2025
■TODAY IS THE DAY
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「ねえねえカノン、俺思ったんだけどさあ?」
「んー?」
いろはが昔の書記ノートを見ながら俺に話しかけてくる時は、大体「季節のイベントをやろう」とかそういう流れになることがわかってきた。いろはは季節の移り変わりだとかカレンダーの行事、暦なんかに対する感度が今のMMPの中では一番高くて、事あるごとにイベントをやっていた少し前までのMMPの活動に対する興味が強い。
「奈々先輩の話によれば、少し前までのMMPって冬至を祝う陰の集団だったんでしょ?」
「そういう話にはなってるな。特にこないだ卒業してった先輩らが現役だった時がそんな雰囲気だったとは」
「それでそこのロビーで先輩たちが土鍋持ってカレーうどん大会をやったって話でしょ? 夏至カレーに対抗する冬至○○の企画で」
「そうそう」
「そしたら今年もやろうよ!」
「っつってもちょっと急だな」
「えー、じゃあさー、冬至カレーうどんは出来たらでいいけど、年内のサークル終了日にみんなでお鍋でも囲もうよ、奈々先輩のお疲れさま会も兼ねてさー。それならまだ時間もあるでしょ? 殿とかにも相談してさ、ちょっと検討してみない? ねっ?」
冬至カレーうどんもまだ諦めてないのがさすがいろはなんだけど、最終日にみんなで鍋は普通にいいなって思う。昔にこういう企画が自然発生的に出てきてたのは、去年圭斗先輩と菜月先輩が土鍋を持ってやって来たことからもよくわかる。今年はなかなかそういう雰囲気にはならないから、いろはって実は凄く貴重な人材なのかも、と思い始める。
ただ、少し前までのMMPでイベントをやりやすかったのは、この近くに一人暮らしの人の家があったり、ひとまとまりで行動しやすかったからだ。今は人数が凄く増えた割に近くに住んでるのはジャックだけ。ちょっとそこで鍋でも、とは気軽に行けない。1年生は6人でたまにジャックん家に集まってるみたいだけど、やっぱ規模感てのは要素としてデカい。
「どう? どう? ちょっとやりたくない?」
「そりゃ出来るならやりたいけど、やるならちゃんと計画立ててみんなに話さないとなー」
「じゃないと松兄が怒るもんね」
「俺はもう反省したの! だからこうやって、実際動き始める前にじっくり考えることを考えてるんだろ」
「ジャックの家ってこの人数入るのかな?」
「入ったとしても近所迷惑になりそうだし、帰りのことも考えると豊葦市駅近郊で適当な貸部屋を探した方がいいような気もする。そしたら星鉄も向環も使えるし」
「いいねいいね」
場所はその方向で考えて、次はその日にちのみんなの予定を押さえる。特に普段は直帰が多い奈々先輩と、朝早くからバイトしてるから夜遅くまで引っ張りにくい殿だ。あ~、しかもこの2人、お疲れさま会の体ならお招きする人と、鍋やるんなら調理チームのエースじゃんか! とっとと話を通さないと。
「いろはってさ、番組聞いてても思うけど、日常を祝う? みたいな? そういう感性がずば抜けてる気がする」
「何だろうね。当たり前だけど当たり前じゃないみたいな? 何を見ても新鮮に思えるっていうのは自分でも感じてるよ。でもさ、そのサークルでの日常がこないだ壊されちゃったじゃない? だから改めて、今いるメンバーでわいわいしたいなって思ってさ」
この間、1年生たちが年末特番の作業をしていたところにOBを名乗る人がカチコミを入れてくるという事件が起こった。野坂先輩が言うにはその人は今年卒業した人で、圭斗先輩の代の人らしいけど正直俺もその人のことはほとんど記憶にない。
そのことで空気が重くなるのも嫌だなって思うけど、やっぱどこかでみんな引っかかってて。奏多や鳥ちゃんとも、またこんなことがあったらどーするとか、1年生たちは本当に大丈夫かなとかそんな話をするようになって。
それについてはまだ何も解決してない。だけど、俺たちのいる今のMMPの空気を壊さずに守ること。多分それがやるべきかつ強いムーブで、それをナチュラルに提案してくれるいろはには感謝してもしきれない。多分他のメンバーだとこうはならないと思う。
