2025
■あと少しだけ頑張ろう
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3月はお上の決算があるということで、その関連企業や倉庫の仕事が増えに増えまくっている。そしてこの時期には「労働基準法? 聞いたことない法律ですね」と言いたげな働き方になることもある。ウチの会社は割と段取りよく作業をしているので残業はしても夜10時までで済んでいるが、そうではないところもあると聞く。
そのロクでもない働き方をしている会社が下手に近所の場合……と言うか、ウチがスケジュール通りに仕事をしていても、そっちの仕事が終わらないと棚卸に移行できない場合、あっちを片付けないと自分たちが無駄に待つことになる可能性があるワケで。それを早い段階から察していた偉い人たちの間で話が進んでたんだろうな。
「だぁっる」
「さすがにここまでくるとしんどいね」
体力にはそれなりに自信があると思っていた俺と長岡も、10連勤を越えた辺りからは目が死に始めたと他の人から言われるようになっていた。一応体はまだ動いている。だけど、思考の速度が通常と比べると大分遅くなってる気はする。複雑なことを考えようとすると、えー……と間を取ることが増えたと言うか。
平日は夜10時まで自分たちの会社の仕事をして、土日はロジの遅れを取り戻させるために朝8時からテッペン回るまで働いて、また月曜になったら自分たちの会社に戻っての繰り返しで現在13連勤目。何がおかしいって、ロジのケツ拭きのために休日を返上しなければならないところだ。ただでさえ3月は土曜出勤がデフォなのに。
出荷量自体はウチの方が爆発してるらしいけど、ウチの方が圧倒的に練度が高いので作業が速く作業しやすい。向こうは例によって入庫をサボっているので製品をピッキングしにくく、作業員の数はいるけどスポットの派遣作業員がほとんど。派遣がカッターを無くしたとかで確認のための開梱作業で丸半日潰すのもザラだ。で、結果トイレに置き忘れてたとかな。
「今日を乗り切ればさすがに俺たちも自分の会社で棚卸に入れるだろうし、越野、長岡君、ここが踏ん張りどころだよ。来月の給料が楽しみだね!」
「フィジカルエリートが経験を持つととんでもないバケモノになることを俺は理解した」
「うん。大石君ヤバすぎ」
「まあ、平日の仕事が10時までで終わってるからね。毎日12時まで残業とかじゃないからまだ全然平気かな」
「さすが、残業代がないことを嘆いてた奴は違うぜ」
「でも2時間早いのは大きいよ。帰ってから洗濯して、お風呂入って、明日の準備をしてもまだ12時だし」
目が死んだ俺たちに対し、大石はまだまだいつも通りなので、奴がいかにバケモノ級の体力であるかを理解する。平日が10時までだから全然平気だあ? 言ってることが頭おかし過ぎんだよ。来月の給料が楽しみだね、は言われれば確かにそうだけど、そんなこと考える余裕なんかなかったっつーの。
「大石君て、バイト時代からこういう感じで残業してたんでしょ?」
「そうだね」
「最高で月何万稼げてたの?」
「最高は月25万とか、それくらいだったかな?」
「ヤッバ!」
「こういう時にまとめて稼いで、学費ですって渡して、後は自分が最低限暮らせるだけの働き方って感じでやってたかな」
そう言いながら大石は大盛りの牛丼をかき込む。ちなみにロジの手伝いに行ってる間の飯はロジの食堂でタダで食えることになっている。やることが肉体労働なので大盛りでも何でも好きに頼んでいいよ、とは木下さんが話を通してくれた。まあ、そもそもが休出なんだから当たり前だよな(ウチの会社は休出の場合、飯代が出る)。
「ロジの牛丼ってホント美味しいよねー」
「あのな大石、俺と長岡はもう飯の味なんかとっくの昔にわかってねーんだよ」
「生きるためのエネルギーを確保するための行動だよね」
「えっそうなの? それだったら所長に言ったら少し手伝いの時間短くしてもらえないかなあ?」
「言える空気じゃねーよ。事務所がどんだけ荒れてるか知らねーだろ。こっちの出荷に目処がつかねーとウチの棚卸が始まらねーし、31日を休みに出来るかどうかはお前らにかかってるとかってもーう圧がヤバい」
