2016(02)

■目星とドロップアイテム

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「くーげぬーまくーん!」
「……三浦、何のつもりだ」

 テスト期間だからサークルはお休みにします、というサークルでもないのがこのGREENsらしい。テスト前だろうがテスト期間だろうがごく普通にサークルはやっている。
 ただ、こんなときだからこそサークルにやってきて賭けに出る奴もいるとかいないとか。その話は事前に聞いていたけど、こういうことかと理解したのはたった今。
 身長差が7センチしかないのをいいことに、三浦はよく俺に飛びついて来たりヘッドロックを仕掛けてきたりする。今回もその延長かと思えば様子が少し違った。

「そのまま絞め上げられたくなければ社会学入門のプリントをコピーさせてくださいお願いします」
「人の首に腕かけといて言うセリフじゃないじゃん?」
「あと、出来れば市民福祉論も」
「市民福祉論取ってねーし」
「えーっ!?」
「――っておい、絞めるな!」
「何で取ってないの!」
「興味ないからじゃん?」

 微笑ましい光景だねえ、とニコニコして俺たちを眺めている慧梨夏サンにはどんな目玉がついているのか全く理解できない。つか慧梨夏サンも現社だし、市民福祉論はそっちに賭けてもいい気はする。
 緑ヶ丘大学の社会学部は3つの学科に分かれているけど、学科を跨いで講義を履修することが出来る。三浦は福祉系の講義も少し履修しているようだけど、俺はメディア系の講義を取っている。
 そんなワケで福祉系の講義である市民福祉論は最初から眼中になかったし、同じ現代社会学科にいるとは言え、今後もそう都合よく似たような履修になるとは限らないだろう。

「うう、慧梨夏サーン、鵠沼クンがイジメるー!」
「うんうん、あるある。さっちゃん、ドンマイ。社学だと見た目の学部と履修登録が全然違うとかあるあるだからね」
「なるほど、三浦はひとつ学びました。――というワケで、慧梨夏サンは1年の時に市民福祉論を取ってたとか」
「残念ながら」
「えーっ!」
「三浦、講義ノートやプリントなら、集る相手を間違えてる」

 そう言葉を発したのは、さらに遠巻きでこのやり取りを眺めていたらしいサトシさんだ。無表情だけに何を考えているのかはわからないけど、慧梨夏サンには集れないということだけはわかった。

「もー、何てこと言うのサトシ!」
「事実を言ったまでだ。お前に集ることほど無駄なことはない」
「失礼しちゃうなー、マジメにやってる授業はマジメなのにー」
「康平、三浦。テスト期間にコイツに近付くと集られるから気を付けろ」
「ひっど! ひっど! さすがに1年生からは集らないだろうし自分だってカズからノート借りてたクセにー、人のこと言えないクセにー!」
「あれは病欠の分の補充でお前のサボりと一緒にするな」

 やいやいと言い争いを始めてしまった慧梨夏サンとサトシさんからそーっと離れて、俺と三浦はその光景を眺めている。怖いようでいて、内容はしょーもない辺りがまだ救いだけど。
 慧梨夏サンとサトシさんの些細なケンカ自体はたまーにあるし、別に珍しくもないようだ。通りかかった尚サンにどうしようと聞いてみたら、ほっとくのが一番、と。そりゃそうだ。

「大体サトシさんから慧梨夏サンに突っかかってってるのが面白いんだって、逆にね。サトシさんて景以外にあんま自分から話しかけたりしないけど慧梨夏サンには突っかかるし、むしろ慧梨夏サンを中継して他の人とコミュニケーション取ってる感じ?」
「……意味わかんねーじゃん? 好きなのか嫌いなのか。でも確かにかき氷の時も慧梨夏サンの話してたな」
「で、鵠沼クン社会学入門のプリントは」
「そう言いながら関節キメようとすんのやめろ」


end.


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女子のアホの子枠さっちゃんが例に漏れずテストもちょっと怪しい感じで。おバカさんではないとは思うんだけど、どっかアレなんやろなあ。
そして慧梨夏とサトシがやいやい言い合うのはもうちょっとガーガーやりたい。4年生がそれをどう見てるのかとかね。サトシと仲のいい景くんも出したいし。
三浦のさっちゃんは安定のさっちゃんなので最近ちょっとGREENsのお話には欠かせない存在になりつつあるぞ!

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