2017(04)
■ナジム
++++
「それじゃあ乾杯するけど、1コ抗議していい?」
「どうぞ」
「ハマ男の誕生会をやるのは全然いい。だけど、どーして「ハマ男と仲がいいから」とかいう事実無根な理由で幹事やんなきゃいけなかったワケ?」
今日は真司の誕生日ということで、何かすっげー荒れてるけどつばめが幹事で飲み会が開かれている。各々の飲み物を手にした状態で、乾杯と言われればグラスを掲げられる状態で始まったつばめの抗議だ。
「つばちゃ~ん、乾杯の音頭にしては不穏でしょでしょ~」
「うっさいわ、お前は黙って仕事しとけよ」
「朝霞ク~ン、つばちゃんがイジメる~」
「お前は黙って仕事しとけよ。生と皮、塩で」
ここはつばめ(朝霞班)行きつけで山口先輩がアルバイトをされている“玄”という焼き鳥メインの居酒屋。しかもどんな偶然か朝霞先輩がご飯を食べに来られていた。いつもの席もあるようで、常連って響きがカッコいいぜ!
それはそうと、真司と言えばつばめとのコンビという印象が強い。何故かと言うと、真司をインターフェイスの表舞台に連れてきたのがつばめだったからだ。
「つばめー、泡が消えるー」
「あっ、ゴメン果林。そんじゃかんぱーい」
「つばみマジパねえな!」
「パねえっつーなぶん殴るぞ」
マジパねえという口癖が真司の特徴だ。それと、布のヘアバンドで限りなく金に近い茶髪を上げたデコ出しスタイル。大学では機械工学(ハードの方)について勉強しているということで、話がちょっと合った。
「ハマちゃん冬生まれて何か変な感じするわ。夏っぽいやんどっちかって言ったら」
「おー、よく言われるんだわそれ。でもバリバリの冬生まれなんだよなー」
「ボクの方が年上やよ」
「ヒロパねえ」
俺個人の感覚で言えば、つばめよりヒロと仲がいい気がする。夏合宿でもヒロと仲がいいからという理由で同じ班にしたし。結果、7班のマジパないラジオとかいうよくわからない番組が出来ましたね。マジパねえ。
まあ、別に誰がっていうことでもないんだよな。真司のコミュ力は誰とでもスッと仲良くなれる魅力だし。俺にはないからそれこそマジパねえっつって羨むくらいしかないんだけど。
「そーいやハマちゃんてなんでインターフェイスに出てきたん? 青敬やったら正直ラジオやってもって感じちゃう?」
「友達が欲しかったんだよ。ヒロさんて他校にも人脈あってパねえってずっと思っててさ」
「ああ、前対策委員だしな」
「で、ヒロさん入院しちまったじゃん? お見舞いに行ったとき、病室の前で朝霞さんと洋平さんに会ってさ。そん時に初対面なのにサークルがなあなあなの愚痴っちまって。そしたら朝霞さんが、紹介するからインターフェイスに出てみたらどうだーって」
「えっ、朝霞先輩の紹介やったん?」
「そーそー。そっからつばみと初心者講習会についてのやり取りが始まって現在に至る」
「だからアタシがハマ男と仲がいいとかじゃなくて、朝霞サンの頼みだから渋々ね」
――という会話は聞こえているだろうけど、朝霞先輩はこちらに目を向けることなく皮の串を召し上がっている。山口先輩は鮮やかに店内を駆け巡っていて、金曜夜の主役マジパねえと。
