2026

■荒波を乗りこなせ

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 7月の3連休には、緑ヶ丘大学のオープンキャンパスが開かれることになっている。緑大のオープンキャンパスは公式発表で全国からウン万人が訪れる一大イベントで、この行事の間、学生が行きかうセンタービルのど真ん中でアナウンス放送を担当するのが社会学部メディア文化学科の佐藤ゼミである。
 佐藤ゼミではセンタービルにガラス張りのラジオブースを持ってて、平日の昼は毎日そこで公開生放送のラジオ番組をやっている。だけど、オープンキャンパスの時はそこから機材をわざわざ外して通路の方に簡易DJブースを組むんだと。何のためのガラス張りだって思うけど、オープンキャンパスの時はそういうものらしい。
 で、「○○学部の××の体験講義は△△教室で行われます。参加を希望される方はあちらのプラカードの下に集まって下さい」~みたいなインフォメーション放送を担当するのは主に3年生のゼミ生で、俺たち2年生が何をするのかと言えば、高校生が体験講義に行っている間の時間を埋めるための番組だ。

「そういうことだからね君たち、人通りは多少少ないけど、全くいないこともないんだからしっかりやりなさいね!」

 1学年25人なので、5人ずつに班が分かれている。俺は2班で、ササは3班。こういう時に自分がMBCCのミキサーなんだなって思い出すのは、どういう風に番組を進行するのかっていうことの話を振られるからだ。そりゃそうだ、一般の2年生はラジオ番組みたいなことをやるのも大体は初めてだ。だけど、ウチの班には例外がいる。

「どーせやるならバシーンとキメたいっしょ! 人通りが少ない? それを呼べる番組にしないとでしょ。あいまいみぃー」

 麻衣はまいみぃという名前で農業・アウトドア系動画投稿者として活動している。高木先輩によると、ゼミ生選抜の時にエントリーシートの時点で面白そうだったけど、動画を見たら編集も構成も結構ちゃんとしてたからこの子はいいんじゃないって先生に軽いノリで推薦したら即赤丸が打たれたらしい。
 つか普段のヒゲさんの様子見てりゃ高木先輩がゴーっつったらそら通るわ。問題児としてボロクソに扱いつつも、大事なことは高木先輩に一番に言うしあの先生。それはそうとして、動画投稿者として一定の数字は出してるし、身近なところで言えばくるみが“まいみぃ”のファンらしい。番組の内容はコイツがガンガン主張して来そうな予感。

「ねえ智也、アンタってさあ、アタシらがこんな風にやりたいんだけどって言ったら大体のことはミキサーで実現出来る感じ?」
「どんな内容かにもよるけど」
「ほら、普段昼のラジオでやってるような大人しい感じの構成じゃなくてさ、エンタメをやりたい! 効果音ガッツリ利かせるのは大前提で」
「エンタメねえ。まあ、いいんじゃね? あっ、麻衣以外の人も好きに発言してもらって。それを拾ってどう構成に組み込むかを考えるのは俺の仕事としてやるんで」

 普段昼にやってるゼミラジオや、さっき参考として見せてもらった過去のオープンキャンパスの映像を糸口にどういう番組にするか考えてみなさいよ、とヒゲさんは言っていた。だけど俺たち2班の思う番組構成はゼミのスタンダードからはとうの昔に外れてしまっていて、ルーズリーフに殴り書いたキューシートと音の波は荒れる荒れる。うーん、ちょっと確認を入れたいな。

「なーなーササ!」
「どうしたシノ。班の打ち合わせ中だろ」
「や、ちょっと確認。オープンキャンパスの機材って、あのブースからどのレベルまで減るんだっけ?」
「インターフェイスにカフを足した程度」
「オッケ、最低限な! よ~し、燃えて来た~! 腕が鳴るぜ~!」

 ササは最近、ミキサーの使い方を勉強し始めた。果林先輩によると、こういう活動の時にMBCCだとトークも機材も完璧だと思われて、アナウンサーなのに機材の扱いを聞かれたりするんだそうだ。そのレクチャーの中で、オープンキャンパスの環境についても教えてもらってたっぽいのでこれを聞くならササかなあと。
 インターフェイスにカフを足した程度。アンプコンプミキサーに、デッキ数台と、カフ。サンプラーって繋げられんのかな、どうかな。でも3年生以上が使わないんなら持ってけないのかな。後でヒゲさんに確認してみよう。この最低限の機材数と言えば、俺の中では前にガラス張りのブースでやってた高木先輩と高崎先輩の番組なんだよな。
 どんなぶっ飛んだ構成でもドンと来いだし、みんなから出たアイディアをまとめてドーンとひとつの番組として構成するのは俺の仕事としてガツンとやってやりたい。オープンキャンパスの現場には高木先輩もいるだろうから、アイツもやるようになったなっていうのを見せたい。うん、サンプラーが使えなかった時に備えた練習もしねーとなー、楽しみ過ぎてうずうずするぜ~!

「君たちの打ち合わせは順調そうだねえ」
「あっセンセ、オープンキャンパスの機材環境なんすけど、サンプラーとかって」
「荷物を増やすんじゃないよ、全く」
「あっダメすか」
「他の人の手を煩わせないなら使うことも吝かじゃないけどねえ」
「やぶさか? ってなんすか?」
「シノキ君、君はオープンキャンパスが終わった後のことの方を重点的に考えておきなさいよ、まったく」
「結局サンプラーは使っていいの? ダメなの? やぶさかって何?」
「智也、そーゆーのは陸が強い」
「あそっか! 持つべきものは文学少年の相棒! 相棒ー! 助けてくれー!」


end.


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この時間軸ではササ視点の話をやったことがあったけど、シノ視点ではこんな感じ。
シノの目でもTKGパイセンはミキサーの腕があるから超特別扱いだという風に見えている様子。
まいみぃ以外の人に話を振ってるのは、対策委員議長の経験が生きた?

(phase3)

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