2025
■勉学と人生観
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この時期は比較的出荷が落ち着いているので、次の入庫に備えての庫内整理が主な仕事になる。俺にとっての春夏物の山はTシャツかな。薄手の物が50枚ほど入った箱が結構な重量で。大きい物より小さい物の方が1ケース当たりの枚数が多くなるから重くなりがちなんだよね。
B棟1階から都度上げていたダウン類も大分少なくなって、奥へ奥へと追いやられて行っている。当然だけど、歩く範囲が狭ければ作業効率も上がるし、仕事が速くなるので庫内整理に当てる時間が増えて、さらに片付いて……というループの時期だ。
「あっ、大石さん」
「通販の在庫チェックだよね。リスト見せてね」
「はーい、お願いしまーす」
俺は結構頻繁に製品の保管されているロケーションを変更するので、在庫チェックしに来た内山さんを見つけ次第、当該製品のロケーションが変わっていないかをチェックするようにしている。通販の在庫チェックは基本的に残り在庫が1の物に対して行われるので、棚にポンと雑に置いてある可能性もある。探しやすいようにというせめてもの気持ちだ。
「はい、変わったの書いといたよ」
「ありがとうございます。あっそうだ大石さん、少し立ち話いいですか?」
「うん、大丈夫だよ」
「この間、高校の友達と遊んだんですよ」
仕事に余裕があるときは、たまに立ち話なんかもする。俺だけじゃなくて、結構いろいろなところでいろいろな人がやっている。
「合コンの話とかしてて、大学生っぽいなーって思ったんですけど大石さんて合コン行ったことあります?」
「俺はないなあ。女子大の友達は行ってたらしいけど」
「大石さんが行ったことないのは大石さんっぽいなーって思うんですけど、えっ、女子大に友達いたんですか!?」
「いるよ?」
「それこそ合コンで知り合うとかじゃなくてですか!?」
「違う違う。サークルの関係で、いろんな大学の人が集まって活動することがあったんだよね。それで知り合うんだよ」
「へー、サークルも大学生っぽいですねー」
内山さんは高卒で就職しているから、大学生活については人から聞いた話やメディアとかで見たイメージでしか知らない。何に大学生っぽいというイメージを抱くかはその情報の偏りにもよりそうだ。一方、俺と越野、長岡君はみんな四大卒だ。
「アタシが就職してるからいつも遊んでるメンバーのスケジュールが合わないって言われるのもおかしくないですか? だったら土日バイト入れるの矛盾しますよね?」
「あー、確かに大学生同士とか社会人同士の方が日程は合いやすいかもね。学生は学生でどんな風に時間を使ってるかは本当に人によるんだけど」
「大石さんはめっちゃバイトしてそうです」
「繁忙期はイメージ通りたくさんしてたけど、それ以外の時はぼちぼちだったよ」
「知ってますよー、大石さんのぼちぼちって、一般人のめっちゃですよね」
「本当だって、ぼちぼちだよ」
「朝から日付跨ぐまで日常的に働いてた人のぼちぼちほど当てにならない言葉はないですって」
繁忙期以外だったら本当に週2、3で日当たりの労働時間が2、3時間のこともあったのになあと思いつつ、日付を跨いでいたのも本当なので反論はしない。最近の内山さんは環境に慣れてきたのか口も強くなってきたので、戦ったら負けると判断した。
「内山さんて、進学は考えなかったの?」
「将来のことを考えた結果、あんまり考えなかったですね」
「へえ、考え方を聞かせてもらっていい?」
「あまり大したことじゃないんですけど、これっていう、勉強の目的がなかったんですよ」
「うんうん」
「大学って、越野さんみたいにはっきりとやりたいことがある人が、そのために勉強しに行く物だって思ってたんで、やりたいこともないのに進学してもなあって」
「今の俺に刺さっちゃったなあ」
「でも、大卒の方が一般的に給料は高いじゃないですか。大石さんてお金を大事にしてる人ですし、大卒の給料もらった方が絶対いいですよ」
「ありがとう。うん、まさにそういう考え方だったよ。だから比較的学費の安い国立大学っていうので星大を目指して」
「それで本当に星大に入れるのが凄いですよ。でも、この会社って高卒とか大卒で給料区別されてるのかなあ?」
「多少はあるっぽいよ。塩見さんが、高卒認定試験を受けてから基本給が結構上がったって言ってた」
「塩見さんて中卒だったんですか!?」
確かに、ヒビキが勤めてるような大きな商社とかならともかく、小さな倉庫で高卒も大卒もないような気がするけどね。お向かいのロジとかだったらちょっとはあるような気がする。ロジは本社が大企業だし。でも、学歴だけじゃなくて能力で給料が上がる方がロマンがあるなあ。
