2016(02)
■What will be, will be.
++++
「さて、キューシートの書き方ですね。この線だけのキューシートは論外として」
「やァー、何を言いヤすか! このシンプルイズベストなキューシートの何がロンアタなンすかァー!」
「は?」
そう揃った声は俺とこーた、2人分。例によって律がふざけたことを言いやがる。これから始まるのは、奈々を対象としたキューシートの書き方講座だ。
奈々に対するミキサー指導は俺たち2年生が3人で力を合わせて行っていかなくてはならない。3年生の先輩にミキサーの方がいらっしゃらないがために。
「律は措いといて、改めてキューシートな」
「お願いしますッ!」
「キューシートは番組進行表な。MMPのテンプレの場合は特に音の波を書いたりしないんだけど、これがインターフェイスのテンプレ」
「あっ、何か枠が分かれてますねッ!」
「ここが音の波を書くところ。時間に応じて、BGMやMがどういうレベルで流れてるのかっていうのを書くところ。ここは主にミキサーが使う欄な」
奈々もこれから夏合宿などで番組を作る機会が出てくる。サークルでやっているだけなら律みたいな適当さでも大した問題じゃないけど、外でやるならちゃんとしないとダメだ。
そもそも、律のキューシートの何がどう適当なのかと言うと、文字も何もなく本当に横線を引いただけなのだ。昼放送のキューシートだろうから俺たちなら大体の構成は把握できるんだけども。
「じゃあ、こーたが箇条書きで作った番組構成をキューシートにしてみて」
「頑張りますッ! えーっと、オープニングが2分でーッ」
如何せん俺たちはちょっと油断するとぐだぐだになってしまう。だからうだうだと口で教えるよりは実際にやってみてもらって、それを見ながらああだこうだとツッコミを入れる方がいいだろう。
「野坂先輩野坂先輩ッ、これ、Mはイントロの秒数なんかも書いた方がいいんですかッ!」
「や、自分がわかっテるなら別に書かなくても特に問題は」
「律! 俺は書いてる。イントロ乗せの関係でアナさんに伝えたりすることもあるし」
「なるほどーッ」
「イントロの取り方についてもまたあるんだけど、AD作業についてはまた今度教えるわ。とりあえず続き書いてみて」
「はーい」
まだ完成には程遠いけど、奈々のキューシートは俺のそれともこーたのともまた違うクセがあるなと思う。律の物とは当然比べるまでもなく奈々の方が出来はいい。
俺は秒数がめちゃくちゃ細かいと言われるし、こーたの物は文字情報が必要最低限。ただ、音に関する情報は本人なりの書き方で結構細かく書いてある。律は論外。論ずるに値しない。
奈々のキューシートは初めてだからなのかもしれないけど本当に基本に忠実だ。時間に応じてコーナーを分ける横線があって、トークの欄には簡単な内容を。曲に関してはイントロの秒数や何分何秒かけるかという情報など。
ただ、本人なりに気を付けたいポイントなんかが紙の余白に米印で注釈として書いてある。BGMレベル注意とか、ゲイン注意とか。俺たちが忘れかけている初心というヤツかもしれない。
「出来ましたッ!」
「うん、こんなモンか」
「どーすかどーすか」
「可も不可もない。ぶっちゃけ面白くはない」
「面白さを求められたらうちにはどうしようもないっす」
「だから、そんなときこそ自分のこのキューシートを――」
「律! だからお前は」
「自分のこのキューシートはMMPのアナウンサー事情の問題スわ。アナ運に恵まれた野坂に理解してもらわなくてケッコーす」
アナ運。それはMMPを生きる上では重要になる要素。確かに俺は恵まれているとは思う。だけど、一応インターフェイスでやることも考えるとだなあ。
「いいかい奈々、野坂さんのキューシートはトークタイムを完璧に合わせてくれる菜月先輩だからこそ計画通りに行くけれど、圭斗先輩やヒロさんのようないつ逆キューが飛んでくるかわからないアナウンサーさんの場合は土田さんのキューシートくらいじゃないと常に変わる番組構成に対応しにくくなるんですね。でも土田さんの適応力はともかくキューシートは見習わないようにねー」
「はいっす!」
end.
