2016(02)

■あくまで正当で客観的な

++++

「あ~……ろ~ふ~上がりの炭酸最高…! る~び~ならもっと良かったけど、合宿中だからガマンガマン」
「つばめお前おっさんかよ」
「うるさいなあ野坂、アタシホントしんどかったんだよ。今もしんどいんだよ言うなら。おっさん臭くもなるっつーの」

 モニター会が終わって、夜の自由時間にも対策委員は会議を開く。何人かはすでに風呂上がりでさっぱりした様子。しかしつばめは本格的におっさんだ。俺は昨日と同じく深夜風呂コースかな。

「はいつばめ、夜食になっちゃったけど」
「啓子さんマジ女神!」

 机の上には啓子さんが夕飯のご飯で作ってくれていた塩むすび。結局夕飯にありつけなかったつばめはそれをむしゃむしゃと頬張っている。つばめの身に降りかかっていた事態は対策委員全員の知ることとなっている。つばめのしんどさはお察しなのだ。

「えー、アタシもおにぎり食べたい」
「それを言ったら俺も食べたい」
「あのねえ、食糧戦争やってる場合じゃないから」
「えっ、Kちゃんのおにぎり!?」
「こんなときばっかりがっつくなヒロ」

 現地会議の議題は今日の反省と、明日はどうするというようなこと。今日の反省と言うか、例によって実質三井先輩対策会議のようになっている。明日のモニター会は三井先輩の絡まない班だから大きな事件は起きないと思いたいけれど。
 今日のモニター会が終わってから、三井先輩は班員を集めてダメ出しの嵐を起こしたそうだ。モニターを見に来られていた先輩方もドン引きしてたし、最終的には講師のダイさんがお風呂の時間もあるからその辺にしようね、と強制終了して下さった。

「アレ、高崎サンにモニター会の講評でボコボコにされたのが気に入らなかったんだよ。絶対そうだ」
「ミキのミスを番組中にイジるなって件か」

 極度の緊張をもって番組に臨んだミラは、途中でBGMのフェーダーが上げられずブランクを作ってしまった。そのくらいならよくあるけど、番組内での三井先輩の対応がミキ泣かせだった。ミキのミスいじりはタブーだとは、初心者講習会でも言われたことなのに。

「つばめ、ダメ出し大会の後、ミラは大丈夫だった?」
「番組後は紗希サンに励ましてもらって、今は女子部屋で他の子たちとお喋りしてたけど、今後のことは青女さんに任せることになるかも」
「山口先輩にも三井先輩の番組って実はコピペ番組やしライブの必要ないよね、って言われとったよね」

 つばめ班だから星ヶ丘の先輩にも、と振った講評だ。山口先輩は話し口が穏やかと言うか、あまりキツい物言いではない印象だ。だけど、三井先輩に対しては鋭利な刃物でグサグサと突き刺していたなあと思う。喋り方が緩いからマイルドには聞こえるけど。これにおにぎりを食べ進める手が止まるのは、つばめ。

「洋平センパイ、ここで仕掛けてきたかと思って~……怖いデショデショ……」
「どうしたんだつばめ、いつもなら山口先輩をボコボコにするのに」
「ウチにはウチの事情があんだよ、察しろ野坂」
「菜月先輩が仰るには、前対策の先輩方がここに来られる車内でも三井先輩の話題になったらしく、結論が「調子乗ってんじゃねえぞ」だったそうで……」
「こわっ! 前対策の人らがそれとかこわっ!」
「それも福島先輩主導だったらしく……」

 ゾゾゾ、と現対策委員の背筋に悪寒が走る。前対策委員の先輩方で本当に怒ると怖いのは高崎先輩でも菜月先輩でもなく他の4人の先輩方だという話は聞いていた。その中でも最も怒らせてはいけないと言われる福島先輩が、三井先輩を潰すモードに入っていると……うわっ。圭斗先輩、共に頑張りましょう。

「あ、明日のことについて話そうか、野坂」
「そ、そうだな。えーと、夜は番組終わって開放的になった子が騒ぐかもだから、その辺も気をつけてだなあ」


end.


++++

そら、高崎も菜月さんも怖いけど、石川・紗希ちゃん・洋平ちゃん、あと長野っちもいたら長野っちもだけどそれぞれ怒ったらそら怖いわ。なんなら高菜よか怖いわ
ろ~ふ~上がりの炭酸がる~び~だったら完全につばちゃんがおっさんコースだったんだろうけど似合うからしょうがない
啓子さんの塩むすびは美味しいだろうなあ。そら果林ノサカだけじゃなくてヒロも戦争に参加するわ

.
71/100ページ