2026

■Where does the learning lie?

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 話がエライ大きくなったなあと、サークル室に運び込まれる資材の山を見て思う。
 これからツッツが始めようとしているのは、サークル室の収納に使う棚の組み立て。何回か前のサークルで、俺とジュンが「床に物置いてあったりして雑然としてるのが良くない」的なことを言ったら、奈々先輩が「じゃあ2人で何か片付けの方法を考えて、予算は1万円以内で」と。そしたらツッツが「簡単な棚くらいなら作れる」っつったから、任せてみたやん。規模がデカいんよ。
 ツッツが設計した棚の図みたいなんを見せてもらったけどさっぱりわからんし、全体図だけじゃなくてどんな板を使うんか、その板はどんなデカさでどんな材質で、どこにどんな穴開けてーみたいなことが細かく書いてあるらしい。授業の合間とかにジュンとその話しとったけど、あんま軽いノリで何でも言ったらとんでもないことになるな、という反省に着地した。

「ツッツ、本当にここまででいいのか?」
「うん。ジャックは授業があるでしょ」
「いや、授業はお前もあるだろ」
「今日はこの作業に全振りするから」
「ほなジャック、また後でなー」
「あ、あの……うっしーも、授業に行ってもらって、大丈夫だから……」
「俺は授業よりこっちの方が学びがデカいと見た。授業なんか後でジュンにノート見せてもらえばどーとでもなる!」

 前もってジャックと話を付けてあったのか、使う材料や工具なんかを車に積んで大学まで持って来てもらっていたらしい。サークル室の前まで運んでもらってジャックとはここでお別れ。サークル棟の前からサークル室までそれらを持って上がるところからスタートだ。あの意味わからん設計図がどんな形になるんかを生で見たかったっつーのがやっぱデカいわな。
 そもそも、ツッツはサークルの中でも人見知りしとるっぽくて、声は小さいわ主張は全然せんわで俺とは正反対っつー印象。そんだけ人見知りしとって他校の人らもおるインターフェイスでやってけるんかって先輩たちも心配しとるみたいやし、松兄はそれを荒療治でどうにかしようとしとる。そのツッツが多分初めて自分から主張した棚作りよ。そら見てみたいわ。

「はー、重かった!」
「ご、ごめん……」
「気にすんなて! 手伝いたいっつったんは俺! 何でもゆーてくれ!」
「……そしたら、ドライバーは使ったことある?」
「ねじ回しか?」
「あ、えっと、インパクトの方」
「悪い、お前が何ゆーとるんかさっぱりわからん」
「あー……えっと、そしたら、材料にマスキングテープで番号を振ってあるんだけど、その番号を上面にして机の上に並べてもらっていいかな」
「よしきた!」

 多分やけど、ツッツが普段やっとるような実戦的な仕事は出来んと判断されたんやろな、この一瞬で。やから、別におらんでもいいけどちょっとやってもらえたら楽になるような手元っちゅーか助手の仕事をやることになりそう。さっそく言われた通りに板を机の上に乗せていく。ツッツによれば、穴開けなどの加工は家で済ませて来たので後は部品を付けて組み立てるだけらしい。

「これ、板のデカさの割に意外と軽いな」
「ああうん。ベタ材じゃな、……えーと、強度と軽さを両立出来るように、芯材と合板を貼り合わせて作った板で」
「よくわからんけどわざわざ作ったっちゅーことやな?」
「そういうこと」

 そんな話をしながらも、ツッツは机の上に並べた板の番号と、自分で書いた設計図を見比べながら、この板にはどの部品を付けて、などと確認している。俺にはこの段階でどんな棚になるんかまだ全然わからんけど、何が出来るんやろって楽しみやな。

「ツッツ、これ組み立てってどーするん? 釘とか使うんか?」
「釘は使わないよ。木ダボと糊で部材同士をつなぎ合わせるんだ。その方が、見た目が綺麗になるから」
「はえー、そんなん大工か職人しかやらんと思っとったけど、一般人もやるんやな」
「うん、出来るね」

 そんな風に喋りつつも、少しずつバラバラだった部材が組み合わさっていく。今は何作っとるんって聞いたら、スライド天板に繋げるマガジンラックやって。ノートとかファイルみたいなモンがそこに入れられるようになるらしい。この部分だよ、と指差された設計図を見る。これをくっつける天板がスライドして、机としての機能が持たせられるとか。多機能過ぎて意味が分からん!
 次に組み立てとるモンを眺めながら何作っとるんって聞いたら、キャスター付きの移動式ベンチやって。キャスターとかの部品を電動のドライバーで付けとるんはDIYって感じがしてアガる。これは、急に4年生の先輩ら来たら座る場所無くなるからって。もちろんこのサークルで一番デカい殿が普通に使うくらいなら全然平気な耐久力はあるらしい。いろいろ気ぃ回り過ぎとって意味が分からんよな。

「ツッツ、次は?」
「引き出しを作るよ。あっ、タッカーを使うときは危ないから離れるか、俺の後ろに回ってね」

 ようやく俺とジュンがイメージする収納関係の単語が出て来たけど、もちろん適当な引き出しではないっていうな。上段の薄い引き出しにはマーカー類の在庫とかを入れてもらってもいいし、下段の少し深い引き出しにはプラスチックフォークとかを入れて食器類の衛生的な管理に役立ててもらえると嬉しい、やって。やりたいことはまさにそれなんやけど、規模よ規模! 規模っちゅーか、ランク?

「なあツッツ、お前こんだけやっといて、マジで予算1万以内に収めたんか」
「うん、出来たよ」
「なるほど、俺は学んだ。職人に対する手間賃と技術料っつーんは惜しむなっちゅーことやな!」
「俺は趣味でやってるだけだけど、本当の職人さんが、技術を身に付けるためにかかった時間や労力は、俺の比じゃないからね……」
「それはそうと、殿が来たらこのベンチ実際に座ってもらってテストせんとな」
「そうだね……理論上は大丈夫なはずなんだけど、やっぱり、実際に使ってもらわないとわからないことは、たくさんあるから……。さあ、まだまだ頑張ろう」
「よっしゃ! 俺は何する?」


end.


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こうして収納班が形になっていくのである
大学の勉強よりも学びがあると判断するうっしー、好奇心が強め

(phase3)

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