2026
■何となくの感覚
++++
「ユキ先輩、こないだゲンゴロー先輩と考えた番組のプランを発表します!」
「発表しまーす」
ファンフェスでは1年の夏合宿振りになるゲンゴローと、緑ヶ丘のすがやんと班を組むことになった。最初の打ち合わせの時に、簡単にでいいし突拍子でなくていいから番組の内容とか構成みたいな物を2人で考えてみてよ、と出した宿題が提出されようとしてる。
「物価も高いし遠出するにも大変だし、俺がオススメする近場で安く楽しめる施設だとかレジャーに、一般的な女子の感覚でユキ先輩にツッコミを入れてもらおうっていう感じでどうですか? タテヨコで言うとユキ先輩がタテで俺がヨコで好きに話を深く深くするって言うか」
「公共の場所でやるならあんまり深すぎる話はしない方がいいんじゃない?」
「――っていうのは重々承知した上で、これは敢えてです」
「敢えて?」
「俺自身が聞き役になるのはすっごい簡単なんですけど、それだと薄っぺらのぺらっぺらになるなあと思って」
「すがやんてすっごい面白い子だけど、すがやんの面白さっていうのはこっちにも一定程度の学があることで成り立つ感じがあって。科学的だとか文化的、アカデミックなテーマに比較的強いって印象だね」
「春風ちゃんの彼氏っていう時点でそれはすごぉーく分かる!」
「こちらが一歩踏み込んだ時に初めて出てくるすがやんの面白さを、俺はどぉーしてもみんなにご紹介したくて。じゃあ、すがやんに最初から好きなことを思う存分話してもらって、それを丸めるのはユキちゃんにお任せしよう! と思ってね。3年生だから出来る出来る大丈夫大丈夫って後押ししたのは俺です」
「ゲンゴロ~…!」
ゲンゴローのノリが軽い軽い。3年生だから出来る出来る? 出来るとは限んないって~。ちょっとくらいならツッコミも入れられるかもだけど、あんまり深いことを喋られたらあたしもどうしていいかわかんくなりそう。
でも、すがやんの面白さに関する話はちょっとわかる。って言うか賢い春風ちゃんだからこそすがやんの面白さに最初から気付いて同じレベルで話が出来てるっていう可能性もあるなあ。どんな人とも話を合わせられるっていうのは才能だけど、すがやん主導の話となると珍しいかも。
「って言うかゲンゴロー、あたし気付いちゃったんだけどさ」
「えっ、何か問題あった?」
「一応あたしもミドリの彼女なので、そっちタイプの人の話が普通に通じちゃう可能性があります」
「あー…! そっかー! 建築の話とか普通にわかるんだっけ!?」
「建築とか工芸とか、ミドリほどじゃないけど多少は嗜んでます」
「や、オススメ施設のリアルな面白さをガチで話して引かれること数知れない俺をナメてもらっちゃ困ります」
「それもどうなの」
「俺にとっては凄く面白いんですけどねえ。星大ミュージアムなんてタダで博物館を見学出来て、有名な先生の公開講座まで受けられるこれ以上ない最高スポットなんですけど。あっ、あとはどこの崖を紹介したらいいですか!? 一生眺められる地層のポイントがあって」
「あっ、そーゆーノリでくるのね、わかった」
確か星大ミュージアムについてはミドリが結構面白い建築をしててね、って熱めに語ってたのを聞いたことがあるんだけど、建物じゃなくて中身の話をしてる人は初めて見た。やっぱり国立大学だと学内に博物館とかがあったりするんだねえ。
あと、本気で崖を紹介されたら困るので、一応名前の付いた施設や公園とかにしてもらえると助かるとだけすがやんにお願いした。なるほど、こういう人だからミルクレープを作る過程にロマンを感じてカットされた断面をしばらく眺めるのか。この話は春風ちゃんから聞いた。
「結局、俺が本当に何をオススメしたいのかって言ったら、情報の流れから離れることなんですよ」
「安くどこかに行くことが本題ではなく」
「ではなくです」
「っていうのは?」
「緑ヶ丘の同期で薪ストーブの会っていうのがちょっと前にあって、サブテーマとしてデジタルデトックスがあったんですよ。基本的にスマホ禁止で、ゆったりとした時間の流れと目の前にある物を楽しむっていう。それがメチャクチャ良くて」