「多分だけど、理屈とかじゃなくてノリと雰囲気でぶち上げてくのは俺といろはのコンビが最強だ! あとはパッションで奏多を味方につけて、奏多のカリスマで1年生をその気にさせて」
「男子の勢いでとりぃを巻き込んで」
「いろは、お疲れさま会の趣旨、奈々先輩に言う? どーする? 俺こないだ奏多にたなべでの誕生会内緒にされてたから奈々先輩にもサプライズでわーってやりたい気持ちがあるんだけど」
「いいんじゃない? みんなでご飯は伝えて、お疲れさま会っていう題目は伏せておけば」
「うわー、どーせ貸部屋でやるならもっとドカンとやりて~…! 4年生の先輩にも声掛けようかなー、どうしよっかなー、忙しいかなー…!?」
「そこで悩むのはカノンらしくないね。来てくれるかどうかはともかく、まず声を掛けるのがカノン流でしょ?」
「そうだ! 悩むくらいならやるのが俺! よーし、会の内容を大まかにまとめたら4年生の先輩にも連絡だ!」
場所はどこがいいとか、食事の内容はどうするとか、会の内容をいろはと話しながらワクワクが止まらない。まだ誰の予定も押さえてないのに。でも、大まかな話がまとまらないと、誰の予定も押さえられないしなあ。まずはどんなバカらしいことだって構わないからとにかく案をたっくさん出していって、それに現実味を持たせる作業から。うんうん、俺の知ってる少し前のMMPっぽい。
「あとカノン、俺は冬至カレーうどんも諦めてないからね」
「さすがじゃんか。俺はお疲れさま会の方詰めるし、カレーうどん諦めてないならそっちはいろはが詰めてみんなに話してな、八代さんの許可取りも込みだぞ」
end.
++++
いろはが暴れるとフェーズ1のMMPの雰囲気に近く出来ることを発見した模様。
奏多は理詰め寄りの人間で、いろははパッション寄りの人間なのかなという印象。その間のカノン。
(phase3)
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「ねえねえカノン、俺思ったんだけどさあ?」
「んー?」
いろはが昔の書記ノートを見ながら俺に話しかけてくる時は、大体「季節のイベントをやろう」とかそういう流れになることがわかってきた。いろはは季節の移り変わりだとかカレンダーの行事、暦なんかに対する感度が今のMMPの中では一番高くて、事あるごとにイベントをやっていた少し前までのMMPの活動に対する興味が強い。
「奈々先輩の話によれば、少し前までのMMPって冬至を祝う陰の集団だったんでしょ?」
「そういう話にはなってるな。特にこないだ卒業してった先輩らが現役だった時がそんな雰囲気だったとは」
「それでそこのロビーで先輩たちが土鍋持ってカレーうどん大会をやったって話でしょ? 夏至カレーに対抗する冬至○○の企画で」
「そうそう」
「そしたら今年もやろうよ!」
「っつってもちょっと急だな」
「えー、じゃあさー、冬至カレーうどんは出来たらでいいけど、年内のサークル終了日にみんなでお鍋でも囲もうよ、奈々先輩のお疲れさま会も兼ねてさー。それならまだ時間もあるでしょ? 殿とかにも相談してさ、ちょっと検討してみない? ねっ?」
冬至カレーうどんもまだ諦めてないのがさすがいろはなんだけど、最終日にみんなで鍋は普通にいいなって思う。昔にこういう企画が自然発生的に出てきてたのは、去年圭斗先輩と菜月先輩が土鍋を持ってやって来たことからもよくわかる。今年はなかなかそういう雰囲気にはならないから、いろはって実は凄く貴重な人材なのかも、と思い始める。
ただ、少し前までのMMPでイベントをやりやすかったのは、この近くに一人暮らしの人の家があったり、ひとまとまりで行動しやすかったからだ。今は人数が凄く増えた割に近くに住んでるのはジャックだけ。ちょっとそこで鍋でも、とは気軽に行けない。1年生は6人でたまにジャックん家に集まってるみたいだけど、やっぱ規模感てのは要素としてデカい。
「どう? どう? ちょっとやりたくない?」
