2026

■断じて潔癖症ではないです

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「よし、やるべ」

 実費で買ってサークル室に持ち込んだフローリングワイパーを組み立て、シートを装着。いざ床掃除……の前に、敷いてるカーペットに掃除機をかける。本当は外で叩いてから干した上でやりたいけど、今日は我慢する。梅雨前に絶対に1回は洗って干したい。
 掃除機をかけたカーペットをめくり上げ、その下から掃除していく。うわっ、きったねえ。やっぱ定期的な掃除は必要なんだっていう。春は花粉だの黄砂だのが飛んでるし、風や人の動きでどんだけ気をつけても汚れるモンは汚れる。目には見えなくてもあるんだから綺麗にするに越したことはない。

「ふーっ、今日はこのくらいにしておいてやるべ」
「何やってんのエージ」
「ハナか。何って聞かれれば、掃除だべ」
「掃除かー。見たことないワイパーのような気がするけどー? 経費で落とすんですかぁー? しょぼーん」
「心配すんな、実費だっていう」
「実費ならいいっていう話でもないんだってば。で、そんなワイパーを持ち込んで、今日はどうしたの?」
「かくかくしかじか――」

 こないだ、ちょっと強い風が吹いたときに、荷物を置いてるラックの下からふんわりした灰色の埃が転がってきた。L先輩の代になったときに部屋の荷物全部どかして大掃除したから精々1年半以内のモンだとは思うけど、これは由々しき事態だと思った。
 部屋の広さの割に人が入るMBCCのサークル室では、イスに座らずにカーペットの上に座る奴もいる。そういう奴らがいる上に、部屋の中で飲食することだってあるのにざっと500円玉大の埃が床に舞ってるっていうのはダメだろ。

「――というワケで、もっと日常的に掃除しやすくする必要があるなと思い至ったっていう」
「……わかる!」
「この一瞬の沈黙、てっきり怒鳴られるかと思ったべ」
「怒鳴るどころか完全に同意! ハナ小さいから目線床に近くなりがちじゃん、たまーに見えるんだよね」
「だべ!? そうだっていう! サークル室の掃除の時間を公式で設けたっていいとすら思ってるくらいだべ」
「いいと思う!」

 2年生以下の連中からは潔癖性扱いされてるけど、俺は断じて潔癖性ではない。つーか自分の部屋に掃除機かけねーのかお前らはっていう。俺は一応週2でかけてるけど、毎日かける奴はかけるだろ。で、俺の潔癖性を否定してくれるのが高木だけど、コイツは逆に何も気にしなさすぎるのが問題だ。

「でも、3年生で過半数を取るのは難しいかもよ。壮平はいないことの方が多いし、タカティは掃除の時間なんて取らなくても良さそうな派閥っぽくない? しょぼーん」
「そう、アイツは絶対こっちに寄らん。つまり壮平を味方につけるか1、2年の民意の多数をこっちにつけるかになる」

 MBCCで何か小さいことを決めようってなった場合に、まず3年生で過半数を取ろうというのが暗黙の了解みたいになっている。大事なことはさすがに全員の意見を聞くが、そこまで大したことない話なら3年だけでパパーッと決めてから全体に話すこともちょこちょこある。
 サークルで公式の掃除時間を設けようという提案をした場合に、俺とハナが賛成だとしても高木が絶対反対だろうから、過半数の3票を取る場合には壮平の説得が鍵になる。とは言えいないことの多い奴よりは、出席率の高い1、2年生の民意を問う方が早いという結論に至る。

「2年生は誰が賛成してくれそうかな?」
「うーん、誰だろ。パッとイメージして綺麗好きっぽい奴がいなさそうっていう」
「あっ、案外サキとか。サキって花粉症だし空気清浄機も賛成派だったじゃん」
「ああ、わからんでもない。それに普段すみっこにいるから部屋の隅にどれだけ埃が溜まるかもわかってそうだ」
「物を食べることが多い子は説得して何とか出来るかもね。ここで食べるなら掃除する責任があります、とか」
「その線でイケそうなのはくるみとかシノか」

 ササは意外とやらなくても死なないタイプだろうし、高木に懐いてるからアイツの発言如何では反対派の方につく可能性もある。すがやんの攻略は賛成派を2人以上作れば周りに同調してそっちに乗っかりそうだから後回しでいい。レナも多分どっちでも派だろうから、落としやすそうなサキくるシノから攻める線でいくことに。

「高木は環境の衛生に鈍感すぎるっていう」
「よく言えばどんな環境でも適応出来るんだろうけどね」
「俺は元々ちょっと綺麗好きだったけど、より綺麗好きになったのは間違いなくアイツの生活がだらしなかったからだ。これだけはマジで胸を張って言えるべ」
「元々結構な綺麗好きだったと思うけど、タカティのしょぼんっぷりがそれに拍車をかけたっていうのには同意だね」

 高木の家に遊びに行くようになったばかりの頃は、アイツも俺が来るからって言って部屋の掃除を頑張っていた。だけど、入り浸るようになった頃には大学生のあるあるなのか、どんどん生活が堕落していって、俺が来るとか関係なくなっていった。洗い物はシンクに重ねっ放しだわ洗濯物は干しっ放しだわで話にならんっていう。

「とりあえず、タカティは反対だってわかってる上で、サークル室の掃除の時間を設けるかどうかの話はまず3年会議だよ」
「わかってるからすっ飛ばしてもいいだろっていう」
「それでも相談はするの!」
「へーへー、話せばいいんだろっていう」
「この話をサークル全体にしたって最悪エージは潔癖症だからってみんなスルーする可能性がないワケじゃないんだからね」
「動物も好きだし部屋の掃除機は週2だから潔癖症じゃないっていう」


end.


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TKGは「エイジは過剰なんだよね」ってしょんぼりしてるサークル室内環境の件。
賛成派のエイハナがどうやってこの流れを主流派にしようか考えていても良い。
この感じだと2年生の代になったときに大掃除イベントは一旦なくなるか?

(phase3)

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