会社に帰る度に山田さんからロジの進捗を聞かれる方の身にもなってほしい。先のカッター紛失事件で半日作業が止まった時の話をした時なんか、それはそれはもう恐ろしい形相で、カッターなんか落とさないように紐付けてベルトループに引っかけとけと。ああ、思い出すのも恐ろしい。俺はひとつも悪くないのに当たられるもんな。
「ああ……山田さんの様子は想像出来るよ。越野、現場と事務所の板挟みになって大変だね」
「向西とロジの板挟みにもなってるからな。こないだ事務所で仕事してたら木下さんから電話かかってきて、ナントカの品番乗ったパレットってどこにあるか知ってる? って聞かれたんだぞ。そっちの会社で把握してねーのかよって思いつつ、日曜の何時にはどこそこで見ましたっつって答えたけどさ」
「それを答えられる越野君て十分頭働いてないかな」
「ホントに。自社の人をすっ飛ばして頼られる越野も凄いよねえ」
「他社の新卒を頼るとか普通じゃねーんだよ」
それはそうだね、と大石と長岡の声が揃う。ロジはロジで本社絡みの難しい仕事だったりウチにはない仕事があったりするから大変なのは理解するが、ホワイトカラーばかり強化してブルーカラーをおざなりにするからこんなことになってんだろう。
「連休欲しいなあ。大石君、休み何するとかある?」
「プールに行く! 2週間以上行けてなくってすっごいうずうずしてるから!」
「すっご」
「その答えがわかりきってたまである」
「よーし、仕事を早く終わらせるモチベーションがまた上がってきたよね。今日はあと4、5時間くらいなのかな? がんばろー」
「おい大石、夜7時半にあと4、5時間とか言うなよ」
「日付跨ぎの現実が襲いかかってくる~」
end.
++++
土曜出勤はクソという精神の元、向西の1年トリオに連勤をさせています。
(phase3)
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3月はお上の決算があるということで、その関連企業や倉庫の仕事が増えに増えまくっている。そしてこの時期には「労働基準法? 聞いたことない法律ですね」と言いたげな働き方になることもある。ウチの会社は割と段取りよく作業をしているので残業はしても夜10時までで済んでいるが、そうではないところもあると聞く。
そのロクでもない働き方をしている会社が下手に近所の場合……と言うか、ウチがスケジュール通りに仕事をしていても、そっちの仕事が終わらないと棚卸に移行できない場合、あっちを片付けないと自分たちが無駄に待つことになる可能性があるワケで。それを早い段階から察していた偉い人たちの間で話が進んでたんだろうな。
「だぁっる」
「さすがにここまでくるとしんどいね」
体力にはそれなりに自信があると思っていた俺と長岡も、10連勤を越えた辺りからは目が死に始めたと他の人から言われるようになっていた。一応体はまだ動いている。だけど、思考の速度が通常と比べると大分遅くなってる気はする。複雑なことを考えようとすると、えー……と間を取ることが増えたと言うか。
平日は夜10時まで自分たちの会社の仕事をして、土日はロジの遅れを取り戻させるために朝8時からテッペン回るまで働いて、また月曜になったら自分たちの会社に戻っての繰り返しで現在13連勤目。何がおかしいって、ロジのケツ拭きのために休日を返上しなければならないところだ。ただでさえ3月は土曜出勤がデフォなのに。
出荷量自体はウチの方が爆発してるらしいけど、ウチの方が圧倒的に練度が高いので作業が速く作業しやすい。向こうは例によって入庫をサボっているので製品をピッキングしにくく、作業員の数はいるけどスポットの派遣作業員がほとんど。派遣がカッターを無くしたとかで確認のための開梱作業で丸半日潰すのもザラだ。で、結果トイレに置き忘れてたとかな。
「今日を乗り切ればさすがに俺たちも自分の会社で棚卸に入れるだろうし、越野、長岡君、ここが踏ん張りどころだよ。来月の給料が楽しみだね!」
