2018
■構築と崩壊の足音
++++
「わー、街だー」
「ハナ、コンビニ寄ってく。買い物すんべ」
今日はサークルの同期であるタカティの住んでるマンションに遊びに行くということで、同じ同期の中津川栄治と一緒に電車を乗り継ぎガタンゴトン。緑ヶ丘大学からはスクールバスと電車で45分かかる。
ハナは緑風エリアから出てきていて、一人暮らしをしている。大学からは車で10分くらいのところに住んでいて、アパートの方角的にこのエージを近場の駅まで送ってあげることもある。
「何買うの?」
「差し入れ」
「差し入れ?」
「俺は一人暮らしの奴の部屋に行くときは何か持ってくって決めてるっていう」
「ふーん、意外にマメだね」
タカティのマンションは星港市の郊外にあって、中心市街地と言うよりはベッドタウンとも言える町。ハナはショッピングとか遊ぶのに星港の中心には行くけど端の方に降り立つのはこれが初めて。
エージについてコンビニに入る。まっすぐに目的の差し入れだけをサクサクっと買い物。エージの計画では、少しの飲み物とお菓子、それからレジで注文する揚げ物を買うそうだ。
「まあ、こんなモンか」
「ねえエージ、コロッケとミンチカツ買うならキャベツ欲しい」
「そこまでガチな飯にすんのか。おやつのつもりだったって言う」
「揚げ物にはキャベツでしょ!? しょぼーん」
「へーへーわかったわかった。キャベツ買ってきゃいーんだろっていう。でもアイツ野菜食わない気がすんべ」
「タカティがキャベツ要らなくてもうちらが食べればしょぼんではない」
買い物をしてエージについて行くと、目の前にはなんかすごいマンション。ハナが住んでるアパートは3階建てだし高崎先輩とL先輩が住んでるコムギハイツは2階だよね。えっ、これ何階ある?
そして、マンションの出入り口にまずインターホンがある。えっ、もしかしてこれオートロック? エージがボタンをポチポチ押すのを都会はすっごいなーって圧倒されながら見てる。
「おーい、高木ー」
『はーい』
すると、自動ドアが開いた。すっごいなー、学生の住むマンションじゃないよねー、しょぼーん。エレベーターのボタンによれば、このマンションは10階まであるらしい。タカティの部屋は6階。部屋の前でもう1階ピンポンを。
「おーい、高木ー」
「はーい。どうぞ、汚いところだけど」
「高木、これ差し入れ」
「わ、ありがとう」
入れてもらったタカティの部屋はすっきりと片付いていて本当にきれい。物が少ないとも言うのかな。テレビとパソコンとパソコンデスクと、ベッドと棚とギターがあるくらい。すっきりしてる。
「2人とも、コーヒー飲む? 淹れるけど」
「あっ、じゃあもらおうかな。ありがとー」
「俺も飲むべ!」
「砂糖とミルクは」
「俺はお前と一緒で」
「えっと、ミルクは普通で、ちょっと甘めがいいな」
「わかった。ゴメンねハナちゃん、あんまり面白くもない部屋だけど」
「ううん、もういろいろびっくりしてるから」
「物なんかギターがありゃ十分だべ」
そう言ってエージはタカティのギターに手をかけた。ちょっと前までこれでもかと言うほど仲が悪かった2人を結びつけたギターという趣味。弾いたり聞いたりする曲のジャンルは違っても、相手に興味は湧いたんだろうね。
「エイジ、いつも思うけどよく俺のギターで普通に弾いてるよね」
「最初に持ったのがこっちだったからな」
「タカティのギターって何か特殊なの?」
「ううん、俺のギターが普通ので、エイジのが特殊。ほら、エイジは左利きでしょ? 左利きの人はギターもレフティだったりするし、エイジも自分のはそうだから」
「へー、いろいろあるんだね。ハナはピアノやってたけど、左利き用のピアノなんて聞いたことないし」
「ピアノはピアノだべ」
「そうだね、よく考えれば」
エージがじゃかじゃか音を鳴らしていると、コーヒーとさっきの揚げ物が盛りつけられて出てきた。そして気付く。器を乗せる机がないということに。えっ、これどうするの? しょぼんなんだけど!
「えっと、タカティ、机は……」
「ないね」
「普段ご飯とかどうしてるの?」
「パソコンデスクの方で食べてるんだ。えっと、こんなに友達が来ることを想定してなくって」
「ああ、そうなんだ。簡単な折りたたみ机でもあればいいんだけどね」
「えっと、女の子にはやっぱしんどかったね」
「しょぼんだよタカティ~」
せめてもの気持ちとして、揚げ物のお皿はお盆の上に。コーヒーはこぼさないように気をつけながら床に。って言うか絨毯が白っぽい色だからコーヒー置くのがしょぼんなんだよね。絨毯って物を置くにはバランスあんまり良くないし。
「でも、街の中だから買いに行こうと思えばすぐだよね」
「うん。大学からの近さより利便性を取ったって感じ」
「でも高木、大丈夫かっていう? そろそろ1限しんどいとか言ってんべ?」
「あ、えっと~……」
end.
++++
ここに来て気付いたんですね、エイジとハナちゃんがここに来るまで登場していなかったということに
というワケで、仲の悪い時期をすっ飛ばしていきなりちょっと仲のいいタカエイとハナちゃんです。コロッケにはキャベツ!
そうだね、そろそろTKGは授業に出るのがしんどくなってるんだね。近さで選べばよかったのにね!
