2026
■実力行使で黙らせる
++++
「ソルさぁー、俺ちょっと考えたんだけど」
「ん?」
今日はUSDXメンバー(仕事だという朝霞以外の5人)で集まって、今後のグループの運営方針についての打ち合わせや集合することで出来る収録などをやる日ということになっている。その中で、唐突にカンがソルさんに対してポツリと投げかけた。
「次の社畜期間にアップする企画動画じゃねーけど、実写の弾いてみたやんね?」
「ベースでか」
「お前がベース以外何を弾くんだよ」
「バイオリンとピアノも一通り触れるぞ」
「マジかよ! バイオリンは知ってたけどピアノも弾けるのかよ!」
「本職の奴よりはさすがに弾けねえけどな」
「拓馬は育ちがいいからね。いろいろ習い事させられてたらしいよ」
「へぇー。……じゃなくて!」
バンッと机に手を打ち、いーからお前ら聞けと声を上げるときのカンは大演説をかます傾向にある。音楽関連の話題だとよくあることなので、まーたカンが発作を起こしたかとメンバーたちは慣れっこだ。で、今度はどんな曲をやるんだと。
「えー、我々USDXはこれまでに様々なオリジナル曲を公開してきました。最初の頃は全部俺が打ち込みでやってて、実際アルバムを作るぞってなったときには出来るメンバーが各々の楽器でレコーディングもした! ギターのド素人だった朝霞も今じゃちょーっとだけ聞けるレベルになってきたし、まあ、バイオリンは知らねーけどバンドとしてはまあそれらしくなってきたんじゃねーかと思い始めたところだ」
「樹理のバイオリンに期待する方がどうかしてるからな」
「どうせあのカスのような第九のレベルのままなのだろう。お飾りパートとしてストリングスはこれからも大人しく打ち込むのだな」
「拓馬がボロクソに言うのはわかってたけどバネも言うねえ」
「言って俺もリンと全く同じことを思ってるからそれ自体はそのつもりでいたんだけど」
「チータ!?」
口には出さないけど俺も同じ風に思っていたので、その辺りはメンバーの総意ということでいいだろう。で、気になるのはカンが打ちだそうとしている本題、ソルさんの弾いてみたに至る経緯だ。
「USDXは曲がいい! ありがたいことにそんなようなコメントも結構いただいています。でも、一応バンドって体でアルバムまで出してる以上、どーせ打ち込みなんだろとか、金出して弾ける人間雇ってんだろとか言われるのはクッソ腹立つワケよ」
「言わせとけよ、所詮はネット上のコンテンツだぞ」
「や、見てる連中にとってはそうかもしんねーけど、俺にとっては現実のバンドだ。俺ら……バイオリンとギター以外がどんだけ出来るか知りもしねークセに好き勝手言ってんじゃねーぶっ潰すぞ! 的な?」
「フッ、音楽で飯を食い始めて一層プライドが高くなったか」
「仕事と趣味の音楽はまた別物だ。好きなようにやってる趣味の音楽こそより俺の我を通したい。仕事の音楽で強く我を通すのは菅野太一の名前が売れてからよ」
とにかく、俺たちはこれまで出してきた曲を実際に自分たちで演奏することが出来るんだ、ということを示したいらしい。確かに、どこでやることもないだろうに実際にやれるようになれとカンに言われて、メンバーは各々ノルマのような感じで練習させられていたからやれと言われればやれるのだけども。
お飾りパートのバイオリンはともかく、朝霞のギターに関しては練習配信がサブチャンに上がっているので上達の課程や朝霞の現在のギターのレベルは一応視聴者にもわかるようになっている。けれども、元々バンド経験者の4人はそれがどこにも示されていないので、影武者が弾いていると言われても否定しようがない。
「お前の言いたいことは何となく理解した。好き勝手言ってる連中を黙らせるために手っ取り早くこれまでに公開したUSDXの曲を俺がベースで弾いた動画をいくつか上げたいってことだな」
「そゆこと。ベースムズめの曲多いしそれをベースボーカルはさすがにやってる、的なコメ見るから」
「まあ、今やれって言われてもやれるが、実写を撮るならさすがに身バレ対策はしてもらえるんだろうな」
「あー……まあ、その辺はさあ、サングラスとマスクをするとか?」
「拓馬って外出歩くときサングラスかけてるから割と本人だけどね」
