2026

■化学反応に期待する

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「高木、そろそろ1年連中にも番組作らせる時期だろ」
「ああ……そうだねえ」

 MBCCでは、この時期に春学期のまとめとして1年生に30分番組を作ってもらうっていう慣わしがある。別にこの時期の1年生に完璧な物は求めていないし、30分番組を作るのは大体の子が初めてだから、とりあえずやってみるっていう性質の物だね。
 時と場合によってはこの番組がきっかけでとんでもない事態に発展したりするけど、普通はそんなことないのでみんなには気楽にやってもらいたい。とんでもないことになったのは2年前の俺で、本当に好き勝手にやった番組が作品出展の提出用になって、他大学の2、3年生の先輩たちに(悪い意味ではなく)目を付けられたりもして。

「でも、今年は5人だしペアはどうしようねえ」
「アナが3人でミキが2人だっていう。アナの誰か1人は2年ミキに面倒見させるべ」
「2年生が過度に手を出さない方がいいだろうし、周と琉生は1年生同士で組ませたい気はするけど」
「ああ、自主性みたいなモンな」
「自主性もだけど、クセかな。2年生が変に矯正すると面白くなくなるでしょ」
「まあわからんでもない。じゃあ、凛斗は2年と組ませるべ」
「中と周は普段から突っかかり合ってるから敢えて組ませてみよう」
「そりゃ賛成だ。じゃあ、琉生ちむの女子ペアだな」
「うんうん、いいね。琉生相手だったらちむりーも気持ち程度主張しやすいだろうし」

 俺たちの時は1年生同士でペアを組むんじゃなくて、適当な先輩のお世話になっていたと思うんだけど、去年からかな、1年生同士でペアを組むっていう風潮になった。多分人数が多いから1年生ペアの方が効率が良かったんだと思う。6番組と3番組だったら聞く側の時間も全然違うし。

「おはよーございますぅ」
「おはよう中」
「あっエージ先輩、今日は俺にもアナウンサーのいろはっつーヤツを聞かしてください」
「お前、今日はこれから1年番組についての話しようとしてんのに横道に逸れたがるなっていう」
「いやいや、サークル見学に来たときに言ったじゃないすか! 俺が元々興味あったのは刺さる話術だって。機材は進路選択の幅を広げるための手段っす」

 中はミキサーとして普段は機材を扱う練習をしているけど、本人が言うようにMBCCに興味を持った理由は話術にある。占い師として食べていくという目的があって、売れるためにはどうすればいいのかと考えた結果だそうだ。
 だからなのか、普段から機材を扱う傍らアナウンサーさんの練習風景を横から眺めていたり、エイジやハナちゃんにアナウンサーさんの技術的なことを聞いていたりする。多分本職のアナウンサーの子よりも熱心にやってるんじゃないかなって思う。

「何もミキサーがアナウンサーの練習しちゃダメっつー決まりはないっしょ? 向島を見てくださいよ、カノンさんが二刀流っつってどっちもやってるそうじゃないすか」
「ダメとは言ってないけど、今日から1年は1年番組の制作に入るっていう。そっちが優先だべ」
「1年生は毎年この時期に、春学期のまとめとして30分番組を作るっていう慣わしがあるんだよ」
「へー、そんなのがあるんすね。誰とやるんすか? 先輩と?」
「ちょうどいいや。後から全員にも周知するけどお前と組むのは周だっていう」
「周ぇ!? ちょっと先輩勘弁してくださいよ」
「――っていうリアクションを2人ともがするって思ってるから決めたんだよ」
「アンタら鬼かよ」
「どーしてもイヤだっつーんなら俺らを地獄にでも堕としてみるんだなっていう」
「それは閻魔大王の仕事であって占い師のやることじゃねーんですよ」

 ここまで想像通りのリアクションをしてくれるとわかりやすくていいね。ペアを組ませた狙いとしては、日頃は突っかかり合ってるけど番組を作るときはそれらしく出来るのかどうかを見てみたいのと、結構真逆の性質があるからもしかしたらいい化学反応があるかもっていうのと。

「で、他のメンバーはどう組むんです?」
「琉生ちむの女子ペアと、凛斗と2年生ミキサーの誰かって感じ」
「……まあ、ちむちむは俺以上に周と話が合わねえからなァ」
「ちむりーはスポーツ全般に疎いしねえ。ミキサーとしても優しすぎるから、まずはある程度気心の知れた琉生相手にやってみて欲しいっていう意図だね」
「なるほど納得っす」

 突っかかり合ってるってことは、相手のことが目には入ってるってことだし、仲自体は悪くなくても全く会話の糸口がないよりはいいかな、とも思って。

「つか凛斗が2年生の先輩と組むんすね? そーゆーのって、周とか琉生みたいなめんどくさそうな奴を先輩に面倒見させるみたいな印象あったんすけど」
「クセのある子を下手に2年生が触ると面白くなくなるかもしれないでしょ。俺はそっちの方を恐れたんだよ」
「コイツ自身クセのある1年だったべ。あん時の番組がきっかけで今のインターフェイスでの立ち位置があるっつっても過言じゃないっていう」
「え、そのレベルの番組求められてます?」
「コイツは特殊例ではある。ただ、下手にクセを潰すと個性も無くなるっていう」
「1年生の最初の番組だし完璧は求めないし自由にやってくれればいいよ。もちろん、この春学期で学んだことは生かしてもらいたいけど」

 結局MBCCでやってる以上緑ヶ丘らしい型にはまった番組にはなりがちなんだけど、荒削りな中でもその人の個性みたいな物を見極めて、指導方針にしていくんだろうなあっていう気持ちで今はいる。ウチの子は夏合宿じゃ否応なしにラジオわかってる枠にされるし、実践的な方針を考えないと。

「理屈としては納得したけど周と組むのが嫌なことには変わりないっすよ」
「大丈夫大丈夫、なるようになるよ」


end.


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いがみ合ってた1年生代表のタカエイである。

(phase3)

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