2018
■スイッチとモチベーター
++++
「みんな~、今日は何の日でしょ~うか~!」
ブースに入るなり問題を出せば、つばちゃんから突き刺さるじとーっとした冷めた目。そして相変わらずごちゃっとした山を背にした朝霞クンは、こっちに視線すら送ってくれない。
「山口先輩おはようございます」
「え~んえ~ん、俺のことをわかってくれるのはゲンゴローだけだよ~」
「えっと、どうしたんですか…!?」
「ゲンゴロー、洋平がウザかったらぶん殴っていいから」
「さすがに殴るのはちょっと」
「そうだよつばちゃん、ゲンゴローは人を殴るなんて出来ないんだよ。朝霞クンとつばちゃんとは違うんだよ~」
「何かお前三井みたくてムカつくから殴っていい?」
「ダメ~! やめて!」
つばちゃんから容赦ない拳が飛んでくるのを寸前でかわしつつ、俺のアピールには脇目も振らない朝霞班らしい反応に安心していたりもする。さすがに全く触れられないのは寂しいけど、仕方ないよね~。
「言ってもさ~、つばちゃんも明日は同じ質問するでしょ~?」
「まあね」
「じゃあさ、今日の俺の質問にも答えてくれて然るべきじゃな~い?」
「えっと、山口先輩つばめ先輩、今日と明日って何の日なんですか?」
「今日は俺の誕生日で~」
「明日はアタシの誕生日」
「わー、そうなんですねー! 山口先輩おめでとうございます! つばめ先輩は明日またお祝いしますね!」
ゲンゴローが本当にいい子でそんな優しさにしばらく班で触れてなかった俺は感動しちゃってるよね~。だって、俺が何か言ったら殴るとかは普通だし~。もちろん俺だってただ殴られてばかりじゃなくて~、避ける技術と受ける技術が伸びてるからノーダメだけど~。
今日は俺、明日はつばちゃんの誕生日。それでいて25日が流刑地の前班長・雄平さんの誕生日だからこの時期はちょっと浮かれるんだよね(去年のこの時期はまだつばちゃんはいなかったけど)。まだ夏のステージに向けても早い頃だしね。
「とにかく! 今日は俺が主役~」
「はいはい、あんま喧しくしてると誕生日が命日になるぞ」
そう、夏の丸の池ステージに向けてはもう動き出している。俺やつばちゃんは「まだ早い頃だから」と言えてしまうけれど、そのステージの台本を書く人にとっては1日1日が戦争のようなもの。誰の誕生日だからと浮かれることはなく、淡々と行数を積み重ねるだけ。
ひとたびステージのモードに入った朝霞クンは、それこそ鬼と呼ばれるほどに全てをステージに注ぎ込むのだ。今はまだエンジンをかけてる最中だと思いたいけど、つばちゃんの言うように下手すれば今日が命日にはなりかねない。
「えっと~、朝霞クンうるさくしてゴメンね~」
「オフでは主役でも何でも好きにすればいい。ただ、今の俺は四六時中お前のことを考えてる状態だ。今更お前をフィーチャーしろとか言われても無理がある」
「えっと、朝霞クン紙の上から戻って来よ~?」
「今の俺に現実は邪魔でしかない」
「でも~、誕生日だし~、せめて一言欲しいな~。一言でいいんだ~」
「誕生日をやったことでステージへのモチベーションが上がるなら考えてもいい」
「上がる! めっちゃ上がるから! せめて一言だけ「おめでとう」をいただけませんか…!」
そう、せめて一言「誕生日おめでとう、でも遊んでられるのも今日までだぞ」的な窘めでも何でもいいんでいただけたらモチベーションは本当にグッと上がるんだよね~。それが班長として、Pとしての役割でもあると思うんですよ!
俺が朝霞クンから誕生日を祝われることにこだわっている様子がおかしいのか、つばちゃんはすっかりドン引きしてしまっている。まあ、見ようによっては地べたに這い蹲ってるようなイメージにも取れるからね~。
「わかった、そこまで言うならお前らまとめて祝う機会は作る。だから今は静かにしてろ。ちょうどノってるんだ」
「は~い、静かにしてま~す」
「あっ、そう言えばゲンゴローって誕生日いつ?」
「えっと、実は明後日なんです」
「え~! 朝霞クン明後日だって~! すご~い、3日連続とか~! こっしーさん含めたら4日連続~!? すごいでしょでしょ~!? 朝霞クンお祝いしよ~!」
「うるせえな! やるっつってんだろ! 静かにしろ!」
「痛い!」
問答無用で飛んでくる左の拳は避けきれませんでした。せっかく打撲が治ったのにまたケガするよ~って言ったら多分蹴られるんだろうなあ。言わないけど。それに朝霞クンは左手をケガしても右手でペンは持てるからネ。
朝霞クンの中ではもう丸の池ステージは始まっている。俺は朝霞クンが書いた本に沿って平面から立体、想像から現実にするのが仕事。まるで夢のような現実に、見ている人をお連れするため。ステージスターとしてあるためにはプロデューサーが炊きつけてくれなきゃ、デショ?
「山口、それでも食って大人しくしてろ、やるから」
「えっ、ベーグルじゃん。いいの~?」
end.
++++
さて、朝霞班の誕生日ラッシュに入りました。洋平ちゃんがきゃっきゃしても誰も乗って来ないのね!
去年はブースから摘まみ出されて手錠で柱に繋がれた洋平ちゃんですが、今年はまだ会話が成立しててよかったね……
明日はつばちゃんの誕生日だよ! 買い物に行くのかな?
