2017(04)
■before-before the party
++++
その存在を忘れていたことに気付いてしばし。今日はその4年生追いコン当日だ。俺たち2年生が、厳密にはテストに忙しくしていたヒロ以外の3人で慌てふためきながらも準備を整え、不備はないかとビクビクしながら今日の日を迎えた。
まず、4年生が4年生だ。麻里さんに対して失礼があってはならない。麻里さんに対して何かしでかそうものなら間違いなく圭斗先輩から何らかのお叱りが入るだろう。えっ、村井サン? 村井サンはほら、俺たちに粗があってもノリと勢いで何とかしてくれそうですし。
「野坂はいるか?」
「はい、バッチリです。今日は集合時刻の1時間前を目掛けて来ました」
「1時間前を目掛けてきた割に、僕より遅かったのはいかがなものかな?」
「申し訳ございません、俺には集合時刻の5分前が精一杯でした」
「そうカリカリするな圭斗、ノサカが集合時刻の5分前に来てるなんて奇跡だぞ。悪いことは言わないから今からでもヴァレンティーナにスタッドレスタイヤを履かせたらいいと思う」
これはもしかしなくても菜月先輩の皮肉。いや、そう言われるだけの理由は他でもない俺自身が積み重ねてきた実績に他ならない。野坂が集合時刻に間に合ってるだなんていう奇跡にも等しいことが起きたので大雪が降るぞ、と。
「神崎もヒロも来てるし、今日は珍しく時間前に粗方揃ったみたいだね」
「いやあ……4年生方をおもてなしする会で粗相があっては後が怖いですからね」
「うわー、こーたゆーてもた。ボク知らんよ」
「ん、僕も含めてみんな思っていることは同じということでいいね。これは全員の間で共有される秘密として、これ以上の言及を避けようか?」
そうしましょーう、と全員の声が揃う。やっぱりみんな思うことは同じなのだ。4年生、と言うか麻里さんが怖い。なので極力粗相のないようにと。2年生以下のやらかしに関しては前代表会計であられた圭斗先輩の責任問題にもなるのだ。
「菜月先輩、ちょっといいですか?」
「どうしたカンザキ」
「今渡すと荷物になってしまうんですけど忘れる前にやっておきますね、バレンタインの件を」
「あー……何かあったな、そういや。すっかり忘れてた」
「ええっ!? せっかく用意したのに忘れてたって!」
「はっはっは! こーたざまあ!」
「いや、緑風は大雪でそれどころじゃなかったんだ。終わることのない雪かきと明日の天気のことしか考えられなくて」
「それは仕方ありませんね、お見舞い申し上げます。では雪かきの疲れをこちらで癒していただければ」
菜月先輩とこーたの間でどうやら約束事があったらしい。経緯とかはよくわからないけど、何にせよバレンタインの体でこーたから菜月先輩へ贈り物をするとか何とか。何だよ、バレンタインなんて都市伝説だしそもそも過ぎてるじゃないか。
えっ俺? バレンタイン? そんな行事などなかった! 母さんから職場のお土産コーナーに売ってるチョコレートクランチをもらったけど、美味かったけど、何かこう、これじゃない感はありましたよね。美味かったけど!
「こちらがチョコレートもちです。日を置くと固くなるので出来れば今日のうちにお召し上がりください」
「おお、おいしそう」
「それと、こちらが杏露酒ですね」
「えっ、ホントに?」
「本当ですよ」
「チョコレートもちの話は思い出したけど、杏露酒までついて来るなんて聞いてないぞ」
「バレンタインの体ですし、一応贈り物として需要のありそうな物を選んだつもりではありましたけど」
「需要ならありまくりだ」
ちきしょうこーたの奴め! チョコレートもちだけじゃ飽き足らず菜月先輩が日頃から夏はソーダ割またはアイスボックスでのロック、冬はお湯割りでうまうましていらっしゃる杏露酒を大きい方の瓶で渡すだなんて!
「やァー、野坂が堕ちてヤすわァー」
「モテんノサカが僻んどる! こーたなんかおばちゃんみたいなモンなんに!」
「どーうして私がおばちゃんなんですかねえ? ま、よく言われるんだけどねっ!」
「うわ、うぜえ」
「ウザドルにウザいは褒め言葉なんですよねえ~」
どこまでもこーたが不快指数を上げて来るぜ! さて、そんな俺の僻み(だと言うのは決して否定はしない)はそこそこに、圭斗先輩が咳払い。お前たち、時間をちゃんと見て騒がしくするんだよと。
現在時刻は夕方の5時半過ぎ。ところで、追いコン開始時間は6時半だったりするんですね。どうして現役生たちの集合時間がそんな時間になっているのかって? それはまあ、お察しですよね! 大体2年(と書いて俺たち)が悪い!
end.
++++
以前からやりたいやりたいと思っていた菜月さんと神崎のバレンタインのお話。バレンタイン? まあ、バレンタインの体で。
そしてMMPの現役生が4年生、と言うか麻里さんを恐れまくっている件。これはきっと話になっていないところでお麻里様が無双しとるんやろな
粗相のないようにと頑張った結果現役の集合時間が早すぎだし、ノサカに至っては1時間前に着くつもりだったとか恐るべしお麻里様や
.
