2025

■What kind of person is Palo?

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「おーいジャックぅ」
「んー? おわっ」

 まだサークル室に人が少ないなーとか思ってたら、ジュンとうっしーとツッツが3人揃って来た。3人ともレジ袋を提げてたから、購買にでも寄ってたのかと思ったら、いやに大荷物なツッツ。

「ツッツが購買のガラポンで米当てたんよ」
「えー、すげー! えっ、5キロ!? しばらく食えるじゃん!」
「それがな、コイツ欲もないし謙虚やから、俺とレシート合算して回したガラポンやからもらえんって言うワケよ」
「うわ、マジ無欲じゃんツッツ」
「そしたら、お前ん家でみんなでメシ食う時とかに開けたらええやろってことで、お前に預かっといてもらいたいんよ」
「事情はわかった。預かっとくわ。開けるタイミングは俺のタイミングでいいよな?」
「ええんちゃう?」

 購買で2000円以上買い物をすると1回分の抽選権がもらえるっていう話らしい。ジュンも文房具か学食のお食事券狙いで回したけど一番ショボい賞のうまい棒しか当たらなかったらしい。この部屋でうまい棒を見るとツラい記憶が蘇ってくるし、実際当たったうまい棒をジュンから見せつけられたうっしーはプチ切れしたらしい。気持ちはわかる。
 で、預かった米は俺のタイミングで開けていいということだけど、今食ってる米がまだ米びつにあるのに、みんなが来たときにその袋を開けて、また中途半端にするというのも風味を損ねそうなので(どうせ食べるなら美味しく食べたい)、みんながうちに来たときの白飯に関してはしばらく負担なしで、とするのがいいのかもしれない。どっちにしても、少し考えないと。

「ツッツのそのガラポンて何等だったん?」
「3等だね」
「1等が人気テーマパークのペア旅行券で、2等が人気ゲーム機やったっけか?」
「だな。で、3等が米5キロ、以下学食のお食事券、購買で使える文房具券、うまい棒だったはず」
「へー。でもそのラインナップで1等2等なんかマジで入ってんのかわかんねーし釣りっぽさも感じるけど」
「わかる! 釣りやんなあんなん!」
「現実味のある景品の中じゃ一番いいの取ってるし、やっぱ欲の有無とか徳を積んでるか否かっていうのもデカそうだ」
「欲なあ。まあ、お前と俺はまずアカンとして、ジュンもこの頃生活リズムガタガタやから、欲は知らんけど徳の面でアカン」
「認める」
「み、認めるんだ……」
「そもそもにおいて徳を積めとる奴はまっくろジュンジュンとは呼べんしな」
「は?」
「俺ら6人やったらやっぱツッツと殿がツートップやな!」
「パロは?」
「アイツは調味料の収集癖がある。物欲の塊や」
「ああ、確かに。学祭の時に使った岩塩も買うだけ買って使ってなかったヤツって言ってたもんな」

 ジュンの徳とパロの欲が意外とアレだったっていう発見もありつつ、殿とツッツが強そうっていう意見に異論はないし解釈一致だ。この2人はうまい棒を当てたとしても怒りもせずに騒ぎもせず、お食事券や文房具券を当てればささやかに喜びそう。何なら殿は米を当てたらみんなに何か作ってくれそうなイメージもある。

「パロは授業中に居眠りすることもあるって話だし、特別な聖人でもない、普通の人って感じなのかもな」
「体幹の凄い、普通の優しい人なのかな……」
「お前こないだからパロの体幹にビビり過ぎちゃう?」
「ほ、本当に凄いんだって……」
「そうだぞうっしー、パロは本当に凄いんだぞ。パロが本気を出したらお前なんか一瞬で捻り倒されるぞ」
「そ、そうだよ……」

 この間、サークルの時間にみんなで焚き火をして焼き芋を焼いて食べた。その時に焚き火の材料を山の中に集めに行ってたのがパロをリーダーに、ジュンとツッツで編成された3人チームだった。この後から、ジュンとツッツ、特にツッツがパロの体幹を推すようになっている。ちなみに俺とうっしーは殿と一緒に芋の準備をしてた。後から聞くと、俺とうっしーはパロから戦力外だと判断されていたらしい。ひどくね?

「それはそうと、お前らの話じゃパロはヤバいんやろ?」
「ヤバい」
「凄い……」
「やのに何でパロって凄そうに見えんのやろな?」
「うーん、小さいから?」
「お前からすりゃ大体の奴が小さいやろ」
「顔が可愛いから? 童顔っつーか」
「言葉が優しいよね……」
「そう言えば、星大のがっくんも、ジャガイモを持って来てくれた時にパロを頼ってたな」
「何やっけ、確か、夏合宿の練習ン時にこの部屋に入って来たヘビを外に出したとかやっけか」

 凄いのに凄そうに見えない奴が一番ヤバいっていうのはあるあるなんだけど、それはそうとしてパロの爪の隠し方が気になる年頃の俺たち4人はパロについて考えてみる。だけど俺たちは理系でパロは文系だからサークル以外で会うことはほとんどないし、第2言語や体育でも授業とか教室のダブりがないっぽいので謎が多いということに気付く。

「わからん、パロがわからん!」
「学内でたまたま会うこともほとんどないしな」
「みんなおはよー」
「おっ、噂をすればパロ!」
「パロと殿か。おはよう」
「えっ、もしかして僕の話してたの?」
「……お前ら、俺ちょっとわかったかもしれん」
「何がわかった、うっしー」
「パロはサークルやったら殿やし、インターフェイスの現場やったら中とかがっくんみたいなやたら濃い奴と仲良いから、薄まるんやないか? 視線が散らばるっつーか。ステルスが高い」

 うっしーの提唱した説には残る3人もある程度納得した。焚き木集めは、パロがリーダーを務めていたからそれに付いて行った2人からの視線が集中して、凄さが浮き彫りになった、と。

「で、結局何の話だったの?」
「元は、ツッツが購買のガラポン抽選会で米を当てたって話」
「えっ、凄いねツッツ!」
「徳を積んどる奴とか欲のない奴の方が当たりやすいんちゃうかっつっとって、パロは調味料めっちゃ集めとるから物欲の塊やしアカンなって言っとったんよ」
「あ、ちょっとわかるかも。バイトしてても、この鉢欲しいなーとかって思っちゃうもんね。しばらく買われなかったら僕が買っていいかなーとか」
「あ、やっぱ物欲の塊やぞコイツ」


end.


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「何でコイツ○○なんやろな?」と疑問を抱きがちなうっしー。
あとジュンに対しては割と強くツッコミを入れがち。

(phase3)

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