2016(02)
■青春のスケッチ・コメディー
++++
「わー、しんちゃんに薫くん、久し振りー」
ひらひらと体の前で小さく両手を振るのは、高校の同級生だったバンデンこと磐田護。高い声が懐かしい。久々に実家に戻ってきたということで、こっちもいろいろあって再会したシンと飯に出て、そしたら偶然通りかかったとかそんなヤツだ。
「俺も一緒に座っていーい?」
「おー、座れ座れー」
俺たち3人は高校の時から特別仲が良かったというワケではない。俺とシンは学祭実行委員と生徒会っていう関係で意気投合していたけど、バンデンは3年の学祭準備期間くらいに知り合ったような間柄だ。
有志ステージのために漫才を書き下ろした。自分でやるつもりはなかったけど、シンに「ロイド君がやるんじゃないの?」と言われて後に引けなくなった。そこで俺はシンを巻き込んだ。そこまではよかった。問題は、ネタがトリオ漫才の体だったのだ。
偶然通りかかったバンデンを捕まえ、一緒にやってくれないかと頼み込んだ。それまでに話したことがあるわけでもなかった。どちらかと言わなくても地味で控えめ。だけど、人が良かった。困ってるならいいよーと引き受けてくれて現在に至る。
「えっ、しんちゃんと薫くんて今何してるのー? こっちの大学だっけー」
「俺は向島に出てて。星ヶ丘なんだけど」
「俺も向島ー。で、俺は緑ヶ丘」
「えっ、俺も向島ー。向島大学だよー。すごーい、偶然ー」
……とまあ、互いの進路すら知らないような間柄だ。本当にその辺を通りかかっただけで、バンデンがどこのクラスかも知らなかったのだ。学祭の後で顔を見たら挨拶と立ち話くらいはしていたけど、突っ込んだ話はそこまでしていなかった、気がする。
今は大学で何をやってるのかという質問に、俺は放送部でステージやラジオドラマの台本を書いていると、シンは大祭実行でバタバタ走り回っていると答える。すると、バンデンは2人とも変わらないねーとにこにこするのだ。
「うんうん、何か安心したー」
「バンちゃんは何やってんの」
「えっ俺ー? 俺はねえ大学で天文部なんだけどね、大学祭の出し物でプラネタリウム作ってるよー。真っ暗にした教室に投影するんだけど、アナウンスも自分たちでー」
「えーいいじゃん、お手製プラネタリウムとかいいじゃん! なあロイド君!」
「ああ。すげーなバンデン」
と、話がナチュラルに勉強じゃなくて課外活動の方に行ってしまうのはご愛敬なのだろう。ただ、向島の理系だけに、バンデンは勉強の方もしっかりやってるんだろうけど(俺とシンに関しては聞かれないことを祈ろう)。
「しんちゃんは相変わらず場の空気を盛り上げるし、薫くんはストイックでかっこいいよねえ。彼女もかわいい子だったしモテてたよねえ。今もモテるでしょ?」
「モテないけど」
「――ってちょっと待てよバンちゃん! 何でそこで俺をスルーすんの!」
「えっ、じゃあしんちゃんは彼女い」
「ます! どや!」
「彼女出来てよかったねーしんちゃん」
「つか聞いてほしかったのかよ」
高校の頃とはすっかり立場が逆転しちゃったねーと、シンと俺を見比べてバンデンは苦笑いを浮かべている。シンは彼女とラブラブな画像をこれでもかと見せつけて幸せぶりをアピールしてくるのだ。
「と言うか俺はモテないし、部活が恋人状態だ。高校の時にいたらしい彼女のことも覚えてなくて。バンデンが覚えてるなら教えてほしい」
「何かねー、ロイド君部活に一直線過ぎてそれ以外の記憶がたまにすっぽ抜けるんだって。危ないよなフツーに」
「えっ、危ない危ない。大丈夫? かわいくて、いい子だったよ。あと演劇部で。ロングヘアーでさあ。薫くん演劇部に脚本書き下ろしてたでしょ? そこで出会ったって聞いたよ」
「あー、そーいや学祭で演劇部の舞台に熱視線送ってたなーロイド君。ナツカシー、そうだ、カナコだカナコ!」
いろんな情報が波のように一気に押し寄せてきてワケがわからない。だけど、メンツが揃えばあの頃のような雰囲気にすぐ戻れるのは楽しいし、今となっては新鮮だ。偶然とは言うけど、実は必然だった可能性もある。
「そんな名前だっけ」
「ひでー! ロイド君ひっでー! 劇部どころか高校のマドンナから告られてゲットしときながら忘れたとか人間じゃねーよ!」
「だからアンドロイドなんて呼ばれてんだろ俺は」
「うっわ開き直りやがった!」
「うっせーよ、もうちょっと落ち着いたら思い出す可能性もある」
「しんちゃんと薫くんってやっぱり面白いよねえ」
end.
