2017(04)
■甘苦く絡めるトークを
++++
4年生追いコンのために一旦向島には戻って来る予定だったけど、先の大雪やらまた寒波が来るやらで予定よりも早く帰って来ていた。うちが言っていたより早くこっちにいたことに、驚きと納得の表情が見える。
高崎には聞きたいことがあった。それを聞くために今日はご飯かお茶でもと。うちはハニーミルクラテとニューヨークチーズケーキを、高崎はキャラメルソースや生クリームがこってり乗ったカフェラテとキャラメルアーモンドデニッシュを頼んで。
「って言うかお前のメニューが見てて甘っ。いや、キャラメルが好きなのは知ってるけど、甘すぎないか」
「普通に選んだら自然とそうなるだろ」
「まあ、わかるけど」
本題に入る前に、他愛もない話を。例えば、実家にいるときに直撃した大雪のこと。うちの方では災害というレベルにまでは行かなかったけど、積雪はやがて100センチに届きそうだったことなんかを。
それで交通網が麻痺してて、特急も高速バスもいつになったら動くのかという不安があって。ノサカからメールで緑風から出て来れそうかと聞かれた時には普通に焦った。それで、週末のわずかな晴れ間を縫って戻って来たのだ。
「でだ、本題。こないだ言ってただろ、ノサカに用事がある的なこと。あれ、何だったんだ? 話せないなら別にいいんだけど、気になって」
「何てこたねえ、ダブルトークの基礎を叩き込んでくれっつー対策委員の仕事だな」
「ああ、なるほど。もうそんな時期だったかそう言えば」
「お前とダイさんが帰省だの本業だので向島にいねえからっつってよ。野坂曰く全部ヒロの暴走っつーか暗躍で引き起こされたことみてえだな」
対策委員が主催する年度最後のイベントが春の番組制作会だ。5月にあるファンタジックフェスタに向けてダブルトークをやってみるだけやってみましょうという会だ。試しにそれをやってみたのが去年のことになる。
今年の対策委員も春の制作会は行うようで、その準備のために奔走しているようだった。で、ヒロが言ったそうだ。せっかくやるのに誰もダブルトークのことをわかっていなければ意味がないのではないか、と。
このイベントには講習がない。手探りでやってみましょうという感じだった。それは、うちら今の3年生がプロ志向の世代からそれなりに技術指導を受けていて、細いにしても道筋があったからだ。だけど今の2年生以下にはそれがない。
「それで、野坂とヒロに付け焼き刃ではあるけど俺の持ち得るダブルトークのノウハウを叩き込んでたっつーワケだ」
「……どうだった?」
「まあ、向島だけあって放牧状態でもある程度地力はあるなっつー感じだ」
「ノサカは」
「アイツにはアナミキ関係なく理論みたいなことを叩き込んだ。如何せんヒロが感覚型だし、それを言語で説明できる奴が必要だからな」
「ヒロはまだ覚醒状態が続いてたのか?」
「何を以って覚醒なのかはわかんねえが、やる気は十分だったぞ。わからないことを素直にわからないと言えるのはそれ自体がアイツの強みだな」
高崎は丸一日かけてノサカとヒロにこれまで培ってきた技術を伝えたそうだ。もちろん実技の練習も込々で。それを持ち帰って練習しようというようなことは言っていたそうだから、制作会の頃にはある程度自分の物に出来るだろうとのこと。
「じゃあ、本当に悪い話ではなかったんだな」
「まあ、悪くはねえな。俺は向かって来る奴は基本的に拒まねえ方だしよ」
「あっ、そうだ話は変わるんだけどさ」
「ん?」
「せっかくシーズンだから。お納めください」
「おっ、サンキュ」
そして急拵えだけどシーズンの小箱を手渡す。小箱の中身は中からキャラメルソースが出て来るチョコレートが4粒(600円(税抜))。来月が怖いなと言いながら、高崎はそれをしまい込んだ。
「ああ、俺も話変えんだけどよ」
「うん」
「卒論のフィールドワークの一環で、4月からコミュニティで番組持つことになった」
「えっ! やるのか!? えっ、どこの局で? うちからでも聞けるかな」
「いや、西海だからどうだろうな」
「って言うか、それが卒論のフィールドワークなんだな」
「コミュニティラジオと双方向コミュニケーションについてっつーテーマだしな」
「あー、卒論か~……」
「ま、余計な心配してねえで今はケーキ食っとけ」
end.
++++
ここでまさかの高菜である。そして菜月さんは何気に高崎がどんなチョコレートが好きかも完璧に把握してるんだぜ…!
そして本題はノサヒロの暗躍について。高崎がどんな用事でその2人と関わっていたのかが少し気になった様子。
おっ、ナノスパの正規の時間軸ではやることのない来年度の4月の話についてちょっと言及があったぞ!? リセットされるけどさ!
