2025
■Only with cooperation
++++
「とりぃそれ新しいポーチ? かわいいね」
「ありがとうございます。これは、先日の私の誕生日に徹平くんがくれたお手製の物なのです」
「へー、すごいねー。すがやんが作ったってことはレザーだよね? そんな色のレザーがあるんだねー。宇宙柄ってヤツでしょ?」
この間、私の誕生日に徹平くんがレザーのポーチをプレゼントしてくれました。レザーとしては珍しい宇宙柄で、ポーチの大きさもこれ以上ないほどちょうど良く(私の荷物の容量などを知っているからこその設計だと思います)、これから大切に育てていこうとしているところです。
「あーあーいろは、おアツいところに触れちまったなァ。火傷するぜ」
「大丈夫大丈夫。俺はおアツい話も楽しく聞けるから。さあ! どんどん話して話して」
「あーあ、知らねーぞ」
いろはの目があまりにキラキラしているので、逃げられないのだなと悟りました。奏多はこの手の話を適度に切りますし、希くんにしても意外にと言っては失礼ですが、比較的穏やかに聞いてくれます。ここまでぐいぐい来るのはくるみのようなアグレッシブさだなと思います。
「では、このポーチのいいところを見ていただきたいのですが」
「うんうん」
「ここですね。ここにさりげなくあしらわれた焼き印があるのですよ」
「あれっ、これってジュンの絵?」
「そうなのです! ジュンの新しいキャラクターの焼き印なのですよ! 焼き印を作るにはそれなりの時間がかかるそうなのですが、ここまでそのキャラクターを表に出さなかったジュンの忍耐、凄いですよね」
「褒めてるのがすがやんじゃなくてジュンになってるじゃねーか」
「それなりの時間がかかるってことは、結構前から準備してたってことだね。愛されてるねえとりぃ」
徹平くんがレザークラフトを始めたという話は聞いていましたが、彼は元々時間をかけて育てるレザーやデニムといった素材に興味が強く、手芸も趣味だったので、新しい挑戦を何ら不思議に思いませんでした。
「宇宙柄もすがやんが自分で染めたんだとよ。よくやるよな」
「へー、レザーって自分で色を付けられるもんなんだねー」
「私もよく知らないのですが、そういったことも出来るようですね」
「あ、あの……春風先輩」
「ツッツ。どうしたのですか?」
「あの、焼き印に、少し、興味があって……ポーチの焼き印の部分を、見せてもらっていいですか?」
「ええ、構いませんよ。どうぞ見てください」
「あ、ありがとうございます」
ツッツは物作りが好きなので、こういった物に対する興味があるのでしょう。最近では、夏合宿で一緒の班になった美瑛さんと工芸の分野で切磋琢磨しているようです。あれだけ人に怯えて震えていたツッツに、インターフェイスで同士とも言える仲間が出来たのはとても嬉しく思います。
「ツッツ、焼き印なんて何すんだ? 自分が作った物にでも押そうってか」
「は、はい……あの、この間、美瑛と話してて……。最近、自分で作った物を、ネットで少しずつ公開し始めて、ゆくゆくは売ることも視野にあるんですけど、それだったら、銘を入れた方がいいと言われたので……」
「なるほどな。お前の作品であることを示す印な」
「はい。ブランドと言うか、店の屋号もきちんとしろとは言われてるんですけど、アイディアが、湧かなくて」
「店の名前はともかく、ロゴにはキツツキを採用したらいいんじゃねーか? 森にいそうなモンだし多少は木に関係するだろ」
「あっ、キツッツキみたいなこと?」
「おっ、さすがいろは。その辺のアソビには敏感だな」
ツッツが自分で作った物を売ろうとしているという話には驚きましたし、どんな物を作っているのかには純粋に興味があります。作った物に銘を入れるための焼き印というのは、なかなか現実的な話だと思います。実際に使う当てがあるなら、作ったことのある人に話を聞いてみるのがいいかもしれませんね。
「あ、あの、多分、ハーバリウムの方が、前々から計画されてた、んじゃないかな、って……」
「ツッツ、まさかお前も仕掛け人か」
「殿やパロにも手伝ってもらったとは聞きましたけど」
「ツッツ、誕生日も過ぎたしネタバラししよう! ねっ、ねっ」
「え、えっと……」
「私も聞きたいのです。話の内容次第では、他のみんなにもきちんとお礼をしなければなりません」
