2026
■いつの時代の社会も
++++
「どうして地球は傾きながら回ってるんだろう」
そう言いながら、レナはレナ箱と名付けられたケースに手を伸ばし、そこからカロリーメイトの箱を取り出した。多分これはあんま寝てなくてメシもあんま食えてないパターンのヤツ。見かけによらずレナは寝坊も多いし、メシを抜くとかはよくあるらしい。
前にメシを全然食えないまま夕方まで飲み物だけで耐えて、ここでワンチャン誰かが何か食うモンを持ってないかに賭けてたこともあったとか。購買とかに寄ってくるっていう発想にもならないくらい頭が回ってなかったとか。レナ箱が設置されたのはそれからだ。
「急にどうしたレナ」
「あっレナ箱1つ減ってる。少し前までは朝の5時とかだって普通に暗かったのに、今じゃもう完全に朝なんだよ。夏の夜は短い。夜行性の私としては、損をした気分になる」
「何言ってるの」
「サキ厳しい」
「や、レナの言ってることはわかんないでもないな。俺もバイトしながら外眺めてて、明るくなってきたらもうちょっと頑張れば終わりーっ感じだったのに、今じゃ明るくなってからもしばらく働いてなきゃいけないから損してると思う」
俺は基本的に深夜帯で働いてて、バイト始めたての春先はずっと暗かった気がしてたんだよ。でも、最近じゃ明るくなるのがめっちゃ早い。明るくなるのも早いし、夜でもあったかいからガソリンスタンドの方の客がちょっと多いような気もしてる。
「私とかシノみたいな夜行性の人間にとって、朝から始まる学校や仕事って社会の暴力なんだよね」
「何を言ってるの」
「サキはわかってくれると思ったのに」
「言いたいことはわかるよ。社会性時差ボケに悩まされるってことでしょ」
「サキも夜中までゲームとかしてるのにこっち側じゃないよね」
「俺はどちらかと言えばショートスリーパータイプなんじゃないの、知らないけど」
「陸さんと同じタイプか、憎たらしい」
レナはサキと一緒に夜遅くまでゲームをやってることがあるらしい。次の日のレナは寝不足でヤバいって言ってるのに対してサキはピンピンしてるとか。サキは睡眠時間が短くてもある程度までなら全然平気なんだそうだ。俺とレナはちゃんと寝ないといけない方っぽい。
「おはよう」
「高木先輩おざっす」
「ああレナ、ごめん。こないだレナ箱からカロリーメイト1つ拝借したから、返却します。ごちそうさまでした」
「だろうなって思ってました」
「また夜行性の勢力が増えたな」
「サキ、3対1だよ」
「別に俺は夜行性の人と完全に相対するものではないけどね。勢力として比べるなら朝型の、くるみとかエージ先輩でしょ」
俺とかレナからすると到底信じられない話なんだけど、くるみは朝の5時とか6時からコンビニでバイトしてるんだ。5時とか6時に働き始めるってことはそれより前に起きて身支度をしなきゃなんないことがわからないほど俺はバカじゃない。くるみはヤバい。
「朝型夜型の話はねえ、もうしょうがないで割り切ってるよ俺は。ある程度遺伝子で決まっている以上、無理な物は無理。頑張れるときに頑張る。それが通用する時はそうやるしかないじゃないねえ」
「高木先輩の場合、ヒゲさんからぐちゃぐちゃ言われるのも多少あるんすよね」
「って言うか大体がそれだよね」
「やっぱり」
「おはようございまーす」
「おはようすがやん」
「すがやんて朝型夜型どっち?」
「んー、どっちかと言えば朝型かな? あんま意識したことないけど。またレナが何も食えなかった系?」
「です」
「バイク乗るんならちゃんとした方がいいぞー」
すがやんのド正論に何も言えないレナであった。MBCCのバイク乗り代表だったカズ先輩は、体調とか花粉ヤバいとか雨酷いとかで危ないなって思ったらバイクに乗らないっていう選択をしてたそうだし、何より大事なのは安全。俺にも刺さる。
「まあ、基本的に朝から大学は夜型の人にはしんどいかもなー。2限以降から授業が取れればまだちょっとはラクなんだろうけど」
