2016
■悪夢殲滅大作戦
++++
「みんな、掃除をしますよ!」
ゴミっためだし雑然としていてとてもそうは思えないけど、ここは女子大のサークル室。油断するとすぐに汚くなって大変なことになってしまう。だから定期的に大がかりな掃除をしなければいけないとボクは思い始めている。
今日は、事前にみんなに連絡をして大々的に設けた掃除の日。ボクはジャージに身を包み、やる気満々。他の子たちにも汚れて平気な服で来てほしいという連絡はしてあるし、今日は本当に徹底的にやらなきゃいけないんだ。
「綺麗になるのはいいけど、アタシ掃除苦手なんだよねー」
「ヒビキ先輩、そこを何とか」
「よーし、あたしも頑張らなきゃ」
「うふふ、さとちゃん割烹着似合うねー」
「さとかーさん」
「さとかーさん」
「おかーさんって言わないの!」
この時期は湿度の高い日が増えてカビが繁殖しやすくなるし、食べ物だってすぐに悪くなる。食べこぼしたお菓子のクズに虫や何かが寄ってきたって全然不思議じゃない。そうなる前に原因を少しでも取り除くんだ。
そして、大事な定期イベントはゴキブリ退治。サークル室の至る所にホイホイは仕掛けてある。捕まってるといいんだけど。他の大学さんはサークル室にゴキブリなんか出ないって言ってるから、ウチの環境が特殊なんだと思う。
「きゃああああっ!」
「啓子!?」
「直っ、直っ、ゴキっ」
椅子に飛び乗った啓子が指さした方で、ゴキブリがカサカサと走っている。ホイホイまで追い込めればこちらのものだけど。動くゴキブリに、他のみんなからも悲鳴が上がる。ここはゴキブリが特別苦手じゃないボクが何とかしなければ。
ゴキブリの走りそうなルートを先読みして撤去したばかりのホイホイを改めて置いてみるけど、警戒されているのかなかなか近付いてくれない。ボクが狙っているのがわかるのか。なかなか賢い。どうする。
「って言うか直それ中身入ってるんだからあんま振り回さないでよ飛び出たらどうすんの!」
「大丈夫だよ、3匹いるけどしっかりくっついてるし」
「覗かなくていいから! って言うか何で3匹もいるの!」
「それはゴキブリにとって住みよい環境だからだろうね」
「ヒビキ先輩の所為ですよお菓子ばっかり食べて片付けないから!」
「えー!? 掃除が直クン任せの時点でKちゃんも同罪だよ」
「アタシはこまめにやってます!」
カサカサと逃げ回るゴキブリは素早い。洗剤をかければいいんだろうけど耐性のついたハイパーゴキブリとかにバージョンアップされても困る。出来れば生け捕りにしたい。殺さずの精神は甘いのかもしれない。だけど、目指すは生け捕り。
「壁に止まってる……飛んできたらどうしよう」
「やだ怖い」
「よ、よし、動きが止まってる。みんな静かにしてくださいね…!」
ホイホイを手に、そろりそろりと近付いて。仲間のいる小屋に向かって来てくれればいいんだけど。
「直クン、ちょっといいかな」
「えっ?」
スパーンと鋭い音がしたかと思えば、ボクが今まで狙っていたそれはひっくり返って床に落ちている。しばらくピクピク震えて動くことのなくなったそれを素早く片付けるのは、丸めた古新聞を手にした沙都子。
「さ、沙都子かっこいい…!」
「さとかーさん!」
「さとかーさん!」
「ホルモンとかで仲間を呼ばれても困るし、ゴキブリの歩いたところは特に綺麗にして、虫除けのハッカ油を仕掛けましょう。帰りにバルサンね」
さとかーさんの指揮で、改めて掃除が始まる。何か、一気に疲れたなあ。殺さずに捕まえようとするのは無謀だったのだろうか。何はともあれ掃除の続きだ。洗剤も使いつつ丁寧に磨き上げないと。
「って言うか沙都子アンタ躊躇無く叩いたけど、ゴキブリの中身とか大丈夫なの。グロに入らないの?」
「台所関係なら多分大丈夫なんだと思う。お魚も捌けるし。あっ、今日の夕飯は鰯のつみれ汁にしよっと」
end.
