2017(04)
■フトコロコミュニケーションズ
++++
「あっ、美奈ちゃん」
「……あずさ」
ベティさんの店に来てみると、いつものカウンターに先客が。あずさと、ロイ。私もリンと一緒に来ていたのだけど、あずさがこっちこっちと手招きをするので、その隣に陣取る。デートではないのかと、少し不思議に思うけれど。
「あっ、ミーナ。久し振り」
「……久し振り」
彼、ロイこと星ヶ丘の朝霞君とは少し顔を知っているという程度であまり話したことはない。私はインターフェイスのイベントに出る方ではないし、現場で顔を合わせることはほとんどなかったから。
ただ、人から話を聞くことはあるから全くの他人という程でもない。最近では大石君から話を聞くこともあったし、それから、ここで知り合ったあずさの恋の相手ということで、少し興味が湧いているところだった。
「えっ、美奈ちゃんて朝霞クンと知り合いなの?」
「サークルの関係で……」
「まあ、そこまでガッツリ絡んだっていうワケじゃないけど、大石から話には聞いてたし」
「……そう、大石君から話には……」
「そっか、ちーが間にいるなら納得ー」
私は今いる登場人物の全員を知っているけれど、あとの3人……特にリンは何がなんだかという状態だと思う。ただ、リンはそういう細かいことを気にするタイプでもなかったはずだから、なるようにしてくれると思う。
今日もたまたまバーテンダーとしてカウンターの向こうに立っていた大石君があずさやロイと談笑をしている。リンも適当な飲み物を注文して、淡々とお酒を煽る。同じように淡々とお酒を飲んでいたロイと目が合ったのか、軽く会釈を。
「美奈と一緒に来たのって、情報センターの人だよね」
「……情文って、情報センターを使うの…?」
「そうだね。情文は文系とも理系とも言い難いからガッツリした理系の学部みたいに専用のパソコン室があるとかじゃないんだよね。だから情報センターもたまに使うよ」
「学生が夜の仕事をしているのか」
「あはは、そう見えちゃうかなー。一応、ちゃんとした接客はしないし、お酒を出すのも友達だけだよ。家の手伝いみたいな物だから給料も発生しないし」
そう言いながら、大石君は鮮やかな手つきでカクテルを作ってくれる。それをロイは、カシューナッツと一緒に受け取りおもむろに席を立つ。どうしたのかと思うと、彼はリンの隣の席に回り込んだ。
「ん?」
「このカシューナッツがさ、美味しいんだよ。俺は朝霞薫。星ヶ丘の3年で、ミーナとは部活関係の繋がりなんだ。で、こっちが伏見。俺とはゼミの友達で、この大石の幼馴染み。なんかミーナとも知り合いっぽい」
「林原雄介だ」
「で、これがカシューナッツ。これがさ、美味いんだよ」
「ほう。……まあ美味い。美奈、お前も食うか」
「……何か、特殊な…?」
「いや、ごく普通のカシューナッツだ」
「リンが言うなら、本当に普通の……うん……普通の、美味しいナッツ……」
「あ、リン君ていうんだ。リン君て何か趣味とかある?」
「趣味か。趣味と言えばピアノと麻雀、それからゲームくらいだろうか。音楽は割とジャンル問わず聞くが」
「あっ、そうなんだ。それじゃあさあ」
すっとリンの懐に入って行ったロイは、瞬く間にどんどん会話を広げて行っている。今まであずさから恋バナとして聞いていた彼の話によれば、、ロイは本当に博識で多趣味なんだそう。それこそ何にでも興味を持ち、人の話を聞く姿勢がすごいとか。
「ほう、あのサントラを持っているのか」
「良かった映画のサントラは持っときたいほうでさ。それにステージにも使えるかなと思っていろいろ買い漁ってたんだ。逆にサントラからハマった映画もあって。あっ、俺放送部だったんだけどさ、そこで台本を書いてたんだ」
「物書きか」
「そんなような感じかなあ。ステージの台本の他には小説とか」
「オレは専ら作曲をするくらいで、文字では出来んからな。物書きの引き出しや神経構造は純粋に気になる」
「えっちょっと待って、作曲の方が普通に気になるから」
「美奈は絵を描いたり手芸をしたりするだろう。一言に創作と言っても様々な表現法があるなと思ってな」
これは、思いがけずリンとロイの気が合っている…? いつしか私とあずさが置いてけぼりを食らっている。私はカシューナッツの器を引き寄せ、それを黙々と食べ進めるだけ。耳は一応隣の会話に向いているけれど。
「美奈、今度朝霞と買い物に出ることになったがお前も来るか。ただただ各々の趣味に走るという街歩きだが」
「……行く」
「よし決まりだ」
「伏見、お前も来るか」
「いっ、行きますっ! でもあたしの趣味の買い物って何!?」
「知らねーよ、それくらい自分で考えろ」
end.
