2026
■困った時は神頼み
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アサちゃんどーせロクなモン食べてへんのやろ? かじるだけでええからちょっとは野菜も食べなアカンで!
「――というワケで、農学部のダチがどう見ても1人分じゃない量の野菜を寄こしてきやがったので、使ってください」
「本当に凄い量だねカオル。持って来るのも大変だったでしょ? 上がって行ってよ」
「お言葉に甘えてお邪魔します」
会社で伊東さんにこれこれこういう……と事情を説明すると、今はワールドカップ期間中なのでカズと直接話が出来る時間は結構限られてるよとの注意を受けた。なので絶対に手が離せない時間は避けてアポを取り、日野に押し付けられた野菜を持って行く。カズのサッカーオタクっぷりは知ってるので、嫁さんからの注意も話は割と早かった。
畑狂いの日野は大学時代から研究とは別に趣味で畑をやっていて、そこで収穫出来た野菜をタダで周りのダチに配り歩いている。俺は自炊をほとんどしないけど、キュウリやトマトなどのかじるだけでいい物や、枝豆のように酒のつまみになる物を置いて行かれていた。料理が出来る奴にはもっと凝った野菜なんかも分けていたらしい。
ただ、いくらかじるだけでいいとは言え、量を考えろという話だ。日野は基本的に野菜を育てるために畑をやっているから、自分が食べる以上に野菜が出来てしまう。宇部によればその規模も年々デカくなっていったそうだから、余った野菜を配り歩く労力が大変なことになっているとかいないとか。絶対めんどくさくて俺に大量に押しつけたんじゃねーか。
「俺があんま料理しないから、かじるだけでいいようなモンばっかりなのは申し訳ない。カズだったらもうちょっと品目があった方が嬉しかったよな」
「ううん、キュウリもトマトも全然助かるよ。キュウリはこの時期はとにかく食うしおつまみにも出来るでしょ、常備菜とか食べるタレとか作っとくとラクなんだよ。トマトは冷凍保存が利くから余裕です」
「さすが水回りの神」
「って言うかもうトウモロコシも出来たんだね」
「そうみたいだな。ラップでくるんでレンチンでええからちゃんと食べるんやでっつって置いてかれた」
「よっぽど食べてないと思われてるみたいじゃん。まあ、カオルを知ってたら普通には食べてないと思うけど」
「お前らが思ってるより食ってるっつーの、最低1日1食は」
「その1食は昼の弁当でしょ。それが無かったらどうなってるかって話じゃないの」
「買って食ったり食わなかったり?」
「食べないって選択肢と可能性があるからみんなカオルは食べてないと思うんじゃんねえ」
時と場合によっては食わないっていう選択肢は確かにある。だけど、会社でその可能性をチラつかせると、伊東さんが目を光らせているので飯を抜くという選択が出来なくなった。伊東さんはクリエイターの訃報にもいくつか触れている。彼女は俺をそちら側にやりたくないようで、食事と睡眠に対する監視が非常に厳しい。
じゃあ、どうしたらまともな飯を食えるかって考えた結果誕生したのが弁当サブスクシステムだ。ここの夫婦は非常に協力的で、月1万払って得られるのが出勤日の弁当+何回かの夕飯をごちそうになる権利だ。カズの作ってくれる弁当は量も質も値段以上の満足度で、これ食った日であればあと2食は雑でも許されないかと思っている。余談だが、このシステムを利用するに当たり弁当箱が必要になったんだけど、それをカズと一緒に買いに行ったときのエピソードはさっそく何かしらの参考になったそうです。チョロいなあ雨宮先生。夏が楽しみだぜ。
「まあ、何はともあれ今後もカオルの家に野菜が大量に置いて行かれて対処に困るようなら遠慮なくこっちに回してもらって。もちろん食べていってもらうことも出来るし」
「助かります。あっ、どーせカズに回すんなら料理しなきゃいけないようなモンでも何でも持って来てもらって大丈夫っつっとくわ」
