2018
■スペ3返しで起こせよ革命
++++
突然、俺のスマホにメールが届いた。その相手からして嫌な感じしかしなかったんだけど、メールを開いてドン引きしたのは言うまでもない。画面いっぱいにびっちりと埋められた文字は、この人は一体何を言っているのだと思う他になく。
ちなみに今は対策委員の追い込み会議の真っ最中。会議途中に突然俺がメールを読んでいたものだから、みんなどうしたどうしたと。あまりいい話ではないことを伝えると、報告の義務が発生した。
「三井からのメールねえ。で、何て?」
「長いから音読するのも面倒なんだけど」
「要点だけ伝えてもらっていい?」
「今の俺たちに必要な情報は「プロ講師が当日来ない」というところだけだな」
「――ってアンタサラッと言うけど!」
「他はまあ、言ってみれば逆切れと捉えられても仕方ないかなと」
メールの内容を掻い摘むと、「対策委員の態度がなっていないから講師も不快そうだった」「2年生に講習に本当に必要なことがわかるはずないのに先輩の助言に反対するのはいけない」「高いレベルの講習でなければ意味はない。基礎的なことは各大学でやっているはずなのにここで改めてやる必要はない。時間の無駄」「3年生は意識も技術もなっていないのに何を教えられるのか、ぬるい空気で洗脳でもしようと言うのか」「もっと自分みたくインターフェイスのことを考えて対策委員は動くべき。対策委員は自分たちが満足したいがための企画に終始している」「対策委員が何をしたいのかわからなかったから自分が考えて講師の人に伝えていたけど、講師の人は納得していない感じだった。連絡役の自分に何も伝えないのはおかしい、何も考えられないならそう言うべき。自分が指針を作成した」「3年生の講師候補がまずロクでもないし消去法で決まってるだけなのに調子に乗ってる。思い上がりも甚だしい、所詮学生なのに」――というようなことが書かれていて、少し冷静になれば全部論破出来るなと思ったなどというのは内緒。問題は、三井先輩などではなく再発した講師問題だ。
「あーもう三井絶対殺す」
「つばめ、三井先輩なんかどうでもいいしそれより講師問題だ」
「うっわ、野坂が仮にも先輩に対してどうでもいいとか言ってる」
「茶化すな果林。いくらお前がスタンバってるって言っても全体講習はやっぱり3年生の先輩方にお願い出来るよう粘りたいんだ」
「ですよねー。アタシもアタシの付け焼き刃より3年生の方がいいとは思ってるから。やっぱ経験がダンチだし」
しかし、いくら3年生がアナウンサーの多い学年と言っても全体講習が出来る人と言えば限られてしまうのだ。高崎先輩という最強の手札を早々に墓地に捨ててしまった俺たちに残された手段は。
「実質1日でこの状況を何とか出来る3年生……」
「ヒビキさんに全体講習もお願いする? Kちゃん、どう思う?」
「お願いすれば出来ないこともないとは思うけど、ウチって一応ステージ系だからラジオの話となるとどうかなって」
「――となったらやっぱ緑ヶ丘か向島じゃんね、ウチは論外だし星大ってパッとするアナさんいた?」
「いや、ウチはあんまり期待できないな。千尋先輩はちょっと。大石先輩も厳密にはプロデューサーだし」
「果林、緑ヶ丘にユノさんていなかった?」
「ユノ先輩は確か補講だって言ってたような気がするんですよね~…!」
「じゃあノサカ、圭斗先輩に頼もう!」
「圭斗先輩にワンチャン賭けるか~!?」
――と、ここで思い出す。ここまで名前の挙がっていない、本人曰く「最弱の手札」を。そもそも、向島のアナウンサーと言えばと考えたときに、本来は圭斗先輩よりも先にこのお方の名前が出てこないのはおかしいワケで。
「いや、ちょっと待て。ヒロ、土曜日の予定が確実に空いていて、かつ講習をすることの出来るレベルのアナウンサーが1人残ってるぞ…!」
「えっ、誰やの」
「いるだろ、俺たちの身内に」
「身内? あっ、菜月先輩や! そーいやまだ1回も声かけとらんわ! でも土曜日の予定なんか何でわかるん?」
「土曜日は基本昼放送の収録以外に予定はない。俺がバカみたいに遅刻してくるから予定が入れられないと。今週は家で大人しくソリティアしてるって」
「てか見本番組はどーするん? 伊東先輩にお願いするん?」
「いや、俺がやれば新しく番組を作る必要も、ガンガンに打ち合わせる必要もない」
「そーやん! ノサカおったわ!」
先日、菜月先輩は俺を励ましてくださったときに「自分のことは最弱の手札くらいに思ってくれ」と仰っていたけれど、最弱の手札でなければジョーカーには勝ち得ない。あくまでも大貧民のルールだけど、俺たちはそれに賭けたい。
「みんな、菜月先輩にお願いしてみていいですか…!」
「むしろこっちが頼みたいくらいだよ。なっち先輩だったら百人力ですよねー」
「ダメだったときのことは考えない。とりあえず、熱意と誠意で押そうと思う」
「野坂頑張れー」
「よーし……手が震えるな……」
end.
++++
毎年やってるような気がするこの件ですが、三井サンから送られてきたメールの中身についてはあまり触れていなかったように思います。
しかしとうとうノサカがいくら三井サンとは言え「三井先輩なんかどうでもいい」などと言えてしまうくらいにはガチな議長モードだったんだなあ
菜月さんが家でやることと言えばやっぱりソリティアが楽しいようですね
.