「何だお前ら、楽しそうだな」
「あ、塩見さん」
「塩見さん!?」
「ちなみに俺は16で高校中退して17の頃からここでバイトしてるし、社員登用された当時は普通に中卒だったぞ」
「塩見さんて今おいくつですか?」
「今は28だな。社員としては9年目だ」
「そう、そうなんですよ。アタシが進学しなかったのは人生設計と年齢を考えた結果なんです」
「それっていうのは?」
「アタシのお母さんが結構若くて、22歳の時にアタシを生んでるんですよ」
「じゃあ今40歳とか41歳とかだね」
「はい。体も動くし休みの日も精力的に遊びに行ってて楽しそうだなーって思うんですよね。同い年くらいの友達は子育て真っ最中で大変そうって言ってます」
「子育てを終えるタイミングかあ」
「はい。お母さん見てると、アタシも出来るだけ早く結婚して子供を産みたいなって思いますし、そうしたら、25歳の時に働いて何年目かっていうことなんですよ」
「大卒だったら3年目だね」
「普通の高卒なら7年だな」
「7年だったら仕事も板に付いてるだろうし、復帰もしやすそうだなーとか思ったりして」
子育ては自分に体力があった方が絶対にいいとは聞いたことがある。現在小学生のお子さんがいる山田さんが常々大変そうにしているのを見ているから尚更思う。自分のことはイメージが全然湧かないけど、内山さんは結構しっかり考えてるんだなと感心した。
「大学生の4年間を挟むと、結婚とかがどんどん後ろに行っちゃいそうな気がして」
「お前の考え方には一定の理解は示せる」
「でもねえ、それも本当に人それぞれなんだよ。俺の友達が4年生の時に学生結婚してるし、子供とかはこれからなんだろうけど、結婚のタイミングだけで言うと本当に個人差」
「付き合い始めてから結婚までにどれくらいの時間をかけるかも同じことだよな。圭佑は時間かけてる方だし。出会ってすぐ付き合い始めて、すぐ結婚を意識する奴もいるし」
「いくら早く就職しても結婚出来なかったら人生計画の意味がないんですよねー。誘われた遊びには積極的に出かけるべきですかね?」
「危ないところには行かないようにね」
「そうだぞ。人を保護者代わりにするのも大概にしとけよ」
end.
++++
ウッチーの大まかな人生計画もちらり。
すぐに結婚を意識し始めたのはどこの真宙さんやろか
(phase3)
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この時期は比較的出荷が落ち着いているので、次の入庫に備えての庫内整理が主な仕事になる。俺にとっての春夏物の山はTシャツかな。薄手の物が50枚ほど入った箱が結構な重量で。大きい物より小さい物の方が1ケース当たりの枚数が多くなるから重くなりがちなんだよね。
B棟1階から都度上げていたダウン類も大分少なくなって、奥へ奥へと追いやられて行っている。当然だけど、歩く範囲が狭ければ作業効率も上がるし、仕事が速くなるので庫内整理に当てる時間が増えて、さらに片付いて……というループの時期だ。
「あっ、大石さん」
「通販の在庫チェックだよね。リスト見せてね」
「はーい、お願いしまーす」
俺は結構頻繁に製品の保管されているロケーションを変更するので、在庫チェックしに来た内山さんを見つけ次第、当該製品のロケーションが変わっていないかをチェックするようにしている。通販の在庫チェックは基本的に残り在庫が1の物に対して行われるので、棚にポンと雑に置いてある可能性もある。探しやすいようにというせめてもの気持ちだ。
「はい、変わったの書いといたよ」
「ありがとうございます。あっそうだ大石さん、少し立ち話いいですか?」
「うん、大丈夫だよ」
「この間、高校の友達と遊んだんですよ」
仕事に余裕があるときは、たまに立ち話なんかもする。俺だけじゃなくて、結構いろいろなところでいろいろな人がやっている。
「合コンの話とかしてて、大学生っぽいなーって思ったんですけど大石さんて合コン行ったことあります?」
「俺はないなあ。女子大の友達は行ってたらしいけど」
「大石さんが行ったことないのは大石さんっぽいなーって思うんですけど、えっ、女子大に友達いたんですか!?」
「いるよ?」
「それこそ合コンで知り合うとかじゃなくてですか!?」
「違う違う。サークルの関係で、いろんな大学の人が集まって活動することがあったんだよね。それで知り合うんだよ」
「へー、サークルも大学生っぽいですねー」
内山さんは高卒で就職しているから、大学生活については人から聞いた話やメディアとかで見たイメージでしか知らない。何に大学生っぽいというイメージを抱くかはその情報の偏りにもよりそうだ。一方、俺と越野、長岡君はみんな四大卒だ。
