2025
■生活の選択
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シノの部屋にサーキュレーターが設置された。首が横だけじゃなくて縦にも回るタイプの物で、衣類乾燥モードなんかもある結構な性能の物らしい。そしてよくよく見ると、部屋干し用の衣類ハンガーが少し大きくなっていることに気付く。
「シノ、サーキュレーターなんかどうしたんだ?」
「俺、気付いちまったんだけど、花粉症なんじゃないかっつー疑惑が浮上してる今、一番気をつけるべきは洗濯なんじゃないかって」
「なるほど?」
「ササ、周りを見てみろよ。緑ヶ丘大学の周りなんか花粉の中で暮らしてるようなモンで、そんなトコで干した服に花粉が付かないワケがないんだよ」
「確かにな」
「花粉症じゃないとは思いたいけど、鼻水とかがヤバくなってる現状、出来ることはした方がいいと思った結果な」
シノは2年に上がった頃ぐらいから、春には花粉症っぽい症状が出るようになった。くしゃみと鼻水がとにかく酷いらしい。引っ越し祝いでサキがくれた保湿ティッシュがピンポイントで刺さったようだけど、普段から買うには高いなあと渋っていたのも見た。
それがどうだ。花粉対策と言って洗濯物の部屋干し環境を整えただって!? 相棒の欲目かも知れないけど、これは非常に大きな進歩だと思う。仲間内では超倹約家として知られるシノが、決して少なくはない額を設備投資してるんだから。
「薬とかは飲んでるのか?」
「保健センターでもらったのを飲んでる」
「おおー」
「ゼミ合宿で長篠にいたときめっちゃラクだったし、一生冬でいい。寒いのは我慢すりゃいいけどくしゃみと鼻水は我慢出来ねーもん」
寒いのが大嫌いなシノが一生冬でいいとまで言っていることに、よほど花粉が憎いのだと窺い知れる。これだけ防備して病院にまで行ってるんだから花粉症だって認めてしまえばいいのに。
「部屋干し環境を整えるためのサーキュレーターであることはわかった。でも、空気清浄機とかではなかったんだな。ほら、伊東さんの部屋には学生レベルじゃない空気清浄機置いてただろ」
「俺もやれるならやりたいけど、さすがに使える金には限度があるから、自分の生活を考えた結果の選択な。俺の場合、大学とかバイトで家にいる時間は案外短いけど、洗濯は家でやることだから洗濯優先みたいな?」
「洗濯物は家にいない間に干すこともあるもんな。乾かすことを考えると、晴れた日の日中であることが多いし。花粉を避けるならその方が効率的、費用対効果が期待出来るのは部屋干し環境の強化であると」
「さすが相棒! まさにそれだ!」
伊東さんは俺の知る中で一番重度の花粉症を患っている人だけど、就職してからはどうしているのだろうか。あの人は花粉対策に本当に10万以上のお金をポンと使ってたけど、シノはそこでもしっかり資金面のことを考えているのでさすがだと思う。車かちゃんとしたバイクが欲しいって言ってるもんな。
「ササ、メシ食ってくだろ?」
「あっ、いただきます」
「じゃ作るぜ。サーキュレーター買ったから節約はしてるけど」
「サーキュレーターを買ってなくたって節約してるだろ。まさかさらに節約してるのか。ちゃんと食べないとダメだぞ」
「食ってる食ってる。俺が食わねーとやってらんねーのはお前が一番知ってるだろ」
「それはな」
「麻衣がたまに畑で採れた野菜とかくれるんだけど、それをどうにか捨てるトコを極限まで減らせないかなーっつって、皮とか芯みたいなトコまで使うようにしてんだよ」
「大根の葉とか?」
「あれを捨てるのはマジでバカ! 何にでもなるあれは。あと、腹一杯になりやすいように最近は味噌汁とかスープとか付けるようにしてる。かさ増しじゃねーけど」
「へえ、いいな」
シノの目的とは違うけど、料理が一品だけ、一皿だけなのが嫌で何かしら付けるというのは浅浦さんを思い出す。浅浦さんにごちそうになった夕飯は伊東さんとは違う意味で凄かったし美味しかった。浅浦さんは確か今高校で国語の先生やってるんだっけか。凄いよなあ。