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4年生追いコンのために一旦向島には戻って来る予定だったけど、先の大雪やらまた寒波が来るやらで予定よりも早く帰って来ていた。うちが言っていたより早くこっちにいたことに、驚きと納得の表情が見える。
高崎には聞きたいことがあった。それを聞くために今日はご飯かお茶でもと。うちはハニーミルクラテとニューヨークチーズケーキを、高崎はキャラメルソースや生クリームがこってり乗ったカフェラテとキャラメルアーモンドデニッシュを頼んで。
「って言うかお前のメニューが見てて甘っ。いや、キャラメルが好きなのは知ってるけど、甘すぎないか」
「普通に選んだら自然とそうなるだろ」
「まあ、わかるけど」
本題に入る前に、他愛もない話を。例えば、実家にいるときに直撃した大雪のこと。うちの方では災害というレベルにまでは行かなかったけど、積雪はやがて100センチに届きそうだったことなんかを。
それで交通網が麻痺してて、特急も高速バスもいつになったら動くのかという不安があって。ノサカからメールで緑風から出て来れそうかと聞かれた時には普通に焦った。それで、週末のわずかな晴れ間を縫って戻って来たのだ。
「でだ、本題。こないだ言ってただろ、ノサカに用事がある的なこと。あれ、何だったんだ? 話せないなら別にいいんだけど、気になって」
「何てこたねえ、ダブルトークの基礎を叩き込んでくれっつー対策委員の仕事だな」
「ああ、なるほど。もうそんな時期だったかそう言えば」
「お前とダイさんが帰省だの本業だので向島にいねえからっつってよ。野坂曰く全部ヒロの暴走っつーか暗躍で引き起こされたことみてえだな」
対策委員が主催する年度最後のイベントが春の番組制作会だ。5月にあるファンタジックフェスタに向けてダブルトークをやってみるだけやってみましょうという会だ。試しにそれをやってみたのが去年のことになる。
今年の対策委員も春の制作会は行うようで、その準備のために奔走しているようだった。で、ヒロが言ったそうだ。せっかくやるのに誰もダブルトークのことをわかっていなければ意味がないのではないか、と。
このイベントには講習がない。手探りでやってみましょうという感じだった。それは、うちら今の3年生がプロ志向の世代からそれなりに技術指導を受けていて、細いにしても道筋があったからだ。だけど今の2年生以下にはそれがない。
「それで、野坂とヒロに付け焼き刃ではあるけど俺の持ち得るダブルトークのノウハウを叩き込んでたっつーワケだ」
「……どうだった?」
「まあ、向島だけあって放牧状態でもある程度地力はあるなっつー感じだ」
「ノサカは」
「アイツにはアナミキ関係なく理論みたいなことを叩き込んだ。如何せんヒロが感覚型だし、それを言語で説明できる奴が必要だからな」
「ヒロはまだ覚醒状態が続いてたのか?」
「何を以って覚醒なのかはわかんねえが、やる気は十分だったぞ。わからないことを素直にわからないと言えるのはそれ自体がアイツの強みだな」
高崎は丸一日かけてノサカとヒロにこれまで培ってきた技術を伝えたそうだ。もちろん実技の練習も込々で。それを持ち帰って練習しようというようなことは言っていたそうだから、制作会の頃にはある程度自分の物に出来るだろうとのこと。
「じゃあ、本当に悪い話ではなかったんだな」
「まあ、悪くはねえな。俺は向かって来る奴は基本的に拒まねえ方だしよ」
「あっ、そうだ話は変わるんだけどさ」
「ん?」
「せっかくシーズンだから。お納めください」
「おっ、サンキュ」
そして急拵えだけどシーズンの小箱を手渡す。小箱の中身は中からキャラメルソースが出て来るチョコレートが4粒(600円(税抜))。来月が怖いなと言いながら、高崎はそれをしまい込んだ。
「ああ、俺も話変えんだけどよ」
「うん」
「卒論のフィールドワークの一環で、4月からコミュニティで番組持つことになった」
「えっ! やるのか!? えっ、どこの局で? うちからでも聞けるかな」
「いや、西海だからどうだろうな」
「って言うか、それが卒論のフィールドワークなんだな」
「コミュニティラジオと双方向コミュニケーションについてっつーテーマだしな」
「あー、卒論か~……」
「ま、余計な心配してねえで今はケーキ食っとけ」
end.
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ここでまさかの高菜である。そして菜月さんは何気に高崎がどんなチョコレートが好きかも完璧に把握してるんだぜ…!
そして本題はノサヒロの暗躍について。高崎がどんな用事でその2人と関わっていたのかが少し気になった様子。
おっ、ナノスパの正規の時間軸ではやることのない来年度の4月の話についてちょっと言及があったぞ!? リセットされるけどさ!
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