2017(04)
■名ばかりの春が来て、君は
++++
「はー、まだまだ寒いですねー」
「えっ、少しずつあったかくなってますよー」
「寒いって! ミドリ君寒くないの?」
今日も今日とてセンターに籠る生活が続いていると、外気温のことを言われてもあまりピンと来ない。センターから出ても行き先は大体ゼミ室だからという事情もあるだろう。基本的に屋内で過ごす日々だ。
例によって研修生を自称してセンターに入り浸る綾瀬は寒い寒いと大騒ぎしている。冷えているのであろう指先を必死にさすり、A番で受付席に座る川北に寒さに関する同意を半ば無理に得ようとしている。
ただ、その川北はのほほんとした顔をして言うほど寒いかというニュアンスのことを綾瀬に訊ね返している。春山さんや土田は寒さに強いという印象があったが、川北も寒さには強い方なのか。
「と言うか、どうしても地元と比べちゃうんで。星港は晴れてる分あったかいって言うか」
「ほう、長篠は北部と南部で冬の気候が大きく異なると言うが」
「俺の実家は北部なので、雪もどかどか降りますよー」
「ムリー! 雪がどかどか降るとかムリー! 想像も付かない!」
「カナコさん実家どこでしたっけ」
「山羽だよ。山羽は雪が年に1回降るか降らないかだし、雪が降ったらみんなおおはしゃぎで授業そっちのけで校庭に出てー」
「えー!? ムリですよー! 雪が降ったら外に出てはしゃぐ元気もないですよー!」
雪が多く寒い地方から出て来ている川北と、雪の降らない温暖な地方から出て来ている綾瀬の間で雪や冬の気温に対するギャップが生じているようだった。ちなみに向島もあまり降らない方ではあるが、山羽よりは降るはずだ。
と言うか、綾瀬は雪も降ってないのに寒い寒いとうるさすぎる。いっそのこと試される北の大地から出て来ている春山さん(五輪休暇中)を連れて来て、ちょっとしたことで騒ぐ綾瀬をぶちのめしてやりたい衝動に駆られる。
「山羽の人ってみんなカナコさんみたいに寒がりなんですか?」
「寒がりな人は多いと思うよ、先輩も寒いのは苦手だったし」
「そうなんですねー」
「先輩はね、学ランの下にカーディガン着てたんだよね。で、原稿に向かってる時とかは肩がこるからって学ラン脱いでカーディガンになるんだけど、それがまた良かったんだー!」
「そうなんですかー」
「ノって来ると腕まくりをするんだけど、その時に袖が邪魔って言ってカーディガンも脱いで肩からかけて結んでてー、ほら、プロデューサー巻きみたいな感じになるんだけどー」
「そうなんですねー」
川北は、巻き込まれると面倒な話を瞬時に判断して受け流すのが本当に上手くなったと思う。センターに来てから自己防衛能力が飛躍的に向上していると言うか、状況判断能力がついたと言うか。
非実在先輩の話をして熱くなったのか、綾瀬はもこもこと着こんでいた上着をようやく1枚脱いだ。屋内にいるにも関わらず上着を脱げる状態になるのがあまりにも遅すぎるような気がする。恐らく末端まで血が巡らんのだろう。
「どうしましょう雄介さん! 先輩の話をしてないと温かくなりません!」
「知るか。スタッフでもないのに雑談ばかりで終わるようなら今すぐ摘まみ出すぞ」
「ごちそうさまです! ……じゃなかった、何をしましょう!」
「それでは、プレッツェルをどうにかしろ」
「地道に減らしますね!」
「……って言うか、それって単におやつタイムなんじゃ」
「研修生にさせられる仕事も現状では特にないし、普通に邪魔だからな」
しかし、プレッツェルを片付けさせたはいいが、それを噛み砕く音がまたうるさい。しかしプレッツェルを地道に減らすにはこれしかない。いくら押し付けられたものであろうとも、食品を捨てるのは勿体ない。
「カナコさん、よく水分なしでプレッツェル食べれますね!?」
「タンブラーは持ってるよ、寒いし」
「温かい飲み物は必須ですよねー。ぽかぽかする飲み物とかありますかねー」
「スパイス系ではないか? チャイやジンジャーティーといった具合に」
「やっぱり生姜はいいんですねー」
「オレはよく知らんが、すりおろし生姜のチューブよりは原材料が生姜のみの物の粉末タイプが良いとは聞く」
「雄介さん、その話を詳しくお願いします!」
「よく知らんと前置きをしたが」
「そこを何とか~!」
まだまだ寒いなら何らかの対策は必要じゃないですか、と綾瀬が縋りついて来るが知ったことではない。寒い寒いと喚く奴もいれば、花粉がどうしたと喚く奴もいる。着実に春は近付いているのだから、寒さに関しては黙って耐えろとしか言いようがないのだ。
end.
++++
久々に情報センター! ところで春山さんて一応まだセンターに在籍してるようですね、五輪休暇中ときましたか
週末のリン様はお外に繰り出していたようですが、平日になればまたセンター暮らしに逆戻り。日給上限までフルでセンターの保守保全業務に勤しむぞ!