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「みんな~、今日は何の日でしょ~うか~!」
ブースに入るなり問題を出せば、つばちゃんから突き刺さるじとーっとした冷めた目。そして相変わらずごちゃっとした山を背にした朝霞クンは、こっちに視線すら送ってくれない。
「山口先輩おはようございます」
「え~んえ~ん、俺のことをわかってくれるのはゲンゴローだけだよ~」
「えっと、どうしたんですか…!?」
「ゲンゴロー、洋平がウザかったらぶん殴っていいから」
「さすがに殴るのはちょっと」
「そうだよつばちゃん、ゲンゴローは人を殴るなんて出来ないんだよ。朝霞クンとつばちゃんとは違うんだよ~」
「何かお前三井みたくてムカつくから殴っていい?」
「ダメ~! やめて!」
つばちゃんから容赦ない拳が飛んでくるのを寸前でかわしつつ、俺のアピールには脇目も振らない朝霞班らしい反応に安心していたりもする。さすがに全く触れられないのは寂しいけど、仕方ないよね~。
「言ってもさ~、つばちゃんも明日は同じ質問するでしょ~?」
「まあね」
「じゃあさ、今日の俺の質問にも答えてくれて然るべきじゃな~い?」
「えっと、山口先輩つばめ先輩、今日と明日って何の日なんですか?」
「今日は俺の誕生日で~」
「明日はアタシの誕生日」
「わー、そうなんですねー! 山口先輩おめでとうございます! つばめ先輩は明日またお祝いしますね!」
ゲンゴローが本当にいい子でそんな優しさにしばらく班で触れてなかった俺は感動しちゃってるよね~。だって、俺が何か言ったら殴るとかは普通だし~。もちろん俺だってただ殴られてばかりじゃなくて~、避ける技術と受ける技術が伸びてるからノーダメだけど~。
今日は俺、明日はつばちゃんの誕生日。それでいて25日が流刑地の前班長・雄平さんの誕生日だからこの時期はちょっと浮かれるんだよね(去年のこの時期はまだつばちゃんはいなかったけど)。まだ夏のステージに向けても早い頃だしね。
「とにかく! 今日は俺が主役~」
「はいはい、あんま喧しくしてると誕生日が命日になるぞ」
そう、夏の丸の池ステージに向けてはもう動き出している。俺やつばちゃんは「まだ早い頃だから」と言えてしまうけれど、そのステージの台本を書く人にとっては1日1日が戦争のようなもの。誰の誕生日だからと浮かれることはなく、淡々と行数を積み重ねるだけ。
ひとたびステージのモードに入った朝霞クンは、それこそ鬼と呼ばれるほどに全てをステージに注ぎ込むのだ。今はまだエンジンをかけてる最中だと思いたいけど、つばちゃんの言うように下手すれば今日が命日にはなりかねない。
「えっと~、朝霞クンうるさくしてゴメンね~」
「オフでは主役でも何でも好きにすればいい。ただ、今の俺は四六時中お前のことを考えてる状態だ。今更お前をフィーチャーしろとか言われても無理がある」
「えっと、朝霞クン紙の上から戻って来よ~?」
「今の俺に現実は邪魔でしかない」
「でも~、誕生日だし~、せめて一言欲しいな~。一言でいいんだ~」
「誕生日をやったことでステージへのモチベーションが上がるなら考えてもいい」
「上がる! めっちゃ上がるから! せめて一言だけ「おめでとう」をいただけませんか…!」
そう、せめて一言「誕生日おめでとう、でも遊んでられるのも今日までだぞ」的な窘めでも何でもいいんでいただけたらモチベーションは本当にグッと上がるんだよね~。それが班長として、Pとしての役割でもあると思うんですよ!
俺が朝霞クンから誕生日を祝われることにこだわっている様子がおかしいのか、つばちゃんはすっかりドン引きしてしまっている。まあ、見ようによっては地べたに這い蹲ってるようなイメージにも取れるからね~。
「わかった、そこまで言うならお前らまとめて祝う機会は作る。だから今は静かにしてろ。ちょうどノってるんだ」
「は~い、静かにしてま~す」
「あっ、そう言えばゲンゴローって誕生日いつ?」
「えっと、実は明後日なんです」
「え~! 朝霞クン明後日だって~! すご~い、3日連続とか~! こっしーさん含めたら4日連続~!? すごいでしょでしょ~!? 朝霞クンお祝いしよ~!」
「うるせえな! やるっつってんだろ! 静かにしろ!」
「痛い!」
問答無用で飛んでくる左の拳は避けきれませんでした。せっかく打撲が治ったのにまたケガするよ~って言ったら多分蹴られるんだろうなあ。言わないけど。それに朝霞クンは左手をケガしても右手でペンは持てるからネ。
朝霞クンの中ではもう丸の池ステージは始まっている。俺は朝霞クンが書いた本に沿って平面から立体、想像から現実にするのが仕事。まるで夢のような現実に、見ている人をお連れするため。ステージスターとしてあるためにはプロデューサーが炊きつけてくれなきゃ、デショ?
「山口、それでも食って大人しくしてろ、やるから」
「えっ、ベーグルじゃん。いいの~?」
end.
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さて、朝霞班の誕生日ラッシュに入りました。洋平ちゃんがきゃっきゃしても誰も乗って来ないのね!
去年はブースから摘まみ出されて手錠で柱に繋がれた洋平ちゃんですが、今年はまだ会話が成立しててよかったね……
明日はつばちゃんの誕生日だよ! 買い物に行くのかな?
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