「何で朝型とか夜型とかの概念が出てくるんだろうね。社会生活に不便すぎる」
「確かに現代の社会生活は朝から始まるのが主っぽいしなー。大昔だったら火の番とか、敵に襲われないかを見張るのに群れのメンバーが交代で寝てたんだよ。だから真夜中なんかはレナとかシノみたいな人が主に見張りをして、朝方になったらくるみとか俺が起きてきて、交代で寝て、みたいな感じで、必要な役割だったんだよな」
「はえー」
「すがやんのその話は俺にとっては結構リアルだよね。ゼミで課題作品を作るときとか、夜型の俺と朝型の子で交代で仕事したりするから」
「それはそれで稼働してない時間がなくて社畜ゥって感じですね」
「現代は仕事でも情報でも詰め込みすぎなんだよ。昔は書類一つ届けるのに会社から出かけて喫茶店に寄ってゆっくりしてたって話だろ? 今の人1人で50年前の人の何人分働いてんだって。進歩が急激過ぎんだよなー。もうちょっとゆっくり、何万年もかけてやりゃあ人類も適切に進化出来たかもなのに」
「ねえサキ、すがやんのセリフ量がいつもより多くない?」
「突っ込むともっと学術的な話になっていくから流し聞く程度がいいと思うよ」
結局、高木先輩の言うように、仕方ないものは仕方ないので頑張れるときに頑張るが通用するときはそうするのがいいんだろう。その上で2限以降の授業を取ったり、レナ箱みたいな物を作るとかで対策を取っていく。そうして社会生活に馴染んでいくしかない。
「って言うかレナ箱ってレナだけの食料じゃないんだな」
「基本的には私のだけど、後で返してもらえるなら分けることも吝かではないです」
end.
++++
すがやんがどんどん突っ込んだ話をし始めるとサキにも手が負えなくなるらしい。
MBCCサークル室にレナ箱とかいう概念も生まれるしもうメチャクチャ。
(phase3)
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「どうして地球は傾きながら回ってるんだろう」
そう言いながら、レナはレナ箱と名付けられたケースに手を伸ばし、そこからカロリーメイトの箱を取り出した。多分これはあんま寝てなくてメシもあんま食えてないパターンのヤツ。見かけによらずレナは寝坊も多いし、メシを抜くとかはよくあるらしい。
前にメシを全然食えないまま夕方まで飲み物だけで耐えて、ここでワンチャン誰かが何か食うモンを持ってないかに賭けてたこともあったとか。購買とかに寄ってくるっていう発想にもならないくらい頭が回ってなかったとか。レナ箱が設置されたのはそれからだ。
「急にどうしたレナ」
「あっレナ箱1つ減ってる。少し前までは朝の5時とかだって普通に暗かったのに、今じゃもう完全に朝なんだよ。夏の夜は短い。夜行性の私としては、損をした気分になる」
「何言ってるの」
「サキ厳しい」
「や、レナの言ってることはわかんないでもないな。俺もバイトしながら外眺めてて、明るくなってきたらもうちょっと頑張れば終わりーっ感じだったのに、今じゃ明るくなってからもしばらく働いてなきゃいけないから損してると思う」
俺は基本的に深夜帯で働いてて、バイト始めたての春先はずっと暗かった気がしてたんだよ。でも、最近じゃ明るくなるのがめっちゃ早い。明るくなるのも早いし、夜でもあったかいからガソリンスタンドの方の客がちょっと多いような気もしてる。
「私とかシノみたいな夜行性の人間にとって、朝から始まる学校や仕事って社会の暴力なんだよね」
「何を言ってるの」
「サキはわかってくれると思ったのに」
「言いたいことはわかるよ。社会性時差ボケに悩まされるってことでしょ」
「サキも夜中までゲームとかしてるのにこっち側じゃないよね」
「俺はどちらかと言えばショートスリーパータイプなんじゃないの、知らないけど」
「陸さんと同じタイプか、憎たらしい」