「いいね、楽しそう」
「デジタルデトックスは俺には無理だなー」
「実際レナとかサキとか、あとくるみもかな? デジタルにズブズブのメンバーはちょっとうずうずしてましたね」
「わかりすぎるもん」
「最近って、考えてることが言語化出来た方がいいとか、何でもかんでも二極化しようとする? みたいな意見を見ることがあるんですけど、俺はそう思わなくって。みんなもうちょっと「何となく」っていう感覚を大切にしたら楽になるのになあって思ったりもして」
今はとにかく流れてくる情報が多すぎるし、それを処理するのにパンパンになりがち。ずーっと無意味に別に見なきゃいけないワケでもないショート眺めてたりして、何やってた? みたいなこともなくはない。もちろん得たい情報を得るために進んでめっちゃ調べ物をすることもあるけど、スマホの小さな枠の中からは出ない。
「昔は土器を作るための土をこねるだけで1日が終わることもあったんですよ。そもそも、1日だって日の出から日没までで、今みたく日が沈んでから何時間も活動しなかったんです。さすがに大昔の感覚で今を語ることは難しいですけど、ゆったり、何となく、っていう感覚もあるよっていうのが俺の気持ちですね」
「っていう話を打ち合わせで聞いてギャンッて刺さったんで、俺が責任をもってユキちゃんにお願いするよって言って現在に至ってます。ほら、オススメ施設の紹介で月末にある青女さんのイベントを紹介してもいいんじゃない?」
「おー! いいっすね! ゲンゴロー先輩ナイスです!」
「じゃあ植物園イベントの宣伝もちょっと挟んでもらう方向で。うーん、ツッコミかあ。とりあえず、春風ちゃんに好き勝手に星の話してもらって組み手の練習でもしたらいい?」
end.
++++
ミルクレープを重ねる時間のロマンと、吉日ムーブのゲンゴローが合わさればこんなモンです。
(phase3)
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「ユキ先輩、こないだゲンゴロー先輩と考えた番組のプランを発表します!」
「発表しまーす」
ファンフェスでは1年の夏合宿振りになるゲンゴローと、緑ヶ丘のすがやんと班を組むことになった。最初の打ち合わせの時に、簡単にでいいし突拍子でなくていいから番組の内容とか構成みたいな物を2人で考えてみてよ、と出した宿題が提出されようとしてる。
「物価も高いし遠出するにも大変だし、俺がオススメする近場で安く楽しめる施設だとかレジャーに、一般的な女子の感覚でユキ先輩にツッコミを入れてもらおうっていう感じでどうですか? タテヨコで言うとユキ先輩がタテで俺がヨコで好きに話を深く深くするって言うか」
「公共の場所でやるならあんまり深すぎる話はしない方がいいんじゃない?」
「――っていうのは重々承知した上で、これは敢えてです」
「敢えて?」
「俺自身が聞き役になるのはすっごい簡単なんですけど、それだと薄っぺらのぺらっぺらになるなあと思って」
「すがやんてすっごい面白い子だけど、すがやんの面白さっていうのはこっちにも一定程度の学があることで成り立つ感じがあって。科学的だとか文化的、アカデミックなテーマに比較的強いって印象だね」
「春風ちゃんの彼氏っていう時点でそれはすごぉーく分かる!」
「こちらが一歩踏み込んだ時に初めて出てくるすがやんの面白さを、俺はどぉーしてもみんなにご紹介したくて。じゃあ、すがやんに最初から好きなことを思う存分話してもらって、それを丸めるのはユキちゃんにお任せしよう! と思ってね。3年生だから出来る出来る大丈夫大丈夫って後押ししたのは俺です」
「ゲンゴロ~…!」
ゲンゴローのノリが軽い軽い。3年生だから出来る出来る? 出来るとは限んないって~。ちょっとくらいならツッコミも入れられるかもだけど、あんまり深いことを喋られたらあたしもどうしていいかわかんくなりそう。
でも、すがやんの面白さに関する話はちょっとわかる。って言うか賢い春風ちゃんだからこそすがやんの面白さに最初から気付いて同じレベルで話が出来てるっていう可能性もあるなあ。どんな人とも話を合わせられるっていうのは才能だけど、すがやん主導の話となると珍しいかも。
