2018(02)
■運命の恋よ、来い
++++
「あー、いいなー、いいよねー」
「どうしたの沙都子」
「いつものヤツ」
「ああ、朝ドラに影響されてるんだね。啓子、今って何やってるっけ」
「恋愛物」
沙都子は朝のドラマをよく見ているらしい。そして、それにどっぷり浸かって憧れを抱いたり影響されたりは日常茶飯事。今やっているのが恋愛物らしいから、まあ、運命の恋みたいな物に憧れてるんだろうと思う。
「でも、現実にないからこそドラマチックな恋愛のお話がときめくと言うか」
「今からでしょうよそんなの」
「そうかもしれないけど、今はないから」
「まあね。アタシもないワケだし人のことは言えないけど。それにしたって沙都子は朝ドラに影響されやすくない?」
「確かにこないだまでは落語やお笑いを見てたよね。で、その前は洋食のレパートリーを増やそうとしたり」
それが悪いというつもりはそうそうないし、それだけどっぷりハマれる趣味というのは羨ましくも思う。運命の恋みたいな物にしても、沙都子はいい子だからきっとすぐだとボクは思う。
如何せんABCというサークルと恋愛という単語がなかなか結びつかない。ヒメ先輩は谷内先輩と付き合っているけど、他の人の動きはあまり聞かない。強いて言えばヒビキ先輩が合コンに励んでいるくらいかな。
「でも、たまに恋の話に憧れるくらいいいでしょ?」
「ダメとは言ってないでしょ」
「あたしにももしかしたらいつか運命の人が」
「はいはい」
「沙都子はいい子だし、きっと運命の方から寄ってくると思うよ」
「直クンありがとう」
「直、ちょっと自分が余裕だからって」
「えええっ!? ちょっと啓子何のことかボクにはよくわからないんだけどなあ! ボクが何に余裕って? えっ、この話の流れだと恋愛? そんな、ボクは別に彼氏がいるとか好きな人がいるとかじゃないんだけど!?」
「はー、わかりやすっ」
「直クン頑張ってね」
べ、別にボクにはそんな動きは特にないし、何がどうして恋愛に繋がるってワケじゃないし。ねえ。別に、Lのことが気になるとかじゃないし。確かに定例会は毎月楽しみだけど。厳密には定例会の後が。別にそんな、ねえ。
ボクへの集中砲火を何とか避けながら、話は再び「運命の人」へ。だけど、この人がそうだってマーキングされてるワケでもないし、それをどうやって運命と呼べる恋にするのかということの難しさだ。
「運命の人がパッと見てわかればいいのに」
「沙都子、そしたらアンタ自分が好きになった人が運命の相手じゃないってなったら付き合わないの?」
「え、それは……」
「与えられる運命だけじゃなくて、作っていくことも出来るでしょうよその気になれば。初めからわかってる運命なんて尊さが感じられない」
「さすが啓子、深いなあ」
「Kちゃん深い」
「どこが深いの。アンタたちが夢見すぎなの」
啓子は本当にしっかりしてるし逞しい。考え方も現実的な方だと思う。啓子みたいな人に運命と呼べる恋が訪れたら、どんな風になるだろう。身を焦がすような熱い恋なのか、静かに温め合う穏やかな恋なのか。
沙都子は家庭的で優しい。細やかな気遣いも出来る。辛いことがあった分幸せになって欲しいなあとか、沙都子を守って癒してくれるような人がいればいいなあと思う。あまりに運命がわかりやすすぎると、盲目になりそうでもあるから、慎重に行けた方がよさそうかな。
ボクがそんな妄想に浸っていると、啓子と沙都子からジッと見られていることに気付く。もしや妄想をしていたことがバレてしまったのだろうか。慌てて何でもないですよというポーズを。
「直、案外アンタも恋愛に対しては夢見がちなんじゃない?」
「乙女な直クンてどんな感じなんだろう」
「だからボクは別に何もないんだって!」
「ふーん。まあ、そういうことにしといてあげる」
「もうしばらくはみんなの王子様でいてね直クン」
これ以上こんな話をしていたらどこから何が飛んでくるかわからなくて怖いや。ボクにはまだ運命の恋を考えるのは早かったってことだね。
「まあ、沙都子が運命の恋に憧れてるのもせいぜいあと3ヶ月だから」
「あ、そうだよね。次のドラマが始まれば次の憧れに移るもんね」
「ちょっとー! あたしがそんな移り気な女みたいに言わないでー!」
end.
