2026

■ランチ探偵真相解明

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「今日のお弁当は~」
「……盛り上がってんなあ」
「盛り上がってますわ」

 カオちゃんとの弁当サブスクの契約が成立してからは、会社でお揃いのお弁当を広げてる。現状ニコイチで仕事をしてるってこともあってお昼のタイミングがほとんど一緒だし、何より話が合うので自然と一緒にご飯を食べるようになってたよね。今日のお弁当でまず目を引いたのは、サッカーボール柄のおにぎり。時期的な物ですね。

「これ、バランでグラウンドの芝生を表現してんのかな」
「その可能性はありそう」
「カズってそういうトコこだわる方だったんだな。あんまりイメージなかったわ」
「サッカーだけだよ多分。サッカーに関わると結構ビックリするような行動に出ることもあるとかないとかって話だから」
「何で嫁さんがそんな伝聞調みたいな言い方なんすか」
「サークルの現場でこれこれこういう――みたいな被害届めいた報告を受けたことはあるけど、うちが自分の目で見たワケじゃないからね」

 高崎クンによれば、何だったか忘れたけどサッカーの大きな大会がやってたときに、アナウンサーの子を唆してサッカー特集にした挙句、番組を半分乗っ取って自分もちょっと喋ってたらしいからね。本来ミキサーの人ってマイク通して喋らないっていう話なんだけどね? アイツのサッカー熱はどうしようもねえなって呆れてた高崎クンの顔は昨日のことのように思い出せる。

「お2人さん、相席いい?」
「伊丹さん」
「あ、どうぞどうぞ」
「失礼しまーす」

 きゃっきゃと喋っていると、並んで買わなきゃ食べられない外のお弁当を持った伊丹さんがやって来た。伊丹さんはこの6月から配属された部署の先輩で、キャリアはなんと10年目。二桁年目って、入社3ヶ月のうちらから見たら超超超超大先輩ですね。

「伊丹さんのお弁当美味しそ~!」
「いやいや、伊東さんの弁当も色鮮やかだし美味しそうだよ。あっ、おにぎりがサッカーボールになってる。凝ってるねえ。大変でしょ、そういうのを1枚1枚貼ってくの」
「きっと大変だと思いますよ」
「あれっ、自作じゃないの?」
「うちのお弁当は旦那さんのお手製です」
「あっ、旦那さんが作ってくれてるんだ」
「はい。旦那さん料理好きですし、自分も弁当あった方がいいからーってことでこの春から夫婦でお弁当生活が始まりました」
「朝霞君の弁当は?」
「カオちゃんはサブスク契約を結んで、月1万円で出勤日のお弁当と月2回の夕飯の権利が得られるっていう感じにしてます」
「伊東さんの旦那に作ってもらってます」

 この契約が結構大変だった。何て言うか、1食いくらにするかっていう料金設定みたいなものだよね。カズ的には自分たちのついでだし大したことはしてないからそんなに多くは取れないよっていう主張。カオちゃん的には手間暇をかけてもらってるし、きちんとした飯を食わせてもらうんだから相応の値段を払わせてくれっていう主張。月2回の夕飯の権利で折り合いを付けたけど、カオちゃんはよく「もっと取れよ」って言ってる。

「2人お揃いのお弁当って、結構社内で話題になってて」
「美味しそうですもんねえ」
「それもあるけど、お揃いの弁当だから2人はどういう関係なんだっていう野暮な話してる連中もいるの」
「元々就活友達だっただけなのにねえ」
「な」
「ちなむと、うちより旦那さんの方が先にカオちゃんとは友達だったんで、カオちゃんが仕事とか作業に集中すると寝食を忘れてレッドブルだ~っていうタイプの人だってことを知ってたんですよ。うちと同じワーカホリックタイプなんで、1日1食でいいからちゃんと食え! みたいなお弁当で、皆さんが思ってるような野暮ったい話は全くないんですよ」
「なるほど、自分と奥さんの他に友達もついてきたってことね」
「そんなようなことです」

 伊丹さんによれば、違う部署のお偉いさんとかにはうちの旦那さんがカオちゃんだと思われてるとか何とか。うーんそれはちょっとご勘弁願いたいかも。また別の人によれば、うちが会社で旦那さんとは別の彼氏を作ってるとか何とかっていう。それは失礼しちゃうなあ。今日伊丹さんが相席をしてきたのも、ちょっと昼食中のうちらの様子が気になったからだとか。

「ちなみに2人って普段どういうこと話しながらご飯食べてるの?」
「カオちゃんが食べてる時に喋らないタイプの人なんで、うちが一方的に喋ってることがほとんどですよ。このアニメマンガが面白いとか、今度こういうゲームが出るんだーみたいな趣味の話とか、それこそ旦那さんを始めとした友達の話とかが主ですかね」
「俺はたまにどのおかずがどうだから美味しいみたいなフィードバックをしたり、いつ夕飯行けそうかーみたいなスケジュールの調整をしてます」
「何か、そういう話を聞いてると会社での業務以前にニコイチ感があるね2人」
「伊丹さん、誤解してる人たちに説明して回って下さいね! うちの旦那さんはホンっトに旦那さんだけなんで! 社会的なアレがなきゃ引っ叩いて回るくらいのことはしたいくらいなんですから。要は浮気するように見えてるってことですよね? 失礼しちゃうなあ」
「ちゃんと説明させていただきます」

 時代が時代だから最悪訴えられたら負けるよねえ偉い人たち、と言いながら、伊丹さんはご飯を口に運ぶ。人気のお店のお弁当だから、実はちょっと気になってるんだよね。

「あっ、それはそうと伊丹さん、よかったら卵焼き一切れどうぞ」
「いいの?」
「どうぞどうぞ」
「いただきます。……うっま」
「ですよね」
「元々友達で伊東さんの旦那の料理の腕前は知ってるワケじゃないですか。飯のクオリティがわかってるんで、金払って弁当作ってもらう方が正解だと俺は判断しました」
「確かにこれは朝霞君が正解かも。伊東さん、お返しにちくわ食べて」
「磯部揚げ好きですー! いただきまーす! あっ美味しい」


end.


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えりPちゃんのお弁当はテレビで見た話がモチーフなので事実としてはあるんだろうけど、周りの人が最初に見た時はどうだったのかな? という話。

(phase3)

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