ミドリとカナコがきゃいきゃいするのが可愛いのですが、それをリン様にバッサリ行かせるのがまた楽しいヤツ
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「はー、まだまだ寒いですねー」
「えっ、少しずつあったかくなってますよー」
「寒いって! ミドリ君寒くないの?」
今日も今日とてセンターに籠る生活が続いていると、外気温のことを言われてもあまりピンと来ない。センターから出ても行き先は大体ゼミ室だからという事情もあるだろう。基本的に屋内で過ごす日々だ。
例によって研修生を自称してセンターに入り浸る綾瀬は寒い寒いと大騒ぎしている。冷えているのであろう指先を必死にさすり、A番で受付席に座る川北に寒さに関する同意を半ば無理に得ようとしている。
ただ、その川北はのほほんとした顔をして言うほど寒いかというニュアンスのことを綾瀬に訊ね返している。春山さんや土田は寒さに強いという印象があったが、川北も寒さには強い方なのか。
「と言うか、どうしても地元と比べちゃうんで。星港は晴れてる分あったかいって言うか」
「ほう、長篠は北部と南部で冬の気候が大きく異なると言うが」
「俺の実家は北部なので、雪もどかどか降りますよー」
「ムリー! 雪がどかどか降るとかムリー! 想像も付かない!」
「カナコさん実家どこでしたっけ」
「山羽だよ。山羽は雪が年に1回降るか降らないかだし、雪が降ったらみんなおおはしゃぎで授業そっちのけで校庭に出てー」
「えー!? ムリですよー! 雪が降ったら外に出てはしゃぐ元気もないですよー!」
雪が多く寒い地方から出て来ている川北と、雪の降らない温暖な地方から出て来ている綾瀬の間で雪や冬の気温に対するギャップが生じているようだった。ちなみに向島もあまり降らない方ではあるが、山羽よりは降るはずだ。
と言うか、綾瀬は雪も降ってないのに寒い寒いとうるさすぎる。いっそのこと試される北の大地から出て来ている春山さん(五輪休暇中)を連れて来て、ちょっとしたことで騒ぐ綾瀬をぶちのめしてやりたい衝動に駆られる。
「山羽の人ってみんなカナコさんみたいに寒がりなんですか?」
「寒がりな人は多いと思うよ、先輩も寒いのは苦手だったし」
「そうなんですねー」
「先輩はね、学ランの下にカーディガン着てたんだよね。で、原稿に向かってる時とかは肩がこるからって学ラン脱いでカーディガンになるんだけど、それがまた良かったんだー!」
「そうなんですかー」
「ノって来ると腕まくりをするんだけど、その時に袖が邪魔って言ってカーディガンも脱いで肩からかけて結んでてー、ほら、プロデューサー巻きみたいな感じになるんだけどー」
「そうなんですねー」
川北は、巻き込まれると面倒な話を瞬時に判断して受け流すのが本当に上手くなったと思う。センターに来てから自己防衛能力が飛躍的に向上していると言うか、状況判断能力がついたと言うか。
非実在先輩の話をして熱くなったのか、綾瀬はもこもこと着こんでいた上着をようやく1枚脱いだ。屋内にいるにも関わらず上着を脱げる状態になるのがあまりにも遅すぎるような気がする。恐らく末端まで血が巡らんのだろう。
「どうしましょう雄介さん! 先輩の話をしてないと温かくなりません!」
「知るか。スタッフでもないのに雑談ばかりで終わるようなら今すぐ摘まみ出すぞ」
「ごちそうさまです! ……じゃなかった、何をしましょう!」
「それでは、プレッツェルをどうにかしろ」
「地道に減らしますね!」
「……って言うか、それって単におやつタイムなんじゃ」
「研修生にさせられる仕事も現状では特にないし、普通に邪魔だからな」
しかし、プレッツェルを片付けさせたはいいが、それを噛み砕く音がまたうるさい。しかしプレッツェルを地道に減らすにはこれしかない。いくら押し付けられたものであろうとも、食品を捨てるのは勿体ない。
「カナコさん、よく水分なしでプレッツェル食べれますね!?」
「タンブラーは持ってるよ、寒いし」
「温かい飲み物は必須ですよねー。ぽかぽかする飲み物とかありますかねー」
「スパイス系ではないか? チャイやジンジャーティーといった具合に」
「やっぱり生姜はいいんですねー」
「オレはよく知らんが、すりおろし生姜のチューブよりは原材料が生姜のみの物の粉末タイプが良いとは聞く」
「雄介さん、その話を詳しくお願いします!」
「よく知らんと前置きをしたが」
「そこを何とか~!」
まだまだ寒いなら何らかの対策は必要じゃないですか、と綾瀬が縋りついて来るが知ったことではない。寒い寒いと喚く奴もいれば、花粉がどうしたと喚く奴もいる。着実に春は近付いているのだから、寒さに関しては黙って耐えろとしか言いようがないのだ。
end.
++++
久々に情報センター! ところで春山さんて一応まだセンターに在籍してるようですね、五輪休暇中ときましたか
週末のリン様はお外に繰り出していたようですが、平日になればまたセンター暮らしに逆戻り。日給上限までフルでセンターの保守保全業務に勤しむぞ!
ミドリとカナコがきゃいきゃいするのが可愛いのですが、それをリン様にバッサリ行かせるのがまた楽しいヤツ
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