「アタシが就職してるからいつも遊んでるメンバーのスケジュールが合わないって言われるのもおかしくないですか? だったら土日バイト入れるの矛盾しますよね?」
「あー、確かに大学生同士とか社会人同士の方が日程は合いやすいかもね。学生は学生でどんな風に時間を使ってるかは本当に人によるんだけど」
「大石さんはめっちゃバイトしてそうです」
「繁忙期はイメージ通りたくさんしてたけど、それ以外の時はぼちぼちだったよ」
「知ってますよー、大石さんのぼちぼちって、一般人のめっちゃですよね」
「本当だって、ぼちぼちだよ」
「朝から日付跨ぐまで日常的に働いてた人のぼちぼちほど当てにならない言葉はないですって」
繁忙期以外だったら本当に週2、3で日当たりの労働時間が2、3時間のこともあったのになあと思いつつ、日付を跨いでいたのも本当なので反論はしない。最近の内山さんは環境に慣れてきたのか口も強くなってきたので、戦ったら負けると判断した。
「内山さんて、進学は考えなかったの?」
「将来のことを考えた結果、あんまり考えなかったですね」
「へえ、考え方を聞かせてもらっていい?」
「あまり大したことじゃないんですけど、これっていう、勉強の目的がなかったんですよ」
「うんうん」
「大学って、越野さんみたいにはっきりとやりたいことがある人が、そのために勉強しに行く物だって思ってたんで、やりたいこともないのに進学してもなあって」
「今の俺に刺さっちゃったなあ」
「でも、大卒の方が一般的に給料は高いじゃないですか。大石さんてお金を大事にしてる人ですし、大卒の給料もらった方が絶対いいですよ」
「ありがとう。うん、まさにそういう考え方だったよ。だから比較的学費の安い国立大学っていうので星大を目指して」
「それで本当に星大に入れるのが凄いですよ。でも、この会社って高卒とか大卒で給料区別されてるのかなあ?」
「多少はあるっぽいよ。塩見さんが、高卒認定試験を受けてから基本給が結構上がったって言ってた」
「塩見さんて中卒だったんですか!?」
確かに、ヒビキが勤めてるような大きな商社とかならともかく、小さな倉庫で高卒も大卒もないような気がするけどね。お向かいのロジとかだったらちょっとはあるような気がする。ロジは本社が大企業だし。でも、学歴だけじゃなくて能力で給料が上がる方がロマンがあるなあ。
「何だお前ら、楽しそうだな」
「あ、塩見さん」
「塩見さん!?」
「ちなみに俺は16で高校中退して17の頃からここでバイトしてるし、社員登用された当時は普通に中卒だったぞ」
「塩見さんて今おいくつですか?」
「今は28だな。社員としては9年目だ」
「そう、そうなんですよ。アタシが進学しなかったのは人生設計と年齢を考えた結果なんです」
「それっていうのは?」
「アタシのお母さんが結構若くて、22歳の時にアタシを生んでるんですよ」
「じゃあ今40歳とか41歳とかだね」
「はい。体も動くし休みの日も精力的に遊びに行ってて楽しそうだなーって思うんですよね。同い年くらいの友達は子育て真っ最中で大変そうって言ってます」
「子育てを終えるタイミングかあ」
「はい。お母さん見てると、アタシも出来るだけ早く結婚して子供を産みたいなって思いますし、そうしたら、25歳の時に働いて何年目かっていうことなんですよ」
「大卒だったら3年目だね」
「普通の高卒なら7年だな」
「7年だったら仕事も板に付いてるだろうし、復帰もしやすそうだなーとか思ったりして」
子育ては自分に体力があった方が絶対にいいとは聞いたことがある。現在小学生のお子さんがいる山田さんが常々大変そうにしているのを見ているから尚更思う。自分のことはイメージが全然湧かないけど、内山さんは結構しっかり考えてるんだなと感心した。
「大学生の4年間を挟むと、結婚とかがどんどん後ろに行っちゃいそうな気がして」
「お前の考え方には一定の理解は示せる」
「でもねえ、それも本当に人それぞれなんだよ。俺の友達が4年生の時に学生結婚してるし、子供とかはこれからなんだろうけど、結婚のタイミングだけで言うと本当に個人差」
「付き合い始めてから結婚までにどれくらいの時間をかけるかも同じことだよな。圭佑は時間かけてる方だし。出会ってすぐ付き合い始めて、すぐ結婚を意識する奴もいるし」
「いくら早く就職しても結婚出来なかったら人生計画の意味がないんですよねー。誘われた遊びには積極的に出かけるべきですかね?」
「危ないところには行かないようにね」
「そうだぞ。人を保護者代わりにするのも大概にしとけよ」
end.
++++
ウッチーの大まかな人生計画もちらり。
すぐに結婚を意識し始めたのはどこの真宙さんやろか
(phase3)
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