台所を覗いていると、シノの料理の手つきがこの1年で本当に様になったなあと感心する。今ではMBCCの同期内で1番の料理上手だし、この間の薪ストーブの会でも大活躍してくれた。相棒の料理の腕を信じたからこそ料理に振ったストーブ選びをしたというのは言うまでもない。
「大学の図書館で料理の本とか結構見てて、そこに野菜全部使うみたいな本もあるんだよ」
「図書館には結構行ってるけど、料理のコーナーは見てなかったな。結構充実してるんだな」
「一人暮らししてる奴がそれなりにいるからじゃね? 俺は動画よりも本の方がわかりやすいし情報をもらえる派だから、図書館で一気に見てる」
「シノ、知り合った頃と比べたら圧倒的に文字情報の処理力が高くなってるよな。今だったら本を読むのなんかさほど苦じゃないだろ」
「興味ない本は苦痛だぞ」
「それでもだよ。車関係の本とか、料理関係の本だったら読んですぐ理解出来てるだろ」
「前にお前が言ってた、数を読むと書いてある内容同士が繋がってくるっていうのはわかってきた」
「ほら。それをもっとやっていくと、さらに速く、深く理解が進むんだよ」
「へー。お前、そんなレベルまで行ってんだな。やっぱすげーな、さすが完璧超人」
そう言いながら、シノは厚揚げとみじん切りにした椎茸の軸、それから冷凍の鶏ミンチを袋の中で混ぜていく。これを揚げてナゲットにするらしい。最近は厚揚げのアレンジレシピがシノの中で流行っているのだとか。付け合わせには大根と玉ねぎの味噌汁。
「俺が“完璧超人”だと料理の腕を見た上でも言えるのか」
「まあ、すごく下手ではないけど俺の方が上手いとは思う」
「俺はシノの作るご飯を食べて生きるから」
「いやお前、それは違うだろ」
end.
++++
シノとかTKGパイセンの前だとササはとことん残念だといい。
花粉症対策でナノスパ最強なのは間違いなくいち氏だけど、あれは学生レベルじゃない
(phase3)
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シノの部屋にサーキュレーターが設置された。首が横だけじゃなくて縦にも回るタイプの物で、衣類乾燥モードなんかもある結構な性能の物らしい。そしてよくよく見ると、部屋干し用の衣類ハンガーが少し大きくなっていることに気付く。
「シノ、サーキュレーターなんかどうしたんだ?」
「俺、気付いちまったんだけど、花粉症なんじゃないかっつー疑惑が浮上してる今、一番気をつけるべきは洗濯なんじゃないかって」
「なるほど?」
「ササ、周りを見てみろよ。緑ヶ丘大学の周りなんか花粉の中で暮らしてるようなモンで、そんなトコで干した服に花粉が付かないワケがないんだよ」
「確かにな」
「花粉症じゃないとは思いたいけど、鼻水とかがヤバくなってる現状、出来ることはした方がいいと思った結果な」
シノは2年に上がった頃ぐらいから、春には花粉症っぽい症状が出るようになった。くしゃみと鼻水がとにかく酷いらしい。引っ越し祝いでサキがくれた保湿ティッシュがピンポイントで刺さったようだけど、普段から買うには高いなあと渋っていたのも見た。
それがどうだ。花粉対策と言って洗濯物の部屋干し環境を整えただって!? 相棒の欲目かも知れないけど、これは非常に大きな進歩だと思う。仲間内では超倹約家として知られるシノが、決して少なくはない額を設備投資してるんだから。
「薬とかは飲んでるのか?」
「保健センターでもらったのを飲んでる」
「おおー」
「ゼミ合宿で長篠にいたときめっちゃラクだったし、一生冬でいい。寒いのは我慢すりゃいいけどくしゃみと鼻水は我慢出来ねーもん」
寒いのが大嫌いなシノが一生冬でいいとまで言っていることに、よほど花粉が憎いのだと窺い知れる。これだけ防備して病院にまで行ってるんだから花粉症だって認めてしまえばいいのに。
「部屋干し環境を整えるためのサーキュレーターであることはわかった。でも、空気清浄機とかではなかったんだな。ほら、伊東さんの部屋には学生レベルじゃない空気清浄機置いてただろ」
