2016(02)
■勝負師と揺らぐ世界
++++
ボクたちは今、賭けに出ている。
全員が揃える班打ち合わせの日程がなかなか組めず、集まれる人だけ集まろうということで集まってはみたものの、メンツ的に機材を使った練習が厳しそうだと。
今日集まっているのはボクと班長のヒロ。それにシゲトラ先輩とハマちゃん。向島は遠いし、ハマちゃんも青敬にラジオの機材ってあるのかなーと首を傾げた。青女は男子禁制だし、残るはシゲトラ先輩。
「何かこないだ対策委員でつばちゃんゆっとったんですけど、星ヶ丘って機材使ったり他校の人入れたりするんキビシーらしいですね」
「いや? まあー……青女はともかく、他の大学に比べたらちょっとめんどいかもしんないけど、絶対ムリってワケじゃないし、聞いてみるだけ聞いてみような?」
シゲトラ先輩の後を、ボクたち3人は恐る恐るついて歩いている。高く聳える黒いビルの中を、きょろきょろしながら物珍しそうに歩いているから部外者だと丸わかりだ。
しばらくして、シゲトラ先輩が立ち止まった。その部屋にはミーティングルームと書かれた表札。ちょっと待っててなと先輩は部屋の中へ入って行ってしまった。
「直クン直クン」
「なに?」
「声響くし、思ってた以上にガチなビルでパねえ」
「そうだね。シゲトラ先輩、大丈夫かな」
「だいじょーぶやない? ゆーても世界のシゲトラやよ」
部屋の中からシゲトラ先輩が出て来た。そして、ポケットからスマートフォンを取り出している。そして、どこかしらに連絡をしているようだ。
「うーん、学内にはいるんだよなー。もうちょい待ってて。……おー、もしもし。お疲れー。おー。いや? 俺入れて4人。そうそう夏合宿。おー、いや? さっすが、待つ待つ! サンキュー!」
向こうからの声は漏れて来なかったけど、シゲトラ先輩を見ている限り、悪くない反応。ヒロとハマちゃんはウキウキしながら練習出来るんかな、出来るだろと期待している。
しばらくその部屋の前で待っていると、コツコツと硬い音がこちらに近付いて来る。緩く束ねられた長い髪を揺らし、こちらへ向かって来る女性の姿がある。
「おー、宇部、待ってた!」
「鳴尾浜、今日は処理出来ないから詳細な申請は後日でいいわ。とりあえず、あなたたちもこの書類に大学と名前を書いてもらえるかしら。バッヂは今持ってくるから待っててちょうだい」
「シゲトラ先輩、この人は?」
「ウチの監査サマだ。ウチの部って、何かするには幹部を通さなきゃいけねーんだよ」
監査さんから部室立ち入り許可証代わりのバッヂを受け取って、それを指定された場所につける。そして今度は部室に案内される。青女のサークル室より狭くて、暗くて、埃っぽい。
「機材の扱いについては信用するわよ、鳴尾浜」
「おうよ、世界のシゲトラに任せとけ!」
「今日大学構内にいる幹部が私だけでよかったわね。他の幹部だったらこうはいかないわよ」
監査さんが立ち去ると、さあ練習だというムードになる。ただ、この埃っぽさにヒロがちょっとやられているみたいだけど。
「シゲトラ先輩、星ヶ丘の監査さんて毎日部室を開けに大学に来てるんですか?」
「いや? 今とか、活動が落ち着いてる時はそうでもない。宇部はゼミとか畑で忙しいから来てる率が高いんだ。それに賭けてみたけど当たるモンだな!」
さああんま時間ないしやるぞー、と7班のマジハンパないラジオ、略して“マジラジ7”の練習に入っていく。
「あー、誰だよワイヤレス使ってそのままにしたヤツー。ちゃんと片付けとけよなー」
「シゲトラ先輩、この部屋埃っぽすぎるんですけど。世界のシゲトラの力で何かならんですか」
「残念、それはどうしようもない」
「ヒロ、ガスマスクならあるけど」
「ハマちゃん何でそんなん持っとんの!」
「集合する前に買い物してて」
end.
