、好きなお店。こっちに出てきてからひと月が経とうとしているけど、探検はまだまだこれからだったんだよなあ。雑貨とかのお店が多いエリアがあるとも聞いてるし、行ってみたいけど。
「あっ、こないだサークルの先輩にカツ丼が美味しいお店を教えてもらいました! 長篠式のカツ丼で、食べた瞬間これだーって」
「ほう。カツ丼にもエリアごとの特色があるのか」
「長篠でカツ丼と言えばキャベツの上にカツが乗ったソースカツ丼ですよー」
「あまり食べる機会がないな。川北、今度その店へ連れて行ってくれんか。興味がある」
「あっはいー! 行きましょう!」
これからセンターにもっと馴染んだらどうなるかわからないけど、少なくとも俺は先輩たちとも仲良くしたいし、仕事も出来るようになりたい。良くしてもらえる今だからこそ頑張らないと。あと、プライベートでご飯に行けるとかちょっと嬉しい。
「あっ、そしたら林原さんのおすすめも教えてくださいよー」
「よかろう。巡るか」
「やったー! お願いしますー!」
end.
++++
例によってホームシックカツ丼の流れにしようかと思ったけど、唐突に春山さんの取扱説明書みたいなことがまーた始まった。
世間一般ではゴールデンウィークなんだから星大の情報センターも休みにすりゃいいんだろうけどね、そうもいかないらしい。さすがに5月は休みかな?
ミドリもそろそろ情報センターに馴染んできてるみたいだし、これからの活躍に期待したいけど何をどう期待するのやら
.
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「人も大分落ち着いてきましたねー」
「今日は元々祝日というのもあるが、これからもっと暇になるぞ。大学に来る人数が減るからな」
情報センターのバイトにも大分慣れてきた。最近では最初の頃に比べてセンターの利用者も減って、落ち着いて仕事が出来るようになってきた。ゴールデンウィークを過ぎればもっと落ち着いてくるとは林原さん。
「そう言えば、春山さんは実家に帰っているが、お前は戻らんのか」
「帰らないですねー、出てきたばっかりなので」
「それもそうか」
春山さんはこの国の最北端、北辰エリアの出身。北の大地は帰るにも大変なんだぞー、と飛行機を早い段階で予約していたそうだ。時期を選ばないと帰るにもかかるお金が段違いなんだとか。空の便って怖い。
春山さんが帰省すると、センターは林原さんがリーダー代行になる。自宅生で安定してセンターにいられるのが林原さんしかいなくなるし、能力的にも妥当。そして、春山さんのいないセンターでは林原さんが羽を伸ばしているように見える。
「て言うか林原さん、すごくリラックスしてますね」
「あの人がいないからな」
「春山さんって結構謎ですよね」
「まあ、変人ではあるな」
俺の中で春山さんのイメージと言えば、目つきが怖いとか、癒しを求めてるとか、鉛筆をかじってるっていう感じ。コーヒーの濃さも胃に悪そう。あ、それと豪快っていう雰囲気もあるかな。
冴さんのおっぱいを揉んでる時は幸せそうな顔をしてるし、林原さんのお尻を鷲掴んでいる時は悪代官みたいな顔をしているから、多分それを思いっきり楽しんでいるし、趣味なんだと思う。つくづく俺は髪をわしゃわしゃされるだけでよかった。
「結局、林原さんと春山さんって仲がいいんですか? 悪いんですか?」
「頼まれたところで仲良くなりたくはない。実際には良くもないし悪くもないが、極力関わりたくないことも多々あるとだけ言っておこう」
「なるほど」
「宇宙開発や音楽の話がなければオレはあの人と今のように会話を交わすこともなかった。逆に言えばそれがなければあの人は単なる変態だ。何をされるかわかったモンではないのに近付きたくはなかろう」
「真理ですねー……」
悪い人ではないんだろうけど、それは俺に求められている癒しが髪をわしゃわしゃするという程度で済んでいるからこそ思えることなんだろうし、俺が入学する前に何があったかは知らないから何とも言えない。知らない方が幸せなのかもしれない。
「性欲が溜まれば都合のいい棒があるとは言っていたが、その棒に飽きて矛先がセンター内に向かんとも限らんしな」
「え、えーと?」
「モノを使わないなら私によこせと言って手を伸ばしてくることも多々ある。気をつけろ」
「え、えーと?」
「事あるごとに犯すぞと言われてみろ。いい加減張り倒してやらねばならんと思っている」
「ちょ、ちょっと、次元が違いすぎます~」
「こんな話ばかりでスマン。話題を変えよう。お前はこっちでどこか好きな店などは見つかったのか」
「話の転換が急ですねー」
えーと、好きなお店、好きなお店。こっちに出てきてからひと月が経とうとしているけど、探検はまだまだこれからだったんだよなあ。雑貨とかのお店が多いエリアがあるとも聞いてるし、行ってみたいけど。
「あっ、こないだサークルの先輩にカツ丼が美味しいお店を教えてもらいました! 長篠式のカツ丼で、食べた瞬間これだーって」
「ほう。カツ丼にもエリアごとの特色があるのか」
「長篠でカツ丼と言えばキャベツの上にカツが乗ったソースカツ丼ですよー」
「あまり食べる機会がないな。川北、今度その店へ連れて行ってくれんか。興味がある」
「あっはいー! 行きましょう!」
これからセンターにもっと馴染んだらどうなるかわからないけど、少なくとも俺は先輩たちとも仲良くしたいし、仕事も出来るようになりたい。良くしてもらえる今だからこそ頑張らないと。あと、プライベートでご飯に行けるとかちょっと嬉しい。
「あっ、そしたら林原さんのおすすめも教えてくださいよー」
「よかろう。巡るか」
「やったー! お願いしますー!」
end.
++++
例によってホームシックカツ丼の流れにしようかと思ったけど、唐突に春山さんの取扱説明書みたいなことがまーた始まった。
世間一般ではゴールデンウィークなんだから星大の情報センターも休みにすりゃいいんだろうけどね、そうもいかないらしい。さすがに5月は休みかな?
ミドリもそろそろ情報センターに馴染んできてるみたいだし、これからの活躍に期待したいけど何をどう期待するのやら
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