「俺もやれるならやりたいけど、さすがに使える金には限度があるから、自分の生活を考えた結果の選択な。俺の場合、大学とかバイトで家にいる時間は案外短いけど、洗濯は家でやることだから洗濯優先みたいな?」
「洗濯物は家にいない間に干すこともあるもんな。乾かすことを考えると、晴れた日の日中であることが多いし。花粉を避けるならその方が効率的、費用対効果が期待出来るのは部屋干し環境の強化であると」
「さすが相棒! まさにそれだ!」
伊東さんは俺の知る中で一番重度の花粉症を患っている人だけど、就職してからはどうしているのだろうか。あの人は花粉対策に本当に10万以上のお金をポンと使ってたけど、シノはそこでもしっかり資金面のことを考えているのでさすがだと思う。車かちゃんとしたバイクが欲しいって言ってるもんな。
「ササ、メシ食ってくだろ?」
「あっ、いただきます」
「じゃ作るぜ。サーキュレーター買ったから節約はしてるけど」
「サーキュレーターを買ってなくたって節約してるだろ。まさかさらに節約してるのか。ちゃんと食べないとダメだぞ」
「食ってる食ってる。俺が食わねーとやってらんねーのはお前が一番知ってるだろ」
「それはな」
「麻衣がたまに畑で採れた野菜とかくれるんだけど、それをどうにか捨てるトコを極限まで減らせないかなーっつって、皮とか芯みたいなトコまで使うようにしてんだよ」
「大根の葉とか?」
「あれを捨てるのはマジでバカ! 何にでもなるあれは。あと、腹一杯になりやすいように最近は味噌汁とかスープとか付けるようにしてる。かさ増しじゃねーけど」
「へえ、いいな」
シノの目的とは違うけど、料理が一品だけ、一皿だけなのが嫌で何かしら付けるというのは浅浦さんを思い出す。浅浦さんにごちそうになった夕飯は伊東さんとは違う意味で凄かったし美味しかった。浅浦さんは確か今高校で国語の先生やってるんだっけか。凄いよなあ。
台所を覗いていると、シノの料理の手つきがこの1年で本当に様になったなあと感心する。今ではMBCCの同期内で1番の料理上手だし、この間の薪ストーブの会でも大活躍してくれた。相棒の料理の腕を信じたからこそ料理に振ったストーブ選びをしたというのは言うまでもない。
「大学の図書館で料理の本とか結構見てて、そこに野菜全部使うみたいな本もあるんだよ」
「図書館には結構行ってるけど、料理のコーナーは見てなかったな。結構充実してるんだな」
「一人暮らししてる奴がそれなりにいるからじゃね? 俺は動画よりも本の方がわかりやすいし情報をもらえる派だから、図書館で一気に見てる」
「シノ、知り合った頃と比べたら圧倒的に文字情報の処理力が高くなってるよな。今だったら本を読むのなんかさほど苦じゃないだろ」
「興味ない本は苦痛だぞ」
「それでもだよ。車関係の本とか、料理関係の本だったら読んですぐ理解出来てるだろ」
「前にお前が言ってた、数を読むと書いてある内容同士が繋がってくるっていうのはわかってきた」
「ほら。それをもっとやっていくと、さらに速く、深く理解が進むんだよ」
「へー。お前、そんなレベルまで行ってんだな。やっぱすげーな、さすが完璧超人」
そう言いながら、シノは厚揚げとみじん切りにした椎茸の軸、それから冷凍の鶏ミンチを袋の中で混ぜていく。これを揚げてナゲットにするらしい。最近は厚揚げのアレンジレシピがシノの中で流行っているのだとか。付け合わせには大根と玉ねぎの味噌汁。
「俺が“完璧超人”だと料理の腕を見た上でも言えるのか」
「まあ、すごく下手ではないけど俺の方が上手いとは思う」
「俺はシノの作るご飯を食べて生きるから」
「いやお前、それは違うだろ」
end.
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シノとかTKGパイセンの前だとササはとことん残念だといい。
花粉症対策でナノスパ最強なのは間違いなくいち氏だけど、あれは学生レベルじゃない
(phase3)
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