2016(02)

■ミート&イート

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 たまに外に出て飯を食うのも悪くない。そんなノリでいつものメンツが集まった。石川と美奈、そしてオレ。このメンツで焼き肉というのは何気に初めてかもしれん。石川はともかく美奈が焼き肉というイメージはない。
 値段に応じていくらか品数が変わるコースは、真ん中の物を選ぶ。学生は一番安い物を選ぶ傾向にあるそうだが、その何百円で選択肢が大きく増やせるのであれば問題はないというのがこの卓の意見だ。
 現に、真ん中のコースにしたことで、肉だけでなくサイドメニューやサラダの種類も増えたようだ。美奈はパッチパネルのメニュー表、そのサラダのページを見ながらすでに満足そうな顔をしている。

「美奈、サンチュ頼むか?」
「お願い……それと、ゆずの彩りサラダを……」
「飲み物はどうする」
「生中……」
「とりあえず、な。リンお前は」
「オレも最初はビールでいいぞ」

 飲み放題のコースもつけている。制限時間は120分だ。普通に飲むだけでも十分に元は取れるだろう。石川はパッチパネルを触りながら、最初の注文を決めている。時折、肉の種類などをオレたちに訊ねながら。
 しばしして、注文した物が卓に届いた。形式的な乾杯をして、さっそく肉を網の上に並べていく。トングは美奈と石川が手元にキープしていてオレの出る幕はない。肉の焼ける音と煙が食欲を刺激する。

「……徹、ところで、コミフェは……」
「ああ、美奈には言ってなかったっけ。腰の状態がよくなかったから断念したんだ。あっでも前に美奈から頼まれてた人の画集は知り合いに頼んで確保してもらうし、もうちょっと待ってて欲しい」
「それは、いいけど……腰、大丈夫…?」
「長時間同じ姿勢だとまだちょっと。座ってても何気に辛い。バイトはサポーターしてやってるけど」

 石川は少し前にやらかしたぎっくり腰をまだ引きずっているらしかった。今のところまだピキッと再発はしていないらしいが、それでも日常生活にはちょっとしんどいという程度の影響を残しているようだ。
 そのおかげか趣味の同人活動も精彩を欠き、コミフェとは別のイベントに出す予定だった新刊は落としたそうだ。コミフェに関してはオレもお使いを頼んでいたが、「お前は通販を使え」で片付けられた。

「絵の方も描けてはいるけど長時間はキツい。手っ取り早く画力を上げるには――」
「楽器でもそうだが、普通に考えれば練習ではないのか」
「絵師の、肉……」

 美奈の言葉に一瞬場の空気が止まった気がした。肉の焼ける音だけが主張している。手っ取り早く画力を上げることなど不可能だと石川も美奈もわかっている。しかし、ネタとしてのそれと、“肉”の指す意味だ。

「……こんなところに、美味しそうな絵師が……機械を描くのが、上達しそう……」
「俺も柔らかい線を描けるようになるんだろうな。中世的な世界観の絵を描くのも楽しみだ」

 そういう意味では互いに捕食対象であったかと、石川と美奈のやりとりに知る。たまに石川と美奈の間で散る火花は見るが、ここでもか。そう考えるとオレなんかも音楽に携わる者の肉を食らえばあらゆるセンスが得られるか。
 いや、思いついた顔を食らおうとしたが、絶対に不味いしああはなりたくない。確かにジャズに関する知識や腕は欲しいが、あの人を食らってもピアノは上達せんだろうし、どうせ食らうなら対象が育ちきるまで待たねばならん。
 しかし、塊のステーキ肉をハサミでバツン、バツンと切り落としながら言う美奈が誰よりもシャレにならない。パッと見無表情なのがよりそれらしく見える。狙った獲物は逃さない、ハンターの目に。

「石川、ライスの大を頼んでくれ」
「ああ、俺もライス中でも食べようかな。美奈はライス、どうする」
「私は、いい……」
「そう」
「あっ……一緒に、テールスープを……」
「テールスープ、っと。あーあ、俺は画力の前に万全な腰だな」
「……電気、かけてもらったら…?」


end.


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絵師はなぜか焼き肉オフをする、ではないですが、星大組が焼き肉を食べに来た模様。リン様が普通の人である……ぶっ飛べリン様
美奈は焼肉屋でもサラダとか葉っぱを中心にもぐもぐしてそうだなと思いました。お肉もまあまあ食べるけどね!
兄さんの腰は結構しんどそうだねえ。痛くはないみたいだけどだる重いような感じなのかな? バイトはサポーターしながら頑張ってるんだろうなあ

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