++++
謎のカシューナッツ推し。リン様と朝霞Pが知り合ってるのはここ1、2年の流れなんだけど、出会い方を詳しくやってなかったなど。
他人の趣味などに対して否定的な姿勢で入らないのが今いる人たちの特徴なのかもしれない。わからないにしても聞いてみると言うか
そう言えば、この4人は手法やジャンルは違っても作る人たちであることには違いありませんでしたね。生みの苦しみなどについても話して欲しい
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「あっ、美奈ちゃん」
「……あずさ」
ベティさんの店に来てみると、いつものカウンターに先客が。あずさと、ロイ。私もリンと一緒に来ていたのだけど、あずさがこっちこっちと手招きをするので、その隣に陣取る。デートではないのかと、少し不思議に思うけれど。
「あっ、ミーナ。久し振り」
「……久し振り」
彼、ロイこと星ヶ丘の朝霞君とは少し顔を知っているという程度であまり話したことはない。私はインターフェイスのイベントに出る方ではないし、現場で顔を合わせることはほとんどなかったから。
ただ、人から話を聞くことはあるから全くの他人という程でもない。最近では大石君から話を聞くこともあったし、それから、ここで知り合ったあずさの恋の相手ということで、少し興味が湧いているところだった。
「えっ、美奈ちゃんて朝霞クンと知り合いなの?」
「サークルの関係で……」
「まあ、そこまでガッツリ絡んだっていうワケじゃないけど、大石から話には聞いてたし」
「……そう、大石君から話には……」
「そっか、ちーが間にいるなら納得ー」
私は今いる登場人物の全員を知っているけれど、あとの3人……特にリンは何がなんだかという状態だと思う。ただ、リンはそういう細かいことを気にするタイプでもなかったはずだから、なるようにしてくれると思う。
今日もたまたまバーテンダーとしてカウンターの向こうに立っていた大石君があずさやロイと談笑をしている。リンも適当な飲み物を注文して、淡々とお酒を煽る。同じように淡々とお酒を飲んでいたロイと目が合ったのか、軽く会釈を。
「美奈と一緒に来たのって、情報センターの人だよね」
「……情文って、情報センターを使うの…?」
「そうだね。情文は文系とも理系とも言い難いからガッツリした理系の学部みたいに専用のパソコン室があるとかじゃないんだよね。だから情報センターもたまに使うよ」
「学生が夜の仕事をしているのか」
「あはは、そう見えちゃうかなー。一応、ちゃんとした接客はしないし、お酒を出すのも友達だけだよ。家の手伝いみたいな物だから給料も発生しないし」
そう言いながら、大石君は鮮やかな手つきでカクテルを作ってくれる。それをロイは、カシューナッツと一緒に受け取りおもむろに席を立つ。どうしたのかと思うと、彼はリンの隣の席に回り込んだ。
「ん?」
「このカシューナッツがさ、美味しいんだよ。俺は朝霞薫。星ヶ丘の3年で、ミーナとは部活関係の繋がりなんだ。で、こっちが伏見。俺とはゼミの友達で、この大石の幼馴染み。なんかミーナとも知り合いっぽい」
「林原雄介だ」
「で、これがカシューナッツ。これがさ、美味いんだよ」
「ほう。……まあ美味い。美奈、お前も食うか」
「……何か、特殊な…?」
「いや、ごく普通のカシューナッツだ」
「リンが言うなら、本当に普通の……うん……普通の、美味しいナッツ……」
「あ、リン君ていうんだ。リン君て何か趣味とかある?」
「趣味か。趣味と言えばピアノと麻雀、それからゲームくらいだろうか。音楽は割とジャンル問わず聞くが」
「あっ、そうなんだ。それじゃあさあ」
すっとリンの懐に入って行ったロイは、瞬く間にどんどん会話を広げて行っている。今まであずさから恋バナとして聞いていた彼の話によれば、、ロイは本当に博識で多趣味なんだそう。それこそ何にでも興味を持ち、人の話を聞く姿勢がすごいとか。
「ほう、あのサントラを持っているのか」
「良かった映画のサントラは持っときたいほうでさ。それにステージにも使えるかなと思っていろいろ買い漁ってたんだ。逆にサントラからハマった映画もあって。あっ、俺放送部だったんだけどさ、そこで台本を書いてたんだ」
「物書きか」
「そんなような感じかなあ。ステージの台本の他には小説とか」
「オレは専ら作曲をするくらいで、文字では出来んからな。物書きの引き出しや神経構造は純粋に気になる」
「えっちょっと待って、作曲の方が普通に気になるから」
「美奈は絵を描いたり手芸をしたりするだろう。一言に創作と言っても様々な表現法があるなと思ってな」
これは、思いがけずリンとロイの気が合っている…? いつしか私とあずさが置いてけぼりを食らっている。私はカシューナッツの器を引き寄せ、それを黙々と食べ進めるだけ。耳は一応隣の会話に向いているけれど。
「美奈、今度朝霞と買い物に出ることになったがお前も来るか。ただただ各々の趣味に走るという街歩きだが」
「……行く」
「よし決まりだ」
「伏見、お前も来るか」
「いっ、行きますっ! でもあたしの趣味の買い物って何!?」
「知らねーよ、それくらい自分で考えろ」
end.
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謎のカシューナッツ推し。リン様と朝霞Pが知り合ってるのはここ1、2年の流れなんだけど、出会い方を詳しくやってなかったなど。
他人の趣味などに対して否定的な姿勢で入らないのが今いる人たちの特徴なのかもしれない。わからないにしても聞いてみると言うか
そう言えば、この4人は手法やジャンルは違っても作る人たちであることには違いありませんでしたね。生みの苦しみなどについても話して欲しい
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