2026
■不思議な縁のある人
++++
「あー、面白かった! ありがとね松居君、付き合ってくれて」
「や、俺も楽しかったっす。でも、もうちょっと早く言ってくれりゃもっとちゃんとコンディション合わせれたっす」
「ゴメンゴメン」
ここ最近は、MMPでラジオのこともやりつつバドサーへと行く頻度を高めていた。それと言うのもひと月程前、佑人つてに受けた果たし状めいたご指名があってのことだった。
ウチのバドサーと、青丹大学のバドサーとの間で交流会が開かれることになったとかで、連休での旅行ってことであちらさんがこっちに来ることになったと。青丹大学のバドサーには、青丹エリアのアマチュア大会で優勝した奴がいるとかで、そいつが直々に俺を出せと言ってきたっつーワケだ。
指名されるうちが華とは言え、前原さんに1回勝ってバドミントンに一区切りをつけていた俺は、精々月に3、4回ライトにやる程度になっていたし、真剣勝負をするには正直不安しかなかった。それでなくてもMMPと掛け持って、そっちを主軸にやってるし。
「や、でも前原君の言ってた通り、長くやってるとこっちのクセとかを掴んできてヤな感じになってくね。松居君対策はとっとと勝負を決めることに尽きる」
「ったくあの人、一体誰の味方なんだ。そこはカワイイ後輩の俺の味方しとけよ」
「前原君は松居君に対して勝ち逃げしてたいはずだし、そこは俺にねじ伏せてもらった方がいいって考えそうだけど」
「はー、マジであの人の考えそうなコトなんよ」
俺を直々に指名してきた橘亮介というのがまた妙な縁のある奴だ。何でもコイツは、前原さんの緑風時代の宿命のライバル、その人だったのだ。前原さんの思い出話は何回も聞いたことがあったけど、まさかその当人と撃ち合うことになるとは思わない。
そして、俺の存在が直接的に伝わったのは前原さんつてではなく、何とMMPのOGである菜月サン経由だったらしい。何でも、菜月サンと橘亮介は高校時代からの悪友だとか。そもそも確か1回会ったかそこらの菜月サンが俺のことを覚えてるとも思わなかったよな。
やたら人脈が繋がっていることの他にはサウスポーという共通点がある。そして、理由は違えど同い年の連中から2学年遅れている者同士の親近感というものが生まれていた。ちなみに奴は浪人とメンタルヘルスをやらかしての休学で2年遅れているらしい。
「そーだ。松居君て、菜月と撃ち合ったことある?」
「や、ないっすね。つーか、あの人とはサークルの卒コンか何かで1回会ったことがあるとかその程度なんで」
「あ、そーなんだ。バドミントンで言うとね、素人なんだけどやっぱアイツがメチャクチャ面白くってね」
「へえ、そーなんすか。確かに菜月サンの名前くらいは卒業してった真希ちゃんって先輩からも聞いてたんすけどね。学部のダチとかで。下手な素人よりは上手いって話で」
「そらそうよ、俺が基礎を仕込んだんだから。でもなー、実際どう面白いかっていうのは1回実際に見て欲しいんだよな」
「そりゃあ見れるなら俺も見てみたいっすよ」
真希ちゃんによれば下手な素人よりは上手く、前原さんによれば性格が悪くて厭らしい。で、橘亮介が基礎を仕込んだとなれば確かに何となく上手そうな雰囲気はありそうだ。あの人自体が何でも出来そうな雰囲気がそこはかとなくあるし。俺のイメージではあるが。
「菜月の何が面白いかっつったら、守備範囲が普通の人より腕1本分広いんだよ」
「守備範囲の広さっすか」
「そーよ。アイツの持論は「スポーツはディフェンスから」だもんよ。バスケだろうが何だろうが守備に重きを置いてる奴よ。いぶし銀ってのはアイツの為にある言葉だと思う」
「へえ、そーなんすね」
如何せん「アナウンサーの双璧」という大層な二つ名であったり、奈々さんが普段から目を輝かせながらきゃっきゃと語る先輩たちの凄さを物語るエピソードからするに、それはもう輝かしかったり、目立つような感じなんだろうなあという印象に寄っちまいそうだ。