++++
星ヶ丘の部室をインターフェイス関係で使うときはクッソ細かくてめんどくさい申請が必要なようですが、時と場合によっては掻い潜れるパターンもあるようです。
シゲトラの機材の扱いに関しては、班長になれるほどのミキサーなのでそこそこ信用はあるという感じでしょうか。他に3年ミキサーって誰がおるんやろか星ヶ丘……
思いっきりアウェーな2年生たちがそわそわしながら歩いてるのがきっとかわいいやつ。マジパねえ
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ボクたちは今、賭けに出ている。
全員が揃える班打ち合わせの日程がなかなか組めず、集まれる人だけ集まろうということで集まってはみたものの、メンツ的に機材を使った練習が厳しそうだと。
今日集まっているのはボクと班長のヒロ。それにシゲトラ先輩とハマちゃん。向島は遠いし、ハマちゃんも青敬にラジオの機材ってあるのかなーと首を傾げた。青女は男子禁制だし、残るはシゲトラ先輩。
「何かこないだ対策委員でつばちゃんゆっとったんですけど、星ヶ丘って機材使ったり他校の人入れたりするんキビシーらしいですね」
「いや? まあー……青女はともかく、他の大学に比べたらちょっとめんどいかもしんないけど、絶対ムリってワケじゃないし、聞いてみるだけ聞いてみような?」
シゲトラ先輩の後を、ボクたち3人は恐る恐るついて歩いている。高く聳える黒いビルの中を、きょろきょろしながら物珍しそうに歩いているから部外者だと丸わかりだ。
しばらくして、シゲトラ先輩が立ち止まった。その部屋にはミーティングルームと書かれた表札。ちょっと待っててなと先輩は部屋の中へ入って行ってしまった。
「直クン直クン」
「なに?」
「声響くし、思ってた以上にガチなビルでパねえ」
「そうだね。シゲトラ先輩、大丈夫かな」
「だいじょーぶやない? ゆーても世界のシゲトラやよ」
部屋の中からシゲトラ先輩が出て来た。そして、ポケットからスマートフォンを取り出している。そして、どこかしらに連絡をしているようだ。
「うーん、学内にはいるんだよなー。もうちょい待ってて。……おー、もしもし。お疲れー。おー。いや? 俺入れて4人。そうそう夏合宿。おー、いや? さっすが、待つ待つ! サンキュー!」
向こうからの声は漏れて来なかったけど、シゲトラ先輩を見ている限り、悪くない反応。ヒロとハマちゃんはウキウキしながら練習出来るんかな、出来るだろと期待している。
しばらくその部屋の前で待っていると、コツコツと硬い音がこちらに近付いて来る。緩く束ねられた長い髪を揺らし、こちらへ向かって来る女性の姿がある。
「おー、宇部、待ってた!」
「鳴尾浜、今日は処理出来ないから詳細な申請は後日でいいわ。とりあえず、あなたたちもこの書類に大学と名前を書いてもらえるかしら。バッヂは今持ってくるから待っててちょうだい」
「シゲトラ先輩、この人は?」
「ウチの監査サマだ。ウチの部って、何かするには幹部を通さなきゃいけねーんだよ」
監査さんから部室立ち入り許可証代わりのバッヂを受け取って、それを指定された場所につける。そして今度は部室に案内される。青女のサークル室より狭くて、暗くて、埃っぽい。
「機材の扱いについては信用するわよ、鳴尾浜」
「おうよ、世界のシゲトラに任せとけ!」
「今日大学構内にいる幹部が私だけでよかったわね。他の幹部だったらこうはいかないわよ」
監査さんが立ち去ると、さあ練習だというムードになる。ただ、この埃っぽさにヒロがちょっとやられているみたいだけど。
「シゲトラ先輩、星ヶ丘の監査さんて毎日部室を開けに大学に来てるんですか?」
「いや? 今とか、活動が落ち着いてる時はそうでもない。宇部はゼミとか畑で忙しいから来てる率が高いんだ。それに賭けてみたけど当たるモンだな!」
さああんま時間ないしやるぞー、と7班のマジハンパないラジオ、略して“マジラジ7”の練習に入っていく。
「あー、誰だよワイヤレス使ってそのままにしたヤツー。ちゃんと片付けとけよなー」
「シゲトラ先輩、この部屋埃っぽすぎるんですけど。世界のシゲトラの力で何かならんですか」
「残念、それはどうしようもない」
「ヒロ、ガスマスクならあるけど」
「ハマちゃん何でそんなん持っとんの!」
「集合する前に買い物してて」
end.
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星ヶ丘の部室をインターフェイス関係で使うときはクッソ細かくてめんどくさい申請が必要なようですが、時と場合によっては掻い潜れるパターンもあるようです。
シゲトラの機材の扱いに関しては、班長になれるほどのミキサーなのでそこそこ信用はあるという感じでしょうか。他に3年ミキサーって誰がおるんやろか星ヶ丘……
思いっきりアウェーな2年生たちがそわそわしながら歩いてるのがきっとかわいいやつ。マジパねえ
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