「他にはどんな物がありそうなの?」
「ズッキーニとか、新ショウガ、ミョウガもあるっつってたな。俺が予約したのはセロリで、エンドウ豆とかオクラみたいなモンもあるらしい。まあとにかくその他もろもろ。ゴーヤとかピーマンとか」
「カオル、もし都合が付けばでいいんだけど、薬味系が余ってたらもらってもらっていいですか。ショウガとかミョウガとかめっちゃ欲しい」
「あっ、そういやお前薬味狂だったな」
「俺はそこまでではないけど、薬味はあって困ることはないから」
「わかった、薬味系な。大葉とかもあるらしいけど」
「めっちゃいいじゃん!」
俺とか大石とか、定例会でちょっと見てただけの奴からすればカズも十分な薬味狂だけど、カズによればカズの姉貴と母さんがもっとヤバいらしい。俺も薬味は嫌いじゃないしむしろ好きな方だとは思うけど、カズの足元にも及ばない。もらえるモンは何でも歓迎的なスタンスのカズが自分からリクエストするだけあって、よっぽど欲しくてたまらないと見た。
「でも、それだけの物をもらうだけもらってお礼も言えないのはちょっと引っかかるなあ」
「横流しした俺が伝えてるんじゃダメなのか」
「ダメじゃないけど、出来れば直接言えた方が良くない?」
「いや、アイツに住所が割れるととんでもないことになるぞ。その覚悟はあるか」
「え、とんでもないことって」
「そりゃもう、とんでもないことだよ。調理能力があって2人暮らしか。ああ怖い怖い」
「えっと、とりあえず今回はお礼を伝えておいてもらっていいですか」
「承った」
end.
++++
伊東家のそうめん大会にPさんも招待されてればいいし、野菜が来たらそれこそカレーか。
カレーの話に弁当箱の話に、この人と話すと本が1冊出来るというのは強ち大袈裟じゃなさそう
ひかりのPさんのイメージの出所はメグさんから聞いてるロクでもない話っぽそう
(phase3)
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アサちゃんどーせロクなモン食べてへんのやろ? かじるだけでええからちょっとは野菜も食べなアカンで!
「――というワケで、農学部のダチがどう見ても1人分じゃない量の野菜を寄こしてきやがったので、使ってください」
「本当に凄い量だねカオル。持って来るのも大変だったでしょ? 上がって行ってよ」
「お言葉に甘えてお邪魔します」
会社で伊東さんにこれこれこういう……と事情を説明すると、今はワールドカップ期間中なのでカズと直接話が出来る時間は結構限られてるよとの注意を受けた。なので絶対に手が離せない時間は避けてアポを取り、日野に押し付けられた野菜を持って行く。カズのサッカーオタクっぷりは知ってるので、嫁さんからの注意も話は割と早かった。
畑狂いの日野は大学時代から研究とは別に趣味で畑をやっていて、そこで収穫出来た野菜をタダで周りのダチに配り歩いている。俺は自炊をほとんどしないけど、キュウリやトマトなどのかじるだけでいい物や、枝豆のように酒のつまみになる物を置いて行かれていた。料理が出来る奴にはもっと凝った野菜なんかも分けていたらしい。
ただ、いくらかじるだけでいいとは言え、量を考えろという話だ。日野は基本的に野菜を育てるために畑をやっているから、自分が食べる以上に野菜が出来てしまう。宇部によればその規模も年々デカくなっていったそうだから、余った野菜を配り歩く労力が大変なことになっているとかいないとか。絶対めんどくさくて俺に大量に押しつけたんじゃねーか。
「俺があんま料理しないから、かじるだけでいいようなモンばっかりなのは申し訳ない。カズだったらもうちょっと品目があった方が嬉しかったよな」
「ううん、キュウリもトマトも全然助かるよ。キュウリはこの時期はとにかく食うしおつまみにも出来るでしょ、常備菜とか食べるタレとか作っとくとラクなんだよ。トマトは冷凍保存が利くから余裕です」