それをスポーツで言えば、華やかに得点を決めるとか、何かと目を引く華のあるプレーをするんだろうと勝手に思っていた。だからいぶし銀だと聞いて、意外だなと思ってしまった。ただ、いつか聞いたあの人の、基本に忠実なラジオ番組を思えば、堅実っていう言葉が似合わないことはないんだろう。
「そーいやサークルの同期に学祭に誘われたって言ってたし、そのうちラジオの方に顔見せに来るんじゃないかな?」
「おっ、じゃあそん時狙いであの人の守備範囲の秘密見せてもらお」
「多分アイツめんどくさがると思うけど、いざラリー始めりゃスイッチ入るから、ラケット握らせりゃ勝ちよ」
「了解っす」
「あーそーだ、せっかくだし連絡先ちょーだい」
「別にいいけど、何すんだ?」
「何かするかもしれないし、しないかもしれないし」
「何だそれ」
「松居君はまだしばらく学生だからこの辺に来ればまたやり合えると信じて。前原君拉致ってドライブがてらこっちに乗り込む、とかも楽しそうだなー。逆に、帰省のときにこっち寄って松居君を拉致るも良さそーね。バド関係なくたって遊びたいじゃんね」
「そーゆーコトをするなとは言わねーけど、やるんならまず俺のアポ取ってくださいよ。俺もいろいろ忙しいんすから」
「良かったら松居君も青丹に遊びにおいでよ。ちょっとだったら案内してあげられるし。俺の専攻は史学だから寺とか古墳とかが得意だけど、そーゆーのが面白い若者って少ないか」
「や、青丹の、古都ならではの空気感は多分嫌いじゃないし、俺じゃないけど古墳が面白い若者は知ってるんで、いないこたないすよ」
じゃあまた今度ね! と奴は屈託のない笑顔で言う。バドミントンのときの厭らしさはどこへ行った。もし本当に青丹で古墳を連れ回されるんなら、プロに事前情報をもらっとくべきか?
「奏多、お疲れ。橘さんと話し込んでたみたいだけど」
「まあ、何だ。妙な縁のある人だよ」
end.
++++
古墳が面白い若者。何やんやろなあ。
(phase3)
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「あー、面白かった! ありがとね松居君、付き合ってくれて」
「や、俺も楽しかったっす。でも、もうちょっと早く言ってくれりゃもっとちゃんとコンディション合わせれたっす」
「ゴメンゴメン」
ここ最近は、MMPでラジオのこともやりつつバドサーへと行く頻度を高めていた。それと言うのもひと月程前、佑人つてに受けた果たし状めいたご指名があってのことだった。
ウチのバドサーと、青丹大学のバドサーとの間で交流会が開かれることになったとかで、連休での旅行ってことであちらさんがこっちに来ることになったと。青丹大学のバドサーには、青丹エリアのアマチュア大会で優勝した奴がいるとかで、そいつが直々に俺を出せと言ってきたっつーワケだ。
指名されるうちが華とは言え、前原さんに1回勝ってバドミントンに一区切りをつけていた俺は、精々月に3、4回ライトにやる程度になっていたし、真剣勝負をするには正直不安しかなかった。それでなくてもMMPと掛け持って、そっちを主軸にやってるし。
「や、でも前原君の言ってた通り、長くやってるとこっちのクセとかを掴んできてヤな感じになってくね。松居君対策はとっとと勝負を決めることに尽きる」
「ったくあの人、一体誰の味方なんだ。そこはカワイイ後輩の俺の味方しとけよ」
「前原君は松居君に対して勝ち逃げしてたいはずだし、そこは俺にねじ伏せてもらった方がいいって考えそうだけど」
「はー、マジであの人の考えそうなコトなんよ」
俺を直々に指名してきた橘亮介というのがまた妙な縁のある奴だ。何でもコイツは、前原さんの緑風時代の宿命のライバル、その人だったのだ。前原さんの思い出話は何回も聞いたことがあったけど、まさかその当人と撃ち合うことになるとは思わない。
そして、俺の存在が直接的に伝わったのは前原さんつてではなく、何とMMPのOGである菜月サン経由だったらしい。何でも、菜月サンと橘亮介は高校時代からの悪友だとか。そもそも確か1回会ったかそこらの菜月サンが俺のことを覚えてるとも思わなかったよな。