「パ、パロ、助けて……」
「えっと、ハーバリウムには僕の方が関わっているので僕からお話ししますね。すがやん先輩からとりぃ先輩の誕生日プレゼントに協力して欲しいと話があったのは夏頃の話です。具体的には夏合宿中ですね」
「ンな時から計画してたのかよ」
「本当に早いですね」
「春風先輩にぴったりな花は何だろうと、僕と殿が聞かれて、2人で出した答えがコスモスでした。花言葉が“秩序”であることや、宇宙に関連するというのが理由です」
ハーバリウムに使う花は生花ではなくドライフラワーが望ましいということで、コスモスの旬の時期に殿がお花を用意して、ドライフラワーにしてくれていたようです。ちなみに、花の産地は大学の、サークル棟に向かうまでの坂道だそうです。確かにサークル棟に来るまでの坂道は、時季折々の花が咲いています。
1月の誕生日に対して、9月の時点でお花を用意してくれていたことにも驚きますが、例によってそれを誰にも悟られずに実行する面々にも驚きます。殿は寡黙なので、彼にとってはさほど難しいことではないのでしょうが。
「9月っつったらアレだなァ? 下旬にはすがやんとケンカしてたし、壮大な計画がムダにならなくて良かったねェ」
「えっ、とりぃってすがやんとケンカするの!?」
「恥ずかしながら、そんなこともありました」
「ケンカの内容聞いていい?」
「ええと……「謎がより多いのは空の上か地面の下か」というテーマで……」
「ディベートか何か?」
「いろは先輩、急にスンッてなりましたね」
「もっとときめくテーマだと思ってたのに! でも2人のそのブレなさがいいし、優劣がないからもどかしい~! ねっ、2人で一生かけてその議題の答えを探していくんだもんね!」
「ええ、はい。そのような形で着地しました」
「くーっ! いいねいいね!」
end.
++++
ひょっとしなくてもMMP2年生4人ではいろはが一番キャッキャしてる。
奏多の名付けセンスみたいなものをスッと理解できるのも多分いろは。
殿がいい花を選別して摘んでるところは是非見てみたい。
(phase3)
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「とりぃそれ新しいポーチ? かわいいね」
「ありがとうございます。これは、先日の私の誕生日に徹平くんがくれたお手製の物なのです」
「へー、すごいねー。すがやんが作ったってことはレザーだよね? そんな色のレザーがあるんだねー。宇宙柄ってヤツでしょ?」
この間、私の誕生日に徹平くんがレザーのポーチをプレゼントしてくれました。レザーとしては珍しい宇宙柄で、ポーチの大きさもこれ以上ないほどちょうど良く(私の荷物の容量などを知っているからこその設計だと思います)、これから大切に育てていこうとしているところです。
「あーあーいろは、おアツいところに触れちまったなァ。火傷するぜ」
「大丈夫大丈夫。俺はおアツい話も楽しく聞けるから。さあ! どんどん話して話して」
「あーあ、知らねーぞ」
いろはの目があまりにキラキラしているので、逃げられないのだなと悟りました。奏多はこの手の話を適度に切りますし、希くんにしても意外にと言っては失礼ですが、比較的穏やかに聞いてくれます。ここまでぐいぐい来るのはくるみのようなアグレッシブさだなと思います。
「では、このポーチのいいところを見ていただきたいのですが」
「うんうん」
「ここですね。ここにさりげなくあしらわれた焼き印があるのですよ」
「あれっ、これってジュンの絵?」
「そうなのです! ジュンの新しいキャラクターの焼き印なのですよ! 焼き印を作るにはそれなりの時間がかかるそうなのですが、ここまでそのキャラクターを表に出さなかったジュンの忍耐、凄いですよね」
「褒めてるのがすがやんじゃなくてジュンになってるじゃねーか」
「それなりの時間がかかるってことは、結構前から準備してたってことだね。愛されてるねえとりぃ」
徹平くんがレザークラフトを始めたという話は聞いていましたが、彼は元々時間をかけて育てるレザーやデニムといった素材に興味が強く、手芸も趣味だったので、新しい挑戦を何ら不思議に思いませんでした。
「宇宙柄もすがやんが自分で染めたんだとよ。よくやるよな」
「へー、レザーって自分で色を付けられるもんなんだねー」