「さすが水回りの神」
「って言うかもうトウモロコシも出来たんだね」
「そうみたいだな。ラップでくるんでレンチンでええからちゃんと食べるんやでっつって置いてかれた」
「よっぽど食べてないと思われてるみたいじゃん。まあ、カオルを知ってたら普通には食べてないと思うけど」
「お前らが思ってるより食ってるっつーの、最低1日1食は」
「その1食は昼の弁当でしょ。それが無かったらどうなってるかって話じゃないの」
「買って食ったり食わなかったり?」
「食べないって選択肢と可能性があるからみんなカオルは食べてないと思うんじゃんねえ」
時と場合によっては食わないっていう選択肢は確かにある。だけど、会社でその可能性をチラつかせると、伊東さんが目を光らせているので飯を抜くという選択が出来なくなった。伊東さんはクリエイターの訃報にもいくつか触れている。彼女は俺をそちら側にやりたくないようで、食事と睡眠に対する監視が非常に厳しい。
じゃあ、どうしたらまともな飯を食えるかって考えた結果誕生したのが弁当サブスクシステムだ。ここの夫婦は非常に協力的で、月1万払って得られるのが出勤日の弁当+何回かの夕飯をごちそうになる権利だ。カズの作ってくれる弁当は量も質も値段以上の満足度で、これ食った日であればあと2食は雑でも許されないかと思っている。余談だが、このシステムを利用するに当たり弁当箱が必要になったんだけど、それをカズと一緒に買いに行ったときのエピソードはさっそく何かしらの参考になったそうです。チョロいなあ雨宮先生。夏が楽しみだぜ。
「まあ、何はともあれ今後もカオルの家に野菜が大量に置いて行かれて対処に困るようなら遠慮なくこっちに回してもらって。もちろん食べていってもらうことも出来るし」
「助かります。あっ、どーせカズに回すんなら料理しなきゃいけないようなモンでも何でも持って来てもらって大丈夫っつっとくわ」
「他にはどんな物がありそうなの?」
「ズッキーニとか、新ショウガ、ミョウガもあるっつってたな。俺が予約したのはセロリで、エンドウ豆とかオクラみたいなモンもあるらしい。まあとにかくその他もろもろ。ゴーヤとかピーマンとか」
「カオル、もし都合が付けばでいいんだけど、薬味系が余ってたらもらってもらっていいですか。ショウガとかミョウガとかめっちゃ欲しい」
「あっ、そういやお前薬味狂だったな」
「俺はそこまでではないけど、薬味はあって困ることはないから」
「わかった、薬味系な。大葉とかもあるらしいけど」
「めっちゃいいじゃん!」
俺とか大石とか、定例会でちょっと見てただけの奴からすればカズも十分な薬味狂だけど、カズによればカズの姉貴と母さんがもっとヤバいらしい。俺も薬味は嫌いじゃないしむしろ好きな方だとは思うけど、カズの足元にも及ばない。もらえるモンは何でも歓迎的なスタンスのカズが自分からリクエストするだけあって、よっぽど欲しくてたまらないと見た。
「でも、それだけの物をもらうだけもらってお礼も言えないのはちょっと引っかかるなあ」
「横流しした俺が伝えてるんじゃダメなのか」
「ダメじゃないけど、出来れば直接言えた方が良くない?」
「いや、アイツに住所が割れるととんでもないことになるぞ。その覚悟はあるか」
「え、とんでもないことって」
「そりゃもう、とんでもないことだよ。調理能力があって2人暮らしか。ああ怖い怖い」
「えっと、とりあえず今回はお礼を伝えておいてもらっていいですか」
「承った」
end.
++++
伊東家のそうめん大会にPさんも招待されてればいいし、野菜が来たらそれこそカレーか。
カレーの話に弁当箱の話に、この人と話すと本が1冊出来るというのは強ち大袈裟じゃなさそう
ひかりのPさんのイメージの出所はメグさんから聞いてるロクでもない話っぽそう
(phase3)
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