「バカ野郎お前目立ちすぎんだよ!」
「カン、隠しすぎても本当にソルさん本人かみたいに言われないか?」
「知るかよそんなん。通常の生存報告ツミツミやらせてその画面からの引きでよくね? 知らんけど」
「投げやりだなー……」
「声を出させれば良いのではないか。所謂【弾いてみた】内で歌うことはせずとも、声があれば多少は本人という証明になるだろう」
「確かに! リンお前天才か!?」
「今頃知ったか」
「クッソテメー」
「で、それはどこでやるつもりなんだ」
「まあ、いつものパターンで誠司さんに頼み込んで?」
「そんなことだと思った。なら、コンも一緒にリズム隊の弾いてみたの方がいろいろスムーズだろ」
「確かに! スガ、お前もやるよな!」
「はい?」
何か思いがけない方向から弾が飛んできた。カンが俺に無茶振りすることは大学時代からよくあるから慣れっこだけど、今回はまさかのソルさんから飛んできた振りだ。ええー……断れないヤツじゃん……。でも須賀邸でやるなら俺がいた方がスムーズっていうのはソルさんの立場からすると正しいんだよなあ。って言うかカンが行き当たりばったりでムチャクチャなんだよ毎回毎回。
「USDXの場合、リズム隊の弾いてみたはなかなか映えるのではないか」
「だよなあだよなあ! リン、お前の感性を信じるぞ! よーし、そうとなったらどの曲をやるかピックするのと、それを前提にした曲を書くぞー!」
何か本当にやる流れになってるけど、本当にやるの? ソルさんの次の社畜期間って言ったら盆明けだったっけか。……練習しとこう。や、って言うか俺も自分の学業があるんだけどなあ!
end.
++++
チータ君は多分批判はちゃんと受けるけど憶測で好き勝手言われるのが我慢ならんタイプなんだろう。よくレスバとかしないでいられるわ。
今回のリン様が久々にリン様マジリン様な感覚を取り戻していてとても良い。やはり好き勝手に毒を吐ける相手は必要。
(phase3)
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「ソルさぁー、俺ちょっと考えたんだけど」
「ん?」
今日はUSDXメンバー(仕事だという朝霞以外の5人)で集まって、今後のグループの運営方針についての打ち合わせや集合することで出来る収録などをやる日ということになっている。その中で、唐突にカンがソルさんに対してポツリと投げかけた。
「次の社畜期間にアップする企画動画じゃねーけど、実写の弾いてみたやんね?」
「ベースでか」
「お前がベース以外何を弾くんだよ」
「バイオリンとピアノも一通り触れるぞ」
「マジかよ! バイオリンは知ってたけどピアノも弾けるのかよ!」
「本職の奴よりはさすがに弾けねえけどな」
「拓馬は育ちがいいからね。いろいろ習い事させられてたらしいよ」
「へぇー。……じゃなくて!」
バンッと机に手を打ち、いーからお前ら聞けと声を上げるときのカンは大演説をかます傾向にある。音楽関連の話題だとよくあることなので、まーたカンが発作を起こしたかとメンバーたちは慣れっこだ。で、今度はどんな曲をやるんだと。
「えー、我々USDXはこれまでに様々なオリジナル曲を公開してきました。最初の頃は全部俺が打ち込みでやってて、実際アルバムを作るぞってなったときには出来るメンバーが各々の楽器でレコーディングもした! ギターのド素人だった朝霞も今じゃちょーっとだけ聞けるレベルになってきたし、まあ、バイオリンは知らねーけどバンドとしてはまあそれらしくなってきたんじゃねーかと思い始めたところだ」
「樹理のバイオリンに期待する方がどうかしてるからな」
「どうせあのカスのような第九のレベルのままなのだろう。お飾りパートとしてストリングスはこれからも大人しく打ち込むのだな」
「拓馬がボロクソに言うのはわかってたけどバネも言うねえ」
「言って俺もリンと全く同じことを思ってるからそれ自体はそのつもりでいたんだけど」
「チータ!?」
口には出さないけど俺も同じ風に思っていたので、その辺りはメンバーの総意ということでいいだろう。で、気になるのはカンが打ちだそうとしている本題、ソルさんの弾いてみたに至る経緯だ。
