2025

■まだいい話にはなってない

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 文化会の会長になってしばし。少しずつ仕事にも慣れて来て、今はテスト期間の後に行われる冬のリーダーズキャンプに向けての準備をしている。リーダーズキャンプというのは星ヶ丘大学文化会の部長が揃って旅行に行って、交流だとか、部の活動報告をやったりするっていう行事なんだって。過去の議事録とかを見ていると、大体自由時間か飲み会って感じだ。
 正直、過去の議事録を見ながら他の役員の人たちとあーだこーだ会議をしながら机の上で話を詰めて行くのは少し退屈だ。宿を取ったりするのは他の役員の人が済ませてくれていたらしく、会長は文化会役員の席で上がってくる報告を受けてくださいって感じなのもね。しかも、この会長の席っていうのが物凄く重厚な雰囲気で、放送部時代に撤去した部長席の比じゃないんだ。

「はあ」
「源」
「あ、レオ」

 部活棟から出ると、声を掛けられた。レオだ。学部が違うから、部活を引退した今じゃあんまり会わなくなったなあと思う。久し振りだなあ。

「お疲れのようですね」
「文化会の仕事をしてたんだよ」
「今の時期だとリーキャンですか」
「そうだね。何か、みんな仕事が出来過ぎちゃって、俺のすることがほとんどないんだよね」
「文化会役員は文化会の部長の中から選ばれた人たちですから、仕事のひとつやふたつ、出来て当然ですよ」
「文化会の会長席も豪華でさあ」
「あそこで役員からの報告を受けるだけというのは源の性には合わなさそうですね」
「何で俺が会長やってるんだろ」
「人望を買われたんですよ」

 レオと話していると何だかいろいろ懐かしくなっちゃって、立ち話だけじゃ難だなあって気持ちになっちゃう。仕事ですっかり疲れちゃったし、甘いものが食べたいなあってことで寿さし屋に行こうよって誘う。俺はソフトクリームをカップで、レオはベリークリームを注文。奮発してるなあ。言っても100円差だけど。

「学内に寿さし屋があるのホントに助かる~」
「それは思います」
「他の大学の子たちからも結構羨ましがられるもんね」
「源がインターフェイスなどで交流のある大学だと、緑ヶ丘は星ヶ丘よりも圧倒的に施設のレベルが高いのでは?」
「確かに緑ヶ丘はレベルが圧倒的だけど、時々無性に食べたくなるじゃない、寿さし屋って」
「そうですね」
「さすがの緑ヶ丘でも寿さし屋はないから羨ましがられるよ」

 タカティは紅社から出て来てる子だから無性に寿さし屋が食べたくなる現象があんまりピンと来ないみたいだけど、お隣、山浪のエージは共感してくれるな。真剣にこれが星ヶ丘大学のいいところのひとつだと思う。

「レオは何をしててあそこを通りかかったの?」
「俺はレポートのための調べものをしたり、就活についても考え始めなければならないと思い、就職課に行った帰りでした」
「うわー、テストと就活!? 全っ然考えてなかった」
「就職課はさすがに人が少なかったですよ」
「でも、ちゃんとやってて偉いねえ。ちなみにだけど、レオって何系に就職したいとかっていうのはあるの?」
「俺は小売店、スーパーマーケットが視野にありますね」
「えっ、レジ打ちとか?」
「いえ、それよりは、地域社会のために小売店が出来ることを考え、実行し、より広げて行きたいと思うんです」
「スーパーかあ」
「ゴミ拾い大会などで町を歩いていると、嫌でも目につきますからね。商品の販売だけでなく資源の回収であったり、災害時の拠点としての役割もありますよね。中山間地域では買い物弱者のための移動販売サービスなども展開していて、役割が大きいなと」

 俺は正直普段の生活の中でスーパーの役割がどうとかっていうのはあまり意識していなかったけど、言われてみるとそうなのかもしれない。生活圏内に最低でも1軒はある印象だ。レオはスーパーマーケットを通じて地域社会をより良く出来ればって考えているみたかった。ゴミ拾い大会からしていいことだもんなあ。レオって凄いや。

「源は、おぼろげにでもこういうことをやりたいというのはあるんですか」
「うーん……仕事がどうとかっていうのはまだ全然だけど、何か、空いた時間があれば演劇とかコスプレの衣装や小道具を作ってたいなーって思っちゃうよ。現実逃避じゃないけど」
「仕事としてそういうことをしている人は、やはり美術大学や専門学校を出ていたりするものなんですかね」
「出てることも多いけど、これっていう資格が絶対必要ってワケでもないみたいだよ」
「だとすれば、それを視野に入れてもいいと思いますけどね」
「いやあ、仕事にするのはさすがに烏滸がましいよ。俺は演劇とコスプレが好きなだけのただの人だもの」
「ただの芸術ではなく、チームで作る作品の一部分としての作品制作、という意味では源には向いていると思ったんですけどね。源のバイタリティーとコミュニケーション能力は紛うことなき強みですよ」

 放送部時代のレオがこんな風に俺を褒めてくれた覚えがあまりない、と言うか俺は叱られてばっかりだったと思うんだけど、今日の俺には何か沁みちゃうね。

「しかし、そこらの凡人では源の衝動を突き動かす仕事を持って来れませんでしたか」
「え」
「いいですか源、文化会の会長だからと言って、他の人間が持って来る物をはいそうですねと受けるだけでなくていいんですよ。源の強さは、源の打ち出した仕事を他の人間にはいそうですねと言わせる力です」
「えっと、それってどういう」
「退屈なら走り回ればいいんですよ」
「でも、それでレオを怒らせてたでしょ?」
「ええ、怒ってましたよ。書類に目を通さないことや俺から逃げ回って班練習に直行すること、それから大事なことを事後報告することに対しては怒りましたが、源の起こした行動とその結果に対して俺が文句を言いましたか?」
「言われた気もするし、言われてない気もするね」
「いい話風になるかと思いましたが、文句はいくらか言ったような気がしないでもないですね」


end.


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文化会の会長さんとなってしばし、働き方に悩むゲンゴロー。
フェーズ1の1年生も3年生になって進路を考える頃合いになってきたかと思うとしみじみ。

(phase3)

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