2025

■方便と妄想の境界線

++++

 春の番組制作会が終わった後、技術向上対策委員は本格的な代替わりをする。多くの大学や、インターフェイスの定例会は、大学祭が終わった後、11月初旬頃に代替わりがある。しかし、対策委員は、その頃に次期委員が召集されるものの、先輩たちと共に活動をする期間が少しある。
 先輩たちと活動をする期間を終え、自分たち6人での活動に移ることになるが、先輩たちが9人いたので、急に6人で取り残されると一気に人が少なくなったような気がする。先輩たちが特別人数の多い学年で、自分たちは普通であるらしいが、気持ちの問題か。

「対策委員の役員って、自分たちで話し合って決めるんだって。定例会とかは先輩たちが役職を決めて引き継ぐらしいんだけどね」
「じゃあ、何の役職があるのかをまず洗わないといけないのか」

 代表的な役職は、議長、委員長、機材管理担当、会計、書記だろうか。機材管理担当はさすがにミキサーの方が良いので、がっくんとならっち以外の4人から選出することになる。

「役職決めが途中なのにゴメンなのよ。ところで、このメンバーは車はあるのね? 当麻さんがドライバーとして忙しそうにしてたのよ」
「車は俺が持ってるよ。でも6人は乗れないよ」
「がっくんが車係なのよ!」
「任せてー」
「確か、車を買ったから、駐車場のあるマンションに、引っ越しをしたのよね~。中から聞いたわ~」
「いざとなれば、俺も、運転は出来る」
「じゃあ問題ないのよ!」

 春風先輩も、車を持ち始めてからはドライバーとして動くことが多くなっていたように思う。車の有無というのはインターフェイスの活動の中では大きな問題で、車がないと、レンタカーを借りる必要が出てくると議事録には書いてある。
 今は何故か俺の手元に議事録があり、話をしながら何となくそれを読んでいると、去年と一昨年の記録がとても細かいことに気が付く。定例会との兼ね合いが多いことから、定例会兼務だったカノン先輩と、奈々先輩の働きが大きかったのだろうと窺える。

「議長なー、誰がいい?」
「一番偉いんだよね、定例会との兼ね合いもありそうだし」
「私は議長なんて柄じゃないのね」
「あら~、私だって、向いていないわよ~」

 議長ともなると、対策委員の顔であるというイメージや、責任の所在、定例会との兼ね合いからか、どうも後込みしてしまうようであった。かく言う自分もそのような柄ではない。が、ひとつ、思うことはある。

「ひとつ、いいだろうか」
「殿」
「俺は、機材管理担当と同様に、会計にこそ適性が必要だと思う。ある意味で、議長よりも、優先されるのはそちらかと」
「なるほど、一理ある」
「……もちろん、議長が消去法で良いと言うつもりはないが」
「お金は大事なのよ! 少し前に機材補償費の計算が面倒になっているのね。私はその辺大雑把なのよ」
「俺も計画性は怪しいから、会計には向かないかも」
「確かに、勢いで車を買って、その結果引っ越してるがっくんは金銭感覚や計画性がぶっ飛んでる。数字を扱うだけなら出来るかもだけど、何の行事でいくらくらい使えて~みたいな話は任せたくないかも」
「ならっちが結構本音になってる!」
「本音ついでに以下妄想です! 単純にしっかりしてるって意味なら殿か将門? ちむりーは後から見返して要点をきっちりまとめた議事録を作ってくれそう。書記ちむ適性二重丸だと思います! がっくんは責任が重い役職よりムードメーカー的な役割の方が生きそうだから議長会計以外が丸くてー、美瑛は大雑把って言うけど映像制作くらいガチれば1円単位で切り詰める鬼になりそうだから大穴会計があってー、でもカメラ使えるから機材管理……や、そっちは案外将門でもよくてー、やっぱ議長って象徴だから、存在感とかカリスマって意味では将門より殿の方がアツくてー」

 ならっちの“妄想”はとてつもなく広がっているな、と聞きながら思った。ちむりーが見返しやすい議事録を作りそうだとか、がっくんがムードメーカー的役割がいいというのは、納得感も大きかったが。止めどなく溢れている妄想に、ならっち自身の姿がないように思えるのは、気の所為か。

「……ならっち」
「はいっ、うるさかったですか!」
「いや。その、妄想の委員の中で、ならっちは、何を」
「みんなの補佐をしています!」
「今ので確信したね、ならっちもムードメーカー枠だ! 俺と一緒に切り込み隊長だよ」
「でも今の妄想も、案外核心を外してないなって俺は思ったよ。俺は実際前に立つよりは、補佐型だし。ディレクターは、準備とかをしっかりするパートだから」
「……それを言うなら、俺に関しては、外しているだろう」
「殿、自分を過小評価してるって言われたことない?」
「絶対に言われてるのよ。ツッツがいつも殿の自慢をしてるのね」
「パロも、殿がねーってよく言ってる」

 確かに、対策委員の話を春風先輩から持ちかけられたときに、思いもよらない褒められ方はした。だが、俺を対策委員に行かせるよう、ある程度の方便も含まれていると思っている。怖がられて、距離を取られるのが基本だった。だから、こういう状況でどう対応すべきか、不慣れだ。

「議長・殿。うん、俺もアツいと思う。殿、頼む。ぜひ議長になって欲しい」
「いや、しかし」
「大丈夫。俺たち全員で仕事をするのには変わらないし、殿には今みたく、ここという場面で思ったことを言ってくれれば」
「殿がいてくれたら士気が高まるのよ!」
「そうね~。安心感は、大きいわよね~」
「……では、議長就任の件、承る。至らぬ点が多いと思うが」
「全力で支える。安心して」
「将門がそう言ってくれると、本当に安心だ。頼りにする」

 上手く担がれたような気がしないでもないが、誰がどんな役職であろうと、全員で仕事をする。それが基本姿勢だ。……果たして、これから1年、やれるだろうか。


end.


++++

まだまだキャラ立ちがこれからのならっちに、妄想癖が来るか? 青女や夏合宿関係の話でも役立ちそう。
イシカー兄さんや当麻のポジションにあるのは多分将門か? 落ち着いてる系男子。

(phase3)

.
90/92ページ