「フィジカルエリートが経験を持つととんでもないバケモノになることを俺は理解した」
「うん。大石君ヤバすぎ」
「まあ、平日の仕事が10時までで終わってるからね。毎日12時まで残業とかじゃないからまだ全然平気かな」
「さすが、残業代がないことを嘆いてた奴は違うぜ」
「でも2時間早いのは大きいよ。帰ってから洗濯して、お風呂入って、明日の準備をしてもまだ12時だし」
目が死んだ俺たちに対し、大石はまだまだいつも通りなので、奴がいかにバケモノ級の体力であるかを理解する。平日が10時までだから全然平気だあ? 言ってることが頭おかし過ぎんだよ。来月の給料が楽しみだね、は言われれば確かにそうだけど、そんなこと考える余裕なんかなかったっつーの。
「大石君て、バイト時代からこういう感じで残業してたんでしょ?」
「そうだね」
「最高で月何万稼げてたの?」
「最高は月25万とか、それくらいだったかな?」
「ヤッバ!」
「こういう時にまとめて稼いで、学費ですって渡して、後は自分が最低限暮らせるだけの働き方って感じでやってたかな」
そう言いながら大石は大盛りの牛丼をかき込む。ちなみにロジの手伝いに行ってる間の飯はロジの食堂でタダで食えることになっている。やることが肉体労働なので大盛りでも何でも好きに頼んでいいよ、とは木下さんが話を通してくれた。まあ、そもそもが休出なんだから当たり前だよな(ウチの会社は休出の場合、飯代が出る)。
「ロジの牛丼ってホント美味しいよねー」
「あのな大石、俺と長岡はもう飯の味なんかとっくの昔にわかってねーんだよ」
「生きるためのエネルギーを確保するための行動だよね」
「えっそうなの? それだったら所長に言ったら少し手伝いの時間短くしてもらえないかなあ?」
「言える空気じゃねーよ。事務所がどんだけ荒れてるか知らねーだろ。こっちの出荷に目処がつかねーとウチの棚卸が始まらねーし、31日を休みに出来るかどうかはお前らにかかってるとかってもーう圧がヤバい」
会社に帰る度に山田さんからロジの進捗を聞かれる方の身にもなってほしい。先のカッター紛失事件で半日作業が止まった時の話をした時なんか、それはそれはもう恐ろしい形相で、カッターなんか落とさないように紐付けてベルトループに引っかけとけと。ああ、思い出すのも恐ろしい。俺はひとつも悪くないのに当たられるもんな。
「ああ……山田さんの様子は想像出来るよ。越野、現場と事務所の板挟みになって大変だね」
「向西とロジの板挟みにもなってるからな。こないだ事務所で仕事してたら木下さんから電話かかってきて、ナントカの品番乗ったパレットってどこにあるか知ってる? って聞かれたんだぞ。そっちの会社で把握してねーのかよって思いつつ、日曜の何時にはどこそこで見ましたっつって答えたけどさ」
「それを答えられる越野君て十分頭働いてないかな」
「ホントに。自社の人をすっ飛ばして頼られる越野も凄いよねえ」
「他社の新卒を頼るとか普通じゃねーんだよ」
それはそうだね、と大石と長岡の声が揃う。ロジはロジで本社絡みの難しい仕事だったりウチにはない仕事があったりするから大変なのは理解するが、ホワイトカラーばかり強化してブルーカラーをおざなりにするからこんなことになってんだろう。
「連休欲しいなあ。大石君、休み何するとかある?」
「プールに行く! 2週間以上行けてなくってすっごいうずうずしてるから!」
「すっご」
「その答えがわかりきってたまである」
「よーし、仕事を早く終わらせるモチベーションがまた上がってきたよね。今日はあと4、5時間くらいなのかな? がんばろー」
「おい大石、夜7時半にあと4、5時間とか言うなよ」
「日付跨ぎの現実が襲いかかってくる~」
end.
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土曜出勤はクソという精神の元、向西の1年トリオに連勤をさせています。
(phase3)
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