「って言うかゲンゴロー、あたし気付いちゃったんだけどさ」
「えっ、何か問題あった?」
「一応あたしもミドリの彼女なので、そっちタイプの人の話が普通に通じちゃう可能性があります」
「あー…! そっかー! 建築の話とか普通にわかるんだっけ!?」
「建築とか工芸とか、ミドリほどじゃないけど多少は嗜んでます」
「や、オススメ施設のリアルな面白さをガチで話して引かれること数知れない俺をナメてもらっちゃ困ります」
「それもどうなの」
「俺にとっては凄く面白いんですけどねえ。星大ミュージアムなんてタダで博物館を見学出来て、有名な先生の公開講座まで受けられるこれ以上ない最高スポットなんですけど。あっ、あとはどこの崖を紹介したらいいですか!? 一生眺められる地層のポイントがあって」
「あっ、そーゆーノリでくるのね、わかった」
確か星大ミュージアムについてはミドリが結構面白い建築をしててね、って熱めに語ってたのを聞いたことがあるんだけど、建物じゃなくて中身の話をしてる人は初めて見た。やっぱり国立大学だと学内に博物館とかがあったりするんだねえ。
あと、本気で崖を紹介されたら困るので、一応名前の付いた施設や公園とかにしてもらえると助かるとだけすがやんにお願いした。なるほど、こういう人だからミルクレープを作る過程にロマンを感じてカットされた断面をしばらく眺めるのか。この話は春風ちゃんから聞いた。
「結局、俺が本当に何をオススメしたいのかって言ったら、情報の流れから離れることなんですよ」
「安くどこかに行くことが本題ではなく」
「ではなくです」
「っていうのは?」
「緑ヶ丘の同期で薪ストーブの会っていうのがちょっと前にあって、サブテーマとしてデジタルデトックスがあったんですよ。基本的にスマホ禁止で、ゆったりとした時間の流れと目の前にある物を楽しむっていう。それがメチャクチャ良くて」
「いいね、楽しそう」
「デジタルデトックスは俺には無理だなー」
「実際レナとかサキとか、あとくるみもかな? デジタルにズブズブのメンバーはちょっとうずうずしてましたね」
「わかりすぎるもん」
「最近って、考えてることが言語化出来た方がいいとか、何でもかんでも二極化しようとする? みたいな意見を見ることがあるんですけど、俺はそう思わなくって。みんなもうちょっと「何となく」っていう感覚を大切にしたら楽になるのになあって思ったりもして」
今はとにかく流れてくる情報が多すぎるし、それを処理するのにパンパンになりがち。ずーっと無意味に別に見なきゃいけないワケでもないショート眺めてたりして、何やってた? みたいなこともなくはない。もちろん得たい情報を得るために進んでめっちゃ調べ物をすることもあるけど、スマホの小さな枠の中からは出ない。
「昔は土器を作るための土をこねるだけで1日が終わることもあったんですよ。そもそも、1日だって日の出から日没までで、今みたく日が沈んでから何時間も活動しなかったんです。さすがに大昔の感覚で今を語ることは難しいですけど、ゆったり、何となく、っていう感覚もあるよっていうのが俺の気持ちですね」
「っていう話を打ち合わせで聞いてギャンッて刺さったんで、俺が責任をもってユキちゃんにお願いするよって言って現在に至ってます。ほら、オススメ施設の紹介で月末にある青女さんのイベントを紹介してもいいんじゃない?」
「おー! いいっすね! ゲンゴロー先輩ナイスです!」
「じゃあ植物園イベントの宣伝もちょっと挟んでもらう方向で。うーん、ツッコミかあ。とりあえず、春風ちゃんに好き勝手に星の話してもらって組み手の練習でもしたらいい?」
end.
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ミルクレープを重ねる時間のロマンと、吉日ムーブのゲンゴローが合わさればこんなモンです。
(phase3)
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