「そりゃ出来るならやりたいけど、やるならちゃんと計画立ててみんなに話さないとなー」
「じゃないと松兄が怒るもんね」
「俺はもう反省したの! だからこうやって、実際動き始める前にじっくり考えることを考えてるんだろ」
「ジャックの家ってこの人数入るのかな?」
「入ったとしても近所迷惑になりそうだし、帰りのことも考えると豊葦市駅近郊で適当な貸部屋を探した方がいいような気もする。そしたら星鉄も向環も使えるし」
「いいねいいね」
場所はその方向で考えて、次はその日にちのみんなの予定を押さえる。特に普段は直帰が多い奈々先輩と、朝早くからバイトしてるから夜遅くまで引っ張りにくい殿だ。あ~、しかもこの2人、お疲れさま会の体ならお招きする人と、鍋やるんなら調理チームのエースじゃんか! とっとと話を通さないと。
「いろはってさ、番組聞いてても思うけど、日常を祝う? みたいな? そういう感性がずば抜けてる気がする」
「何だろうね。当たり前だけど当たり前じゃないみたいな? 何を見ても新鮮に思えるっていうのは自分でも感じてるよ。でもさ、そのサークルでの日常がこないだ壊されちゃったじゃない? だから改めて、今いるメンバーでわいわいしたいなって思ってさ」
この間、1年生たちが年末特番の作業をしていたところにOBを名乗る人がカチコミを入れてくるという事件が起こった。野坂先輩が言うにはその人は今年卒業した人で、圭斗先輩の代の人らしいけど正直俺もその人のことはほとんど記憶にない。
そのことで空気が重くなるのも嫌だなって思うけど、やっぱどこかでみんな引っかかってて。奏多や鳥ちゃんとも、またこんなことがあったらどーするとか、1年生たちは本当に大丈夫かなとかそんな話をするようになって。
それについてはまだ何も解決してない。だけど、俺たちのいる今のMMPの空気を壊さずに守ること。多分それがやるべきかつ強いムーブで、それをナチュラルに提案してくれるいろはには感謝してもしきれない。多分他のメンバーだとこうはならないと思う。
「多分だけど、理屈とかじゃなくてノリと雰囲気でぶち上げてくのは俺といろはのコンビが最強だ! あとはパッションで奏多を味方につけて、奏多のカリスマで1年生をその気にさせて」
「男子の勢いでとりぃを巻き込んで」
「いろは、お疲れさま会の趣旨、奈々先輩に言う? どーする? 俺こないだ奏多にたなべでの誕生会内緒にされてたから奈々先輩にもサプライズでわーってやりたい気持ちがあるんだけど」
「いいんじゃない? みんなでご飯は伝えて、お疲れさま会っていう題目は伏せておけば」
「うわー、どーせ貸部屋でやるならもっとドカンとやりて~…! 4年生の先輩にも声掛けようかなー、どうしよっかなー、忙しいかなー…!?」
「そこで悩むのはカノンらしくないね。来てくれるかどうかはともかく、まず声を掛けるのがカノン流でしょ?」
「そうだ! 悩むくらいならやるのが俺! よーし、会の内容を大まかにまとめたら4年生の先輩にも連絡だ!」
場所はどこがいいとか、食事の内容はどうするとか、会の内容をいろはと話しながらワクワクが止まらない。まだ誰の予定も押さえてないのに。でも、大まかな話がまとまらないと、誰の予定も押さえられないしなあ。まずはどんなバカらしいことだって構わないからとにかく案をたっくさん出していって、それに現実味を持たせる作業から。うんうん、俺の知ってる少し前のMMPっぽい。
「あとカノン、俺は冬至カレーうどんも諦めてないからね」
「さすがじゃんか。俺はお疲れさま会の方詰めるし、カレーうどん諦めてないならそっちはいろはが詰めてみんなに話してな、八代さんの許可取りも込みだぞ」
end.
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いろはが暴れるとフェーズ1のMMPの雰囲気に近く出来ることを発見した模様。
奏多は理詰め寄りの人間で、いろははパッション寄りの人間なのかなという印象。その間のカノン。
(phase3)
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