++++
今夏向島が変わるシリーズ第2弾で登場した磐田護クン、どうやら地元筋のつながりもあったらしい。バンデンと呼ばれていたようだ。
何気にエコさんはこういう3バカみたいなのが好きで、ずっときゃっきゃしてろよもう!ってな具合にきゃっきゃさせてしまいがち。3バカかわいいのよ
この高校の同級生は朝霞Pのあやふやな記憶の鍵になるのか! うん、まあ学祭終わるまではならんやろなあ
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「わー、しんちゃんに薫くん、久し振りー」
ひらひらと体の前で小さく両手を振るのは、高校の同級生だったバンデンこと磐田護。高い声が懐かしい。久々に実家に戻ってきたということで、こっちもいろいろあって再会したシンと飯に出て、そしたら偶然通りかかったとかそんなヤツだ。
「俺も一緒に座っていーい?」
「おー、座れ座れー」
俺たち3人は高校の時から特別仲が良かったというワケではない。俺とシンは学祭実行委員と生徒会っていう関係で意気投合していたけど、バンデンは3年の学祭準備期間くらいに知り合ったような間柄だ。
有志ステージのために漫才を書き下ろした。自分でやるつもりはなかったけど、シンに「ロイド君がやるんじゃないの?」と言われて後に引けなくなった。そこで俺はシンを巻き込んだ。そこまではよかった。問題は、ネタがトリオ漫才の体だったのだ。
偶然通りかかったバンデンを捕まえ、一緒にやってくれないかと頼み込んだ。それまでに話したことがあるわけでもなかった。どちらかと言わなくても地味で控えめ。だけど、人が良かった。困ってるならいいよーと引き受けてくれて現在に至る。
「えっ、しんちゃんと薫くんて今何してるのー? こっちの大学だっけー」
「俺は向島に出てて。星ヶ丘なんだけど」
「俺も向島ー。で、俺は緑ヶ丘」
「えっ、俺も向島ー。向島大学だよー。すごーい、偶然ー」
……とまあ、互いの進路すら知らないような間柄だ。本当にその辺を通りかかっただけで、バンデンがどこのクラスかも知らなかったのだ。学祭の後で顔を見たら挨拶と立ち話くらいはしていたけど、突っ込んだ話はそこまでしていなかった、気がする。
今は大学で何をやってるのかという質問に、俺は放送部でステージやラジオドラマの台本を書いていると、シンは大祭実行でバタバタ走り回っていると答える。すると、バンデンは2人とも変わらないねーとにこにこするのだ。
「うんうん、何か安心したー」
「バンちゃんは何やってんの」
「えっ俺ー? 俺はねえ大学で天文部なんだけどね、大学祭の出し物でプラネタリウム作ってるよー。真っ暗にした教室に投影するんだけど、アナウンスも自分たちでー」
「えーいいじゃん、お手製プラネタリウムとかいいじゃん! なあロイド君!」
「ああ。すげーなバンデン」
と、話がナチュラルに勉強じゃなくて課外活動の方に行ってしまうのはご愛敬なのだろう。ただ、向島の理系だけに、バンデンは勉強の方もしっかりやってるんだろうけど(俺とシンに関しては聞かれないことを祈ろう)。
「しんちゃんは相変わらず場の空気を盛り上げるし、薫くんはストイックでかっこいいよねえ。彼女もかわいい子だったしモテてたよねえ。今もモテるでしょ?」
「モテないけど」
「――ってちょっと待てよバンちゃん! 何でそこで俺をスルーすんの!」
「えっ、じゃあしんちゃんは彼女い」
「ます! どや!」
「彼女出来てよかったねーしんちゃん」
「つか聞いてほしかったのかよ」
高校の頃とはすっかり立場が逆転しちゃったねーと、シンと俺を見比べてバンデンは苦笑いを浮かべている。シンは彼女とラブラブな画像をこれでもかと見せつけて幸せぶりをアピールしてくるのだ。
「と言うか俺はモテないし、部活が恋人状態だ。高校の時にいたらしい彼女のことも覚えてなくて。バンデンが覚えてるなら教えてほしい」
「何かねー、ロイド君部活に一直線過ぎてそれ以外の記憶がたまにすっぽ抜けるんだって。危ないよなフツーに」
「えっ、危ない危ない。大丈夫? かわいくて、いい子だったよ。あと演劇部で。ロングヘアーでさあ。薫くん演劇部に脚本書き下ろしてたでしょ? そこで出会ったって聞いたよ」
「あー、そーいや学祭で演劇部の舞台に熱視線送ってたなーロイド君。ナツカシー、そうだ、カナコだカナコ!」
いろんな情報が波のように一気に押し寄せてきてワケがわからない。だけど、メンツが揃えばあの頃のような雰囲気にすぐ戻れるのは楽しいし、今となっては新鮮だ。偶然とは言うけど、実は必然だった可能性もある。
「そんな名前だっけ」
「ひでー! ロイド君ひっでー! 劇部どころか高校のマドンナから告られてゲットしときながら忘れたとか人間じゃねーよ!」
「だからアンドロイドなんて呼ばれてんだろ俺は」
「うっわ開き直りやがった!」
「うっせーよ、もうちょっと落ち着いたら思い出す可能性もある」
「しんちゃんと薫くんってやっぱり面白いよねえ」
end.
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今夏向島が変わるシリーズ第2弾で登場した磐田護クン、どうやら地元筋のつながりもあったらしい。バンデンと呼ばれていたようだ。
何気にエコさんはこういう3バカみたいなのが好きで、ずっときゃっきゃしてろよもう!ってな具合にきゃっきゃさせてしまいがち。3バカかわいいのよ
この高校の同級生は朝霞Pのあやふやな記憶の鍵になるのか! うん、まあ学祭終わるまではならんやろなあ
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