++++
その存在を忘れていたことに気付いてしばし。今日はその4年生追いコン当日だ。俺たち2年生が、厳密にはテストに忙しくしていたヒロ以外の3人で慌てふためきながらも準備を整え、不備はないかとビクビクしながら今日の日を迎えた。
まず、4年生が4年生だ。麻里さんに対して失礼があってはならない。麻里さんに対して何かしでかそうものなら間違いなく圭斗先輩から何らかのお叱りが入るだろう。えっ、村井サン? 村井サンはほら、俺たちに粗があってもノリと勢いで何とかしてくれそうですし。
「野坂はいるか?」
「はい、バッチリです。今日は集合時刻の1時間前を目掛けて来ました」
「1時間前を目掛けてきた割に、僕より遅かったのはいかがなものかな?」
「申し訳ございません、俺には集合時刻の5分前が精一杯でした」
「そうカリカリするな圭斗、ノサカが集合時刻の5分前に来てるなんて奇跡だぞ。悪いことは言わないから今からでもヴァレンティーナにスタッドレスタイヤを履かせたらいいと思う」
これはもしかしなくても菜月先輩の皮肉。いや、そう言われるだけの理由は他でもない俺自身が積み重ねてきた実績に他ならない。野坂が集合時刻に間に合ってるだなんていう奇跡にも等しいことが起きたので大雪が降るぞ、と。
「神崎もヒロも来てるし、今日は珍しく時間前に粗方揃ったみたいだね」
「いやあ……4年生方をおもてなしする会で粗相があっては後が怖いですからね」
「うわー、こーたゆーてもた。ボク知らんよ」
「ん、僕も含めてみんな思っていることは同じということでいいね。これは全員の間で共有される秘密として、これ以上の言及を避けようか?」
そうしましょーう、と全員の声が揃う。やっぱりみんな思うことは同じなのだ。4年生、と言うか麻里さんが怖い。なので極力粗相のないようにと。2年生以下のやらかしに関しては前代表会計であられた圭斗先輩の責任問題にもなるのだ。
「菜月先輩、ちょっといいですか?」
「どうしたカンザキ」
「今渡すと荷物になってしまうんですけど忘れる前にやっておきますね、バレンタインの件を」
「あー……何かあったな、そういや。すっかり忘れてた」
「ええっ!? せっかく用意したのに忘れてたって!」
「はっはっは! こーたざまあ!」
「いや、緑風は大雪でそれどころじゃなかったんだ。終わることのない雪かきと明日の天気のことしか考えられなくて」
「それは仕方ありませんね、お見舞い申し上げます。では雪かきの疲れをこちらで癒していただければ」
菜月先輩とこーたの間でどうやら約束事があったらしい。経緯とかはよくわからないけど、何にせよバレンタインの体でこーたから菜月先輩へ贈り物をするとか何とか。何だよ、バレンタインなんて都市伝説だしそもそも過ぎてるじゃないか。
えっ俺? バレンタイン? そんな行事などなかった! 母さんから職場のお土産コーナーに売ってるチョコレートクランチをもらったけど、美味かったけど、何かこう、これじゃない感はありましたよね。美味かったけど!
「こちらがチョコレートもちです。日を置くと固くなるので出来れば今日のうちにお召し上がりください」
「おお、おいしそう」
「それと、こちらが杏露酒ですね」
「えっ、ホントに?」
「本当ですよ」
「チョコレートもちの話は思い出したけど、杏露酒までついて来るなんて聞いてないぞ」
「バレンタインの体ですし、一応贈り物として需要のありそうな物を選んだつもりではありましたけど」
「需要ならありまくりだ」
ちきしょうこーたの奴め! チョコレートもちだけじゃ飽き足らず菜月先輩が日頃から夏はソーダ割またはアイスボックスでのロック、冬はお湯割りでうまうましていらっしゃる杏露酒を大きい方の瓶で渡すだなんて!
「やァー、野坂が堕ちてヤすわァー」
「モテんノサカが僻んどる! こーたなんかおばちゃんみたいなモンなんに!」
「どーうして私がおばちゃんなんですかねえ? ま、よく言われるんだけどねっ!」
「うわ、うぜえ」
「ウザドルにウザいは褒め言葉なんですよねえ~」
どこまでもこーたが不快指数を上げて来るぜ! さて、そんな俺の僻み(だと言うのは決して否定はしない)はそこそこに、圭斗先輩が咳払い。お前たち、時間をちゃんと見て騒がしくするんだよと。
現在時刻は夕方の5時半過ぎ。ところで、追いコン開始時間は6時半だったりするんですね。どうして現役生たちの集合時間がそんな時間になっているのかって? それはまあ、お察しですよね! 大体2年(と書いて俺たち)が悪い!
end.
++++
以前からやりたいやりたいと思っていた菜月さんと神崎のバレンタインのお話。バレンタイン? まあ、バレンタインの体で。
そしてMMPの現役生が4年生、と言うか麻里さんを恐れまくっている件。これはきっと話になっていないところでお麻里様が無双しとるんやろな
粗相のないようにと頑張った結果現役の集合時間が早すぎだし、ノサカに至っては1時間前に着くつもりだったとか恐るべしお麻里様や
.