「私もよく知らないのですが、そういったことも出来るようですね」
「あ、あの……春風先輩」
「ツッツ。どうしたのですか?」
「あの、焼き印に、少し、興味があって……ポーチの焼き印の部分を、見せてもらっていいですか?」
「ええ、構いませんよ。どうぞ見てください」
「あ、ありがとうございます」
ツッツは物作りが好きなので、こういった物に対する興味があるのでしょう。最近では、夏合宿で一緒の班になった美瑛さんと工芸の分野で切磋琢磨しているようです。あれだけ人に怯えて震えていたツッツに、インターフェイスで同士とも言える仲間が出来たのはとても嬉しく思います。
「ツッツ、焼き印なんて何すんだ? 自分が作った物にでも押そうってか」
「は、はい……あの、この間、美瑛と話してて……。最近、自分で作った物を、ネットで少しずつ公開し始めて、ゆくゆくは売ることも視野にあるんですけど、それだったら、銘を入れた方がいいと言われたので……」
「なるほどな。お前の作品であることを示す印な」
「はい。ブランドと言うか、店の屋号もきちんとしろとは言われてるんですけど、アイディアが、湧かなくて」
「店の名前はともかく、ロゴにはキツツキを採用したらいいんじゃねーか? 森にいそうなモンだし多少は木に関係するだろ」
「あっ、キツッツキみたいなこと?」
「おっ、さすがいろは。その辺のアソビには敏感だな」
ツッツが自分で作った物を売ろうとしているという話には驚きましたし、どんな物を作っているのかには純粋に興味があります。作った物に銘を入れるための焼き印というのは、なかなか現実的な話だと思います。実際に使う当てがあるなら、作ったことのある人に話を聞いてみるのがいいかもしれませんね。
「あ、あの、多分、ハーバリウムの方が、前々から計画されてた、んじゃないかな、って……」
「ツッツ、まさかお前も仕掛け人か」
「殿やパロにも手伝ってもらったとは聞きましたけど」
「ツッツ、誕生日も過ぎたしネタバラししよう! ねっ、ねっ」
「え、えっと……」
「私も聞きたいのです。話の内容次第では、他のみんなにもきちんとお礼をしなければなりません」
「パ、パロ、助けて……」
「えっと、ハーバリウムには僕の方が関わっているので僕からお話ししますね。すがやん先輩からとりぃ先輩の誕生日プレゼントに協力して欲しいと話があったのは夏頃の話です。具体的には夏合宿中ですね」
「ンな時から計画してたのかよ」
「本当に早いですね」
「春風先輩にぴったりな花は何だろうと、僕と殿が聞かれて、2人で出した答えがコスモスでした。花言葉が“秩序”であることや、宇宙に関連するというのが理由です」
ハーバリウムに使う花は生花ではなくドライフラワーが望ましいということで、コスモスの旬の時期に殿がお花を用意して、ドライフラワーにしてくれていたようです。ちなみに、花の産地は大学の、サークル棟に向かうまでの坂道だそうです。確かにサークル棟に来るまでの坂道は、時季折々の花が咲いています。
1月の誕生日に対して、9月の時点でお花を用意してくれていたことにも驚きますが、例によってそれを誰にも悟られずに実行する面々にも驚きます。殿は寡黙なので、彼にとってはさほど難しいことではないのでしょうが。
「9月っつったらアレだなァ? 下旬にはすがやんとケンカしてたし、壮大な計画がムダにならなくて良かったねェ」
「えっ、とりぃってすがやんとケンカするの!?」
「恥ずかしながら、そんなこともありました」
「ケンカの内容聞いていい?」
「ええと……「謎がより多いのは空の上か地面の下か」というテーマで……」
「ディベートか何か?」
「いろは先輩、急にスンッてなりましたね」
「もっとときめくテーマだと思ってたのに! でも2人のそのブレなさがいいし、優劣がないからもどかしい~! ねっ、2人で一生かけてその議題の答えを探していくんだもんね!」
「ええ、はい。そのような形で着地しました」
「くーっ! いいねいいね!」
end.
++++
ひょっとしなくてもMMP2年生4人ではいろはが一番キャッキャしてる。
奏多の名付けセンスみたいなものをスッと理解できるのも多分いろは。
殿がいい花を選別して摘んでるところは是非見てみたい。
(phase3)
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