++++
さとかーさん、どうやらゴキブリは大丈夫らしい。大丈夫って言うか、怖いには怖いけど退治は出来るっていう感じ。
サドニナとユキちゃんがさとちゃんを「さとかーさん」ってぴよぴよしながら言ってるのが地味に好きで多用しがち。
ゴキブリが台所関係かどうかはちょっと微妙ですが、家庭でよくある光景であるなら大丈夫なのかしらさとちゃん……グロとホラーが苦手なんだけども。
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「みんな、掃除をしますよ!」
ゴミっためだし雑然としていてとてもそうは思えないけど、ここは女子大のサークル室。油断するとすぐに汚くなって大変なことになってしまう。だから定期的に大がかりな掃除をしなければいけないとボクは思い始めている。
今日は、事前にみんなに連絡をして大々的に設けた掃除の日。ボクはジャージに身を包み、やる気満々。他の子たちにも汚れて平気な服で来てほしいという連絡はしてあるし、今日は本当に徹底的にやらなきゃいけないんだ。
「綺麗になるのはいいけど、アタシ掃除苦手なんだよねー」
「ヒビキ先輩、そこを何とか」
「よーし、あたしも頑張らなきゃ」
「うふふ、さとちゃん割烹着似合うねー」
「さとかーさん」
「さとかーさん」
「おかーさんって言わないの!」
この時期は湿度の高い日が増えてカビが繁殖しやすくなるし、食べ物だってすぐに悪くなる。食べこぼしたお菓子のクズに虫や何かが寄ってきたって全然不思議じゃない。そうなる前に原因を少しでも取り除くんだ。
そして、大事な定期イベントはゴキブリ退治。サークル室の至る所にホイホイは仕掛けてある。捕まってるといいんだけど。他の大学さんはサークル室にゴキブリなんか出ないって言ってるから、ウチの環境が特殊なんだと思う。
「きゃああああっ!」
「啓子!?」
「直っ、直っ、ゴキっ」
椅子に飛び乗った啓子が指さした方で、ゴキブリがカサカサと走っている。ホイホイまで追い込めればこちらのものだけど。動くゴキブリに、他のみんなからも悲鳴が上がる。ここはゴキブリが特別苦手じゃないボクが何とかしなければ。
ゴキブリの走りそうなルートを先読みして撤去したばかりのホイホイを改めて置いてみるけど、警戒されているのかなかなか近付いてくれない。ボクが狙っているのがわかるのか。なかなか賢い。どうする。
「って言うか直それ中身入ってるんだからあんま振り回さないでよ飛び出たらどうすんの!」
「大丈夫だよ、3匹いるけどしっかりくっついてるし」
「覗かなくていいから! って言うか何で3匹もいるの!」
「それはゴキブリにとって住みよい環境だからだろうね」
「ヒビキ先輩の所為ですよお菓子ばっかり食べて片付けないから!」
「えー!? 掃除が直クン任せの時点でKちゃんも同罪だよ」
「アタシはこまめにやってます!」
カサカサと逃げ回るゴキブリは素早い。洗剤をかければいいんだろうけど耐性のついたハイパーゴキブリとかにバージョンアップされても困る。出来れば生け捕りにしたい。殺さずの精神は甘いのかもしれない。だけど、目指すは生け捕り。
「壁に止まってる……飛んできたらどうしよう」
「やだ怖い」
「よ、よし、動きが止まってる。みんな静かにしてくださいね…!」
ホイホイを手に、そろりそろりと近付いて。仲間のいる小屋に向かって来てくれればいいんだけど。
「直クン、ちょっといいかな」
「えっ?」
スパーンと鋭い音がしたかと思えば、ボクが今まで狙っていたそれはひっくり返って床に落ちている。しばらくピクピク震えて動くことのなくなったそれを素早く片付けるのは、丸めた古新聞を手にした沙都子。
「さ、沙都子かっこいい…!」
「さとかーさん!」
「さとかーさん!」
「ホルモンとかで仲間を呼ばれても困るし、ゴキブリの歩いたところは特に綺麗にして、虫除けのハッカ油を仕掛けましょう。帰りにバルサンね」
さとかーさんの指揮で、改めて掃除が始まる。何か、一気に疲れたなあ。殺さずに捕まえようとするのは無謀だったのだろうか。何はともあれ掃除の続きだ。洗剤も使いつつ丁寧に磨き上げないと。
「って言うか沙都子アンタ躊躇無く叩いたけど、ゴキブリの中身とか大丈夫なの。グロに入らないの?」
「台所関係なら多分大丈夫なんだと思う。お魚も捌けるし。あっ、今日の夕飯は鰯のつみれ汁にしよっと」
end.
++++
さとかーさん、どうやらゴキブリは大丈夫らしい。大丈夫って言うか、怖いには怖いけど退治は出来るっていう感じ。
サドニナとユキちゃんがさとちゃんを「さとかーさん」ってぴよぴよしながら言ってるのが地味に好きで多用しがち。
ゴキブリが台所関係かどうかはちょっと微妙ですが、家庭でよくある光景であるなら大丈夫なのかしらさとちゃん……グロとホラーが苦手なんだけども。
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