すると、ふわりといい匂いが漂って来る。眩く輝く黄色いそれは、だし巻き玉子。みんなも大盛り上がり。だけど、これに不思議そうな顔をしているのはつばめだ。
「美味そう! 匂いだけでパねえ!」
「ホンマ美味しそーやわ、これはアカン」
「でしょでしょ~、みんなで食べてね~」
「洋平、だし巻き頼んでないけど」
「あちらのお客さんと俺から」
“あちらのお客さん”は例によってこちらを窺うこともなくじゃこたまごかけごはんを黙々と。これが星ヶ丘という修羅の国で3年生き抜いた人たちの生き様か。山口先輩と朝霞先輩カッコ良すぎか。
「ハマちゃんよかったね、誕生会やれるほど友達出来て。あと、俺からも誕生日おめでと~」
「洋平さんあざっす! マジパねえっす!」
「朝霞サン! 趣味丸出しだけど、だし巻きゴチでーす!」
つばめの号令に合わせ、全員で「ありがとうございまーす」と。さすがにこれにはチラリとこちらを窺って、スッと右手を翳すのだ。そしてまた自分の食事に戻られる。あくまで自分は自分、2年は2年の空間でということらしい。
「朝霞さんマジパねえ」
「わかる。俺たちに下手に絡んで来ないのも配慮なんだろうな。だし巻き、ナンダッテーって思ったし」
「違う違う、そんな出来た人じゃないって朝霞サンは。あの人ご飯食べてる時はご飯だけ食べたいんだって。ホント喋んないからね」
「そーやってディスっときながらつばみ朝霞サンのこと大好きじゃんな」
「はあ!? ふざけんなハマ男表出ろや! お前こそヒロさんヒロさんて長野サンの犬じゃねーか!」
「お前誰が犬だ!」
「まあ待てお前ら、先輩を敬い慕うことの何が悪い」
「……うわ出た、野坂の説得力パねえ」
「いや、反面教師じゃね?」
「それだ。つばみ、やめよう」
「そうだな、ハマ男やめよう」
end.
++++
ハマちゃんの誕生日です。何か馴染んだら誕生会やってもらえる?的なこと聞いてた気がするんですよね6月頃に。
何故か洋朝に落ち着いたんだけどもハマちゃんとインターフェイスを結び付けた存在だからまあアリだろう!
そして愛と平和の使者ノサカである。先輩を敬い慕うことの最たる存在がこのノサカよ。しもべだろうと犬だろうと何にでもなれるぞ!
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「それじゃあ乾杯するけど、1コ抗議していい?」
「どうぞ」
「ハマ男の誕生会をやるのは全然いい。だけど、どーして「ハマ男と仲がいいから」とかいう事実無根な理由で幹事やんなきゃいけなかったワケ?」
今日は真司の誕生日ということで、何かすっげー荒れてるけどつばめが幹事で飲み会が開かれている。各々の飲み物を手にした状態で、乾杯と言われればグラスを掲げられる状態で始まったつばめの抗議だ。
「つばちゃ~ん、乾杯の音頭にしては不穏でしょでしょ~」
「うっさいわ、お前は黙って仕事しとけよ」
「朝霞ク~ン、つばちゃんがイジメる~」
「お前は黙って仕事しとけよ。生と皮、塩で」
ここはつばめ(朝霞班)行きつけで山口先輩がアルバイトをされている“玄”という焼き鳥メインの居酒屋。しかもどんな偶然か朝霞先輩がご飯を食べに来られていた。いつもの席もあるようで、常連って響きがカッコいいぜ!