++++
青女2年生3人がきゃいきゃい話しているというだけのお話が結構好きです。
ところでさとちゃんは朝ドラなんかを結構見ているようで、現在は恋愛体質じゃないけど、何かそんなようなことに憧れを抱いている模様。
2年生3人だと色恋沙汰に通そうなのが啓子さんになるのかしら。現時点で興味関心も薄そうだしなあ
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「あー、いいなー、いいよねー」
「どうしたの沙都子」
「いつものヤツ」
「ああ、朝ドラに影響されてるんだね。啓子、今って何やってるっけ」
「恋愛物」
沙都子は朝のドラマをよく見ているらしい。そして、それにどっぷり浸かって憧れを抱いたり影響されたりは日常茶飯事。今やっているのが恋愛物らしいから、まあ、運命の恋みたいな物に憧れてるんだろうと思う。
「でも、現実にないからこそドラマチックな恋愛のお話がときめくと言うか」
「今からでしょうよそんなの」
「そうかもしれないけど、今はないから」
「まあね。アタシもないワケだし人のことは言えないけど。それにしたって沙都子は朝ドラに影響されやすくない?」
「確かにこないだまでは落語やお笑いを見てたよね。で、その前は洋食のレパートリーを増やそうとしたり」
それが悪いというつもりはそうそうないし、それだけどっぷりハマれる趣味というのは羨ましくも思う。運命の恋みたいな物にしても、沙都子はいい子だからきっとすぐだとボクは思う。
如何せんABCというサークルと恋愛という単語がなかなか結びつかない。ヒメ先輩は谷内先輩と付き合っているけど、他の人の動きはあまり聞かない。強いて言えばヒビキ先輩が合コンに励んでいるくらいかな。
「でも、たまに恋の話に憧れるくらいいいでしょ?」
「ダメとは言ってないでしょ」
「あたしにももしかしたらいつか運命の人が」
「はいはい」
「沙都子はいい子だし、きっと運命の方から寄ってくると思うよ」
「直クンありがとう」
「直、ちょっと自分が余裕だからって」
「えええっ!? ちょっと啓子何のことかボクにはよくわからないんだけどなあ! ボクが何に余裕って? えっ、この話の流れだと恋愛? そんな、ボクは別に彼氏がいるとか好きな人がいるとかじゃないんだけど!?」
「はー、わかりやすっ」
「直クン頑張ってね」
べ、別にボクにはそんな動きは特にないし、何がどうして恋愛に繋がるってワケじゃないし。ねえ。別に、Lのことが気になるとかじゃないし。確かに定例会は毎月楽しみだけど。厳密には定例会の後が。別にそんな、ねえ。
ボクへの集中砲火を何とか避けながら、話は再び「運命の人」へ。だけど、この人がそうだってマーキングされてるワケでもないし、それをどうやって運命と呼べる恋にするのかということの難しさだ。
「運命の人がパッと見てわかればいいのに」
「沙都子、そしたらアンタ自分が好きになった人が運命の相手じゃないってなったら付き合わないの?」
「え、それは……」
「与えられる運命だけじゃなくて、作っていくことも出来るでしょうよその気になれば。初めからわかってる運命なんて尊さが感じられない」
「さすが啓子、深いなあ」
「Kちゃん深い」
「どこが深いの。アンタたちが夢見すぎなの」
啓子は本当にしっかりしてるし逞しい。考え方も現実的な方だと思う。啓子みたいな人に運命と呼べる恋が訪れたら、どんな風になるだろう。身を焦がすような熱い恋なのか、静かに温め合う穏やかな恋なのか。
沙都子は家庭的で優しい。細やかな気遣いも出来る。辛いことがあった分幸せになって欲しいなあとか、沙都子を守って癒してくれるような人がいればいいなあと思う。あまりに運命がわかりやすすぎると、盲目になりそうでもあるから、慎重に行けた方がよさそうかな。
ボクがそんな妄想に浸っていると、啓子と沙都子からジッと見られていることに気付く。もしや妄想をしていたことがバレてしまったのだろうか。慌てて何でもないですよというポーズを。
「直、案外アンタも恋愛に対しては夢見がちなんじゃない?」
「乙女な直クンてどんな感じなんだろう」
「だからボクは別に何もないんだって!」
「ふーん。まあ、そういうことにしといてあげる」
「もうしばらくはみんなの王子様でいてね直クン」
これ以上こんな話をしていたらどこから何が飛んでくるかわからなくて怖いや。ボクにはまだ運命の恋を考えるのは早かったってことだね。
「まあ、沙都子が運命の恋に憧れてるのもせいぜいあと3ヶ月だから」
「あ、そうだよね。次のドラマが始まれば次の憧れに移るもんね」
「ちょっとー! あたしがそんな移り気な女みたいに言わないでー!」
end.
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青女2年生3人がきゃいきゃい話しているというだけのお話が結構好きです。
ところでさとちゃんは朝ドラなんかを結構見ているようで、現在は恋愛体質じゃないけど、何かそんなようなことに憧れを抱いている模様。
2年生3人だと色恋沙汰に通そうなのが啓子さんになるのかしら。現時点で興味関心も薄そうだしなあ
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