「USDXは曲がいい! ありがたいことにそんなようなコメントも結構いただいています。でも、一応バンドって体でアルバムまで出してる以上、どーせ打ち込みなんだろとか、金出して弾ける人間雇ってんだろとか言われるのはクッソ腹立つワケよ」
「言わせとけよ、所詮はネット上のコンテンツだぞ」
「や、見てる連中にとってはそうかもしんねーけど、俺にとっては現実のバンドだ。俺ら……バイオリンとギター以外がどんだけ出来るか知りもしねークセに好き勝手言ってんじゃねーぶっ潰すぞ! 的な?」
「フッ、音楽で飯を食い始めて一層プライドが高くなったか」
「仕事と趣味の音楽はまた別物だ。好きなようにやってる趣味の音楽こそより俺の我を通したい。仕事の音楽で強く我を通すのは菅野太一の名前が売れてからよ」
とにかく、俺たちはこれまで出してきた曲を実際に自分たちで演奏することが出来るんだ、ということを示したいらしい。確かに、どこでやることもないだろうに実際にやれるようになれとカンに言われて、メンバーは各々ノルマのような感じで練習させられていたからやれと言われればやれるのだけども。
お飾りパートのバイオリンはともかく、朝霞のギターに関しては練習配信がサブチャンに上がっているので上達の課程や朝霞の現在のギターのレベルは一応視聴者にもわかるようになっている。けれども、元々バンド経験者の4人はそれがどこにも示されていないので、影武者が弾いていると言われても否定しようがない。
「お前の言いたいことは何となく理解した。好き勝手言ってる連中を黙らせるために手っ取り早くこれまでに公開したUSDXの曲を俺がベースで弾いた動画をいくつか上げたいってことだな」
「そゆこと。ベースムズめの曲多いしそれをベースボーカルはさすがにやってる、的なコメ見るから」
「まあ、今やれって言われてもやれるが、実写を撮るならさすがに身バレ対策はしてもらえるんだろうな」
「あー……まあ、その辺はさあ、サングラスとマスクをするとか?」
「拓馬って外出歩くときサングラスかけてるから割と本人だけどね」
「バカ野郎お前目立ちすぎんだよ!」
「カン、隠しすぎても本当にソルさん本人かみたいに言われないか?」
「知るかよそんなん。通常の生存報告ツミツミやらせてその画面からの引きでよくね? 知らんけど」
「投げやりだなー……」
「声を出させれば良いのではないか。所謂【弾いてみた】内で歌うことはせずとも、声があれば多少は本人という証明になるだろう」
「確かに! リンお前天才か!?」
「今頃知ったか」
「クッソテメー」
「で、それはどこでやるつもりなんだ」
「まあ、いつものパターンで誠司さんに頼み込んで?」
「そんなことだと思った。なら、コンも一緒にリズム隊の弾いてみたの方がいろいろスムーズだろ」
「確かに! スガ、お前もやるよな!」
「はい?」
何か思いがけない方向から弾が飛んできた。カンが俺に無茶振りすることは大学時代からよくあるから慣れっこだけど、今回はまさかのソルさんから飛んできた振りだ。ええー……断れないヤツじゃん……。でも須賀邸でやるなら俺がいた方がスムーズっていうのはソルさんの立場からすると正しいんだよなあ。って言うかカンが行き当たりばったりでムチャクチャなんだよ毎回毎回。
「USDXの場合、リズム隊の弾いてみたはなかなか映えるのではないか」
「だよなあだよなあ! リン、お前の感性を信じるぞ! よーし、そうとなったらどの曲をやるかピックするのと、それを前提にした曲を書くぞー!」
何か本当にやる流れになってるけど、本当にやるの? ソルさんの次の社畜期間って言ったら盆明けだったっけか。……練習しとこう。や、って言うか俺も自分の学業があるんだけどなあ!
end.
++++
チータ君は多分批判はちゃんと受けるけど憶測で好き勝手言われるのが我慢ならんタイプなんだろう。よくレスバとかしないでいられるわ。
今回のリン様が久々にリン様マジリン様な感覚を取り戻していてとても良い。やはり好き勝手に毒を吐ける相手は必要。
(phase3)
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