2016(02)

■あるあるあるえ

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 7月に入って、情報センターを利用する人も増えてきたように思う。確かに、授業を受けていて「課題は学内システムから提出してください」とか「レポートの提出日はいついつです」みたいな話を聞くようになっていた。
 俺は1年で授業もそこそこあるから空いている時間で出来るだけっていう勤務形態なんだけど、これが授業も減ってきている3・4年生だったら。春山さんと林原さんはずっとここにいるような気がする。

「川北、コピー用紙の搬入を手伝ってくれ」
「はーい。あれー、でもまだたくさんありますよー?」
「この時期はレポートだの何だので消費ペースが速くなるからな。用意しすぎるということはない」
「そうなんですねー」

 プリンター台の下にあるケースに用紙をしまって、林原さんはしっかりとケースに鍵をかけた。ただプリンターの脇に紙を置いておくと白い紙を盗んでいく人がいるから管理は厳重にしなければならないと教わった。

「これから繁忙期に入るからな。コピー用紙泥棒くらいなら正直可愛いと思うレベルの不届き者が出ると覚悟をしておけ」
「えっ、泥棒が可愛いんですかー?」

 今日は土曜日で人がそんなに多くない。事務所でこれから始まるのは繁忙期に備えた事案あるあるの紹介。どういう利用者にも親切に、かつ毅然と接しなければならないと前置きをした上で。

「例えば、学内システムにログイン出来んと言って来る者。学内システムのログインはアルファベットの大文字小文字が区別される。パス違いでなければCAPS LOCKを疑え」
「なるほど」
「他には、プリンターの紙が切れたとかうまく印刷できんと言った訴えだ。紙切れは迅速に対応すること。出来ればなくなる前に補充するのがベストだ。印刷不良に関しては設定を勝手に弄ってないか確認すること」
「ふむふむ」
「あとプリンター関連で言えば、刷り上がった書類に誤字を見つけたから年間印刷枚数を戻して欲しいといった訴えがあるな。これは情報センターの管轄ではないし、よほどでなければ年間の印刷枚数を使い切ることないと説明すれば大体の奴は納得する」

 林原さんから語られる繁忙期に増える利用者さんからの訴えを聞いて行くと、俺が思っていたよりもずーっと初歩の初歩の話のように思える。ネタなんじゃないかと思うくらいに。
 ただ、普段情報センターを使わない学生はこっちが思ってもみないことを平気でやらかすし、こちらの常識が通じないそうだ。今時の大学生はパソコンくらい使えるだろう。そういう先入観を持ってはいけないと。

「いろんな訴えが飛んでくるんですねー」
「これくらいなら序の口だぞ。課題の答えがわからんなどと平気で言って来るからな」
「ええっ!? 情報センターのスタッフに聞くんですかそれを」
「知るかとしか言いようがないが、講義で聞いたことを思い返してもわからんならネットで調べろと言っても検索できない、ネット利用の制限がかかっているなどと因縁をつけられてだな」
「ええ~……理不尽だなあ」
「繁忙期とはそういうものだ」

 これでもまだ可愛い方だと林原さんは淡々と話を続ける。これらの人たちはまだセンターのスタッフに対して脅したり威圧的な態度でない分こちらも穏やかに接することが出来るのだぞ、と。
 センターのスタッフを脅したりする人がいるのかと思うと少し怖い。でも、そういう人はごく少数だし大体の人はごくごく普通なんだそうだ。本当にそうならいいけれど。

「でも、もし怖い人に詰め寄られたらどうしよう」
「心配なかろう。春山さんとかいうその筋の構成員を日頃から見ていると、そこらのガキどもなんぞ恐れるに足らん」
「あー……不思議と納得出来ちゃったことは内緒にしといてください」


end.


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情報センターの繁忙期に向けて、ミドリが覚悟を決めようとする回。人が少ないときに準備をしておくようだ。
春山さんをその筋の構成員などと言ってしまう安定のリン様だけど、それに納得し始めるミドリ、大分情報センターに慣れてきたらしい。
情報センターあるあるのこんな事案でばたばたしてるミドリも実際に見てみたいものだ

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