2018
■空気は読むより作るもの
++++
「6月生まれのみなさ~ん、お誕生日おめでと~! でしょでしょ~」
生中が3つとコーラがひとつ。全員分の飲み物を持って自分たちの席に向かえば歓迎の拍手で迎えられる。今日は朝霞班の6月誕生会と丸の池ステージに向けた決起集会っていう体の飲み会が開かれている。
俺は自分がバイトをしている店だという都合もあって、自分たちに絡む仕事はちょいちょいとしつつ。それでも今日は基本飲んだり食べたりがメインになるのかな。ここに来るのが初めてのゲンゴローは物珍しさからかきょろきょろしてる。
「いいか、浮かれてていいのは今日までだぞ。明日からは丸の池に向かって」
「わかってま~す」
やっぱり、朝霞クンの中では誕生会よりも決起集会としての方に重きを置いてたみたい。でも、ゲンゴローの加入で朝霞班が4人になってから、4人で何かをするのはこれが初めて。だからチームワークを高めるっていう意味では決起集会メインでもいいかもしれない。
一昨日が俺、昨日がつばちゃんと来て、今日はゲンゴローの誕生日だ。最初の一杯、と言うかコーラは俺持ちで。1年生だし、誕生日だし。どうにもこうにもまだそわそわしてるみたい。何とかもっと打ち解けられたらなあ。
「ゲンゴロー、何か食べる~?」
「えっと、何が美味しいですかね」
「朝霞クンとかつばちゃんはね~、とりあえずビールと5種盛りって感じで頼むのがこれ」
「じゃあ、俺も串の5種盛りを食べてみたいです」
「オッケ~、待ってて~。今焼いて来る来る~」
「山口、俺に皮、塩で」
「アタシつくねー」
「は~い」
みんなの分の串を焼きながら、3人の様子を眺めてる。基本的につばちゃんが話を回してるって感じかな。シゲトラからこっそり聞いてたんだけど、ゲンゴロー、班を移ってくる前に何を心配してたかって、朝霞クンが怖いって言ってたんだよね~。
確かに朝霞クンは怖いんだけど、それはステージに対しての話。こういう、ステージに絡まない時はむしろ怖さとは縁遠い気のいい人なんだけどなあ。でも、朝霞クンは既にプロデューサーのモードに入ってるし、どうなるかなあ。
「しかし、鳴尾浜のアホなポジティブさでに丸め込まれたと言えお前もよくウチの班に来たよな」
「あっはい、求められることって名誉なことですし、趣味を隠さなくて良くなったのも気が楽になったと言うか」
「演劇やコスプレで培われたお前の技術は本当に素晴らしい。これからよろしく頼むぞ」
「まーた始まった。朝霞サン、せっかくなんだし今はそーゆーのなしになんない?」
「他に何を話せばいいのか」
「大学生活には慣れてきたかーとか、ステージのこと以外で俺に関して気になることはないかーとか、いろいろあるじゃん」
「なるほど。じゃあ源、大学生活には慣れて来たか」
「あっはい、おかげさまで」
「そうか」
「……ダメじゃん! 朝霞サン、会話繋げる気ある?」
「大体な、俺は食ってる時は喋らない派なんだよ。山口がいなけりゃお前が会話を繋げろ」
「よーへーい! 早く帰ってこーい!」
「は~い! もうちょっと待って~!」
朝霞クン、会話することを投げちゃったネ。不機嫌ってワケでもないんだろうけど。班長の威厳じゃないけど、Pの圧みたいなものが何もしなくてもダダ漏れって言うか。う~ん。
「みなさ~ん、焼けましたよ~。はいゲンゴロー、これが5種盛り」
「ありがとうございます!」
「仕方ない、予定より早いけど会話が続かないそうだからつばちゃん、例のものを」
「そだね」
ここで取り出したのは、昨日つばちゃんと一緒に買ったゲンゴローへの誕生日プレゼント。これからステージの練習で立て込んでくると、屋外での活動も増えるからという理由で、晴雨兼用UVカット機能も備わったトレッカーハット。
「はいゲンゴロー、誕生日おめでと~!」
「おめでとー。はい、これ、アタシらから」
「えっ、いいんですか! ありがとうございます~。開けていいですか?」
「見て見て~」
「わっ、帽子だ!」
「これから暑くなるからね、これを被って一緒に練習がんばろ~」
「はい! ……でも山口先輩つばめ先輩、これ、もしかしなくても高いんじゃ」
「装備品はちゃんとしないとデショ?」
「そうそう。ゲームとかで3つ4つ先の町で買える防具をもらったみたいな感覚でいてよ」
「えっ、物凄くありがたいじゃないですか、頑張ります」
「源、いい帽子じゃないか。よかったな。裏地の柄も可愛いし、お前の服にも合いそうだな。これならステージの練習のときだけじゃなくて、普段使いも出来るぞ」
朝霞クンに声をかけられて、ゲンゴローはとても嬉しそう。朝霞クンとゲンゴローの距離が縮まるのに役立ったなら、俺とつばちゃんも本当に嬉しい。
ステージが始まれば朝霞クンが怖いことには違いない。だけど、その怖さの理由とか、朝霞クンの考えみたいな物を共有しておくのはいいステージをやるには本当に大事だから。俺がそれをしやすい環境にしていかなきゃ。
end.
