2017(04)

■健全な食生活の土台とは

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「ターカーちゃーん」
「あっ、果林先輩。どうしたんですか?」
「タカちゃん相変わらず怠惰な生活だねえ。髭伸びてるし」
「ゼミ合宿から帰って来てから手付かずでした。特に誰と会う予定もなかったので。あ、じゃあ髭剃るんでちょっと待っててもらっていいですか?」
「はいはーい。急がなくていいよ、慌てたらまたカミソリで切っちゃうでしょ」

 タカちゃんが住んでいるマンションのオートロックは、最近になってその解除番号を教えてもらっていた。バイトをしていないタカちゃんであれば、よっぽどのことがない限りは部屋にいるだろうと思って来てみたら、やっぱりいた。
 アタシがタカちゃんの部屋に来たのにはちょっとばかり事情がある。ただ、悪い話ではないとは思う。アタシ基準ではね。去年までの当たり前が通用しなくなって、行き場を探していたというのもある。

「剃りました」
「よろしい。つるつるだね。で、本題なんだけど」
「はい」
「タカちゃんの家に根本的に足りてないもの、それはお皿だとお姉さんは思いました」
「はい? お皿? ですか?」
「そう、お皿。というワケで、お皿をプレゼントします。あげるから使ってね」
「はあ。ありがとうございます」

 手渡した白いお皿はとりあえず2枚。手元には2枚分の台紙しかなかったから。だけどお祭りはまだまだ始まったばかり。最終目標は、ここでMBCCメンバーが集まってご飯を食べても全然平気なくらいの枚数かな。

「と言うかどうしてお皿なのかちょっと」
「ほら、夏にここで合宿の打ち合わせしたでしょ?」
「ありましたね」
「りっちゃんがカルボナーラ作ってくれてさ。だけどお皿がなくて紙皿で食べてたじゃん」
「そうですね」
「タカちゃんの部屋って立地的にインターフェイスの子たちも来やすいのに、お皿が足りてないんですよ」
「でも、こういうお皿っていい値段しますよね。さすがにそれを何もしないでもらっちゃうのは」
「平気平気。パンまつりの副産物だから」
「あ、パンまつりの」

 25点集めると必ず1枚もらえる白いお皿。今まではいっちー先輩の部屋に集まっていたけど、そのいっちー先輩が1人暮らしを終えてしまうということで次に白羽の矢が立ったのがタカちゃんだった。
 このテの点数なんて、普段通りの生活をしてれば何もしなくたって集まるからね。せっかくだし、お皿は使い道のありそうなところに流しておいて損はないかなと思って。タカちゃん本人がダメでもここならエージが入り浸ってるから。
 特にエージなんて神経質だし、ごはんを地べたに紙皿で食べるよりは地べたにお皿で食べたいんじゃないかと思う。先のカルボナーラの件もあるし、紙皿買う方がコストがかかると思うんですよね最終的には。

「シール何点でお皿1枚でしたっけ」
「25点だね」
「えっ、皿が2枚ってことはもう50点集めたんですか?」
「あっ、高ピー先輩からもシールもらってるよ。ほら、高ピー先輩朝はパン食だし5枚切り2枚ずつだから点数たまるの早いんだよ」
「そうなんですね」
「今年はいっちー先輩も協力してくれてて、ほらいっちー先輩メロンパン食べるじゃん、メロンパンて0.5点しかないんだけど彼女さんがアップルパイ食べるからって1点のシールもちょこちょこあって、あれっ新婚家庭にお皿要らないのかなとかって邪推しますよねー」
「まあ、伊東先輩の場合は今までのお皿もありますし、結婚となったらもっといいお皿を用意すると思いますよ」
「ですよねー」
「実は俺もたまにランチパックを食べるのでシール自体は冷蔵庫にちょっと貼ってあるんですけど、たまる気がしなかったんで台紙はもらってきてないんです」
「じゃあアタシが今持ってるの貼っとくから、エージにも言って管理してもらったらいいよ」

 冷蔵庫に貼ってあった4点分のシールを空の台紙にぺたぺたと貼って、その台紙を冷蔵庫にぺたり。あとはきっとエージが何とかしてくれるでしょう。タカちゃんの冷蔵庫を管理してるのはエージだって噂もあるくらいだし。

「はー、でもこれは焼きそばを食べるのによさそうなお皿ですね、そこそこ深さもあって」
「あ、確かに焼きそばは向いてそうだね」
「あの、お察しかと思いますけどエイジがですね?」
「あっ、うん、察した。って言うかそもそもの問題は地べたにお皿を置くことだと思うんだよお姉さんは。ごはんは姿勢よく食べたいよ」
「机を買う計画はあるんですよ、一応」
「うそ、買ったら呼んで。さらに集めたお皿持って遊びに来る」


end.


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例のお祭ってナノスパでは年度始まっていつも4月くらいにやってるんだけど、実際は今くらいの次期からやってるので年度が替わる前にパンまつりです。
タカちゃんの部屋に足りてないものはお皿だってお姉さんは言ってるんですが、まずは机じゃねーのかなあ……いや、順序や難易度があるか
そしてなんやかんやバカップルイジリは止まらない様子のタカりん。先輩を無碍に扱うと後が怖いぞ!

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