それはそうと、真司と言えばつばめとのコンビという印象が強い。何故かと言うと、真司をインターフェイスの表舞台に連れてきたのがつばめだったからだ。
「つばめー、泡が消えるー」
「あっ、ゴメン果林。そんじゃかんぱーい」
「つばみマジパねえな!」
「パねえっつーなぶん殴るぞ」
マジパねえという口癖が真司の特徴だ。それと、布のヘアバンドで限りなく金に近い茶髪を上げたデコ出しスタイル。大学では機械工学(ハードの方)について勉強しているということで、話がちょっと合った。
「ハマちゃん冬生まれて何か変な感じするわ。夏っぽいやんどっちかって言ったら」
「おー、よく言われるんだわそれ。でもバリバリの冬生まれなんだよなー」
「ボクの方が年上やよ」
「ヒロパねえ」
俺個人の感覚で言えば、つばめよりヒロと仲がいい気がする。夏合宿でもヒロと仲がいいからという理由で同じ班にしたし。結果、7班のマジパないラジオとかいうよくわからない番組が出来ましたね。マジパねえ。
まあ、別に誰がっていうことでもないんだよな。真司のコミュ力は誰とでもスッと仲良くなれる魅力だし。俺にはないからそれこそマジパねえっつって羨むくらいしかないんだけど。
「そーいやハマちゃんてなんでインターフェイスに出てきたん? 青敬やったら正直ラジオやってもって感じちゃう?」
「友達が欲しかったんだよ。ヒロさんて他校にも人脈あってパねえってずっと思っててさ」
「ああ、前対策委員だしな」
「で、ヒロさん入院しちまったじゃん? お見舞いに行ったとき、病室の前で朝霞さんと洋平さんに会ってさ。そん時に初対面なのにサークルがなあなあなの愚痴っちまって。そしたら朝霞さんが、紹介するからインターフェイスに出てみたらどうだーって」
「えっ、朝霞先輩の紹介やったん?」
「そーそー。そっからつばみと初心者講習会についてのやり取りが始まって現在に至る」
「だからアタシがハマ男と仲がいいとかじゃなくて、朝霞サンの頼みだから渋々ね」
――という会話は聞こえているだろうけど、朝霞先輩はこちらに目を向けることなく皮の串を召し上がっている。山口先輩は鮮やかに店内を駆け巡っていて、金曜夜の主役マジパねえと。
すると、ふわりといい匂いが漂って来る。眩く輝く黄色いそれは、だし巻き玉子。みんなも大盛り上がり。だけど、これに不思議そうな顔をしているのはつばめだ。
「美味そう! 匂いだけでパねえ!」
「ホンマ美味しそーやわ、これはアカン」
「でしょでしょ~、みんなで食べてね~」
「洋平、だし巻き頼んでないけど」
「あちらのお客さんと俺から」
“あちらのお客さん”は例によってこちらを窺うこともなくじゃこたまごかけごはんを黙々と。これが星ヶ丘という修羅の国で3年生き抜いた人たちの生き様か。山口先輩と朝霞先輩カッコ良すぎか。
「ハマちゃんよかったね、誕生会やれるほど友達出来て。あと、俺からも誕生日おめでと~」
「洋平さんあざっす! マジパねえっす!」
「朝霞サン! 趣味丸出しだけど、だし巻きゴチでーす!」
つばめの号令に合わせ、全員で「ありがとうございまーす」と。さすがにこれにはチラリとこちらを窺って、スッと右手を翳すのだ。そしてまた自分の食事に戻られる。あくまで自分は自分、2年は2年の空間でということらしい。
「朝霞さんマジパねえ」
「わかる。俺たちに下手に絡んで来ないのも配慮なんだろうな。だし巻き、ナンダッテーって思ったし」
「違う違う、そんな出来た人じゃないって朝霞サンは。あの人ご飯食べてる時はご飯だけ食べたいんだって。ホント喋んないからね」
「そーやってディスっときながらつばみ朝霞サンのこと大好きじゃんな」
「はあ!? ふざけんなハマ男表出ろや! お前こそヒロさんヒロさんて長野サンの犬じゃねーか!」
「お前誰が犬だ!」
「まあ待てお前ら、先輩を敬い慕うことの何が悪い」
「……うわ出た、野坂の説得力パねえ」
「いや、反面教師じゃね?」
「それだ。つばみ、やめよう」
「そうだな、ハマ男やめよう」
end.
++++
ハマちゃんの誕生日です。何か馴染んだら誕生会やってもらえる?的なこと聞いてた気がするんですよね6月頃に。
何故か洋朝に落ち着いたんだけどもハマちゃんとインターフェイスを結び付けた存在だからまあアリだろう!
そして愛と平和の使者ノサカである。先輩を敬い慕うことの最たる存在がこのノサカよ。しもべだろうと犬だろうと何にでもなれるぞ!
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