2016(02)

■ああ夏休み、課題かな

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「おーい、川北ー」
「はーい、なんですかー?」

 バサッと前の前に広げられる紙には、格子が描かれている。その紙に書いてある文字を読んでいくと、これはシフト表だとわかる。カッコ仮と後ろについているから、これから決まる先のシフト。
 今はテスト期間でバタバタしているけど、春山さんはバイトリーダーの書類仕事もこなしている。今日の俺はA番で、自習室のB番には林原さんと冴さんが入っている。あっでも今日は土曜日でテストはないからレポートの人が多めかな。

「帰省するなら日程を教えてくれ」
「あっ。えーと、お盆の週に1週間帰ります」
「他には?」
「8月はこっちにいて、9月のいつ帰ろうかなーっていう段階ですー」
「9月か、わかった。確認するが、8月は盆だけだな?」
「そうですー」

 それならいいんだと春山さんは俺の盆辺りの枠を塗り潰していく。そもそもお盆にまで情報センターが開放されているのかと言えば、さすがにお盆はやってないそうだ。
 そう言えば、夏休みやなんかの長期休暇の時はいつ実家に帰るか春山さんに言っとかなきゃいけなかったっけ。センターに入ったばかりのころにそう聞いていたけど、すっかり忘れてた。

「スイマセン春山さん、言うの忘れてて」
「いや、アクティブなメンバーで実家から出て来れないほど遠いのは私とお前だけだからな。最悪日程が被っててもリンに投げるつもりだったし」
「それはそれで大丈夫なんですか? いくら林原さんでも」
「夏休みは人なんかそうそう来ねーからな、ヘーキヘーキ」

 そうなんですねーと納得していると、自習室から鬼の形相をした林原さんが出て来る。その手に持っているのはカードキー。あー、これは例によってかな?

「川北、B-07。一時退出時間の超過だ」
「はーい」
「相変わらずリンはバッサリ行くなあ。そんなだから掲示板の星大スレとかで殺害予告出されんだろってな」
「林原さんなら返り討ちにしそうですけどねー」

 繁忙期のテスト期間はこんな風にバタバタするのに、自習室の中ではもう繁忙期を過ぎた休みのことに目が向いている。はー、早く夏休みにならないかなあ。
 繁忙期のセンターは、通常の利用規約の他にちょっとしたルールが増えたりする。そういう注意はカードキーを渡す時に口で言ってるけど、みんな生返事だから聞いてるのか聞いてないのか。
 でも、名簿に学生番号と名前を書くときに、途中退出は時間が決まってますよーってことを了承した上でお願いしますって言ってるから、最初にそう言ってる情報センターの勝ちなんだよなあ多分。

「あれっ、そう言えば冴さんも帰省するって言ってませんでしたっけ」
「冴なんか実家からでも大学には出て来れるからな。アイツの帰省は帰省にカウントしない」
「シフトをギューって捻じ込むんですねー」
「当然だ。そうでもしないといくらリンがいるっつっても回らないからな。あーあ、今からでもあと1人2人スタッフ増えねーかなー。人材難は課題だぞ」
「さすがにこの時期からじゃ難しいと思いますよー」
「だよなー、私もこんなところに籠ってばかりじゃなくて映画見に行ったりしたいんだぞ」

 そんなことをやっている間にも、利用者はひっきりなしに入れ替わっていく。レポートや課題をやり遂げてすっきりしたような人や、これから頑張るぞって焦ってる感じの人、いろいろな人がいる。

「あーあ、早く夏休みにならないですかねー」
「あーあ、早く座ってるだけで給料入るようになんねーかなー」
「ちょっ、それは」
「言ってる意味は同じだろ。早く夏休みになんねーかなっつってな」
「うーん、まあ、確かにテスト期間の忙しさはわかりましたけどー」


end.


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土曜日でも星大情報センターは解放されています。テストはないけどレポートや課題をやる人でごった返すらしい。
ミドリが帰省のことを考え始めるのはもう少し先のこと。合宿が終わったら少しゆっくりと帰るのかな。
情報センターは物騒と言うかえっというようなことをさらっと言って誰も疑問に思わないくらいがちょうどいいなあ

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