2016

■雨が降ったら開けゴマ

公式学年+1年

++++

「うわっ雨だ!」
「急すぎるよ!」

 男たちがわあわあと逃げ惑う中、アタシは迷わず開く傘。あれはこういうことだったのかと納得をして、先輩の言うことを聞きなさいと頭の中で巡る言葉に頷いた。
 持って来ようか置いて行こうか悩んだ晴雨兼用傘。日焼けはしたくないけど荷物になるし、そしてアタシは基本機材持ち。その役割が荷物を増やすことを躊躇わせた。

「安曇野お前ナニ悠々と傘差してんだ!」
「備えてたアタシの勝ちだし!」
「高木、機材は!?」
「全部安曇野さんが持ってる!」
「じゃあ大丈夫だな!」

 今日はゼミのフィールドワークの日。班ごとに作る30分のラジオ番組のための素材を収録したり、町の人にインタビューをしたりする計画だった。
 これは毎年2年生が通る課題で、今年も例に漏れず。4~5人1組の班が組まれていて、この班で1年間動くことになるそうだ。
 3班はさっそくキャラが濃いなどと言われている。気付けばゼミをまとめつつある由香里さんは、知る人ぞ知るレイヤー。あと放送サークルのミキサーに体育会系。異種総合班、的な?

「つか安曇野お前何で傘なんか持ってんだよ」
「でもそれって日傘にもなるヤツだよね」

 雨宿りがてら駆け込んだカフェで、傘を持っていたことを恨まれる。確かに、この天気で傘なんか持とうという気にはそうそうならない。
 アタシは普段から学内を歩くときも日焼け防止のために傘や帽子は使ってるけど、このフィールドワークではそれが邪魔になると思ったから。

「千葉先輩に持たされた。雨降るから持ってけって」
「果林先輩が?」

 大学を出る前、荷物をまとめていたアタシに声をかけてきたのが3年生の千葉先輩だった。この人はMBCCだとかで同じサークルの高木と仲が良い。その関係もあってウチの班はたまに絡まれる。
 傘をどうするか悩んでいると、悪いことは言わないから持って行けと言われた。スタジオは地下だけど、雲ひとつない天気だったし予報でも降るとは言っていない。

「高木、アンタ、結構な雨男なんだって?」
「あー……言われるけど偶然だと思ってたなあ」
「マジか」
「何か、千葉先輩が言うには高木が結構降られるから機材持ち歩くなら折り畳み傘か防水カバー持っとくのがベターとかって」
「ま、事実当たってっし千葉ちゃんさまさまだな」

 雨が降るとは聞いてないから傘を持たずに歩いたら、急に降られて結果コンビニで適当なビニ傘を買うことがよくあると高木は語る。部屋にはビニ傘が溜まっているとか。
 千葉先輩がアタシに傘を持てと言ってきたのはそういう光景を見ているからだろうなという想像は簡単だった。ましてやこの頃はいつ何時ゲリラに遭うかわからないし。

「由香里さんへの土産話にはなったし」
「あー、佐竹な。アイツ晴れ男とか雨男とか信じる性質か?」
「イベントの時は天気に敏感らしいけどね。でも雨のシチュエーション撮りたいときに自然なのを自在に降らせれたら便利っしょ」
「……えーと、俺は何をさせられるのかな」

 今日雨が降ったのは偶然かもしれないけど、それでも雨男の力を念頭に入れておくのも悪くない。ゼミのたっかい機材を水没させたら後が面倒だし。


end.


++++

TKGは泣く子も黙る雨男、後に雨神様と呼ばれさらにそれからは雨だけでなくいろいろなものを引き付けるんで疫病神になるんですね
あずみんは日焼けを嫌うので日傘を持ってそうだなと思ったんだけど、梅雨時期はやっぱり晴雨兼用傘の方が便利なんだろうなあ
とりあえず、男子は濡れながらわあわあ逃げ惑っていていただきたい。TKGは傘に関して学習しないんで機材はずっとあずみんに持たせよう

.
87/100ページ