2026

■スポーツの楽しい季節です

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「おー!」
「今のはよう捕ったわ」

 この時期になると、課題や作品制作、それから避暑などの目的で割と時間を問わずスタジオには誰かがいる。社会学部メディア文化学科の第1スタジオという半地下の教室は、佐藤ゼミが実質的ゼミ室として占拠しているような状態だ。
 俺と鵠さんが授業を終えてスタジオの階段を下ると、4年生の平田先輩と小田先輩がパソコンのモニターを囲んで大盛り上がり。傍らにはスポーツ新聞も置かれているので、きっと何かしらのスポーツを見ているのかもしれない。この2人はスポーツ好きという印象がある。

「おーす弟! 康平も! あっ今の見て! 凄いぞ~」
「えーと、何ですかね」
「野球に見えるじゃんな」
「あっお前らさては興味ないか! 今高校野球の向島大会が大盛り上がりなんに」
「ああ、夏の大会にどこが行くかを決めてるって感じですか?」
「そういやそういう時期じゃん?」
「お前らぁ~、どーしてそうも感情がないんやぁ~! 弟は紅社やし康平は光洋やろ、強豪ひしめく楽しいエリアやろ~!」

 平田先輩は割と野球全般に興味が強いタイプの人なので、多分だけど周と話が合いそうな気がする。それはそうとして、高校野球の大会(予選)が始まっていると言われても、俺はそこまで興味がないので先輩たちにはごめんなさいと言う他にない。
 夏の全国高校野球大会に関しては、各エリアの予選をどこの高校が勝ち上がってくるのかをワクワクしながら見守るのが楽しいと平田先輩は言う。ちなむと、今の時代、試合は動画配信サイトで見られたりもするし、スポーツアプリで試合の経過を見ることが出来るらしい。すごい。

「そうは言ってもひらっちゃん、高木君がスポーツに関心が薄いのは解釈一致って感じじゃない?」
「それは実際そうやけども。でも紅社で生まれ育ったからにはバレルズの血がある程度流れとるやろ。いくら野球に関心薄いゆーても!」
「ああ、まあ、結果だけ気にする程度ですけど。向こうに住んでた頃は野球を知らなくても選手の顔と名前くらいはちょっとわかりましたけど、今は全然です」
「康平も、アスタズの血が薄いながらに流れとるやろ?」
「まあ、ごくうすーくですけど」
「同じマチナカリーグのチームを応援する者同士、仲良くしようや、なあ!」

 プロ野球チームの本拠地がある街に暮らしていると、街がそれ一色って感じに染まる時期が確かにあるんだよなあ。駅とか、大型商業施設とか、そういう場所に行くと選手の顔写真がバンと掲示されていたりする。あれには刷り込み効果があるんだろうなあと思っている。地元は本当に街がバレルズの赤に染まっていたんだと、星港に来て思う。
 一方で、星港にはポケッツというチームの本拠地がある。電車だとか駅などにはポケッツの選手やマスコットをあしらった広告がたくさん掲示されているので、どこの街でもやることはあんまり変わらないんだなあと実感する。たまにポケッツ応援セールなどがあるのは消費者的にありがたい。

「ゆーて現状マ・リーグのドベ3やもんなあ」
「それね」
「サンダースは近年安定して強いけど、チェアーズは今年どうしたん」
「監督が替わったからじゃない?」
「チェアーズほど順位の乱高下が激しいチームはマ・リーグにはないし、応援する側は楽しいやろうけどたまったモンじゃないわなあ」
「他校のチェアーズファンの先輩が、急に強くなったり弱くなったりするのにいちいち驚くなと言っていたのを思い出します」
「ホンマにそれよなあ。その先輩の格言みたいなモンまだある?」
「試合に負けても相手の防御率は破壊しろとか、10点はセーフティーリードじゃないから攻撃の手を緩めるなって言ってました」
「チェアーズの民や…! でも何だかんだチェアーズは10年に1回はちゃんと優勝するでね、ええよね」
「いいよねえ」
「優勝するとさすがに良かったね、とは思いますね」
「俺もそのくらいはさすがに」

 野球心がついたときから今までポケッツの優勝を見たことがない、と平田先輩は嘆いている。それでもいつかはきっと優勝してくれるのだと信じて応援しているのだという。アスタズの優勝は比較的最近だし、バレルズの優勝も、少し遡るけど記憶にはあるので、まだいいのかもしれない。

「オーシャンズリーグなんかは優勝するトコ大体決まっとる感あるし、その点はマ・リーグがおもろいな」
「DHでどうなるかなあ」
「先のチェアーズファンの先輩が、ピッチャーがそれなりに打つからDHは別に無くていいとも言ってましたね」
「チェアーズのピッチャーは打席での風格がヤバいのがおる、確かに」
「俺はDHなくていい派やけど、世界に合わせなアカンみたいな風潮があるんもわかるからなあ。こっちが世界標準にならんモンやろか。結局のところ野球だけじゃなくてスポーツ全般のルール変更なんざ放映権だの広告料の都合なんちゃうんかいって思ったりぃ」
「思わなかったり」

 今から「メディアがスポーツのルール変更に及ぼした影響とその効果」っていう卒論に変えたろうかな、とヤケクソ気味に平田先輩がぼやく。でも佐藤ゼミの卒論としては案外悪くなさそうが気がしないでもない。ちゃんとメディアに触れてるし。

「それもええけど大相撲にも忙しいでなあ」
「ひらっちゃん見に行くの?」
「いつかはやっぱ現地で見たいよな。迫力が段違いやって話やし」
「つか平田さん、スポーツ全般好きそうな感じっすし、バスケに興味あったりしません?」
「や、俺はバスケは代表戦あるときに見とるくらいなんよ。つかバスケに限らずサッカー・ラグビー・バレーボールその他諸々は代表戦をテレビで見る程度のにわかやもんで、ちゃんとした話は出来んで申し訳ない」
「ちゃんと見てるんじゃん?」
「平田先輩、オリンピックとか好きそうですよね」
「その頃は一生オリンピック見とる」


end.


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佐藤ゼミでスポーツと言えば店長。ちょっと男子たちをお喋りさせたくなった。

(phase3)

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