レナはサキと一緒に夜遅くまでゲームをやってることがあるらしい。次の日のレナは寝不足でヤバいって言ってるのに対してサキはピンピンしてるとか。サキは睡眠時間が短くてもある程度までなら全然平気なんだそうだ。俺とレナはちゃんと寝ないといけない方っぽい。
「おはよう」
「高木先輩おざっす」
「ああレナ、ごめん。こないだレナ箱からカロリーメイト1つ拝借したから、返却します。ごちそうさまでした」
「だろうなって思ってました」
「また夜行性の勢力が増えたな」
「サキ、3対1だよ」
「別に俺は夜行性の人と完全に相対するものではないけどね。勢力として比べるなら朝型の、くるみとかエージ先輩でしょ」
俺とかレナからすると到底信じられない話なんだけど、くるみは朝の5時とか6時からコンビニでバイトしてるんだ。5時とか6時に働き始めるってことはそれより前に起きて身支度をしなきゃなんないことがわからないほど俺はバカじゃない。くるみはヤバい。
「朝型夜型の話はねえ、もうしょうがないで割り切ってるよ俺は。ある程度遺伝子で決まっている以上、無理な物は無理。頑張れるときに頑張る。それが通用する時はそうやるしかないじゃないねえ」
「高木先輩の場合、ヒゲさんからぐちゃぐちゃ言われるのも多少あるんすよね」
「って言うか大体がそれだよね」
「やっぱり」
「おはようございまーす」
「おはようすがやん」
「すがやんて朝型夜型どっち?」
「んー、どっちかと言えば朝型かな? あんま意識したことないけど。またレナが何も食えなかった系?」
「です」
「バイク乗るんならちゃんとした方がいいぞー」
すがやんのド正論に何も言えないレナであった。MBCCのバイク乗り代表だったカズ先輩は、体調とか花粉ヤバいとか雨酷いとかで危ないなって思ったらバイクに乗らないっていう選択をしてたそうだし、何より大事なのは安全。俺にも刺さる。
「まあ、基本的に朝から大学は夜型の人にはしんどいかもなー。2限以降から授業が取れればまだちょっとはラクなんだろうけど」
「何で朝型とか夜型とかの概念が出てくるんだろうね。社会生活に不便すぎる」
「確かに現代の社会生活は朝から始まるのが主っぽいしなー。大昔だったら火の番とか、敵に襲われないかを見張るのに群れのメンバーが交代で寝てたんだよ。だから真夜中なんかはレナとかシノみたいな人が主に見張りをして、朝方になったらくるみとか俺が起きてきて、交代で寝て、みたいな感じで、必要な役割だったんだよな」
「はえー」
「すがやんのその話は俺にとっては結構リアルだよね。ゼミで課題作品を作るときとか、夜型の俺と朝型の子で交代で仕事したりするから」
「それはそれで稼働してない時間がなくて社畜ゥって感じですね」
「現代は仕事でも情報でも詰め込みすぎなんだよ。昔は書類一つ届けるのに会社から出かけて喫茶店に寄ってゆっくりしてたって話だろ? 今の人1人で50年前の人の何人分働いてんだって。進歩が急激過ぎんだよなー。もうちょっとゆっくり、何万年もかけてやりゃあ人類も適切に進化出来たかもなのに」
「ねえサキ、すがやんのセリフ量がいつもより多くない?」
「突っ込むともっと学術的な話になっていくから流し聞く程度がいいと思うよ」
結局、高木先輩の言うように、仕方ないものは仕方ないので頑張れるときに頑張るが通用するときはそうするのがいいんだろう。その上で2限以降の授業を取ったり、レナ箱みたいな物を作るとかで対策を取っていく。そうして社会生活に馴染んでいくしかない。
「って言うかレナ箱ってレナだけの食料じゃないんだな」
「基本的には私のだけど、後で返してもらえるなら分けることも吝かではないです」
end.
++++
すがやんがどんどん突っ込んだ話をし始めるとサキにも手が負えなくなるらしい。
MBCCサークル室にレナ箱とかいう概念も生まれるしもうメチャクチャ。
(phase3)
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