++++
突然、俺のスマホにメールが届いた。その相手からして嫌な感じしかしなかったんだけど、メールを開いてドン引きしたのは言うまでもない。画面いっぱいにびっちりと埋められた文字は、この人は一体何を言っているのだと思う他になく。
ちなみに今は対策委員の追い込み会議の真っ最中。会議途中に突然俺がメールを読んでいたものだから、みんなどうしたどうしたと。あまりいい話ではないことを伝えると、報告の義務が発生した。
「三井からのメールねえ。で、何て?」
「長いから音読するのも面倒なんだけど」
「要点だけ伝えてもらっていい?」
「今の俺たちに必要な情報は「プロ講師が当日来ない」というところだけだな」
「――ってアンタサラッと言うけど!」
「他はまあ、言ってみれば逆切れと捉えられても仕方ないかなと」
メールの内容を掻い摘むと、「対策委員の態度がなっていないから講師も不快そうだった」「2年生に講習に本当に必要なことがわかるはずないのに先輩の助言に反対するのはいけない」「高いレベルの講習でなければ意味はない。基礎的なことは各大学でやっているはずなのにここで改めてやる必要はない。時間の無駄」「3年生は意識も技術もなっていないのに何を教えられるのか、ぬるい空気で洗脳でもしようと言うのか」「もっと自分みたくインターフェイスのことを考えて対策委員は動くべき。対策委員は自分たちが満足したいがための企画に終始している」「対策委員が何をしたいのかわからなかったから自分が考えて講師の人に伝えていたけど、講師の人は納得していない感じだった。連絡役の自分に何も伝えないのはおかしい、何も考えられないならそう言うべき。自分が指針を作成した」「3年生の講師候補がまずロクでもないし消去法で決まってるだけなのに調子に乗ってる。思い上がりも甚だしい、所詮学生なのに」――というようなことが書かれていて、少し冷静になれば全部論破出来るなと思ったなどというのは内緒。問題は、三井先輩などではなく再発した講師問題だ。
「あーもう三井絶対殺す」
「つばめ、三井先輩なんかどうでもいいしそれより講師問題だ」
「うっわ、野坂が仮にも先輩に対してどうでもいいとか言ってる」
「茶化すな果林。いくらお前がスタンバってるって言っても全体講習はやっぱり3年生の先輩方にお願い出来るよう粘りたいんだ」
「ですよねー。アタシもアタシの付け焼き刃より3年生の方がいいとは思ってるから。やっぱ経験がダンチだし」
しかし、いくら3年生がアナウンサーの多い学年と言っても全体講習が出来る人と言えば限られてしまうのだ。高崎先輩という最強の手札を早々に墓地に捨ててしまった俺たちに残された手段は。
「実質1日でこの状況を何とか出来る3年生……」
「ヒビキさんに全体講習もお願いする? Kちゃん、どう思う?」
「お願いすれば出来ないこともないとは思うけど、ウチって一応ステージ系だからラジオの話となるとどうかなって」
「――となったらやっぱ緑ヶ丘か向島じゃんね、ウチは論外だし星大ってパッとするアナさんいた?」
「いや、ウチはあんまり期待できないな。千尋先輩はちょっと。大石先輩も厳密にはプロデューサーだし」
「果林、緑ヶ丘にユノさんていなかった?」
「ユノ先輩は確か補講だって言ってたような気がするんですよね~…!」
「じゃあノサカ、圭斗先輩に頼もう!」
「圭斗先輩にワンチャン賭けるか~!?」
――と、ここで思い出す。ここまで名前の挙がっていない、本人曰く「最弱の手札」を。そもそも、向島のアナウンサーと言えばと考えたときに、本来は圭斗先輩よりも先にこのお方の名前が出てこないのはおかしいワケで。
「いや、ちょっと待て。ヒロ、土曜日の予定が確実に空いていて、かつ講習をすることの出来るレベルのアナウンサーが1人残ってるぞ…!」
「えっ、誰やの」
「いるだろ、俺たちの身内に」
「身内? あっ、菜月先輩や! そーいやまだ1回も声かけとらんわ! でも土曜日の予定なんか何でわかるん?」
「土曜日は基本昼放送の収録以外に予定はない。俺がバカみたいに遅刻してくるから予定が入れられないと。今週は家で大人しくソリティアしてるって」
「てか見本番組はどーするん? 伊東先輩にお願いするん?」
「いや、俺がやれば新しく番組を作る必要も、ガンガンに打ち合わせる必要もない」
「そーやん! ノサカおったわ!」
先日、菜月先輩は俺を励ましてくださったときに「自分のことは最弱の手札くらいに思ってくれ」と仰っていたけれど、最弱の手札でなければジョーカーには勝ち得ない。あくまでも大貧民のルールだけど、俺たちはそれに賭けたい。
「みんな、菜月先輩にお願いしてみていいですか…!」
「むしろこっちが頼みたいくらいだよ。なっち先輩だったら百人力ですよねー」
「ダメだったときのことは考えない。とりあえず、熱意と誠意で押そうと思う」
「野坂頑張れー」
「よーし……手が震えるな……」
end.
++++
毎年やってるような気がするこの件ですが、三井サンから送られてきたメールの中身についてはあまり触れていなかったように思います。
しかしとうとうノサカがいくら三井サンとは言え「三井先輩なんかどうでもいい」などと言えてしまうくらいにはガチな議長モードだったんだなあ
菜月さんが家でやることと言えばやっぱりソリティアが楽しいようですね
.