2026

■会話のキャッチボールハウツー

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「こんにちはー、緑ヶ丘でーす」
「奈々せんぱーいっ!」
「くるちゃーんッ! きゃっきゃっ」

 MBCCとMMPが合同で挿し絵のあるラジオを作ってみようという企画が立ち上がり、それをどう進めていくのかの打ち合わせにやってきた。ウチのメインメンバーはササ、くるみ、周で、俺はいつものようにドライバーとして、あとはこっちの人への顔見せも兼ねて。カノン風に言えば半分MMPだから。

「えっと、そしたら緑ヶ丘の子たちはどこに座ってもらおうかな? ツッツのベンチに2人と、ゴメンけど誰かミキサー席とアナウンサー席に移ってくれる? 場所作んないとッ」
「お構いなく」
「えっ、何これすっご! 前来た時こんな家具無かったですよね!?」
「ツッツが作ってくれたんだよーッ」
「えーっ!? すごーっ!」
「くるみの班って夏合宿の練習とかで向島に来なかった?」
「あたしの班は緑大でやってたから」

 この企画が正式に立ち上がる前に、作品出展の制作陣である春風、ジュン、殿の3人が緑大に来てくれて、エージ先輩や高木先輩とこれこれこういう感じで~みたいな風に制作の仕方だとか、いろんなことを話してたのかな? それでゴーが出て、現在に至っている。

「えっと、そっちの子は1年生かな? うちは向島大学MMPの代表で、ミキサーやってる3年の岡島奈々っていいます」
「十河周です」
「え、えっとすがやん、この子はどういう感じの子なのかなッ」
「あっ、結構ガチガチな野球フリークなんで奈々先輩のサンダース談義は大体受けられるはずですよ」
「ああ、そうですよ。奈々先輩、今日は打ち合わせが済んだら、思う存分野球の話をしてもらって大丈夫だと思います、はい」
「あっバカ、今は振るな」

 俺と春風が野球というワードを出したことで、奏多がやりやがったコイツらと言わんばかりに制止する。俺と春風は野球にはそこまで詳しくないから、奈々先輩のいつものアツいヤツが始まるのかなくらいにしか思ってなかったんだけど。みるみるうちに奈々先輩の顔が怖くなっていくんだもんなあ。

「我らがストライプ・サンダースはッ! 圧倒的戦力でもって独走態勢を築いていたはずだったのにッ! 気付けばもうすぐそこにタイタンズがいるッ!」
「あーあー。やっちまったなァお前ら。どーしてくれんだ。こうなっちまったらまともな話し合いなんかしばらく無理だぞ」
「奈々先輩~、どうしちゃったんですか~」
「ごめんねくるちゃんッ、でもこればっかりはッ! あー、マジックがゼロになるまではッ! キーッ!」
「ゲーム差がないとは言え、これまでの対戦成績を見ると直接対決は勝率7割5分でサンダースが有利なので、それを落とさないことで自ずとマジックは減っていきますよ。大勢はサンダース優位に変わりないです」
「だよねだよねッ。松兄にはゴメンだけどチェアーズが勝手に転げ落ちていってくれてさあ独走って走ってたところに気付けばこうでしょ、気が気じゃなくて」
「勝手には余計っすよ」
「チェアーズは主力の怪我が痛かったですね」
「何であれ怪我は辛いんよ。プロ選手のリハビリはさぞ壮絶だろうよ。一般人の俺ですらしんどかったんだから」
「アスリートの場合はただ生活出来ればいいというわけではなくて、競技レベルにまで戻すというところが特に苦しい点だろうとは」
「そーゆーコトよ」
「参考までに、松兄さんのリハビリのことは聞いても?」
「変な奴だな、そんなコトに興味あるなんて」

 周は医療の話にも興味があるのかと思ったけど、ある程度野球を見ていればこの怪我は全治どれだけで、痛そうにはしたけどしばらくプレー出来たから何週間くらいで戻ってくるだろう、とかが何となくわかるようになる人もいるんだとか。多分周もその類。その流れでリハビリについての知識もある程度あるんだろうなあ。奏多と会話が弾んでる。

「そう言えば、周ってとりぃと同じ班だったってことはウチの1年生の子たちとの交流ってまだまだこれからって感じなのかな? ジュンは話した?」
「話してないです。琉生みたいに飛んでくるとかの特殊例でもないと他の班の人とは」
「僕はパロっていうんだ。草花とか木とかの自然が好きなんだよ。それで、こっちがツッツ。DIYが得意で、周が座ってるベンチもツッツが作ってくれたんだ。家には木工用のすごい機械があるんだって」
「木工機械は、バット工場でしか見たことがない」
「え、バット工場に行ったことがあるの…?」
「たまたま見学を申し込める機会があった」
「いいなあ」
「良かったよ」
「い、今って、天然のアオダモ材って、少なくなってて……バットの材料で有名なんだけど……一般の木材としても、扱いやすくって、俺は結構好きで……」
「アオダモは成長が遅いから、材として使えるようになるまで80年くらいかかるとは、聞いたことがある」
「遅いから、堅くて、いいんだけど……」
「そうそう、成長がゆっくりで、植え始めた最初の頃は本当に細くって、大丈夫かなあって心配になっちゃうんだよね。そう言えば、プロ野球選手の人がアオダモの植樹活動とかもやってたっけ」
「やってる。折れたバットを再利用した雑貨とかも売ってる」
「ああ、知ってる知ってる! お箸とかにしてるんだよね」

 周が順調にMMPメンバーを攻略している。しかも人見知りのツッツをバットの話題から早々に攻略したのが強すぎる。波長の合う合わないはともかく、コミュニケーションの上手なパロは会話のとっかかりを作ってくれるだろうとは思ってた。そして野球漫画の話題からジャックとうっしーを難なく攻略した周は、高校野球の夏らしさでいろはを攻略。

「春風が言ってたのはこういうことだったのか……」
「はい。野球にもう1ワード加えることで、どんどん会話が繋がっていくようなんですよ。それでなくても話が脱線しやすいMMPとは相性がとても良いと思います」
「ウチはそもそも野球の話にならないし、話も脱線しにくいからなあ」

 これをきっかけにウチでも会話のキャッチボールが続くようになったらいいなあと思うんだけど、どうかなあ。まずは周の好きなお笑い芸人を押さえるところから始めたらいいのかな?


end.


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周、プロ野球選手の登場曲とかで音楽の引き出しはそれなりにありそう説。
カノン・ジュン・殿とはどうやって繋がるかわからんけど、そのうち馴染んでそう。
すがはるちゃんが奈々の地雷を踏んだのに気付いて焦る奏多◎

(phase3)

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