やたら人脈が繋がっていることの他にはサウスポーという共通点がある。そして、理由は違えど同い年の連中から2学年遅れている者同士の親近感というものが生まれていた。ちなみに奴は浪人とメンタルヘルスをやらかしての休学で2年遅れているらしい。
「そーだ。松居君て、菜月と撃ち合ったことある?」
「や、ないっすね。つーか、あの人とはサークルの卒コンか何かで1回会ったことがあるとかその程度なんで」
「あ、そーなんだ。バドミントンで言うとね、素人なんだけどやっぱアイツがメチャクチャ面白くってね」
「へえ、そーなんすか。確かに菜月サンの名前くらいは卒業してった真希ちゃんって先輩からも聞いてたんすけどね。学部のダチとかで。下手な素人よりは上手いって話で」
「そらそうよ、俺が基礎を仕込んだんだから。でもなー、実際どう面白いかっていうのは1回実際に見て欲しいんだよな」
「そりゃあ見れるなら俺も見てみたいっすよ」
真希ちゃんによれば下手な素人よりは上手く、前原さんによれば性格が悪くて厭らしい。で、橘亮介が基礎を仕込んだとなれば確かに何となく上手そうな雰囲気はありそうだ。あの人自体が何でも出来そうな雰囲気がそこはかとなくあるし。俺のイメージではあるが。
「菜月の何が面白いかっつったら、守備範囲が普通の人より腕1本分広いんだよ」
「守備範囲の広さっすか」
「そーよ。アイツの持論は「スポーツはディフェンスから」だもんよ。バスケだろうが何だろうが守備に重きを置いてる奴よ。いぶし銀ってのはアイツの為にある言葉だと思う」
「へえ、そーなんすね」
如何せん「アナウンサーの双璧」という大層な二つ名であったり、奈々さんが普段から目を輝かせながらきゃっきゃと語る先輩たちの凄さを物語るエピソードからするに、それはもう輝かしかったり、目立つような感じなんだろうなあという印象に寄っちまいそうだ。
それをスポーツで言えば、華やかに得点を決めるとか、何かと目を引く華のあるプレーをするんだろうと勝手に思っていた。だからいぶし銀だと聞いて、意外だなと思ってしまった。ただ、いつか聞いたあの人の、基本に忠実なラジオ番組を思えば、堅実っていう言葉が似合わないことはないんだろう。
「そーいやサークルの同期に学祭に誘われたって言ってたし、そのうちラジオの方に顔見せに来るんじゃないかな?」
「おっ、じゃあそん時狙いであの人の守備範囲の秘密見せてもらお」
「多分アイツめんどくさがると思うけど、いざラリー始めりゃスイッチ入るから、ラケット握らせりゃ勝ちよ」
「了解っす」
「あーそーだ、せっかくだし連絡先ちょーだい」
「別にいいけど、何すんだ?」
「何かするかもしれないし、しないかもしれないし」
「何だそれ」
「松居君はまだしばらく学生だからこの辺に来ればまたやり合えると信じて。前原君拉致ってドライブがてらこっちに乗り込む、とかも楽しそうだなー。逆に、帰省のときにこっち寄って松居君を拉致るも良さそーね。バド関係なくたって遊びたいじゃんね」
「そーゆーコトをするなとは言わねーけど、やるんならまず俺のアポ取ってくださいよ。俺もいろいろ忙しいんすから」
「良かったら松居君も青丹に遊びにおいでよ。ちょっとだったら案内してあげられるし。俺の専攻は史学だから寺とか古墳とかが得意だけど、そーゆーのが面白い若者って少ないか」
「や、青丹の、古都ならではの空気感は多分嫌いじゃないし、俺じゃないけど古墳が面白い若者は知ってるんで、いないこたないすよ」
じゃあまた今度ね! と奴は屈託のない笑顔で言う。バドミントンのときの厭らしさはどこへ行った。もし本当に青丹で古墳を連れ回されるんなら、プロに事前情報をもらっとくべきか?
「奏多、お疲れ。橘さんと話し込んでたみたいだけど」
「まあ、何だ。妙な縁のある人だよ」
end.
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古墳が面白い若者。何やんやろなあ。
(phase3)
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