++++
朝霞Pはやっぱり知らん人には怖く映るんやろなあ。ステージに関しては鬼のプロデューサーとも呼ばれるワケやし
ゲンゴローは成人するまでお酒は飲まないと決めているナノスパでは数少ないキャラクターです。飲めないワケではなさそうだけど。
きっとゲンゴローが頼んだ分の最初の5種盛りは朝霞P持ちになってんだろうなあ
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「6月生まれのみなさ~ん、お誕生日おめでと~! でしょでしょ~」
生中が3つとコーラがひとつ。全員分の飲み物を持って自分たちの席に向かえば歓迎の拍手で迎えられる。今日は朝霞班の6月誕生会と丸の池ステージに向けた決起集会っていう体の飲み会が開かれている。
俺は自分がバイトをしている店だという都合もあって、自分たちに絡む仕事はちょいちょいとしつつ。それでも今日は基本飲んだり食べたりがメインになるのかな。ここに来るのが初めてのゲンゴローは物珍しさからかきょろきょろしてる。
「いいか、浮かれてていいのは今日までだぞ。明日からは丸の池に向かって」
「わかってま~す」
やっぱり、朝霞クンの中では誕生会よりも決起集会としての方に重きを置いてたみたい。でも、ゲンゴローの加入で朝霞班が4人になってから、4人で何かをするのはこれが初めて。だからチームワークを高めるっていう意味では決起集会メインでもいいかもしれない。
一昨日が俺、昨日がつばちゃんと来て、今日はゲンゴローの誕生日だ。最初の一杯、と言うかコーラは俺持ちで。1年生だし、誕生日だし。どうにもこうにもまだそわそわしてるみたい。何とかもっと打ち解けられたらなあ。
「ゲンゴロー、何か食べる~?」
「えっと、何が美味しいですかね」
「朝霞クンとかつばちゃんはね~、とりあえずビールと5種盛りって感じで頼むのがこれ」
「じゃあ、俺も串の5種盛りを食べてみたいです」
「オッケ~、待ってて~。今焼いて来る来る~」
「山口、俺に皮、塩で」
「アタシつくねー」
「は~い」
みんなの分の串を焼きながら、3人の様子を眺めてる。基本的につばちゃんが話を回してるって感じかな。シゲトラからこっそり聞いてたんだけど、ゲンゴロー、班を移ってくる前に何を心配してたかって、朝霞クンが怖いって言ってたんだよね~。
確かに朝霞クンは怖いんだけど、それはステージに対しての話。こういう、ステージに絡まない時はむしろ怖さとは縁遠い気のいい人なんだけどなあ。でも、朝霞クンは既にプロデューサーのモードに入ってるし、どうなるかなあ。
「しかし、鳴尾浜のアホなポジティブさでに丸め込まれたと言えお前もよくウチの班に来たよな」
「あっはい、求められることって名誉なことですし、趣味を隠さなくて良くなったのも気が楽になったと言うか」
「演劇やコスプレで培われたお前の技術は本当に素晴らしい。これからよろしく頼むぞ」
「まーた始まった。朝霞サン、せっかくなんだし今はそーゆーのなしになんない?」
「他に何を話せばいいのか」
「大学生活には慣れてきたかーとか、ステージのこと以外で俺に関して気になることはないかーとか、いろいろあるじゃん」
「なるほど。じゃあ源、大学生活には慣れて来たか」
「あっはい、おかげさまで」
「そうか」
「……ダメじゃん! 朝霞サン、会話繋げる気ある?」
「大体な、俺は食ってる時は喋らない派なんだよ。山口がいなけりゃお前が会話を繋げろ」
「よーへーい! 早く帰ってこーい!」
「は~い! もうちょっと待って~!」
朝霞クン、会話することを投げちゃったネ。不機嫌ってワケでもないんだろうけど。班長の威厳じゃないけど、Pの圧みたいなものが何もしなくてもダダ漏れって言うか。う~ん。
「みなさ~ん、焼けましたよ~。はいゲンゴロー、これが5種盛り」
「ありがとうございます!」
「仕方ない、予定より早いけど会話が続かないそうだからつばちゃん、例のものを」
「そだね」
ここで取り出したのは、昨日つばちゃんと一緒に買ったゲンゴローへの誕生日プレゼント。これからステージの練習で立て込んでくると、屋外での活動も増えるからという理由で、晴雨兼用UVカット機能も備わったトレッカーハット。
「はいゲンゴロー、誕生日おめでと~!」
「おめでとー。はい、これ、アタシらから」
「えっ、いいんですか! ありがとうございます~。開けていいですか?」
「見て見て~」
「わっ、帽子だ!」
「これから暑くなるからね、これを被って一緒に練習がんばろ~」
「はい! ……でも山口先輩つばめ先輩、これ、もしかしなくても高いんじゃ」
「装備品はちゃんとしないとデショ?」
「そうそう。ゲームとかで3つ4つ先の町で買える防具をもらったみたいな感覚でいてよ」
「えっ、物凄くありがたいじゃないですか、頑張ります」
「源、いい帽子じゃないか。よかったな。裏地の柄も可愛いし、お前の服にも合いそうだな。これならステージの練習のときだけじゃなくて、普段使いも出来るぞ」
朝霞クンに声をかけられて、ゲンゴローはとても嬉しそう。朝霞クンとゲンゴローの距離が縮まるのに役立ったなら、俺とつばちゃんも本当に嬉しい。
ステージが始まれば朝霞クンが怖いことには違いない。だけど、その怖さの理由とか、朝霞クンの考えみたいな物を共有しておくのはいいステージをやるには本当に大事だから。俺がそれをしやすい環境にしていかなきゃ。
end.
++++
朝霞Pはやっぱり知らん人には怖く映るんやろなあ。ステージに関しては鬼のプロデューサーとも呼ばれるワケやし
ゲンゴローは成人するまでお酒は飲まないと決めているナノスパでは数少ないキャラクターです。飲めないワケではなさそうだけど。
きっとゲンゴローが頼んだ分の最初の5種盛りは朝霞P持ちになってんだろうなあ
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