++++
りっちゃんのキューシートはこのために用意された悪意に満ちたボケなどではなくガチなヤツ。しっかり決めても意味がないという罠。
ノサカと神崎が「は?」と声をそろえてりっちゃんに言ってるのも何気に珍しい図だよなあと。
昨日圭斗さんが「2年生に関しては村井サンが指導してくれれば~」などと言ってたけど、まあ、なるようになるようだ。
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「さて、キューシートの書き方ですね。この線だけのキューシートは論外として」
「やァー、何を言いヤすか! このシンプルイズベストなキューシートの何がロンアタなンすかァー!」
「は?」
そう揃った声は俺とこーた、2人分。例によって律がふざけたことを言いやがる。これから始まるのは、奈々を対象としたキューシートの書き方講座だ。
奈々に対するミキサー指導は俺たち2年生が3人で力を合わせて行っていかなくてはならない。3年生の先輩にミキサーの方がいらっしゃらないがために。
「律は措いといて、改めてキューシートな」
「お願いしますッ!」
「キューシートは番組進行表な。MMPのテンプレの場合は特に音の波を書いたりしないんだけど、これがインターフェイスのテンプレ」
「あっ、何か枠が分かれてますねッ!」
「ここが音の波を書くところ。時間に応じて、BGMやMがどういうレベルで流れてるのかっていうのを書くところ。ここは主にミキサーが使う欄な」
奈々もこれから夏合宿などで番組を作る機会が出てくる。サークルでやっているだけなら律みたいな適当さでも大した問題じゃないけど、外でやるならちゃんとしないとダメだ。
そもそも、律のキューシートの何がどう適当なのかと言うと、文字も何もなく本当に横線を引いただけなのだ。昼放送のキューシートだろうから俺たちなら大体の構成は把握できるんだけども。
「じゃあ、こーたが箇条書きで作った番組構成をキューシートにしてみて」
「頑張りますッ! えーっと、オープニングが2分でーッ」
如何せん俺たちはちょっと油断するとぐだぐだになってしまう。だからうだうだと口で教えるよりは実際にやってみてもらって、それを見ながらああだこうだとツッコミを入れる方がいいだろう。
「野坂先輩野坂先輩ッ、これ、Mはイントロの秒数なんかも書いた方がいいんですかッ!」
「や、自分がわかっテるなら別に書かなくても特に問題は」
「律! 俺は書いてる。イントロ乗せの関係でアナさんに伝えたりすることもあるし」
「なるほどーッ」
「イントロの取り方についてもまたあるんだけど、AD作業についてはまた今度教えるわ。とりあえず続き書いてみて」
「はーい」
まだ完成には程遠いけど、奈々のキューシートは俺のそれともこーたのともまた違うクセがあるなと思う。律の物とは当然比べるまでもなく奈々の方が出来はいい。
俺は秒数がめちゃくちゃ細かいと言われるし、こーたの物は文字情報が必要最低限。ただ、音に関する情報は本人なりの書き方で結構細かく書いてある。律は論外。論ずるに値しない。
奈々のキューシートは初めてだからなのかもしれないけど本当に基本に忠実だ。時間に応じてコーナーを分ける横線があって、トークの欄には簡単な内容を。曲に関してはイントロの秒数や何分何秒かけるかという情報など。
ただ、本人なりに気を付けたいポイントなんかが紙の余白に米印で注釈として書いてある。BGMレベル注意とか、ゲイン注意とか。俺たちが忘れかけている初心というヤツかもしれない。
「出来ましたッ!」
「うん、こんなモンか」
「どーすかどーすか」
「可も不可もない。ぶっちゃけ面白くはない」
「面白さを求められたらうちにはどうしようもないっす」
「だから、そんなときこそ自分のこのキューシートを――」
「律! だからお前は」
「自分のこのキューシートはMMPのアナウンサー事情の問題スわ。アナ運に恵まれた野坂に理解してもらわなくてケッコーす」
アナ運。それはMMPを生きる上では重要になる要素。確かに俺は恵まれているとは思う。だけど、一応インターフェイスでやることも考えるとだなあ。
「いいかい奈々、野坂さんのキューシートはトークタイムを完璧に合わせてくれる菜月先輩だからこそ計画通りに行くけれど、圭斗先輩やヒロさんのようないつ逆キューが飛んでくるかわからないアナウンサーさんの場合は土田さんのキューシートくらいじゃないと常に変わる番組構成に対応しにくくなるんですね。でも土田さんの適応力はともかくキューシートは見習わないようにねー」
「はいっす!」
end.
++++
りっちゃんのキューシートはこのために用意された悪意に満ちたボケなどではなくガチなヤツ。しっかり決めても意味がないという罠。
ノサカと神崎が「は?」と声をそろえてりっちゃんに言ってるのも何気に珍しい図だよなあと。
昨日圭斗さんが「2年生に関しては村井サンが指導してくれれば~」などと言ってたけど、まあ、なるようになるようだ。
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