.
++++
「わー、街だー」
「ハナ、コンビニ寄ってく。買い物すんべ」
今日はサークルの同期であるタカティの住んでるマンションに遊びに行くということで、同じ同期の中津川栄治と一緒に電車を乗り継ぎガタンゴトン。緑ヶ丘大学からはスクールバスと電車で45分かかる。
ハナは緑風エリアから出てきていて、一人暮らしをしている。大学からは車で10分くらいのところに住んでいて、アパートの方角的にこのエージを近場の駅まで送ってあげることもある。
「何買うの?」
「差し入れ」
「差し入れ?」
「俺は一人暮らしの奴の部屋に行くときは何か持ってくって決めてるっていう」
「ふーん、意外にマメだね」
タカティのマンションは星港市の郊外にあって、中心市街地と言うよりはベッドタウンとも言える町。ハナはショッピングとか遊ぶのに星港の中心には行くけど端の方に降り立つのはこれが初めて。
エージについてコンビニに入る。まっすぐに目的の差し入れだけをサクサクっと買い物。エージの計画では、少しの飲み物とお菓子、それからレジで注文する揚げ物を買うそうだ。
「まあ、こんなモンか」
「ねえエージ、コロッケとミンチカツ買うならキャベツ欲しい」
「そこまでガチな飯にすんのか。おやつのつもりだったって言う」
「揚げ物にはキャベツでしょ!? しょぼーん」
「へーへーわかったわかった。キャベツ買ってきゃいーんだろっていう。でもアイツ野菜食わない気がすんべ」
「タカティがキャベツ要らなくてもうちらが食べればしょぼんではない」
買い物をしてエージについて行くと、目の前にはなんかすごいマンション。ハナが住んでるアパートは3階建てだし高崎先輩とL先輩が住んでるコムギハイツは2階だよね。えっ、これ何階ある?
そして、マンションの出入り口にまずインターホンがある。えっ、もしかしてこれオートロック? エージがボタンをポチポチ押すのを都会はすっごいなーって圧倒されながら見てる。
「おーい、高木ー」
『はーい』
すると、自動ドアが開いた。すっごいなー、学生の住むマンションじゃないよねー、しょぼーん。エレベーターのボタンによれば、このマンションは10階まであるらしい。タカティの部屋は6階。部屋の前でもう1階ピンポンを。
「おーい、高木ー」
「はーい。どうぞ、汚いところだけど」
「高木、これ差し入れ」
「わ、ありがとう」
入れてもらったタカティの部屋はすっきりと片付いていて本当にきれい。物が少ないとも言うのかな。テレビとパソコンとパソコンデスクと、ベッドと棚とギターがあるくらい。すっきりしてる。
「2人とも、コーヒー飲む? 淹れるけど」
「あっ、じゃあもらおうかな。ありがとー」
「俺も飲むべ!」
「砂糖とミルクは」
「俺はお前と一緒で」
「えっと、ミルクは普通で、ちょっと甘めがいいな」
「わかった。ゴメンねハナちゃん、あんまり面白くもない部屋だけど」
「ううん、もういろいろびっくりしてるから」
「物なんかギターがありゃ十分だべ」
そう言ってエージはタカティのギターに手をかけた。ちょっと前までこれでもかと言うほど仲が悪かった2人を結びつけたギターという趣味。弾いたり聞いたりする曲のジャンルは違っても、相手に興味は湧いたんだろうね。
「エイジ、いつも思うけどよく俺のギターで普通に弾いてるよね」
「最初に持ったのがこっちだったからな」
「タカティのギターって何か特殊なの?」
「ううん、俺のギターが普通ので、エイジのが特殊。ほら、エイジは左利きでしょ? 左利きの人はギターもレフティだったりするし、エイジも自分のはそうだから」
「へー、いろいろあるんだね。ハナはピアノやってたけど、左利き用のピアノなんて聞いたことないし」
「ピアノはピアノだべ」
「そうだね、よく考えれば」
エージがじゃかじゃか音を鳴らしていると、コーヒーとさっきの揚げ物が盛りつけられて出てきた。そして気付く。器を乗せる机がないということに。えっ、これどうするの? しょぼんなんだけど!
「えっと、タカティ、机は……」
「ないね」
「普段ご飯とかどうしてるの?」
「パソコンデスクの方で食べてるんだ。えっと、こんなに友達が来ることを想定してなくって」
「ああ、そうなんだ。簡単な折りたたみ机でもあればいいんだけどね」
「えっと、女の子にはやっぱしんどかったね」
「しょぼんだよタカティ~」
せめてもの気持ちとして、揚げ物のお皿はお盆の上に。コーヒーはこぼさないように気をつけながら床に。って言うか絨毯が白っぽい色だからコーヒー置くのがしょぼんなんだよね。絨毯って物を置くにはバランスあんまり良くないし。
「でも、街の中だから買いに行こうと思えばすぐだよね」
「うん。大学からの近さより利便性を取ったって感じ」
「でも高木、大丈夫かっていう? そろそろ1限しんどいとか言ってんべ?」
「あ、えっと~……」
end.
++++
ここに来て気付いたんですね、エイジとハナちゃんがここに来るまで登場していなかったということに
というワケで、仲の悪い時期をすっ飛ばしていきなりちょっと仲のいいタカエイとハナちゃんです。コロッケにはキャベツ!
そうだね、そろそろTKGは授業に出るのがしんどくなってるんだね。近さで選べばよかったのにね!
.